1 新型コロナウイルス感染症への対応について 2 令和3年度当初予算編成について 3 地域の経済と雇用を支える中小企業への継続的な支援について 4 種子条例の制定について 5 核兵器禁止条約の発効について 6 脱炭素社会の実現に向けた山口県の取組について
議長(柳居俊学君)戸倉多香子さん。 〔戸倉多香子さん登壇〕(拍手) 戸倉多香子さん 皆様、お疲れさまです。民政会の戸倉多香子です。令和二年十一月定例会に当たり、県政の諸課題について、会派を代表して質問させていただきます。 それでは、通告に従い、順次質問させていただきます。 初めに、新型コロナウイルス感染症への対応についてお伺いします。 県内の感染者数は、昨日の時点で三百八十四人となり、県民にとっても大変不安な日々が続いています。全国では、テレビなどで連日、過去最多の感染者数となったなどと報じられ、不安が膨らむばかりですが、山口県におきましては、感染された方の感染経路について、ほぼ把握ができており、クラスターが発生した地域へは、速やかに行政検査を行うなど、知事や職員の皆様をはじめ、関係する様々な部署で、迅速で的確な対応が続いています。 予想以上に長くなってしまったコロナへの対応で、本当にいっときも気の休まる余裕のない毎日だと思いますけれども、医療現場をはじめ、あらゆる分野で、県民の皆様の安心・安全のために、日夜御努力いただいている全ての皆様に、心から感謝申し上げたいと思います。また、感染された皆様におかれましては、心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い御回復をお祈りいたします。 県では、十一月十二日に、令和三年度の国の予算編成等に向けた政府要望と一緒に、新型コロナウイルス感染症に係る特別要望書を提出されました。そこには、検査体制・医療提供体制の整備、学校・高齢者施設等における感染防止の強化、地域の経済と雇用を支える中小企業への支援の充実、そして、新型コロナウイルス感染症に係る地方財政支援と、様々な角度から十三項目について、国に支援や対策を求められております。 その十三項目の二点目、医療提供体制の充実強化には、重点医療機関や入院協力医療機関の感染防止対策や医療従事者が感染した場合の補償など、十分な支援を継続することを求めるだけでなく、発熱患者を受け入れる診療・検査医療機関に対する診療報酬の措置や協力金の支給、スタッフの危険手当の制度化や罹患した場合の休業補償などを求め、さらに、患者を受け入れていなくても、受診控え等により経営が厳しくなっている全ての医療機関への財政支援を求めるなど、大変賛同する内容となっております。 一点目にある、医療機関等の施設内感染を防ぐため、医療関係者への一斉・定期的なPCR等の検査を行う、これを行政検査に位置づけることを求めたPCR等検査体制の強化も、今後の感染拡大防止に向けて、ぜひとも実現してほしい課題です。 また、六点目の保健所機能の充実強化や、七点目、偏見・差別行為等の排除など、どの項目も大変重要な問題であり、これまで県独自の取組として努力してこられた内容でもあると思いますが、これだけ感染症対策が長引いている現状を考えると、もっと強力な国の支援が必要なのは言うまでもありません。 このたびのようなクラスターの発生による感染の急拡大は、県内のいつ、どこで起こってもおかしくありません。県民の不安を取り除くためには、感染が拡大する中でも、必要な人全員が検査を受けられる体制を、県内全ての地域で確保し、速やかに感染の拡大を抑え込む必要があると思います。 また、コロナに対応する地域の医療体制は、コロナ患者の受入れにかかわらず、全ての医療機関の協力により成り立っているため、受診控え等により経営が厳しい全ての医療機関等の経営支援などに、国とも一体となり取り組んでいただきたいと思います。知事の御所見をお伺いいたします。 次に、令和三年度当初予算編成についてお伺いいたします。 質問の最初に取り上げましたとおり、令和二年度は、何をおいても、新型コロナウイルス感染症への対応を優先せざるを得ない年となりました。十月十二日に策定・公表されました、「コロナの時代」に対応するための施策推進方針で、村岡知事は、何よりも県民の命と健康を守ることを最優先に、新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に備え、柔軟かつ万全の対策を講じるとされています。 しかし、新型コロナウイルス感染症の流行が、このように長引き、社会の在り方までも変えることになるとは、誰も予想できなかったと思います。社会経済活動は大きく落ち込み、県づくりの取組も停滞を余儀なくされている現状で、国の動向等へも柔軟に対応しながらの予算編成は、困難を極める作業だと思います。 先般、公表されました令和三年度当初予算編成方針によりますと、本県の財政状況は、今年度の新型コロナウイルス感染症や七月豪雨災害への対応などにより、極めて厳しい状況であり、来年度の財源不足額は、現時点で約七十億円と見込まれています。 一方、国においては、新型コロナウイルス感染症対策に必要な地方創生臨時交付金や緊急包括支援交付金等の財源措置に加え、本年度で期限を迎える、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策や、年金や医療等に係る経費のいわゆる自然増の取扱いなどについては、予算編成過程で検討することとされているなど、地方財政を取り巻く環境は不透明で、予断を許さない状況とのことです。 このような混迷の中にあっても、県民の生活を守り、県内経済や事業を守ることを明確に打ち出し、県民の不安を払拭することが必要です。すっかり落ち込んでしまった県民の気持ちと社会経済活動を段階的に引き上げ、危機から生まれる変化を成長へとつなげる、コロナの時代における「活力みなぎる山口県」の実現を目指して、知事は、令和三年度当初予算の編成に、どのように取り組まれるおつもりか、御所見をお伺いいたします。 次に、地域の経済と雇用を支える中小企業への継続的な支援についてお尋ねいたします。 十一月十六日に発表された七月から九月のGDP速報値では、年率換算二一・四%増と、戦後最悪の落ち込みとなった前期からの反動で、比較可能な一九八○年以降最大の伸び率となったと報じられました。しかし、取り戻したのは、前期の四月から六月期に減った分の半分程度で、回復は力強さを欠いているとされ、依然として厳しい状況が続いています。 特に、中小企業や小規模事業所は、本当に深刻な状況です。政府系金融機関や県の制度融資を活用した実質無利子・無担保の融資による資金繰り支援や、持続化給付金、家賃補助、納税猶予など、様々な支援策で、どうにか事業を継続してきたところも、いよいよ資金繰りが苦しくなっているといわれています。 先日、御夫妻で長く飲食店を経営されていた方に、スーパーでばったりお会いし、長いことお世話になりましたと声をかけられ、閉店を告げられました。年金も少ないので、まだまだ働かなくてはいけないのよと、お店を切り盛りされていた奥様は、介護施設に出られているということでした。腕のいい板前さんだった御主人も、会社勤めに出られているとのことでした。 残念ながら、閉店してしまったお店が増えています。今後は、さらに、廃業を決める事業者が増えると予想されています。事業を継続したくても、さらなる借入れには、返済への不安からちゅうちょしてしまうとの声も聞きます。また、税金や社会保険料の納付の先延ばし制度を利用していても、来年の税金や保険料と同時に猶予分も一緒に払えるかどうか不安だ。赤字であっても、法人税や所得税とは違い、消費税の納付は必要となるという不安の声ばっかり聞きます。 県では、制度融資による資金繰り支援や営業持続化等支援金の支給、専門家派遣事業を活用した相談体制の強化などにより、事業の継続や雇用の維持を支援してこられましたが、まだまだ継続的な支援が必要です。地域の経済と雇用を支える中小企業への継続的な支援に、知事は、どのように取り組まれるのか、お伺いいたします。 次に、種子条例の制定についてお尋ねします。 今国会で、種苗法の改正が議論されておりますが、改めて廃止された主要農作物種子法、いわゆる種子法が担ってきた役割の重要性の認識が高まり、都道府県による種子条例の制定に関心が集まっています。 二○一八年四月で廃止されてしまった種子法は、戦中から戦後にかけて食糧難を経験した日本が、二度と国民を飢えさせないと、一九五二年、昭和二十七年五月です、サンフランシスコ講和条約が発効された翌月、日本が主権を取り戻した直後というタイミングで制定されました。 日本の主要農作物である米、麦、大豆の品質を保ち、それらの優良な種子を安定的に生産し、公共の財産として供給していくことを国の果たすべき役割と定めていた種子法は、都道府県に、栽培用の種子を採種するためにまく種である原種と、原種の大本である原原種を栽培、生産し、採種農家に供給し、そして一般の稲作農家に供給していくことを義務づけていました。そのほかに、その土地の土壌や気候に合った優良な品種を、普及すべき奨励品種として指定することや、種子を生産する圃場の指定や審査も都道府県が担ってきた重要な役割でした。 これらの作業が、経験と根気の要る大変な作業であることは、以前、仲間の県議の皆さんと一緒に美祢市にある美東原種農場を視察させていただき、実感しました。実際の現場を見せてもらって、このような丁寧な作業を、効率を求め、利益を追求する民間事業者に続けていくことができるのか、今も疑問に感じています。 主要農作物の優良な種子の生産及び普及の促進を、これまでどおり維持していくための法的根拠を失い、種子法に代わる種子条例の制定が必要だと考える県議の皆さんとともに、議会のたびに質問を重ねてきましたが、県からは、毎回、県では、米、麦、大豆の原種供給などの具体的な手続等を要綱に定め、優良種子の計画生産と安定供給に取り組んでいます、今後も、国やJA、種子生産農家等と連携しながら、要綱を着実に実行することにより、引き続き、県の役割を適切に果たすことができることから、条例制定は考えていません、こういった答弁が繰り返されています。 しかし、十一月五日に有機農業に取り組む方々が開催された勉強会に参加したところ、講師の山田正彦元農林水産大臣が、要綱は、単なる県庁内部での規則にすぎず、いつでも変えることができてしまう、一方、条例制定は議会の可決が必要で、仮に知事が代わっても引き継がれると話されました。 また、種子条例が、単なる種子法の代わりとしての役割だけではなく、対象の農作物として、米、麦、大豆以外にも地元の伝統野菜を加えたり、地域固有の種や在来種の保存を義務づけたりと、新たな役割も担えることを、ほかの県の条例を例に挙げて教えてくださいました。 さらに、都道府県の知見を外国企業も含めた民間事業者に提供させる規定となっている農業競争力強化支援法第八条第四号も、県が独自に開発した優良な育種知見を守る内容を条例に盛り込むなどにより、一定の規制をかけることができることにも気づかせていただき、大変勇気づけられました。 全国での種子条例制定の広がりは、これからも続くと思います。ほかの県の例を学びながら、地方自治体の条例が持つ強い権限を生かして、子供たちの世代に、安心・安全な食をつないでいきたいと思います。山口県でも、種子条例の制定を検討すべきだと思いますが、知事のお考えをお聞かせください。 次に、核兵器禁止条約の発効についてお尋ねします。 先月二十四日、核兵器の開発、保有、使用等を禁じる核兵器禁止条約を批准した国と地域が、発効に必要な五十に達して、いよいよ来年一月二十二日に条約が発効されることが決まりました。核兵器廃絶運動に携わってきた世界中の人たちから大きな喜びと期待の声が上がっています。 この核兵器禁止条約が発効されることについて、村岡知事は、十月二十七日の会見の場で、記者から、「村岡知事御自身も、かつて被爆地広島市の財政課長でいらっしゃった。知事の見解を改めてお聞かせください」と質問され、知事は、「これまで活動されてこられました被爆者の方々、また関係団体の方々の思いとか行動が実を結んで、核兵器を廃絶したいと、そういうふうに願う信念が国際社会に広まった結果であると受け止めております。改めて核兵器のない平和な世界の実現が、人類共通の願いであるということを認識をしたところです」と答えておられます。 これを受けて、記者から、さらに、日本被団協──日本原水爆被害者団体協議会です、それでつくる連絡会がヒバクシャ国際署名を年末まで延長されることが決まったが、この署名に村岡知事が参加なされる御意思があるのかと尋ねられ、「基本的な考え方は、これまで申し上げてきたとおりであり、核兵器の廃絶自体は強く願っているが、核兵器のない世界に向かっていくための手法については、国においてしっかりと検討を進めていただきたいと思っており、そうした国の取組を尊重する立場に立って、現時点で署名をすることは考えていない」と答えておられます。 これまでも知事は、この議会の場で、先輩議員の質問に対し、同じように答えてこられました。しかし、山口県内で被爆者健康手帳を所持されている方の数は、令和二年三月末時点で二千二百五人、人口比では、広島、長崎に次いで三番目に多くいらっしゃいます。広島や長崎とは比較にならないほど支援策に恵まれない県内の被爆者を、イデオロギーや宗教宗派、思想信条などの違いを全て乗り越えて支援し、核兵器廃絶に向けた平和運動を積極的に進めてこられた山口県原爆被爆者支援センターゆだ苑の岩本晋理事長は、「被爆者は、七十五年以上の月日をかけて、ここに国連での新しい時代を迎えようとしている。被爆者が高齢となり亡くなる方も多い中で、ようやくここまでこぎ着けた。核兵器禁止条約を確かなものとするために、被爆者としてだけではなく人間として、世界中の人たちが力を合わせ、新たな段階への歩みに力を注いでいただきたい」と言われており、村岡知事へも協力を求めたいと話されています。 日本は唯一の戦争被爆国であり、政府は、核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標は共有しているものの、国民の生命と財産を守る責任を有する立場から、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要であり、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、核兵器保有国や核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における橋渡し役を果たし、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていくという考えとされています。条約については、署名しない方針に変更はないということを言われています。 しかし、公明党の山口那津男代表が、条約発効後の締約国会議に日本がオブザーバー参加するなどの検討を求められたように、日本の貢献を求める声は与党内にもあると思います。その中で、国内の都道府県の知事という立場での意思表明は、多ければ多いほど、国際社会における日本の立場への理解を深めることにつながると思います。様々な方面への御配慮もありましょうが、改めて村岡知事に、ヒバクシャ国際署名を御検討いただきたいと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。 最後に、脱炭素社会の実現に向けた山口県の取組についてお尋ねいたします。 まず、ゼロカーボンシティの表明についてです。 前回の九月定例会では、我が会派の井上県議が代表質問に立ち、地球温暖化対策の推進について、エネルギー供給の低炭素化に向けたイノベーションの創出と、ゼロカーボンシティの表明について、県のお考えをお聞きしました。 イノベーションの創出については、大変積極的な御答弁をいただきましたが、二○五○年までにCO2排出実質ゼロを目指すゼロカーボンシティを率先して表明し、県内の自治体を牽引すべきではないかといった井上県議の質問に対しては、現状においては、ゼロカーボンの達成に向けた道筋を見通すことは困難な状況にあり、慎重に対応したいとの御答弁でした。 村岡知事は、本県のCO2排出量の状況は、地球温暖化対策実行計画に基づき、二○○五年度からの十二年間で、計画の目標を上回る約七百五十万トンのCO2削減を実現したものの、それでもなお、約四千二百万トンの排出量に対し森林吸収量は約八十四万トンと大きく乖離しており、この差を解消するには、従来の取組の延長ではない、抜本的な対応策が必要となると説明されました。確かに厳しい状況であることは理解いたしました。 しかし、その状況は既にゼロカーボンシティを表明している自治体であっても同じで、実質ゼロをどう実現するかの具体策まで検討できている自治体はまだ少ないと報道されています。その中で何よりも重要なことは、まずはゼロカーボンを表明することにより、県民とともに高い目標を掲げ、その実現に向けた計画をつくり、それを実行していくことだと、私たち会派では考えています。私たちの会派では、知事に引き続き、このゼロカーボンシティの表明について訴えていこうと話しておりました。 そんな中、菅総理が十月二十六日に開会した臨時国会の所信表明演説で、我が国は、二○五○年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、二○五○年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すと宣言されました。既に百二十以上の国と地域が二○五○年までに実質ゼロの目標を掲げ、世界の動きが加速する中、日本も、これ以上曖昧な姿勢を続けて、温暖化対策に後ろ向きだと批判されたくないと考えられたのでしょうが、この宣言については、私たちも高く評価したいと思います。 国では、早速、地球温暖化対策推進法の見直し議論が始まったようです。また、総理も、国と地方の協議の場を創設する方針を示されています。しかし、山口県では、今年度末に、地球温暖化対策実行計画を改定する予定で、既に作業が進められていると思います。これらの国の大きな動きを受けて、県でも、従来の取組の延長ではない、抜本的な対応策を盛り込んだ実行計画へと、内容を大きく見直す必要があると思います。 そこで、まずは、菅総理の脱炭素宣言に対する知事の受け止めについてお伺いし、地球温暖化対策実行計画の改定に、どのように取り組まれるおつもりなのか、お尋ねしたいと思います。 環境省は、ゼロカーボンシティを表明した自治体への支援を拡大する方針で、CO2排出実質ゼロを達成するための計画づくりも支援するとしています。また、自治体向けの再生可能エネルギー導入支援も、ゼロカーボンシティを優先的に対象にする考えと報道されています。山口県でも、財政支援も含めた様々な優遇策が受けられるよう、ゼロカーボンシティの表明を急ぐべきです。できれば、県内の各市町に呼びかけ、共同で表明していただきたいと思います。 山口県は、早くからゼロエミッション型の地域づくりに取り組み、リデュース、リユース、リサイクルの3Rを推進、リサイクル率は全国一位、レジ袋辞退率全国トップクラス、そして全国初の県内全体のごみ焼却灰のセメント原料化を進めるなど、地球温暖化対策や循環型社会の形成などでは、一歩も二歩も進んだ取組をしてきた実績があります。それらを生かして、引き続き、脱炭素社会の実現に向けた取組において、全国の自治体をリードする山口県であってほしいと思いますが、知事のお考えをお聞かせください。 菅総理の二○五○年カーボンニュートラル宣言により、革新的なイノベーションの推進など、大きな社会変革への期待が膨らんでいます。 村岡知事は、既に前回の井上県議の代表質問で、やまぐち産業イノベーション戦略に環境・エネルギーと水素、この二つを重点成長分野に位置づけ、エネルギー転換・脱炭素化に向けたイノベーションの創出に取り組んでいると答弁されており、山口県のこれらの取組が、二○五○年カーボンニュートラルに大きく貢献できると確信しています。 一方、井上県議も触れられましたが、本県の強みとされる高度な産業集積は、非効率な石炭火力発電所のフェードアウトという大きな課題も抱えています。幾つかの発電方式がある石炭火力発電で、主に利用されているのは蒸気タービンのみで発電する方式で、この蒸気の温度や圧力を上げることで、発電効率が上がるそうです。 一般的には、亜臨界圧(SUB─C)、次に、超臨界圧(SC)、そして超々臨界圧(USC)と効率が高くなっていき、現在の日本では超々臨界圧(USC)が石炭火力の主流となっています。第五次エネルギー基本計画では、非効率な石炭火力を超臨界圧(SC)以下としています。周南コンビナート企業保有の石炭火力は、全てSUB─Cですが、蒸気潜熱の併用により、実質的には、高効率なエネルギー利用を実現しており、廃止対象基準の議論を国に求めたり、一般市民にも理解が広がるよう、官民一体となった取組も必要です。 それらの課題を抱えているからこそ、山口県の強みである瀬戸内沿岸のコンビナート企業は、CO2を分離・回収して地中に貯留するCCSや、分離・回収したCO2を利用するCCUSといったカーボンリサイクルの研究も、産官学で意欲的に進められてきたと思います。現在も進んでいると思います。 菅総理は、二○五○年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すとの宣言に続き、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です」と話されました。 村岡知事は、山口県の強みである基礎素材型を中心とした高度な産業集積や技術開発力を生かして、脱炭素社会の実現に向けて、どのように取り組まれるのかお尋ねいたしまして、私の代表質問を終えたいと思います。 御清聴いただきましてありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)戸倉議員の代表質問にお答えします。 まず、新型コロナウイルス感染症への対応についてです。 県内では、十一月上旬から新型コロナウイルス感染症の新規感染者が相次いで発生し、一か月で約百七十件に上る感染が確認されたところです。 また、一部の地域では、接待を伴う飲食店において、従業員や客等を介して感染が拡大し、クラスターが立て続けに発生したところです。 こうした感染の拡大を防止するためには、クラスターの発生を最小限に抑え、速やかに、感染拡大への連鎖を封じ込めることが必要です。 とりわけ、感染が拡大している地域においては、県民の不安を解消する観点からも、積極的なPCR検査を実施し、安心と安全の確保につなげていくことが重要であると考えています。 このため、私は、県民からの検査に対する相談に対応できるよう、四百六十七の診療・検査医療機関を指定し、身近な医療機関で、相談・診療・検査が実施できる体制を整備するとともに、十四市町十四か所に地域外来・検査センターを設置し、地域における検査体制の充実を図ったところです。 さらに、クラスターの発生時における大量の検査需要にも対応できるよう、環境保健センターや保健所等へのPCR等検査機器の整備や、民間検査機関の活用により、十分な検査体制を確保しています。 こうした検査体制を活用し、このたび、岩国市麻里布地域で実施した緊急一斉検査のように、クラスター発生時には、必要に応じ、地域全体を対象とした、集中的な検査を実施することとしています。 加えて、医療機関や高齢者施設でのクラスターの発生時には、感染の拡大を早期に封じ込めるための初動対応が重要であることから、感染対策に見識のある医師や認定看護師などで構成するクラスター対策チームを設置しているところです。 また、お示しのとおり、受診控え等により経営が厳しい医療機関等への経営支援も重要であると考えています。 このため、経営に影響が生じている医療機関に対しては、国の福祉医療機構による無利子・無担保での優遇融資に加え、県制度融資で、新型コロナウイルス感染症対応資金を創設し、その活用促進に努めているところです。 また、医療機関の経営悪化に歯止めをかけ、持続可能な経営に資するよう、国からの財政支援についても、あらゆる機会を通じて、要望することとしています。 私は、今後とも、県民の命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策に、国と一体となって取り組んでまいります。 次に、令和三年度当初予算編成についてのお尋ねにお答えします。 直面する新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越え、コロナの時代にあっても活力に満ちた山口県の未来を切り開いていくためには、感染拡大の防止を徹底した上で、感染拡大の局面で生まれた社会変革の動きを逃さず、これからの成長につなげていくことが重要です。 このため、社会変革の原動力となるデジタル化の推進など、コロナの時代におけるこれからの県づくりにおいて、特に重点化・加速化すべき取組を定め、今後の進め方を示した、「コロナの時代」に対応するための施策推進方針を先般策定したところです。 来年度当初予算においては、この方針に基づき、感染拡大防止と経済活性化の両立に向けた取組の重点化と県政各分野のデジタル化等の加速化により、県づくりの取組を前進させていくこととしています。 まずは、県民の命と健康を守ることを最優先に、引き続き感染防止対策に取り組むとともに、これとの両立を図りつつ、県民生活の安定確保、県内経済の下支え、消費需要の喚起等により社会経済活動の段階的な引上げを重点的に進めてまいります。 同時に、県づくり全体の取組を加速化していくため、デジタルトランスフォーメーションの推進に向けた、県政の各分野におけるデジタル化の取組を強化していきたいと考えています。 さらに、休暇先でテレワークを行うワーケーションなど、働き方の新しいスタイルの普及・定着を見据えた本県への新たな人の流れの創出・拡大や新たな日常を支える人材の育成等を通じて、社会変革の動きを県政に確実に取り込み、より大きな成果の発現につなげていく考えです。 一方で、感染拡大の影響により、県税収入の大幅な減少が見込まれるなど、本県財政は極めて厳しい状況にあります。 しかしながら、このような状況にあっても、コロナとの長期戦を見据えた対策や、活力に満ちた本県の未来にとって必要となる施策には、これからも継続して、しっかりと取り組んでいかなければなりません。 そのため、来年度以降においても地方が必要となる地方創生臨時交付金等の財源措置や、地方一般財源総額の確保・充実について、先般、国に要請したところです。 そして、来年度の当初予算編成に当たっては、選択と集中の観点に立って、事業の不断の見直しや財源確保等に取り組み、財源不足の解消に努めてまいる考えです。 私としては、コロナ禍というピンチをチャンスに変え、コロナの時代の県づくりの取組を、力強く、スピード感を持って前進させていくため、国の動向等にも注視しながら、来年度の当初予算編成に取り組んでまいります。 次に、中小企業への継続的な支援についてのお尋ねにお答えします。 新型コロナウイルス感染症が、社会経済活動の様々な分野に大きな影響を及ぼす中、地域の経済と雇用を支える中小企業の継続的な事業活動を支援することは、極めて重要です。 こうした認識の下、これまで私は、感染症の影響を受ける中小企業に対し、時々の経営環境に応じた支援策を機動的かつ切れ目なく講じてきたところです。 まず、事業者にとって喫緊の課題である資金繰り支援のため、県制度融資経営安定資金の融資枠を拡大するとともに、国の緊急経済対策を積極的に活用し、保証料負担がない、三年間無利子の新資金を創設しました。 あわせて、感染症の大きな影響を当初から受けている食事提供施設に対する定額給付金の交付や、専門家派遣事業を活用した相談体制の強化も行うなど、中小企業の事業継続に向けた緊急的な支援を実施しました。 その後も、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて変化する経営環境を踏まえ、引き続き、県内経済の下支えを強化するとともに、消費需要の喚起に向けた様々な施策を展開してきました。 県内経済の下支えについては、制度融資の融資枠をさらに拡大したほか、新しい生活様式を踏まえた事業環境の整備や、新製品・新サービスの開発、販路開拓に対する補助制度を創設し、意欲的に取り組む中小企業を支援しました。 消費需要の喚起に向けては、利用者が応援したい店舗のプレミアムつきチケットをクラウドファンディングで購入できる仕組みを構築し、売上げの回復と資金繰り支援を同時に実現する頑張るお店応援プロジェクトを実施しました。 また、新たな交付金制度を創設し、地域の実情に応じて、きめ細かな施策づくりに主体的に取り組む市町を支援しているところです。 こうした中、県内景況は弱い状況が続いているものの、企業倒産は落ち着き、業況判断指数も改善するなど、持ち直しの動きが見られています。 また、雇用情勢においても、解雇、雇い止めの増加は全国より緩やかとなっており、有効求人倍率も全国水準を上回って推移しているなど、着実にこれまでの取組の成果が現れているものと考えています。 一方、県内でも新型コロナウイルスへの集団感染の発生が相次いで確認される状況が続いたことから、感染症をめぐる状況が企業等のマインドに与える影響を含め、今後の動向を注視する必要があります。 私は、これまでの取組を着実に進めるとともに、新型コロナウイルス感染症の感染状況や、経営環境に感染症が与える影響を踏まえながら、必要に応じた支援を迅速に実施し、県内中小企業の事業継続と雇用の維持に取り組んでまいります。 次に、種子条例の制定についてのお尋ねにお答えします。 主要農作物種子法は、農業の戦略物資である種子について、市場の多様なニーズに対応し、品種開発を進める必要から、従来の都道府県による一元的な種子開発、供給体制に加え、民間企業との連携による多様な種子の開発供給を促進するために廃止されました。 あわせて、政府が万全を期すべき事項として、都道府県のこれまでの開発供給体制の維持に必要な財源の確保や、特定の事業者の種子の独占による弊害が生じないよう努めること等を内容とする附帯決議が採択されています。 さらに、法廃止の趣旨の踏まえた技術的助言として発出された事務次官通知では、優良な種子の安定供給や多様なニーズに対応した品種開発を担うなどの都道府県の役割や、種子の品質確保を図ること等の基本方針が示されました。 本県においては、この事務次官通知に沿って、優良品種の決定や原種、原原種の確保、種子生産農家への指導など、具体的な手続を要綱に定め、必要な予算措置を講じながら、JAと連携し、種子法に規定されていた県の責務と同様の取組を着実に行ってきたところです。 私は、本県農業を振興する上で、基幹作物である稲、麦、大豆の優良種子の安定供給は重要と認識しており、引き続き、国やJA、種子生産農家等と連携しながら、要綱を着実に実行することにより、県の役割を適切に果たすことができることから、条例制定を行うことは考えていません。 次に、核兵器禁止条約の発効が決定したことを受け、改めてヒバクシャ国際署名への署名を検討すべきとのお尋ねにお答えします。 私は、核兵器を廃絶し、世界の恒久平和を実現することは、唯一の被爆国である我が国はもとより、世界人類に共通する課題であると認識しています。 このたび、核兵器禁止条約の発効に必要な国と地域が五十に達し、条約の発効が決定したことは、核軍縮や核不拡散に向けた認識が国際社会に広まった結果であり、これまで活動してこられた被爆者や周りで支えてこられた関係団体の方々の御労苦に、敬意を表するものです。 この核兵器禁止条約に関しては、お示しのように、政府は以前から、核兵器廃絶という目標は共有するものの、この条約には参加することなく、核兵器国と非核兵器国の協力の下に現実的・実践的な取組を行うこととしています。 私は、核兵器の廃絶自体は、これを強く願っているところですが、核兵器のない世界に向かっていくための手法については、国の専管事項である安全保障とも密接に関わっていることから、国民の命と平和な暮らしを守る観点で、国において、しっかり検討して進めていただきたいと考えています。 こうしたことから、私としては、あくまでも国の取組を尊重する立場に立って、速やかな核兵器廃絶と全ての国に核兵器禁止条約への加盟を求めるヒバクシャ国際署名に署名することは、現時点においても考えていません。 私は、世界中の人々が望む、核兵器のない平和な世界の実現に向け、国の取組が着実に実を結んでいくことを願っています。 次に、脱炭素社会実現に向けた取組についての数点のお尋ねにお答えします。 まず、菅総理の脱炭素宣言に対する受け止めについてです。 気候変動対策の国際的枠組みであるパリ協定において、世界全体の気温を、産業革命以前と比べて一・五度以内の上昇に抑える努力目標が示され、その達成には、二○五○年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることが必要とされています。 こうした中、菅総理は、所信表明演説において、二○五○年までに脱炭素社会の実現を目指すと宣言され、その実現に向けては、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、総力を挙げて取り組むという方針を出されました。 これは、国内外に向けて、脱炭素社会の実現を目指すことを明確にし、脱炭素化のための取組をこれから加速化していくという強い決意が示されたものと受け止めています。 次に、県の地球温暖化対策実行計画の改定についてです。 地球温暖化の進行に伴う気候変動は、既に県民生活にも大きな影響を及ぼしており、その対策は喫緊の課題となっています。 このため、県では、地球温暖化対策実行計画に基づき、温室効果ガスの排出削減に向けた施策に取り組んできたところです。 現行の計画については、今年度で終期を迎えることから、これまでの取組成果を十分に検証するとともに、国の地球温暖化対策計画や社会経済活動の変化などを踏まえて改定作業を進めているところです。 一方で、国においても、地球温暖化対策計画の見直しが進められており、このたびの脱炭素宣言を踏まえた温室効果ガスの削減目標や、目標達成のための抜本的な対策等が、今後示されるものと思われますが、現時点では、改定時期や見直しの方向性も明らかになっていません。 こうしたことから、二○三○年度までを計画期間とする県の次期計画は、国の現行計画などを基に、専門家や事業者、県民などから幅広い意見も聞きながら、新たな温室効果ガスの削減目標を掲げ、策定する考えです。 そして、新たな目標の達成に向けて、本県の豊富な日射量、森林資源などの地域特性や、環境・エネルギー、水素関連の先端技術を有する企業が集積しているなどの産業特性を生かした温室効果ガス削減対策を計画に盛り込みたいと考えています。 次に、ゼロカーボンシティの表明についてです。 本県では、これまで、ゼロカーボンシティの表明については、慎重に対応してきたところです。 こうした中、菅総理が、二○五○年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、これを受けて、現在、国においては、達成に向けた戦略や具体的方策が検討されているところです。 したがって、本県のゼロカーボンシティの表明については、今後、こうした国の動向等を踏まえながら、引き続き、検討したいと考えています。 私は、今後とも、国等の新たな動きを十分留意するとともに、県民や事業者、関係団体、市町と緊密に連携しながら、脱炭素社会の実現につながる地球温暖化対策に取り組んでまいります。 次に、高度な産業集積や技術開発力を生かした脱炭素社会の実現についてです。 基礎素材型を中心とした高度な産業集積や技術開発力を強みとする本県では、やまぐち産業イノベーション戦略に環境・エネルギー、水素、この二つの分野を重点成長分野に位置づけ、エネルギー転換・脱炭素社会に向けたイノベーションの創出に取り組んできました。 こうした中、国においては、二○五○年までに脱炭素社会の実現を目指すと宣言され、カーボンリサイクルをはじめとした革新的なイノベーションの創出を加速度的に促進するとしています。 私は、脱炭素化に向けた方針が明確に示されたことから、本県の産業特性や強みを踏まえたこれまでの取組をさらに進めていく必要があると考えています。 このため、次期産業イノベーション戦略では、環境・エネルギー、水素を引き続き重点成長分野に位置づけ、CO2の削減や利活用技術等をテーマとしたコンビナート企業間連携や、エネルギー供給の低炭素化等に向けた革新的なイノベーションの創出支援に取り組むこととしています。 具体的には、瀬戸内産業競争力・生産性強化プロジェクトにおいて、まず、脱炭素化に向けた技術検討や技術交流を行う新たな場づくりを進め、コンビナート企業が連携した主体的な取組を促進します。 また、新たに成長産業育成・集積プロジェクトを掲げ、水素やCO2等の貯蔵、輸送、利活用技術の研究開発など、環境負荷低減に向けたイノベーション創出に取り組みます。 さらに、脱炭素社会の実現に向けた国の施策の動向をしっかりと把握し、企業等と連携して、その積極的な活用を図るとともに、必要に応じて、国に対し支援の拡充を求めてまいります。 私は、今後とも、脱炭素社会の実現に向け、官民が一体となって、高度な産業集積や技術開発力という本県の強みを生かしたイノベーションの創出に取り組んでまいります。 ───◆─・──◆──── 議長(柳居俊学君)この際、暫時休憩をいたします。再開は、午後一時の予定でございます。 午前十一時五十九分休憩