1 地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進について 2 橋梁の老朽化対策について 3 ジビエの振興について 4 県産麦の振興について 5 新たな時代の人づくりについて 6 産業教育の充実と人材育成について 7 その他
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(藤生通陽君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第一 一般質問 日程第二 議案第一号から第七十九号まで 副議長(藤生通陽君)日程第一、一般質問を行い、日程第二、議案第一号から第七十九号までを議題とし、質疑の議事を継続します。 国本卓也君。 〔国本卓也君登壇〕(拍手) 国本卓也君 皆さん、こんにちは。自由民主党の国本卓也でございます。 昨年十一月十四日、上関町の長島と本土を結ぶ上関大橋で、橋と道路の継ぎ目に突然二十センチの段差が生じるという損傷事故が発生いたしました。 このニュースに、平成三十年十月に起きた大島大橋損傷事故により、住民の生活に多大な影響を及ぼしたあの日々を思い出した方もおられたのではないかと思います。 我が自由民主党山口県連は、この事故により、上関町民の生活に様々な困難が生じていることに危機感を持ち、現地を訪問し、柏原町長や町関係者から直接、事故後の町民の皆様の生活や経済の状況、課題などについてお聞きし、その内容を取りまとめ、県に対して申入れを行うなど、町民の生活の安定のための、一日も早い全面復旧と地元の思いに寄り添った、きめ細かい対応を求めてまいりました。 県では、私どもの申入れなども踏まえ、対策本部を設置され、専門家による損傷原因の調査や復旧工法の検討、応急工事などによる通行規制の段階的緩和に全力を挙げられるとともに、橋を通行することができない工事用大型車両などを運搬するためにフェリーを運航するなど、支援に取り組んでこられました。 事故発生以来、早期の部分通行から、これまでの県や関係の皆様方の御尽力に、心からの敬意を表するところであります。 県は、今月末を目途に、一般車両の通行規制を解除できるよう、橋梁の固定化工事を完了させた上で、本復旧対策を進めていくこととされています。 上関大橋の一日も早い完全復旧により、町民の皆様が心から安心して生活することができる毎日を取り戻せるよう、この地域を代表する県議会議員として、改めてこの場をお借りして、県をはじめ、関係の皆様の取組を要望する次第であります。 上関大橋、大島大橋と続いた橋梁損傷事故により、県民の生活や地域の経済に大きな影響が生じたことは、大変苦しい経験ではありましたが、地域の安心・安全や経済の活性化に向けて取り組んでいく上で、橋一つ、道路一本という社会基盤が、いかに重要な役割を果たすかということを再認識する機会となりました。 このたびの上関大橋損傷事故への対応で得た教訓を、県民の安心・安全、地域経済の活性化に生かしていかなければならないとの強い決意を胸に、初当選から二年足らずで、三度目の一般質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げ、通告に従い、一般質問をさせていただきます。 まず、地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進についてお尋ねをいたします。 県では、人口減少社会を生き抜く中山間地域の実現を基本目標に、山口県版の小さな拠点である、やまぐち元気生活圏づくりをてこに、いつまでも安心して暮らし続けられる中山間地域づくりに向け、ソフト・ハード両面から様々な取組を進められ、一定の成果を上げてこられました。 また、急激な少子高齢化などにより、自力で集落機能を維持することが困難な地域が増加している実態を踏まえ、平成三十年度からは、こうした疲弊の著しい地域に対し、緊急的な支援を実施する中山間地域振興特別対策事業を創設されるなど、手厚い支援が行われてきたところであります。 私も、地域の皆様方とお話をする中で、地域での取組について、きめ細かい、かゆいところに手の届く支援をいただいていると高い評価を耳にする一方で、予算上の制約から、なかなか採択がかなわないとの声もお聞きしているところであります。 こうした中、昨年十一月に発生した上関大橋損傷事故は、今後の中山間地域対策を進めていく上での大きな課題を投げかけたと感じています。 上関大橋は、上関町長島の住民にとって、都市とつながり、日常生活に必要な機能やサービスを維持するために不可欠な唯一のインフラであります。一年にわたって続くコロナ禍で、ただでさえ地域全体が疲弊する中、今回の事故により、この地域はほかの地域とは比較にならないほどの甚大な影響が生じました。 こうした事故や災害などで痛手を負った地域が生活機能を維持し、活力を取り戻していくためには、ほかの地域とは異なる、配慮ある対応を行っていく必要があると思います。 県では、来年度から地域づくりの機運がある地域を対象に、地域伴走型支援や元気生活圏づくりの中核となる事業の前倒し実施に対する補助により、やまぐち元気生活圏の形成を支援する新たな取組を進めていくこととされています。 自立・持続可能な中山間地域の実現に向け、元気生活圏づくりを強力に進めることは確かに必要ではありますが、この取組を進めるに当たっては、こうした特別な対応が必要な地域に対して、一時的に事業の優先採択など、特別な配慮を行うことが重要であると思います。 そこでお尋ねいたします。中山間地域づくりの推進に当たり、このたびの上関町長島のように、事故や災害により、ほかの地域とは比較して著しい影響を受けた地域などもあることから、それぞれの地域の実情に寄り添った、きめ細やかな対応が必要であると考えますが、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、橋梁の老朽化対策についてお尋ねをいたします。 本県には、上関大橋のような離島架橋をはじめ、四千を超える橋梁があり、人の往来や物流などを支えるライフラインとして、地域産業や県民の暮らしにおいて重要な役割を担っています。 特に、島嶼部に暮らす方々にとって、橋は本土やほかの島とつながる、日常生活に不可欠なインフラであり、通勤・通学はもちろん、通院や買物など、生活のあらゆるシーンを支える社会基盤として機能しています。だからこそ、このたびの上関大橋の事故では、多くの住民の生活に多大な影響が生じたわけですが、島嶼部に暮らす方々だけでなく、全ての県民の安心・安全な暮らしを確保するため、今回のような事故がほかの橋梁でも発生することのないよう、常に万全の対策を講じておく必要があります。 上関大橋は、全国でも数少ない形式の橋梁であり、今回の原因究明には様々な調査や知見が必要とされると伺っていますが、上関大橋での再発防止はもとより、県内全ての橋梁の安全性を確保するためにも、徹底した原因究明を行うとともに、その結果を、今後の橋梁の維持管理や老朽化対策に生かしていっていただきたいと考えています。 今回の損傷事故は、橋と道路の連結部に突如段差が生じるという、住民からすれば、全く予見のできないものであり、通行中の車両がこの段差に衝突したものの、大事に至らなかったことは不幸中の幸いでありました。 高度経済成長期に一斉に建設された橋梁などの老朽化が全国的な課題とされる中、今後も、今回のような予兆のない事故が生じる可能性があることを考えると、橋梁の異状をより早期に発見し、対処できる対策を進めていく必要があると思います。 こうした中、県が来年度、AIによる構造物の健全度診断を行うなど、橋梁のインフラメンテナンスの高度化・効率化を図るとされたことは、高く評価するところであり、デジタル技術の活用などにより、橋梁の状況をこれまで以上に、迅速かつ確実に把握できる体制が早期に整備されることを強く期待しております。 そこでお尋ねいたします。上関大橋損傷事故の対応を踏まえ、県民の安心・安全な暮らしを確保するため、橋梁の老朽化対策に今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、ジビエの振興についてお尋ねをいたします。 県においては、毎年、野生鳥獣による農林業被害の調査をされており、昨年公表された直近の調査結果によれば、本県での農林業被害は、平成二十二年度をピークに減少傾向にあり、昨年度の被害金額は、対前年度比八%減の四億三千六百万円となっております。 しかしながら、生産者の方々の感覚としては、鳥獣被害は年々深刻になっており、被害面積や金額だけでは表せない鳥獣被害対策の実施における心労やコストなどが生産意欲を低下させ、営農継続の大きな支障になっているという切実な声もいただいております。 県においては、これまで地域ぐるみの取組やICTを活用した捕獲わなの導入など、多様な鳥獣被害対策を展開されており、一定の成果が上がっていることは承知しておりますが、私は、鳥獣被害対策においては、防御や駆除を目的とした捕獲だけではなく、食材として捕獲する野生鳥獣、いわゆるジビエを地域資源として位置づけ、地域の活性化に生かしていくという視点を持つことも大切だと考えております。 ジビエの活用という視点は、これまで何度か県議会でも取り上げられてきました。県だけでなく、市町やJA、猟友会などの関係者の皆様の御尽力により、少しずつ広がってきてはいますが、生産者の方々が鳥獣被害の対応に苦慮し、営農の継続が困難になりつつある現状を考えれば、さらにスピード感を持った対応が求められます。 ジビエの振興に当たっては、処理施設の設置に係るコストや衛生管理、猟友会構成員の高齢化など、様々な課題がありますが、私は、最も大きな課題は野生鳥獣の捕殺場所と処理施設の距離が離れていることにあると考えております。 ジビエとは、野生鳥獣の骨や肉のことでありますが、言い換えれば、山野を駆け巡って育った天然の動物たちの肉であり、山の恵みであります。本来はとてもおいしいものであります。 しかしながら、狩猟方法の違いや補殺から放血・解体までの時間が長くなることにより、全身に血が回り、生臭い肉になったり、硬い肉になってしまいます。 そして、現状では、捕獲場所がそのまま捕殺場所となり、処理施設が遠方にあるため、迅速な放血や解体が困難となっているのです。 こうした課題を解決しようと、私の地元田布施町においても、ジビエの処理施設を設置し、野生鳥獣をジビエとして活用しようという強い思いを持った方がおられますが、なかなか実現していません。 処理施設の設置に関しては、地域の協力や理解が不可欠であります。このため、県及び市町、関係団体が連携し、一体となった取組により、県内のどの地域で捕獲をしても、迅速な放血や解体が可能な体制を構築することが、本県ジビエ振興の大きな一歩になると思うのであります。 県内において、ジビエ振興の機運が高まるよう、県の積極的な取組に大いに期待をしているところであります。 そこでお尋ねいたします。野生鳥獣による農林業被害を低減する視点を持ちつつ、野生鳥獣の発生が多い中山間地域の活性化につなげるため、今後、ジビエ振興にどのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、県産麦の振興についてお尋ねをいたします。 昨年十一月、農林水産省が五年に一度実施している農林業センサス調査結果の概数値が公表されました。これによれば、本県の総農家数は二万七千三百四十一戸、基幹的農業従事者数は一万六千六百十三人となっており、五年前に比べて、それぞれ二三%、三一%の減少となっています。 また、基幹的農業従事者のうち六十五歳以上の高齢者が全体の八五%を占め、その平均年齢は七十二歳と、広島県と並んで全国で最も高くなっております。 こうした数値だけを見ると、本県農業の今後を悲観的に受け止めてしまいますが、五年前に比べて集落営農法人など、農業経営体が約八%増加し、一経営体当たりの耕地面積も一〇%以上増加していることを考えれば、高齢になっても離農することなく、農業に関われる仕組みが構築されてきているとも言えます。 私は、これまで県が進めてこられた基盤整備事業と連動した集落営農法人や連合体育成の取組は、若者の就業促進だけではなく、高齢者の皆様が活躍される場の創出にもつながっていることから、引き続き積極的に推進していただきたいと思っております。 さて、集落営農法人の経営は、水田農業を中心とする本県の特性を生かして、米・麦・大豆が中心となっており、それを補完する形で園芸品目が導入されています。 このうち、米や大豆の裏作として冬に栽培される麦は、基盤整備事業による排水対策の徹底や栽培技術の向上などにより、収穫量が増加しており、今では、農業法人の経営に欠かせない品目となっています。 こうした中、ここ数年の麦の豊作もあって、生産量が需要量を大きく上回り、さらに民間事業者の多くが在庫を抱えたことから、本県に限らず、全国的に来年以降の麦の作付面積を減らさざるを得ない状況にあると聞いております。 私の地元でも、現在、麦を生産している法人からは、麦の作付を減らすと、冬場の収益を確保することができなくなり、今後の経営に大きな影響を及ぼしてしまうという声、また、基盤整備事業に向けた話合い活動を進めている地域からは、麦の作付面積を制限されると、営農計画作成の見通しが立たないなどの声が寄せられています。 特に、南周防地域では、事業を活用して、麦の乾燥調製施設の機能強化を行ったばかりであり、麦の品質を低下させることなく、適期での収穫が可能となった結果、面積当たりの販売額が大幅に向上するなど、麦の生産拡大に向けた機運も高まっており、このタイミングでの生産抑制は、農業法人による規模拡大や若者たちの就業を阻害する要因にもなりかねないと懸念しています。 農業に限らず、需要に応じた生産を行うことは、商売の基本ではありますが、麦に関していえば、外国産の割合が圧倒的に多い状況にあることから、国内産に切り替えていくことで、需要の拡大を図ることが可能だと思っております。 基盤整備事業を積極的に展開し、家族農業から集落営農法人を中心とした農業生産構造に転換してきた本県においては、経営の柱となっている麦の振興を図っていくことが何よりも重要だと考えております。 そこでお尋ねいたします。本県農業の推進の中核を担う農業法人の経営において、麦が欠かすことのできない中心的な品目となっている現在、生産者の皆さんが安心して麦を作付できるよう、特に県産麦の需要拡大に向けて、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、新たな時代の人づくりについてお尋ねをいたします。 私は、県議会議員としての五つの約束の一つに、地域の再生と人づくりを掲げています。 地域の再生には、農林水産業の振興、産業力の強化、交流の拡大などが欠かせませんが、それらを担うのは人であります。人づくりなくして地域の再生はなし得ません。そして、若者の流出や減少が課題となっている本県において、人づくりは地域の未来を担う子供や若者の挑戦を支え、応援するような取組として進めることが重要だと考えております。 こうした思いから、私は昨年九月定例会の一般質問でも、新たな時代の人づくりについて質問をさせていただきました。 知事からは、生涯にわたる人づくりの基礎を培う新たな価値を創造する力を育むなど、六つの視点に基づいて取組を進めるとの答弁があり、先日示された、新たな時代の人づくり推進方針の最終案には、それらの視点に基づき、幼児期から社会人までの成長段階に応じた様々な取組が盛り込まれています。 また、来年度当初予算案では、人材育成が大きな柱の一つとされ、乳幼児期からの育ちと学びへの支援、子供の創造力、表現力の育成、グローバル・ローカル双方の視野を育む、グローカル人材の育成など、新たな取組が掲げられています。 こうした施策の着実な推進により、子供や若者がしっかりとした成長の基盤を築き、自分の枠を飛び越えて、世界観を広げていけるよう、そして、未来を担う若い世代が、山口県には質の高い学びの場やチャレンジへの応援があると感じられるよう、県には県内の企業や団体、大学などと様々な主体が一体となって進める、人づくりの取組の推進役を担っていただきたいと大いに期待をしているところであります。 そこでお尋ねいたします。本県の未来を担う若者が、これからの時代を生き抜くことができるよう、新たな時代の人づくり推進方針に基づき、今後の人づくりにどのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、産業教育の充実と人材育成についてお尋ねをいたします。 本県は、瀬戸内コンビナートの立地を背景に、多くの製造業をはじめとする産業が集積する工業県であることから、就職を考える地元の高校生は、これらの産業を将来の就職先として捉える意識も高く、また、企業側もインターンシップやコミュニティ・スクールなどの学校との交流を通じて、地元の産業に携わる人材を育成しようという土壌があります。 私の地元田布施町の田布施農工高校をはじめ、本県には、工業系の県立高校が十二校あり、全国と比べて工業科などの専門高校に在籍する生徒の比率が高く、また、生徒の就職先も製造業が占める割合が大きい状況にあります。 こうして、県内の工業系高校を卒業した多くの生徒が地元企業で活躍されており、優秀な人材の輩出が本県の産業競争力を支えています。 一方で、技術革新や産業構造の変化、グローバル化などの急激な変化の中、専門高校で習得が期待される資質、能力も大きく変わっていくことが想定されます。 産業界からは、専門高校には企業の即戦力として活躍できる人材の育成が期待されており、産業と社会の変化に対応した教育の充実のため、技術革新の進展やデジタルトランスフォーメーションなどを見据えた学習環境の整備が急務となっております。 こうした中、Society5・0時代における地域の産業を支える人材を育成するため、国の補正予算に、専門高校におけるデジタル化対応装置の環境整備に関する費用が計上されたところであり、県教委ではこれに呼応し、工業高校のほか、商業・農業等の専門高校における産業教育装置の大規模な整備を進められるとお伺いをしております。 私は、専門高校に先端技術を学ぶ環境が整備され、産業界とも連携しながら、職業教育の充実が進んでいくことで、地域産業を牽引する人材の育成が図られるとともに、恒常的な人手不足に直面している産業界の人材確保と、県内就職の推進による若者の県内への定着につながっていくことに、大いに期待をしております。 そこでお尋ねいたします。技術革新の進展やDX等を見据えた専門高校における産業教育設備の整備を通じて、今後の産業教育の充実と人材育成にどのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 最後に、一言申し上げます。 昨年九月定例会の一般質問におきまして、私は、デジタル庁創設に向けた動きが加速する国の動きを捉え、本県においても、DX推進のための新しい部局を設置するくらいの意気込みで、山口県のデジタル化を強力に推し進めていただきたいとお願いを申し上げました。 その後、国では、デジタル庁設置法案を柱とするデジタル改革関連六法案が国会に提出される中、本県では一月に山口県デジタル推進本部を設置されるとともに、二月にはその事務局として、全庁を牽引するデジタル推進局を来年度創設することを発表されました。 山口県は、デジタル化を強力に推進していくという県の意気込みが伝わるような、県民にとっても大変分かりやすいメッセージであると思います。 今後、デジタル化による社会変革には一定の時間も必要でしょうし、様々な困難も伴うことと思いますが、新たな組織を中心に、市町や様々な自治体との連携により、本県ならではのデジタル改革を強力に推進され、地域課題の解決、地域の活性化、そして本県の大きな飛躍につなげていただくことを期待をいたしまして、私の一般質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(藤生通陽君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)国本議員の御質問のうち、私からは、新たな時代の人づくりについてのお尋ねにお答えします。 今、私たちが暮らす社会は、急速な技術革新やグローバル化が進展する中で、デジタル化等の社会変革を進め、コロナの時代の新たな日常をつくり上げることが求められるなど、従来の延長線上にはない、将来の予測が困難な時代を迎えています。 こうした中にあって、私は、本県の将来を担う人材の育成が、これまでにも増して重要になると考え、困難な課題にも果敢に挑戦し、乗り越えていくことのできる若者を育てていけるよう、県議会の御意見もお伺いしながら、新たな時代の人づくり推進方針の策定を進めてまいりました。 今後は、お示しのように、方針に掲げた六つの視点に基づいて、ふるさと山口に誇りと愛着を有し、高い志と行動力を持って、地域や社会の課題を自ら発見、他者と協働しながら解決し、新たな価値を創造できる人材、こうした本県が目指す人材の育成に向け、取組を本格化してまいります。 この六つの視点のうち、生涯にわたる人づくりの基礎を培うでは、新年度、乳幼児の育ちと学び支援センターを創設し、幼児教育と保育の質のさらなる向上を図るとともに、様々なツールを活用した体験イベントを開催し、創造力や表現力など、子供たちの豊かな心を育成する取組を進めます。 また、新たな価値を創造する力を育むにおいては、小学生から高校生までの児童生徒を対象に、外国人留学生との対話を通じて、世界に向けた広い視野と身近な問題に目を向ける視点の両方を育むプログラムにより、グローカル人材の育成に取り組んでまいります。 さらに、大学生等が、社会人と共に先端テクノロジーを活用しながら、地域課題の解決につながるソリューションやイノベーションの創出を体験する取組など、新たな学びの場を提供し、課題解決力やAI等の新しい技術を活用する力を育んでまいります。 こうした取組を関係部局が一体となって進めるため、庁内を横断する組織である、新たな時代の人づくり推進室を設置するとともに、外部の有識者から最先端の専門的知見を取り入れる仕組みも設けることで、取組を不断に見直し、内容の充実と質の向上を図っていく考えです。 さらに、大学や企業、関係団体など、幅広い主体と人づくりの目指す方向性や課題認識を共有し、一体となって取り組んでいくため、全県的な推進組織の設置についても検討を行ってまいります。 私は、次代を担う子供や若者たちが、あまねく学びを通じて志を育み、その持てる能力を最大限に発揮して行動していくことができるよう、市町はもとより、学校や地域、団体、企業等と連携・協働しながら、新たな時代の人づくりに全力で取り組んでまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(藤生通陽君)平屋総合企画部長。 〔総合企画部長 平屋隆之君登壇〕 総合企画部長(平屋隆之君)地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進についてのお尋ねにお答えします。 中山間地域においては、急激な人口減少や高齢化に伴い、地域や産業の担い手不足が深刻化し、コミュニティー機能の低下によって、集落機能の維持が困難な地域も生じています。 こうした中山間地域を持続可能なものとするため、県では市町と連携をしながら、集落の枠を超えた広い範囲で、集落機能や日常生活を支え合う、やまぐち元気生活圏の形成を推進しているところです。 一方で、お示しのように、地域はそれぞれ置かれた状況が異なり、地域づくりに取り組む上での課題も一様ではないことから、地域づくりを進めるに当たっては、それぞれの地域の実情を踏まえ、その地域に合った進め方で取り組むことが重要です。 また、長引くコロナ禍により、地域での話合いや行事をはじめ、地域外との交流イベントも中止を余儀なくされるなどの影響が出ており、このことにも十分配慮しながら、地域に寄り添った支援を一層充実してまいりたいと考えています。 こうした中、県では、新年度新たに、元気生活圏の形成に向けて議論を開始する地域を対象として、伴走型の支援を行うとともに、元気生活圏づくりの柱となる事業を前倒して実施する取組を支援することで、生活機能の維持や地域の活性化につなげていく事業をスタートすることとしています。 事業を進めるに当たっては、お示しの上関町のように、特別な事情を抱える地域もあることから、きめ細かく対応していくことが必要であり、市町と緊密に連携し、地域の実情を十分把握しながら、実態に応じた支援を行うなどの柔軟な対応を検討してまいりたいと考えています。 県としては、今後もより多くの地域で、地域づくりの機運が高まり、元気生活圏の形成が着実に進んでいくよう、地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進に積極的に取り組んでまいります。 副議長(藤生通陽君)阿部土木建築部長。 〔土木建築部長 阿部雅昭君登壇〕 土木建築部長(阿部雅昭君)橋梁の老朽化対策についてのお尋ねにお答えします。 橋梁は、道路ネットワークの形成に欠かせない施設であり、社会経済活動や県民生活を支える重要な社会基盤として、恒常的な機能の発揮が求められています。 このため、県では、これまで、橋梁長寿命化計画に基づき、更新費用の平準化を図るなど、橋梁の効率的な維持管理や老朽化対策を推進してきたところです。 こうした中、昨年十一月に上関大橋の損傷が発生したことから、検討会議を設置し、原因の究明や復旧対策などの検討を進めていますが、お示しのとおり、県内全ての橋梁の安全を確保するためには、今回の会議の検討結果を生かして、今後の橋梁の維持管理や老朽化対策を進めていく必要があると考えています。 このため、離島架橋や特殊な構造を持つ橋梁等において、来年度から、新たにデジタル技術を活用して、伸縮計やひずみゲージによる橋全体の定期的な変位計測や主要部材の損傷・補修履歴、点検結果などのデータベース化を図り、異状箇所の早期発見・早期対応に取り組む考えです。 さらに、県が管理する橋梁の約六割を占める小規模橋梁において、AIによる点検・診断システムの構築を進め、点検の効率化と診断精度の向上を図ることにより、安全性・信頼性の確保に努めてまいります。 また、橋梁に関する情報は、県民が安心した生活を送る上で欠かせないものであることから、今後、橋の重要性や損傷の程度による公表基準を定め、適時、点検結果を公表する考えです。 県としては、今後とも橋梁の維持管理や老朽化対策を計画的かつ効率的に進めるとともに、デジタル技術を活用することにより、異状を早期に発見し、速やかに対応する、日本一の安心インフラやまぐちの実現につなげてまいります。 副議長(藤生通陽君)松岡農林水産部長。 〔農林水産部長 松岡正憲君登壇〕 農林水産部長(松岡正憲君)ジビエの振興についてのお尋ねにお答えします。 野生鳥獣による農林業被害が深刻化する中、中山間地域の活性化を図るためには、捕獲対策の強化に加え、ジビエを地域資源として有効活用することが重要であることから、市町等と連携し、ジビエの普及や利用拡大を図ってきたところです。 この結果、県内に処理施設が十五か所設置され、販売店が、道の駅を中心に四十店舗に増加するなど、県内各地で取組が進んでいます。 一方で、捕獲されたイノシシ等の利用率は五%にとどまっており、さらなる有効活用を図るためには、お示しのように、捕殺場所に近接して処理施設を設置するなど、適切な処理体制を構築し、意欲ある方々の取組を後押しする必要があります。 このため、県では、市町や猟友会など、関係団体と一体となって、地域の実情に応じた処理施設の整備を進めるとともに、整備後の円滑な運営やジビエの有効活用など、地域の主体的な取組を積極的に支援することとしています。 具体的には、まず、地域の合意形成に向けた勉強会等を開催するとともに、施設整備に必要な構想の策定を進めます。 次に、施設整備に向けて、規模や機能、設置場所等が適切なものとなるよう、衛生管理等の専門家の意見を踏まえた指導・助言を行い、国の交付金等を活用しながら、施設や機器の導入を図ります。 また、施設の経営が安定するよう、六次産業化・農商工連携サポートセンターとも連携し、新商品開発や販路開拓など支援します。 県としては、鳥獣被害を低減し、中山間地域の活性化につながるよう、市町や関係団体等と一体となって、地域の主体的な取組を積極的に支援しながら、ジビエの振興に取り組んでまいります。 次に、県産麦の振興についてのお尋ねにお答えします。 国において、麦は食料自給率向上に不可欠な品目とされ、本県でも、集落営農法人等の経営を支える重要な作物であることから、需要拡大と作付拡大を一体的に進めてきました。 この結果、パンやみそなど、県産麦の需要量は大幅に増加し、需要に応える生産も可能となったところです。 こうした中、全国的な方策により、需給バランスが崩れたことから、本県においても、品種転換等の緊急対策を講じるとともに、国に対し、全国段階での需給調整等について、様々な機会を捉えて要望しています。 一方、今後、法人等の経営安定のためには、麦の作付拡大が欠かせないことから、国の動きを待つことなく、本県独自の対策にも積極的に取り組んでいく必要があります。 このため、JA等と連携し、さらなる需要拡大と実需者の求める高品質生産に向けた取組を強化することとしています。 まず、需要拡大に向けては、みそ等の加工業者に対し、県産麦の一層の利用を働きかけるほか、販売協力店等と連携した販売促進イベント等を通じ、商品の魅力をPRします。 また、新たな需要を創出するため、六次産業化・農商工連携サポートセンターと連携し、県産麦を活用する事業者の商品開発から販路開拓までの一貫した取組を支援します。 次に、高品質生産に向けては、生産物の分析結果に基づく栽培改善など、きめ細かな指導・助言を行うとともに、加工適性の高い新品種の導入を進めます。 県としては、生産者が安心して麦を作付できるよう、引き続き、国への要望を行うとともに、JA等と緊密に連携しながら、県産麦の需要拡大にしっかりと取り組んでまいります。 副議長(藤生通陽君)浅原教育長。 〔教育長 浅原司君登壇〕 教育長(浅原司君)産業教育の充実と人材育成についてのお尋ねにお答えします。 近年の科学技術の進展等に伴い、専門高校では、産業界で必要とされる専門知識・技術の高度化への対応と実践的な知識・技術の習得が求められており、先端技術を学ぶ環境の整備や産業界等と連携した教育活動の充実を図ることは重要であると考えています。 このため、県教委では、これまでも小型3Dプリンターなどの整備を行うとともに、多様な知識・経験を持つ企業の熟練技能者等を講師とした技術講習会や地元企業等が有する施設・設備などを活用した学習活動を進めてきたところです。 また、今年度から実施している、やまぐちハイスクールブランド創出事業において、ICTも活用しながら、協働して模擬会社、山口魅来を設立し、地元企業と連携して商品開発に取り組むなど、新たな価値を創出することのできる人材の育成にも取り組んでいます。 こうした中、専門高校等においては、Society5・0時代における地域の産業を支える人材の育成に向け、新たに最先端のデジタル化に対応した産業教育装置を整備することで、従来の施設・設備では実現できなかった教育活動を展開することとしています。 具体的には、例えば、工業高校では、最新の金属造形3Dプリンターやマシニングセンターを整備することにより、プログラミング技術の習得を図るとともに、精密かつ複雑な形状の機械加工を行ってまいります。 また、農業高校では、インターネットの地図情報を活用して、農薬散布ができるドローンなどのスマート農業装置を整備し、先進農家と連携しながら、実践的な実施を行うこととしています。 さらに、地域と協働して、地域課題の解決につながる教育活動を展開している田布施農工高校では、電子制御水理実験装置を整備することで、科学的根拠を踏まえた防災活動を行うこととしており、こうした活動を通じて、卒業後、様々な企業等において、即戦力として活躍できる生徒の育成を図ってまいります。 県教委といたしましては、地域や産業界等と連携しながら、専門高校における産業教育の一層の充実を図り、本県産業を牽引することのできる人材の育成に努めてまいります。