1 令和3年度当初予算編成について 2 産業戦略の推進について 3 冬場の感染拡大に備えた体制の整備について 4 持続可能な農業の実現について 5 教育行政について 6 警察行政について
───◆─・──◆──── 日程第三 代表質問 日程第四 議案第一号から第七号まで及び第十一号から第五十六号まで 議長(柳居俊学君)日程第三、代表質問を行い、日程第四、議案第一号から第七号まで及び第十一号から第五十六号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 塩満久雄君。 〔塩満久雄君登壇〕(拍手) 塩満久雄君 皆さん、おはようございます。自由民主党の塩満久雄です。 令和二年十一月定例会に当たり、自由民主党会派を代表して、県政の諸課題について、知事、教育長及び警察本部長に質問いたします。 質問に先立ちまして、一言申し上げます。 「感染症の世界的拡大は、戦争ではない。人間性が試されているのだ」これは、ドイツのシュタインマイヤー大統領がテレビ演説で述べた言葉です。 新型コロナウイルスの感染者は既に世界で六千万人を大きく上回り、今なお終息の気配が見えません。 今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、現代社会が生み出した様々な問題や文明の弱点をあぶり出したと言われています。また、文明は感染症の揺り籠とも言われ、新たな文明とともに流行し、人類の歴史を激震させてきました。 イギリスの科学者ニュートンは、ペストで大学が閉鎖されたため、田舎で庭仕事をしていて、リンゴの実が木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見しました。また、十四世紀ヨーロッパで大流行したペストのパンデミックは、後のルネサンスや宗教改革をもたらしたと言われます。 我が国はこれまでデジタル化の遅れが指摘されていましたが、今回のコロナ禍をきっかけにオンラインによる治療や学校教育、テレワークによる働き方改革など様々な分野で社会のデジタル化が急速に進んでおり、コロナ後はさらにAIやバイオなど第四次産業革命が一気に加速され、劇的な社会変化が起きることが予想されます。 これからの将来展望を描くに当たり、ポストコロナを見据えた施策を検討していくときが今まさに到来したのだということを申し上げ、通告に従い質問に入らせていただきます。 最初に、令和三年度当初予算編成についてお尋ねします。 今なお楽観を許されない新型コロナウイルス感染症の拡大、四月、五月を底に持ち直してはいるものの、依然として力強さに欠ける日本経済。我が国は、かつて直面したことのない国難のさなかにあります。 八年前の政権交代以降、我が自由民主党は一貫して経済の再生に取り組んでまいりました。 人口減少が進行する中、就業者数は約四百万人増え、全都道府県で有効求人倍率が一を超えるなど、バブル崩壊後最高の経済状態を実現したところで、このたびの新型コロナウイルスの直撃を受けたのです。 爆発的な感染を絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜いていく。その上で、社会経済活動を回復軌道に乗せ、再び強い経済を取り戻すことに全力を尽くす覚悟でございます。 同時に、先ほどから申し上げていますように、デジタル化をはじめ大胆な規制改革を実現し、ポストコロナの新しい社会をつくり上げていかなければなりません。 こうした中、本県においても、先日、「コロナの時代」に対応するための施策推進方針が新たに策定され、本県の未来を切り開くための取組を再び前へ進めようとされています。 このたび発表された、来年度当初予算編成方針を見ますと、感染拡大防止と経済活性化の両立に加え、デジタル化の推進など危機から生まれた変化を成長へとつなげていく取組が基本方針の柱として掲げられています。 また、先日には、コロナ禍の社会変革に対応したデジタル化の推進を柱に政府要望が実施されるなど、新たな時代を見据え、本県の未来への成長をリードしていこうという知事の強い決意を感じたところであります。 全国知事会のデジタル社会推進本部長に就任された知事におかれては、地方におけるデジタル社会の実現に自ら口火を切る役割を担っていただくことを大いに期待しております。 同時に、国では、ポストコロナに向け、経済の持ち直しの動きを確かなものとし、民需主導の成長軌道に戻していくことを目指し、補正予算案の編成作業が進められており、こうした国の対策ともしっかり連携していくことも重要です。 現在、自由民主党では、県内の各地域や各界から県の予算編成と施策決定に関する御意見や御要望をきめ細かく拝聴しており、こうした県民の声を十分に施策に反映させていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。現下の社会が直面する危機を乗り越え、ポストコロナにおける山口県の未来予想図をどのように描き、その実現に向けて来年度当初予算編成にどのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。 次に、産業戦略の推進についてお尋ねします。 さきの九月議会において、我が会派の代表質問に対し、知事から、コロナ禍を契機とした社会変革の動きも踏まえて、産業イノベーション戦略を改定し、本県の活力の源である産業力を大きく伸ばす取組を着実に進めると答弁をいただきました。 そして、世界経済の潮流を肌で感じておられる民間委員さんからの意見や、これまで取り組んでこられた取組の成果を踏まえ、さらに伸ばすべきもの、新たに加えるべきものを整理され、先日の産業戦略本部会合において、次の三年間で取り組むべき九つのプロジェクトを内容とする、次期産業イノベーション戦略の素案を提示されたところです。 この素案では、これまでも重点的に支援してきた瀬戸内の基幹企業群や地域中核企業群の競争力強化を、引き続き集中的に支援されることに加え、これまでも我が会派が重ねて申し上げてきた、デジタルトランスフォーメーションの加速を新たなプロジェクトとして位置づけられており、社会・経済の変革を的確に捉えながら、本県の強みをさらに伸ばしていこうという、地に足のついた内容になっていると、高く評価しています。 現行の戦略においても、大手通信事業者との連携協定に基づくローカル5Gを活用したスマートファクトリーの実証事業をはじめ、先導的な事例の創出に、意欲的に取り組まれておられます。次期戦略では、こうした取組をさらに加速され、5GやAI等の技術も活用しながらイノベーション創出に取り組むこととされており、本県の強みであるものづくりを中心とした産業力が、デジタル化をてことして、さらなる進化を遂げられることを大いに期待しています。 他方、菅総理は所信表明演説において、デジタル社会の実現とともに、グリーン社会の実現を掲げ、二○五○年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すと宣言されるとともに、成長戦略の柱として経済と環境の好循環を掲げると述べられました。今後、国においては、新たな成長戦略について年末までに中間的な取りまとめをするとされています。 県においては、これから年度末にかけて、次期戦略の策定を進められるわけですが、こうした国の議論の方向もしっかりと見据えながら、本県産業にとってより実効性のあるものとなるよう、幅広い意見を聞き検討を進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。知事は、社会・経済の変革や国の施策の方向も見据え、次期産業イノベーション戦略においては、どのように本県の産業力を強化していこうと考え、このたびの素案を策定されたのか、御所見をお伺いします。 次に、冬場の感染拡大に備えた体制の整備についてお尋ねします。 新型コロナウイルスは、国内初の感染者が発生してから十か月が経過しましたが、全国では現在も新規感染者が増加傾向にあり、いまだ収束の兆しが見えません。本県においても、都市部との往来などに起因する感染者が断続的に発生しており、今月に入り複数のクラスターも発生しています。 こうした中、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で迎える初めての冬が、間もなく訪れます。 冬場には、夏場とは異なる新たな脅威が懸念されています。空気の乾燥や気温の低下に伴い、感染が拡大しやすい環境が生まれます。既に、国内の寒冷地では新たな感染者の増加傾向が顕著になっており、米国や欧州では感染の急激な増加が起きています。海外渡航の緩和や国内の人の移動の活発化に伴う影響も、これから出てきます。また、季節性インフルエンザや感染性胃腸炎の流行期に入ることから、新型コロナウイルスと同時に、複数の感染症が拡大するおそれもあります。 県民が安心して社会経済活動を再開できるよう、このような冬場に予測される様々な脅威に備え、県民の命と健康を守り抜く、感染拡大防止対策に万全を期していくことが、今、求められています。 私たちには、これまでの感染拡大への対応で得られた経験があります。また、地域の関係機関の協力を得て整備した医療提供体制や、感染拡大期に十分対応できる検査体制もあります。これまで構築した基盤を生かし、さらに体制を充実していくことが重要になります。 爆発的な感染は、絶対に防がなくてはなりません。そのためには、季節性インフルエンザの同時流行など、発熱等の症状を訴える方が増える中にあっても、新型コロナウイルスの感染者をできるだけ早期に発見し、適切な治療につなげる地域の体制を確実なものにする必要があります。 また、地域の医療提供体制の維持に向け、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ方に医療資源を重点化する体制も必要になります。さらに、重症化リスクの高い方が多く、クラスター発生時の影響が極めて大きい医療機関や介護施設について、感染拡大に備えた十分な対策を取っていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。新たな脅威が懸念される冬場に向け、新型コロナウイルスの感染拡大に備えた体制の整備について、今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。 次に、持続可能な農業の実現についてお尋ねします。 今年三月、今後十年間の農政の指針となる新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定され、基本方針として、食料自給率の向上と食料安全保障の確立が示されました。 言うまでもなく、我が国の農業は水田を中心に営まれており、安定した米の生産と供給を実現することが、食料安全保障の確立につながるのです。 特に、本県においては、江戸時代、防長の三白政策といって、米、紙、塩の振興が図られるなど、今日に至るまで、米生産が代表的な産業として展開されています。 現在、担い手の減少や高齢化が進んでいますが、このような中にあっても、稲作を中心とした本県農業が持続的に発展できるよう、県ではこれまで日本一の担い手支援策の展開やスマート技術の導入促進、担い手への農地集積など、生産基盤の強化に取り組んでこられました。 さらには、集落営農法人やその連合体の形成を推進し、足腰の強い経営体を育成されるなど、全国から注目される取組も展開されてきたところです。今では、これらの経営体が稲作を基幹とした営農を展開しながら、地域の中核となって農業を守っているのです。 こうした中、本年は、コロナ禍による需要の減少などから全国的に米価が下落傾向にあり、加えて、本県では水稲の主要害虫であるトビイロウンカが、例年の百二十倍飛来するなど過去にない規模で大量発生しました。 県では、全国に先駆けて警報を発令し、防除対策の徹底を呼びかけるなど、技術指導を強化してこられましたが、水田全体が枯れる全面枯れなどが広範囲にわたって引き起こされました。さらには相次ぐ台風被害も重なって、本県の水稲作は甚大な被害を受け、直近の作況指数は全国最低の七十三となり、昭和二十三年の調査開始以降、最悪の不作となる見通しです。 被害の深刻さを改めて痛感いたしますとともに、丹精込めて農作業にいそしんでこられた農業者の皆さんの心中を察するに余りあるものがあります。 我が会派にも、未曽有の困難に直面する農業者や関係団体から、今後の農業経営の継続に対する不安の声が多数寄せられており、今こそ、本県農業を守るため、意欲ある全ての農業者が安心して稲作を継続できるよう、思い切った支援が必要だと思うのです。 そこでお尋ねします。害虫トビイロウンカや相次ぐ台風により深刻な打撃を受けた本県農業者の生産意欲の向上を図り、持続可能な農業の実現につなげていくため、今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。 次に、教育行政についてお尋ねします。 少子化が進む中にあっても、充実した高校教育の質の確保・向上のため、県教委におかれましては、二○一五年度から二○二四年度までの期間を対象とする第二期県立高校将来構想に基づき、県立高校再編整備計画を進められているところです。 この計画により、響高校と豊北高校の再編統合、高校コミュニティ・スクールの導入、探究科の設置をはじめとして、これまで様々な取組が次々と実施されてきました。また、平成二十八年度には通学区域が全県一区化され、中学生が幅広い学校の中から自分の行きたい高校を選択し、受験できるようになりました。そして、今現在、県教委においては、この計画の最終段階である令和三年度から四年間を対象とした実施計画の策定を進められていると伺っています。 こうした再編整備計画の着実な実施は、魅力ある学校づくりの推進に加え、学校ごとの入学定員に大きな地域差が生じることなく、一定の学校規模を確保することに大きく寄与してきたと考えています。 しかしながら、本県教育における児童生徒数の減少の影響は大きく、新たな課題が生じています。県教委によると、今後十五年間で中学校卒業者数が約三千人も減少する見込みであり、少子化に伴う県立高校の統廃合が進むことで、学校数が減少し、学校がより小規模となっていくことが想定されます。 さらに、本県の人口が各都市に分散していることから、力のある生徒も各都市に分散しているため、生徒が学業に励む上で、学校内で互いに切磋琢磨する機会の減少につながり、生徒の学力への影響が懸念されるところです。 また、県境の下関市や岩国市を中心に、進学を目的とする小中学校段階からの子供たちの県外流出の課題もあります。こうした子供たちは東京大学や京都大学をはじめとするいわゆる難関大学や医学部への進学を目指して、早い段階から県外の学校に進学しているのであり、本県の若者が県外に流出する一因ともなっています。 このように、再編整備計画を進める中にあっても、本県の教育を取り巻く環境は刻々と変化し、新たな課題に直面しているのです。今後も本県の高校教育を充実したものとしていくためには、中長期的な視点に立って、将来の県立高校のあるべき姿を模索し、その方向性を議論することが重要であると思うのです。 そこでお尋ねします。本県の高校教育を取り巻く現状から、将来的な県立高校の在り方とその教育活動についてどのように捉え、高校教育の充実に取り組まれるのか、教育長の御所見をお伺いします。 最後に、警察行政についてお尋ねいたします。 現在の本県の治安情勢については、犯罪の発生件数を表す刑法犯認知件数が平成十五年以降減少を続けており、良好な治安の確保に向けた取組が一定の成果を上げておられます。 また、警察力を表す指標の一つである刑法犯の検挙率は、近年上昇を続けており、犯罪が発生しにくく、仮に犯罪が発生した場合であっても、犯人の検挙につながる社会になってきていることがうかがえます。 一方では、子供と女性が被害となる犯罪や高齢者を狙ったうそ電話詐欺など、私たちの日々の生活を脅かす犯罪の発生がいまだ後を絶たず、治安上の課題があることも事実です。県警察には、多様化する治安要請に対して的確に応えるとともに、県民が安全で安心して暮らせる地域社会の実現に向けて、警察力の強化が求められています。 良好な治安の下で、安全に安心して暮らせる地域社会の実現は、県民共通の願いであり、社会・経済の発展の礎となるものですが、この警察力の強化は警察だけで達成できるものではありません。地域や関係機関・団体などとの連携により、社会全体で良好な治安が保たれるよう取り組んでいく必要があり、これまで以上にお互いの信頼関係を構築することが求められています。そのため、県警察におかれては、日々の活動を通じて、信頼を積み重ね、全ての県民が心から信頼できる存在とならなければなりません。 しかしながら、近年、全国的にも懲戒処分を受ける警察官が多い状況が続いており、国民からの信頼が揺らいでいます。今年上半期だけで、懲戒処分を受けた警察官などは全国で百十四人に上っています。本県では、今年に入ってから既に四人が懲戒処分となっており、このままでは、県民の警察に対する信頼が根底から揺らぐことになりかねません。多くの警察官が職責を自覚し、職務に精励されていることは承知していますが、警察に信頼を寄せる県民の方々のためにも、組織全体で襟を正していかなければなりません。 このように、県民からの多様な治安要請に的確に応え、安全・安心な社会を実現させるため、警察力の強化と、県民との信頼関係の構築が何よりも重要です。県警察は運営指針に、県民の期待と信頼に応える強い警察を掲げられていますが、これを実現し、県民の安全・安心を守るという大きな使命を全うするため、谷警察本部長の指揮の下、全職員が一丸となり、高い倫理観を持って職責を果たしていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。県民から信頼され、多様な治安要請に応えることができる、強い県警察の構築のため、今後、どのように取り組まれるのか、警察本部長の御所見をお伺いして、私の代表質問を終えさせていただきます。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)塩満議員の代表質問にお答えします。 まず、令和三年度当初予算編成についてのお尋ねです。 直面する新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越え、「活力みなぎる山口県」を実現していくためには、感染拡大の防止を徹底した上で、危機から生まれた社会変革の動きをしっかりと捉え、これからの成長につなげていくことが重要です。 コロナとの共存を前提とした新たな日常の中で、デジタル化等の変革の恩恵を県民があまねく享受をし、これまでよりも豊かで安心・安全に暮らすことができる、私は、こうした社会こそが、コロナの時代にあって本県が目指すべき未来の姿であると考えています。 その実現に向けて、来年度の当初予算編成に当たっては、先般策定した「コロナの時代」に対応するための施策推進方針に基づき、感染拡大の防止と経済活性化の両立を図る取組の重点化と、デジタル化等を通じた県づくりの加速化に全力で取り組んでまいります。 とりわけ、デジタル化は変革の原動力となるものです。これによって県民生活がどのように向上し、また、県内産業の活力をどう高めていくのか、具体的な将来像をお示ししながら、本県ならではの社会変革を目指し、諸施策への積極的な導入と取組の加速化を図ってまいります。 県自らも、行政手続のオンライン化やワンストップ化等に鋭意取り組み、県民や事業者にとって利便性の高いデジタル・ガバメントの構築を急ぐとともに、県政の様々な分野において、デジタル技術を生かした、より一層効果的できめ細かな行政サービスを提供していきたいと考えています。 今後、これらの取組を強力かつ一気に進めていくため、県議会の御意見もお聞きしながら、新たな推進組織の設置など、全庁挙げた体制の整備と、官民協働の仕組みづくり、これらを早急に検討してまいります。 また、社会全体のデジタル化に向けては、地方におけるデジタル人材の不足や情報通信基盤の地域間格差など、個々の自治体では対応が難しい多くの課題があります。 このため、私は、本県のみならず、全国知事会デジタル社会推進本部長の立場から、自ら先頭に立って、これらの課題の解決と今後の取組の方向性を五つの原則として掲げ、国に対し、地方の実情等に即した施策の推進を求める提言を取りまとめ、先般、関係大臣へ要請を行ったところです。 今後も、全ての都道府県と一致結束し、こうした政策提言を重ねながら、国と地方、そして民間が一体となった強靱なデジタル社会の実現に取り組んでまいる決意です。 一方、感染拡大の影響から県税収入の大幅な減少が見込まれるなど、財政状況は極めて厳しい中にありますが、選択と集中の観点から、事業の不断の見直しや財源確保等にも取り組み、コロナとの長期戦を見据えた対策や、活力に満ちた本県の未来にとって必要となる施策にしっかり取り組んでまいります。 私は、国において検討が進められている補正予算や、デジタル化などの国の政策にも的確に対応しながら、県づくりの取組を力強く、スピード感を持って前に進め、コロナ禍においても「活力みなぎる山口県」の実現を果たすとの強い思いを持って、来年度当初予算の編成に臨んでまいります。 次に、産業戦略の推進についてのお尋ねにお答えします。 私は、将来に向けて県経済の持続的成長・発展を図るためには、高度技術や産業集積を生かし、本県の活力源である産業力を大きく伸ばす取組を着実に進めるとともに、デジタル化など感染症を契機とした社会変革の動きを逃さず、これからの成長・発展へとつなげていくことが極めて重要と考えています。 このため、次期産業イノベーション戦略では、本県の強みを生かす考え方は維持しつつ、新たにデジタルトランスフォーメーションの加速を視点に加え、これまでの取組成果等を基礎に、産業戦略プロジェクトを再編・拡充することとしています。 具体的には、デジタル化による企業の成長・発展を促進するため、地域産業デジタルトランスフォーメーション加速化プロジェクトを掲げ、全県的な推進拠点の設置や5G基地局の整備促進を図るとともに、スマートファクトリーやMaaSなど未来技術を活用した先導的事例の創出、デジタル人材の確保・育成に取り組みます。 また、医療、環境・エネルギー、バイオなど重点成長分野のさらなる成長・発展に向け、成長産業育成・創出プロジェクトを立ち上げ、イノベーションの創出支援を強化します。 さらには、山口市等と連携して進めているヘルスケア関連産業の創出・育成支援を新たにプロジェクトとして位置づけ、全県的な推進体制の構築や、関連製品・サービスの創出を促進してまいります。 これらに加え、瀬戸内産業の競争力強化に資する産業基盤の整備・充実や、やまぐちR&Dラボの取組を通じたオープンイノベーションの促進、地域中核企業への総合サポートなどに引き続き取り組みます。 また、感染症を契機とした生産拠点の地方移転や、新しい働き方等に対応したサテライトオフィスなど、新たな動きを好機と捉え、企業誘致を積極的に進めます。 さらに、お示しのとおり、国においては、二○五○年を目標とする脱炭素社会の実現を宣言されました。 次期戦略においても、CO2削減・利活用技術等をテーマとしたコンビナート企業間連携や、エネルギー供給の低炭素化等に向けた革新的なイノベーションの創出支援に取り組む考えです。 私は、社会・経済の変革や、国の施策の動向も見据えながら、官民一体となって、本県の強みや特性を生かした産業戦略を推進し、本県の産業力の強化に全力で取り組んでまいります。 次に、冬場の感染拡大に備えた体制の整備についてのお尋ねにお答えします。 新型コロナウイルスの感染者が、連日、全国で二千人を超えるなど、感染が拡大する中、県内でも、十一月以降、四例のクラスター発生等により、百七十一名の感染を確認するなど、感染者数が急増したところです。 このため、私は、クラスターが発生した地域において、緊急の一斉PCR検査を実施するとともに、個別の事案に対して、濃厚接触者等調査をきめ細かく行うなど、早期の封じ込めに全力で取り組んだ結果、現在、新規感染者数は減少し、感染拡大防止に一定の成果を得たものと考えています。 しかしながら、全国的には、感染者は増加傾向にあり、今後、季節性インフルエンザとの同時流行が懸念されるなど、予断を許さない状況であり、引き続き、緊張感を持った対応が必要であると認識しています。 このため、私は、県民が安心して医療を受けることができるよう、さらなる医療提供体制の充実や、感染拡大の大きな要因であるクラスター対策の強化を図ることといたしました。 具体的には、まず、医療提供体制の充実に向けては、インフルエンザの流行期に想定される一日当たり最大約四千人の発熱患者にも対応できるよう、郡市医師会等の御協力をいただき、四百六十七の診療・検査医療機関を指定し、十一月一日から運用を開始しました。 また、休日・夜間においても、安心して医療機関を受診していただけるよう、診療時間の延長や医師の追加配置など、外来診療・検査体制の強化を図ることとしています。 こうした取組により、身近な地域において、速やかに、万全の感染防止対策の下、適切な診療・検査を受けられる体制の、より一層の確保・充実に努めてまいります。 さらに、症状に応じた適切な医療を提供できるよう、高齢者等、重症化リスクの高い方は、重点医療機関への入院を基本とするとともに、入院治療の継続が不要な方は、十一月に開設した宿泊療養施設で療養していただくなど、医療資源を有効に活用した体制を整備したところです。 次に、クラスター対策の強化に向けては、酒類を提供する飲食店でのクラスター事案が多いことから、改めて、事業者に感染拡大予防ガイドラインの徹底を図ることとし、県民に対しては、三密の回避やマスクの着用など、感染防止への意識を一段と高めていただくよう、重ねて、呼びかけてまいります。 また、重症化リスクの高い医療機関等においては、早期に感染拡大を封じ込めるための初動対応が重要であることから、新たに、感染対策に見識のある医師や認定看護師で構成するクラスター対策チームを設置したところです。 このたびの医療機関での発生事案においても、本庁からの保健師等の派遣に加え、対策チームとして、医師二名等を直ちに現地に派遣して、感染経路の把握や感染拡大防止に向けた助言などを行ったところです。 私は、県民の命と健康を守ることが第一との認識の下、さらなる感染拡大に備え、関係機関等と連携し、引き続き、万全の医療提供体制の整備等に全力で取り組んでまいります。 次に、持続可能な農業の実現についてのお尋ねにお答えします。 本県農業は、台風や病害虫等の影響を受けやすい立地環境にあることから、これまで、幾度となく大きな被害が発生してきたものの、その都度、農業者の方々の並々ならぬ御努力により難局を乗り越え、地域経済を支え続けています。 一方、担い手の減少や高齢化が一層深刻化しているため、私は、本県農業が、自然災害に負けず、持続的に発展できるよう、担い手支援日本一の取組や中核経営体を核とした生産構造への転換等を進めてきたところです。 こうした中、本年度は、農業者の努力だけでは防ぎ切れない大量のトビイロウンカの飛来・発生に加え、相次ぐ台風により、本県農業経営の基幹である水稲が甚大な被害を受け、過去に例のない不作となりました。 私自身、農業者の方々から、米作りの意欲が湧かない、もう今年で終わりにしたいなどの切実な声をお聞きしており、極めて深刻な事態と受け止めているところです。 今後、本県農業の持続的発展に向けた歩みを着実に進めていくためには、地域を支えている全ての農業者に、意欲を持って安心して営農を続けていただくことが重要です。 このため、私は、農業者お一人お一人に対し、次年度の作付を後押しする支援を行うとともに、トビイロウンカによる被害を確実に抑えられるよう、技術対策を強化することといたしました。 まず、作付を後押しする支援については、県内産種子も不作となった実態を踏まえ、JA等と連携し、主要品種全ての作付が継続できるよう、県外から優良種子を確保します。 その上で、市町の御協力もいただきながら、主食用米を生産する全農業者を対象とした、過去最大規模の種子代助成を行うこととし、次年度の作付計画に間に合うよう、このたびの補正予算に計上したところです。 次に、技術対策の強化については、効果の高い新たな薬剤の導入に加え、発生量に応じた散布時期の見直しなど、防除体系の改善を進めており、こうした技術情報をSNS等も活用して、速やかに周知徹底します。 また、防除情報をより適切かつ迅速に発信できるよう、国の研究機関とも連携し、本県が独自に開発を進めてきた発生予測技術の精度を高めてまいります。 さらに、地域ごとに相談窓口を設置し、JAが創設した無利子融資の活用や、収入保険など経営安定対策の選択、効率的に防除できるドローンの導入など、経営計画の見直しや実践について、きめ細かな支援を行います。 私は、市町や関係団体との連携を一層強化し、深刻な打撃を受けた本県農業者にしっかりと寄り添いながら、生産意欲の向上を図り、持続可能な農業の実現に向けて、全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)浅原教育長。 〔教育長 浅原司君登壇〕 教育長(浅原司君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 急激な技術革新やグローバル化の進展等により、予測の困難な時代が到来する中、社会の変化に対応し、主体的に未来を切り開いていく力の育成に向けて、高校教育を改善・充実させていくことは、重要な課題であると考えています。 これまで、本県では、中学校卒業者数の減少に伴う学校の小規模化の進行や、生徒のニーズの多様化等に対応するため、第二期県立高校将来構想に基づき、特色ある学校づくりと学校・学科の再編整備を進め、選択幅の広い教育や活力ある教育活動の展開、生徒同士が切磋琢磨する環境づくりなど、より質の高い高校教育の推進に努めてきたところです。 また、県内各地の学校に在籍する生徒たちが、学校や学年の枠を超えて共に学ぶ、高校教育魅力向上事業等により、生徒の大学等への進路希望の実現に向けた取組も進めてきています。 こうした中、今後も少子化が継続的に進行し、十五年後には、中学校を卒業する生徒の数が三千人以上も減少することが見込まれることから、お示しのとおり、学校の小規模化による切磋琢磨する機会の減少や、児童生徒の県外流出の継続といった課題等に対応することが必要となっています。 このような課題に対応するためには、急激な社会情勢の変化も踏まえた高校改革を推進していくことが重要であり、現行の将来構想の終期である令和六年度末を待たずに、十五年後の県立高校のあるべき姿を見据え、それを実現するためのグランドデザインを策定することが急務であると考えています。 そのため、来年度、外部の有識者等で構成する検討協議会を設置し、本県の状況を客観的に分析するとともに、新しい時代に求められる学校像について検討し、広く県民の声もお聞きしながら、中長期的かつ全県的な視点に立って、新たな県立高校の将来構想を策定したいと考えています。 この検討協議会においては、令和四年度から全面実施される新学習指導要領の趣旨や、現在、国で審議されている普通科改革等の新たな提言も踏まえながら、今後の本県高校教育の在り方を協議するとともに、生徒数が大きく減少する中での望ましい学校規模や、再編整備の具体的な進め方について検討してまいります。 さらに、県全体のバランスを考慮した学校・学科の配置や、小中学校段階からの県外流出への対応も視野に入れた中高一貫教育の推進など、特色ある学校づくりについても検討を行いたいと考えています。 県教委といたしましては、新たに策定する次期県立高校将来構想に基づき、高校改革を着実に推進することにより、より質の高い高校教育を提供し、山口県の将来を担う子供たちの育成に全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)谷警察本部長。 〔警察本部長 谷滋行君登壇〕 警察本部長(谷滋行君)県民から信頼され、多様な治安要請に応えることができる、強い県警察の構築に向けた取組についてのお尋ねにお答えいたします。 県内の治安情勢につきましては、議員お示しのとおり、刑法犯認知件数等、統計上の数値から見た治安水準は改善傾向にありますが、女性や子供が被害者となるストーカー、DV、児童虐待等の人身安全関連事案や高齢者を狙ったうそ電話詐欺は後を絶たず、加えて、コロナ禍における生活スタイルが変化する中、サイバー犯罪の相談件数が増加しているなどの状況も見られ、治安環境は依然として厳しい状況にあると認識しております。 こうした状況にあって、県民の期待と信頼に応える強い警察を実現し、県民の安全・安心を守っていくためには、時々の社会の動向や治安情勢に対応した組織を構築していくとともに、関係機関や団体、県民の皆様の御理解・御協力を得ながら、犯罪の起きにくい社会づくりを進めていくことが大変重要であると考えております。 組織の構築について、本年中に実施した取組を一例として申し上げますと、社会経済活動の多様化に伴う捜査活動の複雑・困難化に対応するため、犯罪捜査に大きな役割を果たす犯罪捜査支援業務の充実を図るとともに、交通事故やあおり運転に的確に対応するため、それぞれの担当部署に警察官を増員配置したところです。 今後も、社会の動向や治安情勢を踏まえ、時代に即した組織を構築してまいります。 また、犯罪の起きにくい地域社会の実現については、防犯ボランティアと連携した通学路における見守り活動や、高齢者がうそ電話詐欺に遭わないための関係機関と連携した防犯指導を実施していくほか、様々な媒体を通じた広報啓発活動を通じ、県民の皆様への情報発信や呼びかけを行うなどにより、地域や社会全体での取組を一層推進していく考えです。 こうした活動を推進するに当たっては、まず警察職員一人一人がその職責を自覚し、高い規律と士気を保持して、積極的に県民のための活動に邁進するなど、警察自身が信頼される存在でなければならないことは、議員御指摘のとおりでありますが、本年、県警察における懲戒処分者が四人に上り、県民の期待を損なう事案が発生していることにつきましては、大変重く受け止めております。 今後、各級幹部による面接を通じるなどしたきめ細かな指導や小集団での検討、過去の事例を題材として、非違事案によって生じた取り返しのつかない結果を自らのこととして考えさせる職務倫理教養を繰り返し行うほか、公私にわたる職員の悩み事等の相談への対応にも、一層力を入れるなどにより、非違事案を防止、職員が職務に邁進できる環境づくりに向けた対策に取り組み、県民の皆様方の信頼回復に努めてまいります。 県警察においては、引き続き、県民のためという原点に立ち、組織一丸となって、安全・安心な社会の実現という使命を全うするため、全力を尽くしてまいります。