1 地方への人の流れの創出に向けた取組について 2 DXの推進による産業競争力の強化について 3 畜産振興について 4 建設産業におけるDXの推進について 5 観光振興について 6 児童虐待防止の取組強化について 7 先端技術を活用した警察活動の推進について 8 その他
副議長(藤生通陽君)山手康弘君。 〔山手康弘君登壇〕(拍手) 山手康弘君 皆様、こんにちは。自由民主党の山手康弘です。令和三年二月定例議会、いわゆる予算議会の一般質問のトリのお役をお務めさせていただきます。大変光栄でございます。 それでは、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。 まず最初に、地方への人の流れの創出に向けた取組についてお尋ねいたします。 先日、中間層の経済余力、東京最下位という記事を目にいたしました。コロナの影響で東京の景気がそこまで落ち込んでいるのかといぶかしく思いながら記事を読みましたが、そうではなく、いわゆる可処分所得から食費や住宅費、通勤時間に伴う機会費用を差し引いて計算すると、娯楽などに回せる経済余力は、東京が最下位になるということだそうです。 トップは三重県で一世帯当たり約二十四万円、東京都は約十三万五千円、山口県は約二十万円で二十二位となっていました。大都市圏では家賃が高く通勤時間も長いため、娯楽は多いが生活は大変と常々言われておりますが、こうして数値として示されると説得力があると興味深く感じたところです。 人口減少が進む本県にとって、地方への人の流れをつくり出していくことは重要な課題であります。コロナ禍を契機に、テレワークによる場所を選ばない働き方が広まり、地方移住への関心が高まっていると言われています。長く続いてきた東京都への転入超過は、昨年五月に転出超過へと転じ、その傾向は今も続いております。人の流れの変化の兆しは確かに見えており、この機を逃すことはできません。 一方で、その転出先は、神奈川県や埼玉県などの近隣県が大半です。本県の転出超過の状況は、昨年は三千四百十九人であり、コロナ以前である一昨年の三千六百五十九人と比べれば減少はしたものの、僅かにとどまっているのも事実です。 こうした中、県は次年度の予算の柱に新たな人の流れの創出を掲げ、地方創生テレワークやワーケーションといった試みに取り組もうとされておられます。転職せずとも山口県に移住して、伸び伸びと子育てしながら仕事ができる。例えばですが、こうした選択肢を県外の方に提示し、山口県に来てもらおうという取組に、私としても大いに期待をしておりますし、広島県と接する県東部地域の議員として心強く感じております。 一方、県内地域に目を向けますと、先月、岩国市にも「Class Biz.」という、コワーキングスペースがオープンいたしました。テレワークのできるセキュリティーの高い通信環境が整った施設です。県内にはこうしたスペースが各地にあり、県の取組としっかりと連携させていく必要があると思っております。県と市町とが一体となって、県全体の情報を束ね、県外に向けて大きく発信することで、転出超過の改善につなげていっていただきたいと思います。 そこでお尋ねいたします。地方への人の流れを本県へと結びつけていくため、テレワークを活用した移住の促進やワーケーションの推進などに、どのように取り組んでいかれるのか、県の御所見をお伺いいたします。 次に、デジタルトランスフォーメーションの推進による産業競争力の強化についてお尋ねいたします。 県においては、次年度からの本格的なデジタル改革のスタートに向けて、力強く取り組んでおられます。特に、産業分野においては、通信事業者と連携したローカル5G環境の整備による工場間データ通信の実証や、生産現場におけるAIやIoT技術を活用した高度化、いわゆるスマートファクトリー化などに、積極的に取り組んでおられます。 本県の活力の基盤は製造業を中心とした産業の力であり、未来技術の活用により製造業の生産性を向上させ、付加価値を高める取組に、産業戦略として重点的に取り組んでこられたことを、私としても高く評価をしております。 また今般、最終案を示された改訂版の産業イノベーション戦略においても、地域産業のデジタルトランスフォーメーションの加速化をプロジェクトに掲げて取り組むこととされており、デジタル化を進めることで本県の産業力がさらにバージョンアップされることに、大いに期待をしているところです。 一方で、経産省が昨年六月に発表した、製造業を巡る動向と今後の課題という報告書によりますと、製造工程のデータを収集したり、顧客の声を生産改善に活用している企業の割合はあまり伸びておらず、デジタル化やデータ活用の取組は十分に進んでいないと指摘されております。 本県においては、冒頭で触れましたように、未来技術活用などによる生産現場のモデル構築を進められておられますが、総じて見れば、この指摘は本県にも当てはまる的を射たものではないでしょうか。牽引役となるDXモデルをしっかり構築しつつ、現状の底上げも支援する、双方向の取組によるデジタル化を進めていく必要があると思います。 また広くDXの実現を図っていくには、それを担う人材が欠かせませんが、そのデジタル人材は全国的にも不足していると言われております。DXを強力に推進する人材の確保が課題と経営者の方の声をよく耳にしております。そして、その人材獲得競争はますます激しくなっていくのです。県においては、現場の不安の声にもしっかりと応えるため、産業分野におけるデジタル人材の確保・育成には、特に注力して取り組んでいただきたいと思います。 そこでお尋ねいたします。新たな産業戦略においては、デジタルトランスフォーメーションの推進により産業競争力の強化を図るため、どのように取り組んでいかれるのか、県の御所見をお伺いいたします。 次に、畜産振興についてお尋ねいたします。 二○二一年、今年のえとは、牛でありますが、牛は十二支の二番目であることから、ね年にまいた種が芽を出して成長する時期とされ、結果につながる道をこつこつとつくり、基礎を積み上げる時期とされています。このようにうし年には物事を着実に進めるのに適したイメージがありますが、私はうし年の今年こそ畜産振興の取組を推進するうってつけの年だと考えております。 私の地元岩国市周東町は、良質な和牛の産地として知られておりますが、県内にはそのほかにも和牛産地が多数あり、それぞれが独自にブランド戦略を展開し、販売促進に取り組んでこられました。畜産農家のたゆまぬ努力によって各地で良質な和牛が生産されてきましたが、各産地の規模は比較的小さく、全国的にはあまり知名度が高くないという課題を抱えておりました。 このような中、二○一七年、和牛のオリンピックと呼ばれる全国和牛能力共進会において、本県の代表牛が肉牛の部で三位に輝きました。本県畜産農家の高い技術力が認められたのであります。私も仙台市の会場で応援しましたが、全国三位というすばらしい結果に、仲間の議員と肩をたたき合って喜んだのを覚えております。この好成績をきっかけに、畜産関係者の間では、本県の優れた和牛を全国に向けて積極的に売り込んでいこうという機運が高まり、県外における知名度向上を図るため、県統一ブランドの創設を模索する動きが始まりました。 そこから、生産者団体をはじめ、食肉関連団体、県などが議論に議論を重ね、そしてついに、昨年十二月、県産和牛統一ブランド、やまぐち和牛燦がお披露目されることになったのです。燦は、県産和牛の肉のうち肉質等級が四以上の良質なもののみが認定される、言わば本県畜産農家の高い技術力の結晶であり、今後全国できらめく存在になるだろうと確信をしております。 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、和牛は一時期、需要が大きく減少していましたが、現在は内食需要の高まりを受け、需要は以前の水準を取り戻しています。最近では外食を避け、自宅でリッチな食材を使って食事を楽しみたいと考える消費者も増えており、品質の高い本県の和牛にも潜在的な大きな需要があるはずです。今こそ良質な県産和牛を全国に向けて発信し、認知度を高め、販路を拡大していく大きなチャンスなのであります。 そこでお尋ねいたします。県産和牛統一ブランドの創設を契機として、県は今後、どのように畜産振興に取り組んでいくのか、御所見をお伺いいたします。 次に、建設産業におけるDXの推進についてお尋ねいたします。 新型コロナウイルスが流行し始めて、はや一年を過ぎたところです。 昨年の六月議会において私は、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、県民の生命・財産を守る防災・減災対策をはじめ、県民生活に欠かすことのできない公共事業は、引き続き着実に推進していただきたいとの質問をしたところ、県におかれましては、入札・契約手続の短縮や、現場管理人が兼務できる工事件数の緩和などの対応をされ、公共事業の推進が着実に行われていることに感謝を申し上げます。 新型コロナウイルスの影響を大きく受ける業種・業界は、依然として厳しい状況下にあります。建設業界においては、公共事業など比較的安定した受注を得ていますが、慢性的な人手不足は続いているのが現状です。 そのような中、業種の垣根を越え、ウイルスの影響で運営状況が厳しい業種から、慢性的な人手不足が続く建設業界へ人材を派遣し、お互いに助け合いながら、公共事業の施工を行っている現場を先日拝見し、新型コロナウイルスが終息しても、建設業界では、慢性的な人手不足が予測されるのではないかと懸念をしているところです。 そこで、こうした建設産業の未来のために、人材・人手不足を解消していくためには、建設産業におけるDXの推進が必要不可欠であると考えております。 現場を拝見すると、自動のレーザー測量器を用い、作業員一人で基準点を決め、手持ちの端末を用いながらGPSで測量したり、ドローンを用いてレーザー測量を行い、ソフトで解析することにより、河川の堆積土砂量が算出でき、三次元の設計の情報をインプットした重機がしゅんせつ作業を行うなど、その技術には目をみはるものがあります。もちろん全ての作業が建設ICTで行われるわけではありませんが、こうした技術の利活用が広く普及すれば、建設業界における人手不足の解消や、工期の短縮に大きく寄与するのではないかと思っています。 また、働き方改革の観点で言えば、土木での工事は、雨天などの天候に左右されることも多いため、現場や天候の状況によっては、工期を延長するなど、引き続き柔軟な対応をお願いしたいと思いますが、建設業界のDXの推進は作業員の休暇取得の促進など、業界の働き方改革の推進にもつながると考えているところです。 そこでお尋ねいたします。公共事業を含め、建設産業の慢性的な人手不足の解消や作業効率の向上、働き方改革に大きく資する、建設産業におけるDXの推進に、県は今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、観光振興についてお尋ねいたします。 国の観光需要喚起策「Go To トラベル事業」が、新型コロナウイルスの第三波と言われる感染拡大を受け、昨年十二月二十八日から全国で一時的に停止されました。 苦境に陥った観光産業の事業継続、地域経済の循環を支えてきた需要喚起策が、年末年始の旅行シーズンを直撃するタイミングで停止となり、光が差し始めていた旅行市場に再び暗雲が垂れ込めています。 こうした中、本県独自に実施したプレミアム宿泊券は一月十五日までという期限の中、県民の利用も多く、無事に終了し、宿泊事業者や利用者からは大変な好評であったと聞いております。 この一連の需要喚起策がなければ、旅行しなかった方も多いはずで、新たに近場を旅する観光需要の掘り起こしに成功したと言えると思います。 実質無利子・無担保融資などの政策支援が経済を下支えした結果、全国的にはコロナ禍においても、昨年は企業倒産が減少していましたが、この反面、観光を支える宿泊業については前年比一・五倍と大幅に増加しました。 さらに、追い打ちをかけるように、緊急事態宣言が再延長され、このままではいずれ宿泊施設の廃業が相次ぐという事態にもなりかねません。 観光産業は、宿泊業や旅行業のみならず、食材納入業者など、旅館・ホテルの取引業者、貸切りバス、タクシー、フェリー、土産物店、飲食店など極めて裾野の広い産業で、観光産業を支援することは地方経済を支えることにつながります。 平日への旅行需要の分散化や需要喚起策終了後の旅行需要の反動減、旅行者意識の変化など、これまでの需要喚起策の実施を通じて明らかになった課題も踏まえて、しっかりと支援していただくことにより、民需主導の経済の好循環を実現していかなければなりません。 また、先日発表された都道府県魅力度ランキングでは、山口県は魅力度が三十二位にとどまりました。過去一年間に山口県についての情報や話題を見たり聞いたりしたかという情報接触度に至っては四十三位と、ほとんど本県の情報には接していないという事実が明らかになりました。つまり本県には、情報発信面において依然として課題があるのです。 さらには、東京都が実施したビデオ会議システムZoomを使っての観光地を巡るオンラインツアーが好調であったことからも分かるように、今後は、デジタル技術と観光資源の融合により、これまでの態様にとらわれない新たな観光の在り方を生み出していく必要があると思います。 まずは、新型コロナウイルスの感染拡大をしっかりと抑えないことには、旅行需要の本格的な回復はあり得ず、現下の状況を踏まえると、不要不急の外出は避けることはやむを得ませんが、不急はともかくとして、観光は決して不要ではありません。 旅を通じて知的好奇心を満足させ、心を癒やし、心身を解放させることは、明日への活力にもつながるものだと思います。 そこでお尋ねいたします。落ち込んだ観光需要の喚起を図るとともに、ウイズコロナの時代における新たな観光振興について、今後どのように取り組んでいくのか、県の御所見をお伺いいたします。 次に、児童虐待防止の取組強化についてお尋ねいたします。 今年の一月で、千葉県野田市の小学四年生の女の子が虐待を受けて死亡した事件から二年が経過しました。私は当時、救いを求める小さな手に、周りの大人が手を差し伸べ、救うことができなかったことに、大変胸を痛めました。この事件を風化させず、二度と同じようなことが繰り返されないようにしなければなりません。 国においては、こうした重大事件が繰り返される状況を受け、児童虐待防止対策の抜本的強化などに取り組み、本県においても、発生予防や早期発見、発生時の迅速・的確な対応など、切れ目のない支援に向けた体制を着実に整備してこられました。 しかしながら、今でも、全国では、深刻な虐待事件が後を絶たず、また、全国の警察が虐待の疑いで児童相談所に通告した子供の数が、昨年、初めて十万人を超え、本県も前年から六十六人多い七百三十五人になるなど、児童虐待は増加傾向が続いております。 また、コロナ禍の長期化が、虐待増加に拍車をかけることも懸念されます。生活への不安やストレスの増加から心理的虐待の増加が目立ち始めており、家族以外との接触機会の減少により潜在化が進むなど、子供を取り巻く環境はますます厳しさを増しています。 このため私は、子供の健やかな成長と安全・安心な地域社会の実現に向け、子供の虐待防止に向けた取組を一層強化する必要があると考えております。 そのためには、子供の虐待防止に中心的な役割を担う、児童相談所への体制強化が必要になります。 年々増加する虐待相談件数への対応や、子供の安全を守る一時保護等のちゅうちょない介入、コロナに伴う対応の増加などには、児童福祉司などの専門職の増員が不可欠であり、また、多様化、複雑化する相談内容に対応できるよう、研修などを通じて職員の専門性を高めるなど、職員体制の強化に取り組む必要があります。また、子供の安全確保には、関係機関との連携が重要なため、市町との情報共有などの取組を進めることも必要になります。 そこでお尋ねいたします。子供の健やかな成長と安全・安心な地域社会の実現に向け、児童相談所の体制強化など、児童虐待防止の取組強化が必要と考えておりますが、県では、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 また、虐待の潜在化や深刻化への対応に向けては、学校や警察との連携が重要さを増しています。 学校については、子供の小さな変化に気づきやすく、また、子供自らが相談できる貴重な場となることから、発生予防や早期発見に重要な役割を果たします。このため、こうした情報を地域の関係機関と共有することが重要となりますが、まだまだ十分とは言えません。子供への虐待が疑われる気づきなどを、学校から児童相談所や市町にちゅうちょなく情報提供するなど、さらなる連携の強化が求められます。 警察については、中央児童相談所に警察官を配置し、児童相談所と警察署間の連携が強化されたことで、警察署との円滑な連絡調整や問題家庭への同行訪問、訓練や研修での連携など、児童相談所の対応力向上に大きな成果を上げています。 子供の安全確保に向けては、警察との円滑な連携が欠かせないことから、引き続き、児童相談所をはじめとする関係機関との連携強化に取り組んでいただきたいと思います。 そこでお尋ねいたします。児童相談所との連携強化など、児童虐待防止の取組強化について、今後どのように取り組まれるのか、教育長及び県警本部長の御所見をお伺いいたします。 最後に、先端技術を活用した警察活動の推進についてお尋ねいたします。 近年の刑法犯の認知件数や交通事故発生件数につきましては、いずれも減少傾向にあります。このことは、県民が社会の秩序やルールを遵守し、警察が地域や関係機関等と一体となって様々な対策に着実に取り組んできた成果が現れているものと感じております。 しかし、治安状況の改善に関する県民の要望は依然として高く、高齢者を狙い撃ちにするうそ電話詐欺や女性や子供が被害に遭いやすいDVやストーカーによる被害など、身近な犯罪に対する不安の解消が課題となっています。 人口減少や急激な高齢化の進展といった社会構造の変化に加えて、現在では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、新しい生活様式の実践や社会におけるデジタル化の急激な進展など、これまでの日常生活が大きく変化しつつあります。 これは警察を取り巻く情勢についても例外ではなく、社会の変化にさらされながらも、行っていくべき警察の活動や技術はしっかりと受け継ぎながら、近年発展が著しい人工知能等の先端技術を積極的に導入していくことが必要となります。業務の抜本的な高度化・効率化を図り、情勢の変化に的確に対応した警察活動による安全・安心な地域社会の実現が求められています。 実際に、AIやIoTといった先端技術の急速な進展は、デジタルトランスフォーメーションが進むことによって、交通や医療、公共サービスなどの幅広い分野に広がっていくことが期待されております。 警察では現在、犯罪の発生予測や捜査活動にAIやビッグデータを活用する検討が進められており、新たな先端技術の活用を進めることは、その業務の高度化、迅速化、効率化に加えて、犯罪や交通事故の未然防止など、県民の安全・安心の確保につながる重要な取組となることから、デジタルトランスフォーメーションを強力に推進し、県民を守るための対策をより一層進めていただきたいと願っております。 そこでお尋ねいたします。犯罪や交通事故から県民を守り、安全・安心な地域社会を実現するため、先端技術を活用した警察活動の推進に、どのように取り組まれるのか、警察本部長の御所見をお伺いいたしまして、私の一般質問を終わります。 御清聴誠にありがとうございました。(拍手) 副議長(藤生通陽君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)山手議員の御質問にお答えします。 まず、地方への人の流れの創出に向けた取組についてです。 コロナ禍を契機に、テレワークによる場所や時間にとらわれない働き方の新しいスタイルが普及し、企業においても、都市部の人口集中リスクを回避するため、地方へ従業員や会社機能を分散する動きが現れています。 私は、こうした働き方や生活に対する社会全体の意識の変化と、地方への関心の高まりをしっかりと捉え、これを本県への新たな人の流れへつなげていかなければならないと考えています。 その実現に向けて、来年度からは、お示しのように、首都圏企業等をターゲットとしたテレワークとワーケーションの誘致に積極的に取り組んでまいります。 誘致をめぐっては、全国の自治体間における競争も激しさを増しつつあり、その中で山口県を選択してもらうためには、県全体で魅力的な施設やサービスを提供するとともに、効果的な情報発信を行う必要があると考えています。 このため、全県的な推進体制として、現在、移住促進に取り組んでいる「住んでみぃね!ぶちええ山口」県民会議に、新たにテレワーク・ワーケーション専門部会を設置し、市町や関係団体と情報共有を図りながら、受入れ体制の整備・充実などに取り組んでいくこととしています。 この体制の下、県においては、都市部の仕事を地方で行う転職なき移住に向けた地方創生テレワークを進めるため、モデルオフィスを全国で初めて県庁に開設をし、ここを起点に、国の移住支援金も活用しながら、都市部からのテレワーカーの受入れを県内へ波及させてまいります。 また、本県の空の玄関口である山口宇部空港内には、新たにワーケーションに取り組む都市部企業と県内の受入れ地域を結びつける拠点施設を設け、専門の案内人による、相談から案内までの一貫したサポートを提供するとともに、各地域での魅力ある受入れプログラムの開発を支援してまいります。 さらに、県内の関連施設とも連携して、予約機能を備えた総合案内サイトを開設するほか、テレワークに関心の高い首都圏等の企業とパートナー関係を構築し、これを生かして、より訴求力の高いプロモーション活動を展開していきたいと考えています。 私は、今後、市町や関係団体等と連携しながら、地方創生テレワークとワーケーションを一体的に推進することにより、本県への移住促進や関係人口の創出・拡大に確実につなげていくことができるよう、全力で取り組んでまいります。 次に、デジタルトランスフォーメーションの推進による産業競争力の強化についてのお尋ねにお答えします。 私は、本県の活力源である製造業を中心とした産業の競争力を強化するためには、経済・雇用を牽引する瀬戸内基幹企業や地域中核企業等において、生産性向上や付加価値の創出に資するデジタル化を積極的に進めることが必要と考えています。 このため、次期産業戦略において、新たに地域産業デジタルトランスフォーメーション加速化プロジェクトを掲げ、未来技術を活用した先導的プロジェクトの創出に取り組むとともに、DXの推進を担うデジタル人材の育成・確保を図ることとしています。 まず、未来技術を活用した先導的プロジェクトの創出では、大手通信事業者との連携の下、ローカル5Gを活用した無人化工場の実現を目指す実証実験や、AI等を活用した設備等の異常検知など、製造業の高度化に向けたファクトリーモデルの構築を進め、その成果を広く普及してまいります。 また、来年度からは、AIやドローン、5Gなど未来技術の導入・利活用をさらに促すため、実践・実証フィールドを構築し、企業の課題やニーズに応じ、導入手法の検討から実証までを総合的に支援してまいります。 あわせて、デジタル化の底上げに向け、導入が進まない企業に対し、IoT導入サポーターやIoTビジネス創出支援拠点を活用して、企業ニーズに応じたアドバイス等を行うなど、きめ細かな支援を行ってまいります。 次に、デジタル人材の育成・確保においては、新たに設置するやまぐちDX推進拠点において、官民を広く対象にしたデジタル人材の育成を図るとともに、山口大学と連携したデータサイエンティスト育成講座の受講支援や、関係機関と連携した研修、資格取得への支援を行います。 さらに、奨学金返還補助制度の対象業種に情報サービス業を加え、DX推進を担う高度人材の確保に努めます。 私は、次期産業戦略に基づき、本県経済を牽引する製造業等のデジタルトランスフォーメーションを推進し、産業競争力の強化に全力で取り組んでまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(藤生通陽君)松岡農林水産部長。 〔農林水産部長 松岡正憲君登壇〕 農林水産部長(松岡正憲君)畜産振興についてのお尋ねにお答えします。 本県における畜産は、農業産出額の三分の一を占めるなど、地域経済を支える重要な産業であることから、その振興に向け、JA等と連携し、生産基盤の強化と需要拡大に一体的に取り組んでまいりました。 とりわけ、畜産農家の七割を占める肉用牛生産においては、ブランド化による知名度向上が課題であったことから、お示しのように、関係者一丸となった取組により、昨年十二月に本県初となる統一ブランドを創設したところです。 今後、全国に誇れるブランドとして育成し、需要拡大と農家経営の安定につなげていくためには、県内外における認知度を高め、販路を拡大していくとともに、ブランドを支える生産力を一層強化する必要があります。 このため、販路拡大に向けては、県内の小売店等を対象に、ブランド取扱店として登録された三十九店舗のさらなる拡大を図るほか、新たに飲食店についても登録を進めていきます。 あわせて、県内各地の取扱店と連携した消費拡大キャンペーンを実施するなど、県民の皆様に、知って、味わっていただく取組を展開します。 また、主要な出荷先である県外市場の卸売業者へのPRや首都圏の展示商談会への出展に加え、県産鮮魚を直送するぶちうま産直市場を活用し、東京・大阪の山口県ゆかりのお店を中心に売り込みを図るなど、県外での販路開拓に取り組みます。 次に、生産力の強化に向けては、増頭により生産量を拡大するため、地域の関係者が一体となって牛の個体情報を集約・管理するクラウドシステムを導入するなど、デジタル技術を活用しながら生産性の向上を図ります。 さらに、信頼できるブランドとなるよう、ゲノム技術を活用した肉質に優れる種雄牛の育成や、肥育アドバイザーによるきめ細かな技術指導により、さらなる品質向上に努めます。 県としては、やまぐち和牛燦の創設を契機とした畜産振興に向け、関係団体等と緊密に連携しながら、県産和牛の販路拡大と生産力の強化に積極的に取り組んでまいります。 副議長(藤生通陽君)阿部土木建築部長。 〔土木建築部長 阿部雅昭君登壇〕 土木建築部長(阿部雅昭君)建設産業におけるDXの推進についてのお尋ねにお答えします。 本県の建設産業において、人手不足の解消や就労環境の改善を図り、働き方改革を進めるためには、デジタル技術を生かして変革を生み出す必要があると考えています。 このため、県では、測量、設計、施工、維持管理の各段階において、業務の効率化や生産性の向上、さらにはインフラメンテナンスの高度化を図るため、三次元データを積極的に活用し、建設産業におけるDXを推進することとしています。 具体的には、まず、測量・設計においては、ドローン等を用いたレーザー測量により、作業の効率化を図るとともに、設計データを三次元化し、道路等の完成イメージを立体的に表現することにより、設計精度の向上を図ります。 施工においては、三次元データを基に、建設機械を自動制御して河川しゅんせつなどを行うICT活用工事を積極的に実施することにより、現場作業の効率化を図ります。 維持管理においては、施設の完成時と点検時のデータ比較や、AIによる橋梁等の健全度診断などを行うことで、異状を早期に発見し、速やかに対応する日本一の安心インフラやまぐちの実現を目指します。 県では、こうした三次元データの活用がさらに進むよう、企業に対するニーズ調査等を行った上で、測量から維持管理までの一連のプロセスでの活用方針を策定します。 さらに、県内の実情を踏まえた、本県独自の活用ガイドラインを策定し、県内企業に広く周知することにより、公共事業はもとより、民間にも活用が拡大するよう努めてまいります。 県としては、こうした三次元データを積極的に活用することにより、建設産業におけるDXを推進し、持続可能な建設産業の構築に取り組んでまいります。 副議長(藤生通陽君)三坂観光スポーツ文化部長。 〔観光スポーツ文化部長 三坂啓司君登壇〕 観光スポーツ文化部長(三坂啓司君)観光振興についてのお尋ねにお答えします。 観光産業は、宿泊や飲食など関連する業種が多岐にわたり、地域経済に与える影響が極めて大きいことから、コロナ禍で落ち込んだ観光需要の喚起を図るとともに、コロナの時代に対応した観光振興に取り組むことが重要です。 このため、まず、観光需要の喚起に向けては、第二弾となる「行こうよ。やまぐちプレミアムキャンペーン」として、前回と同規模となるプレミアム宿泊券五十万枚とフェリー券五万枚を、いずれも割引率五○%で販売することとしています。 このプレミアム宿泊券の発行に当たっては、一泊の利用枚数に上限を設け、利用機会の拡大を図るとともに、お盆など繁忙期を利用期間から除外し、需要の平準化を図ることとしています。 また、県内全ての路線バス、鉄道事業者と連携したデジタルスタンプラリーの実施や、各地のウオーキングイベントの全県的なPRなど、観光需要の喚起に向けた効果的な観光プロモーションを展開していきます。 次に、コロナの時代に対応した観光振興に向けては、まず、三密を回避し、自宅でも参加できるオンラインによる大規模な観光PRイベントを開催し、本県の魅力を全国に発信していきます。 また、コロナ禍において、少人数旅行の志向が高まっていることを踏まえ、こうした旅行者がスマートフォン等を利用して容易に本県の観光情報が入手できるよう、デジタルプラットフォームを活用した観光事業者の情報発信力の強化を図っていきます。 さらに、自然体験等へのニーズが高まっていることから、他県と比べキャンプ場が多いという本県の強みを生かし、キャンプ場と周辺のアウトドアアクティビティーとを組み合わせ、新たなツーリズム、スポーツフィールドやまぐちとして積極的に推進していきます。 県としては、市町や関係団体等と緊密に連携しながら、落ち込んだ観光需要の早期回復を図り、コロナの時代に対応した本県観光の振興に積極的に取り組んでまいります。 副議長(藤生通陽君)弘田健康福祉部長。 〔健康福祉部長 弘田隆彦君登壇〕 健康福祉部長(弘田隆彦君)児童虐待防止の取組強化についてのお尋ねのうち、児童相談所の体制強化等についてお答えします。 本県の児童相談所における児童虐待相談対応件数は、近年増加傾向にあり、さらに、コロナ禍の長期化が生活の不安やストレスの増加をもたらし、虐待につながることが懸念されています。 このため、県では、虐待を未然に防止し、早期発見・早期対応につなげることができるよう、その中心的な役割を担う児童相談所の体制強化や、関係機関との連携強化の取組を一層進めることとしています。 まず、児童相談所の体制強化については、国の児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づき、児童福祉司の配置を、管轄区域の人口四万人に一人から三万人に一人にするなど、来年度も引き続き、専門職員を計画的に増員することとしています。 また、本年度より新たに、児童福祉司等の経験年数に応じた体系的な研修を実施し、職員の専門性の向上に取り組んでおり、今後は、児童虐待と密接な関連があるDVをテーマとした内容を盛り込むなど、研修内容の充実を図ってまいります。 さらに、近年、法的に複雑・困難なケースも増加していることから、本年度より、県内全ての児童相談所において、弁護士からの助言や指導を常時受けられる体制を整備し、法的対応力を強化したところです。 次に、関係機関との連携強化については、児童虐待の情報を全国で共有するシステムの運用が四月から始まることから、今後は、このシステムを活用して、児童相談所と市町の情報共有体制の強化を図り、虐待の早期発見・早期対応につなげてまいります。 また、警察や教育、医療などの関係機関で構成する県の要保護児童対策地域協議会において、児童虐待防止対策に関する意見交換などを行い、相互に連携し、虐待防止に的確に対応してまいります。 県としましては、今後とも、次代を担う子供が安心して健やかに成長できるよう、市町や関係機関等と連携し、児童虐待防止対策の一層の充実強化に取り組んでまいります。 副議長(藤生通陽君)浅原教育長。 〔教育長 浅原司君登壇〕 教育長(浅原司君)児童虐待防止についてのお尋ねのうち、教育委員会における取組強化にお答えします。 児童虐待は、子供たちの生命や人権を著しく脅かすとともに、心身の成長や人格の形成にも関わる深刻な問題であり、虐待の早期発見や早期対応、被害児童生徒の心のケア等に、積極的に取り組むことが重要であると考えています。 このため、学校では、子供たちへの教育相談活動や日々の健康状態の観察等、様々な場面を通じて、児童生徒一人一人の状況の把握に努めるとともに、虐待を疑わせるサインを発見した場合には、市町関係部局や児童相談所等への通告や情報提供を速やかに行うこととしています。 こうした子供たちが発するサインは、ささいなものである場合もあり、虐待を発見しやすい立場にある教職員が、そうしたサインを確実に受け止め、市町関係部局や児童相談所等としっかりと連携をして、迅速かつ組織的な対応につなげていく必要があります。 県教委といたしましては、管理職や教職員に対する研修会を実施し、その中で虐待を発見するポイントを確認することなどにより、教職員が虐待に対する感度を高め、子供たちの状況を一層きめ細かく把握し対応できるよう努めるとともに、学校から、市町関係部局や児童相談所等にためらうことなく情報提供することを徹底するなど、さらなる連携の強化に向けて、積極的に取り組んでまいります。 〔浅原教育長の発言中、藤生副議長に代わり、柳居議長が議長席に着く〕 議長(柳居俊学君)谷警察本部長。 〔警察本部長 谷滋行君登壇〕 警察本部長(谷滋行君)まず、児童虐待防止の取組強化についてのお尋ねにお答えいたします。 議員御指摘のとおり、児童虐待事案については、全国的に児童が深刻な被害に遭う事件が発生しているところであり、特に現在のコロナ禍において、家庭で過ごす時間が増えている現状も踏まえますと、県警察としても、その対応にさらなる緊張感を持って当たる必要があると考えております。 県警察では、児童虐待が疑われる一一○番通報や相談を受理した場合、児童の安全確認及び安全確保を最優先とした対応の徹底に努めております。 例えば、児童の泣き声が聞こえるとの通報を受理した場合には、必ず警察官が現場へ臨場し、関係者から事情聴取を行うとともに、児童の体に負傷がないかを直接確かめるようにするなど、虐待の早期発見と児童の安全確認を徹底しております。 また、現場の状況だけでは児童虐待と判断できない場合であっても、児童相談所や市町、学校等における当該児童等に関する過去の取扱い状況を調査して、通告の必要性を総合的に判断するなど、虐待を看過することがないよう努めているところです。 議員お示しのとおり、平成三十一年四月から中央児童相談所に現職警察官一名を出向させて、警察と児童相談所のより一層の連携強化を図っているところであります。この取組は、児童の安全確保や警察との連携において非常に有効と認められますので、今後も継続していくこととしております。 引き続き、児童相談所や市町、学校等関係機関と緊密に連携しながら、虐待児童の早期発見・保護を最優先とした取組を推進してまいります。 次に、先端技術を活用した警察活動の推進への取組についてお答えいたします。 議員お示しのとおり、近年における急速なデジタル化の進展や技術発展には目覚ましいものがあります。社会が大きく変化していく中、警察としてもそうした新たな技術を積極的に取り入れて、警察活動の高度化・効率化を図り、事件・事故の未然防止や迅速な解決につなげることにより、安全・安心な社会を願う県民の期待に応えていくことが重要であると認識しております。 このような観点から、県警察においては、来年度当初予算案においても新たな技術の導入により、警察活動等の高度化・効率化を図るための予算を計上しているところであります。 まず、ICT機器を活用した少年の被害防止対策等の推進といたしまして、犯罪被害や交通事故防止の講習をより効果的なものとし、自主防犯意識等のさらなる高揚を図るため、犯罪被害や交通の危険に遭遇するVR映像を作成し、バーチャル環境下で疑似体験をしてもらう、体験型の防犯・交通安全教室の開催を目指してまいります。 また、うそ電話詐欺などの、いわゆる面接犯の捜査においては、似顔絵の作成が極めて有効な手法でありますが、リモート環境下で似顔絵作成を可能とするシステムを導入し、目撃者の記憶が鮮明な段階で、似顔絵捜査官が早期にオンラインで聞き取りをし、専用のタブレット端末を使用してリモートで似顔絵作成を行うことにより、事件の早期解決につなげていきたいと考えております。 さらに、現場警察活動の支援の充実を目的とした捜査支援用のドローンの導入も計画しております。 ドローンによる上空からの俯瞰的映像は、災害現場や重要事件等の現場確認、行方不明者の捜索などに非常に効果的であり、警察活動の向上につながるものと考えております。 これらに加えて、組織内に電子決裁システムなどを導入して業務の合理化・効率化を図るほか、一部行政手続のオンライン化により県民の利便性向上も図っていくこととしています。 県警察では、今後ともこれまでに培ってきた組織的な活動の基盤や技術をしっかりと引き継ぎつつ、先端技術を活用した警察活動の高度化・効率化にも不断に取り組み、安全・安心な社会の実現に努めてまいります。 議長(柳居俊学君)これをもって、一般質問及び提出議案に対する質疑を終結いたします。