代表質問 1 新型コロナウイルス感染症対応とワクチン接種後について 2 脱炭素社会の実現について 3 DXの推進について 4 少子化対策の推進について 5 ICTを活用した今後の教育について
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(二木健治君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第二 代表質問 日程第三 議案第一号から第十三号まで、第十五号及び第十六号 副議長(二木健治君)日程第二、代表質問を行い、日程第三、議案第一号から第十三号まで、第十五号及び第十六号を議題とし、質疑の議事を継続いたします。 井上剛君。 〔井上剛君登壇〕(拍手) 井上剛君 皆さん、こんにちは。民政会の井上剛です。 早速ですが、会派を代表して県政の諸課題に対し質問させていただきます。 まず初めに、新型コロナウイルス感染症対応とワクチン接種後についてお伺いいたします。 新型コロナウイルス感染症が我が国で確認されてから一年半、新型コロナウイルスは感染力がより強まったものが次々と出現し、感染拡大を繰り返しています。そして、感染力が従来の三倍から四倍と言われるデルタ株が全国に広がり、八月二十日には一日の感染者数が過去最高の二万五千八百五十二人に達し、首都圏をはじめとして四回目の緊急事態宣言も発令され、本県も八月二十五日には感染状況がステージⅣに突入したとされました。猛威を振るっているデルタ株は、比較的若い方も重症化しており、医療体制を圧迫する事態を招いています。 八月二日に政府は、感染が急拡大している地域が対象としながらも、今までの原則入院としていた方針を、肺炎などの症状のある中等症について、重症化リスクの高い人を除き、自宅療養とする方針を発表しました。これまで、自宅療養中に容体が急変することは多く報告され、亡くなられた方もおられ、患者さんの命の危険を増大させるおそれがあります。 新たなこの方針は、国の通知を受け、都道府県が判断することとされています。本県でも五月の第四波では、病床使用率がステージⅣの五○%以上を大きく上回る七五%までに達し、この五波でも八月二十一日に七一・九%に達しました。県は現在、中等症Ⅱ以上で百七十五床、中等症Ⅰ以下で無症状の方までを対象に三百五十八床、緊急時に百床確保されています。 今回の国の通知を受け、デルタ株をはじめとする感染力の強い変異株の猛威に備え、県民の命を守るために、県はどのように症状に応じた病床の確保をするのか。また、緊急時のさらなる病床確保やホテル等での療養者の安心・安全の確保を行っていくのかお尋ねいたします。 新型コロナウイルス感染症の致死率を低下させ、終息させるには、ワクチン接種と治療薬の開発が重要です。発生初期の国内での累計致死率は、昨年五月末では五・三%にもなっていましたが、経験を蓄積・共有することで標準的治療法が確立され、今年の八月末時点では一・一%程度まで低下してきています。 しかし、抜本的な治療薬はまだ存在しておらず、インフルエンザに比べれば致死率は六十倍から九十倍高い水準です。今、少しでも重症化を防ぎ、パンデミックを阻止することが期待できるのがワクチン接種です。国内では、全ての希望する方へのワクチン接種を実施中です。 NHKの発表するワクチンの接種状況を見てみますと、本県は全人口に占める接種率でトップレベルであり、接種に御尽力いただいています医療従事者さん、薬剤師さん、集団接種会場の運営に携わっている全ての皆様に感謝申し上げます。 ワクチン接種によってパンデミックを阻止できるような集団免疫を達成するには、約七○%以上の接種率が必要と言われていますが、本県の希望する方の接種がほぼ終えた六十五歳以上の方の接種割合を見ますと約九割であり、ワクチンの有効性を多くの方が求めた結果だと言えます。 大阪府が五月に実施した調査では、接種を希望する方の割合が、一月に実施した調査より大幅に増加しており、接種が本格化し、副反応への理解も一定程度進んだためと考えられます。年代別に見てみますと、六十歳代以上で八五・六%と最も高く、二十歳から五十歳代がおおむね七○%前後だったのに対し、十六歳から十九歳は五六・五%にとどまっています。この世代は、絶対に接種したくないと回答した割合も一五・二%と、ほかの世代より突出して高かったのです。 希望しない人の理由としては、副反応のリスクがある、効果がよく分からない、効果が持続する期間が分からないの順でした。中には、若者は重症化しないので、開発間もないワクチンを打つよりは、感染して抗体を持つほうがよいという方までいました。今までの感染に対する報道や誤ったワクチンへの情報で、接種を敬遠されている方がいらっしゃるのも事実です。若い方には、軽症で終わった方でも、その後の倦怠感や味覚異常などの後遺症に悩まされていらっしゃる方がいることもしっかりと知ってもらう必要があります。 ワクチン接種によって得られる本人や社会的メリットと、副反応に対する正しい知識も知ってもらった上で、特別な事情がない限り、強要をしてはいけませんが、なるべく多くの方に接種していただきたいと考えます。今、若い方への接種も進んでいますが、若い方々へ正しい情報の上で接種を進めていくために、どのように県として取り組んでいかれるのかお伺いいたします。 このたびの県の集中対策期間では、プレミアム宿泊券の利用停止や「Go To Eat」食事券の販売停止及びテークアウトを除く利用自粛を行い、飲食店に初めて時短要請を行いました。各事業者さんは、ワクチン接種が開始されたことで、何とか出口が見え始めたのではないかと期待し、より感染防止対策を実施しながら必死に営業を続けてきただけに、ショックを受けられている事業者さんも多くいらっしゃいます。 本県は、さきも申しましたように、ワクチン接種率が全国でもトップレベルで進んでいることなどから、今回の第五波でも重症病床使用率は非常に低いものです。希望する方のワクチン接種が完了する予定の十月以降では、県の認証を受けた飲食店や宿泊業者さんでは、そうしたことを求めなくすることや、認証を受けていない事業者さんとのめり張りも必要だと考えます。そして、苦しんでいた県内の事業者さんに少しでも希望の光を与えられるように、今後は、ワクチン接種率や県内の感染状況に応じて、事業者さんが前向きになれるメッセージを積極的に発信していただきたいと考えます。 その一つの例として、国でも検討を開始していますが、接種率や感染状況に応じて、どのように社会経済活動を再開させていくのかのロードマップを作成して示すことも有効です。ワクチン接種が進んでいる今だからこそ、これまで苦しんできた事業者さんに希望の光を感じてもらえることを積極的に発信していただけたらと思います。県の御所見をお伺いいたします。 次に、脱炭素社会の実現についてお伺いいたします。 昨年の九月議会以降、これからはこの環境に対する取組が重要と考え、取り上げてきました。山口県議会でも、脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員会を設置し、政策提言をするために調査研究をしていくこととなっています。 世界を見てみますと、多くの国が脱炭素実現に向け具体的なグリーンリカバリー案を策定してきています。美しい地球環境を次の時代へ引き継いでいくのは、私たちの世代の重大な責務として、百年以上続いた石油文明からの大転換を図ろうとしているのです。 我が国においても、昨年十月に二○五○年カーボンニュートラルを宣言し、脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図る地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を三月二日に閣議決定いたしました。そして、今年の四月には、二○三○年度の新たな温室効果ガス削減目標として、従来の二○一三年度から二六%削減を四六%に引き上げ、さらに五○%の高みに向けて挑戦続けるという新たな方針も示されました。 県の作成している山口県地球温暖化対策実行計画の目標は、一七・八%削減となったままであり、その見直しが早急に必要だと考えますが、まず県の御所見をお伺いいたします。 二点目に、カーボンニュートラル実現への体制づくりについてお伺いいたします。 カーボンニュートラルの実現には、温室効果ガス排出そのものを減らす、再利用する、あるいは貯留するといった排出するものに対する取組と、それを森林や水生植物などで吸収する取組があります。つまり、商工労働部、産業戦略部だけでなく、環境生活部や農林水産部など全ての部門がそれぞれの目標を掲げて取り組む必要があり、県としてそれらを横断的に仕切る組織または担当を置く必要があると考えます。県として、カーボンニュートラルを推進していく体制についての御所見をお伺いいたします。 三点目に、グリーンリカバリーへの取組についてお伺いいたします。 脱炭素社会の実現に向けて、産業構造も経済社会システムも抜本的な変革を迫られており、その構築に向けて技術革新を中心に様々な投資活動が活発化してきています。アメリカのバイデン大統領は、四年間で二百兆円を超す巨額のグリーンリカバリー投資を表明し、EUも今後十年間で百三十兆円規模をグリーン分野に投じるとしています。 日本政府も昨年十二月に、民間企業の環境投資を促進するために二兆円の研究基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後十年間、継続して支援していく方針を打ち出し、本年四月には配分対象である十八事業を公表しました。欧米に比べ資金規模は小さいのですが、経済産業省はこれを呼び水とし、十五兆円規模の民間資金を誘発できると考えています。 さらに、投資ファンドなどを通じて世界のお金が脱炭素を目標に動き出しており、内閣府の報告書には、三千兆円とも言われる世界中の環境関連の投資資金を我が国に呼び込むとしています。国内でもヤフージャパンが、企業版ふるさと納税の仕組みを活用し、カーボンニュートラルを目指す地方公共団体に対し、第一弾として約二億四千四百万円を支給する四県三市一町を発表しました。 県では、水素利活用やCO2の貯留・再利用といった低炭素化に向けたイノベーションの創出を、県内コンビナート企業を中心とした検討会で進めていこうとされています。 しかし、この脱炭素に向けた技術革新については、まさにオール山口で取り組んでいく必要がありますし、そうでなければ、世界をリードする革新は生まれ難いと考えます。産学公金が連携し、英知を結集して進めなくてはならない課題であり、技術革新や資金援助、資金獲得など総合的に推進する体制の整備が必要だと考えます。県の御所見をお伺いいたします。 四点目は、カーボンオフセットの推進についてお伺いいたします。 さきに御案内したとおり、カーボンニュートラルの実現には、温室効果ガスの排出を可能な限り減らす活動に加え、それでも排出してしまう温室効果ガスの排出量を吸収させる活動、つまりカーボンオフセットを進めていくことが重要です。本県が持つ豊かな森林を整備することに加え、三方を海に開かれており、藻場、干潟を整備することで、CO2吸収だけでなく、水産資源を守ることもできます。 やまぐち森林づくり県民税と同様のブルーカーボン県民税の創設や、国土交通省が認可する認証機関を通じて、CO2削減努力に限界がある事業所などに吸収量を販売し、そうした財源を確保して、沿岸海域の整備などを通じたCO2吸収源対策を進めるべきと考えますが、県の御所見をお伺いいたします。 五点目は、ゼロカーボンシティの表明についてです。 カーボンニュートラルの実現は、企業だけではなく、県民一人一人の意識改革と協力が不可欠です。昨年の九月議会から、この表明を行うことを進言してきましたが、県は、森林吸収のみでは限界があり、また、大幅な排出削減には、従来の取組の延長ではない抜本的な対策が必要となることから、達成に向けた道筋を見通すことは困難ということで、表明については慎重に対応するとの答弁を続けています。排出量の多い企業が集積していることを配慮してのことと拝察します。 しかし、八月三十一日現在、表明自治体は四十都道府県を筆頭に四百四十四自治体にも及び、表明自治体総人口は約一億一千百四十万人にも達しています。県内の事業所も、CSRやESG投資が世界中に拡大しており、成長のためにはカーボンニュートラルへの対応は必須となっており、必至であります。県民総参加で意識改革、そして行動を起こすには、トップの姿勢そのものにかかっていますし、その力が事業所を力強く後押しするのです。 行政運営は、達成に向けた道筋をつけることが重要ですし、それができないものは宣言し難いということは十分に理解します。しかし、知事は政治家であり、宣言するかどうかは知事の政治姿勢そのものなのです。ゼロカーボンシティの表明に対する知事のお考えをお聞きいたします。 次に、DXの推進についてお伺いいたします。 IT技術によって、日常の様々なシーンでデジタル化が進んでおり、そうしたIT技術を活用することで、生活や仕事を改革させるDXの取組が重要です。県議会としましても、人にやさしいデジタル社会実現特別委員会を設置し、政策提言をすべく調査研究を進めています。県としましても、四月にデジタル推進局を新設し、外部有識者の知見を得ながら取組を進めているところです。 県では、この三月にやまぐちデジタル改革基本方針を掲げ、県が目指すべきデジタル社会のビジョンを三つの維新に沿って掲げています。今や四十七都道府県全てで同様の推進計画を作成し、二○一八年から推進している県もあります。本県が、人口減少などの最重要課題を乗り越え、「活力みなぎる山口県」を実現するために、どういったところを本県の特色とし、他県との差別化を図っていかれるのか、県の御所見をお伺いいたします。 二点目は、DXのモデル事業の推進についてです。 自治体が進める行政サービスのDX化では、マイナンバーカードの普及や行政手続のオンライン化、AIやRPAなどのデジタル技術を活用した業務プロセス構築などが上げられています。それに加えて大事なのは、本県が直面している少子高齢化の進行に伴う公共交通の在り方や行政サービスの在り方、就業者の減少が著しい農林水産業に対する、もうかる基盤づくりなどのモデル事業を推進することだと考えます。 DXに取り組む民間事業者も、タイアップして実証実験できる自治体を求めています。本県では、そうした実証実験のモデル事業を誘致しやすい規模の市町が多い環境があり、有利であると考えます。 例えば茨城県の境町では、ソフトバンク株式会社の子会社であるBOLDLY株式会社及び株式会社マクニカの協力の下、自動運転バスを三台導入し、生活路線バスとして定時定路線での運行を二○二○年十一月から開始し、この八月からは第二期ルートの運行も開始しています。こうした事業を県内の例えば周防大島などをモデル導入し、県内の過疎地域に広げていくことも有効ではないでしょうか。 また、農林水産業においても、農業大学校や農業試験場にITテクノロジーを投入したアグテックを進め、初心者でも安定的に高品質な、おいしい山口県独自の農作物を作れる技術開発を進め、ブランド化していくことも有効だと考えます。 本県でも、強い農林水産業育成プロジェクトとして、そうしたことへの導入支援などを実施していますが、いろんな分野でDXを開発したい民間事業者を募り、県が実証実験の場を提供したモデル事業を進め、県内の課題に対してリードすべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。 次に、少子化対策の推進についてお伺いいたします。 二○一六年以降、我が国の出生数の減少ペースが加速しています。二○一五年までの十五年間は、毎年一%の減少ペースではありましたが、二○一六年から二○一八年は約三%に加速し、二○一九年には五・八%の大幅減少を記録しました。二○二○年には二・八%減にとどまりましたが、二○二一年にはコロナ禍の影響もあり、六%減少の大台に乗る可能性があると言われています。年間の出生数が二○一六年に百万人を切ってから、僅か五年で八十万人を割り込む可能性が出てきたのです。少子化と言われて、一九九七年に初めて百二十万人を切ってから、二十万人減少するまでに十九年かかったことを考えれば、この急激な少子化の進行は重大な危機と言わざるを得ません。 政府は、二○一五年に策定した少子化社会対策大綱をはじめ、政策の柱として少子化対策、子育て支援政策を打ち出してきました。そして、家族向け社会支出の拡充には、二○一四年から三年間で四○%増額となる二・五兆円を支出してきました。しかし、合計特殊出生率は、さきに述べましたように、二○○五年の一・二六を底として徐々に上昇していましたが、二○一五年をピークに低下傾向に転じ、政府が実現を目指していた二○二五年までの希望出生率一・八の達成は困難な状況にあります。 人口減少の克服を最重要課題としています本県におきましても同様に、二○二○年は前年から○・○六ポイント低下の一・五○となり、二○二四年目標の一・七への引上げが厳しい状況です。 少子化をもたらしている要因は、二十歳から三十九歳の女性人口の大幅な減少や、初婚年齢、五十歳時未婚率、出産年齢の上昇などと言われています。そうした状況を生み出した背景には、若い世代の経済状況や雇用環境の悪化があります。平成二十七年に実施した国立社会保障・人口問題研究所による第十五回出生動向基本調査によれば、未婚者に結婚への障害を聞いたところ、男女とも四割以上が結婚資金と回答しています。 また、同調査によれば、理想の子供の数まで子供をつくらない理由として、妻の年齢三十五歳未満の夫婦では、およそ八割が、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからを選択しています。二番目に選択率が高かったのは、自分の仕事に差し支えるからでありますが、その選択率は二○%にすぎないことから、経済的要因が非常に高いことがうかがえます。 我々が考える以上に、若い世代は自らの経済環境や将来の所得などに対して悲観的な見通しを持っており、それを前提とした政策形成が必要と考えられます。 以前も御紹介しましたが、一人の子供を育て上げるのに約三千万円の養育費、学費がかかるといった情報を聞けば、結婚や出産をためらう若者が生じることは否定できません。少子化に歯止めをかけるには、こうした若い世代の意識の変化に沿った少子化対策が必要です。 国立社会保障・人口問題研究所による社会保障費用統計によれば、我が国の若い世代向けの対GDP比での社会保障支出は、近年、子育て支援政策などに率先して取り組んでいるとされるドイツの三分の二、フランスの三分の一にすぎません。我が国は、社会保障制度や子育て支援制度、雇用政策などの政策パッケージによって、若い世代のワーク・ライフ・バランスの向上を図るとともに、社会全体で子供を育てるという雰囲気を醸成することが重要であり、国にそうしたことを最重要課題として訴えていかなくてはなりません。まず、県の御所見をお伺いいたします。 本県では、みんなで子育て応援山口県の推進として、結婚、妊娠、出産、子育てに対する切れ目のない支援や、社会全体で子育てを応援する体制を一層充実させていくとし、その財源確保として、やまぐち子ども・子育て応援ファンドを創設しています。 内閣府が行った地方自治体における少子化対策の取組状況に関する調査で、結婚、妊娠、出産、育児の切れ目のない支援を実施する上で財源が不十分と回答する都道府県が九○%にも上っており、財源確保を国に求めているだけでは、いつまでたってもこの課題は解決できないと考えます。県全体がこの課題に向け本気で向き合うという雰囲気、機運づくりがとても重要です。 そのために、私は以前から、子育てを全県挙げて応援する風土づくりや、若者を呼び込むPRに寄与すると考え、やまぐち森林づくり県民税と同様のやまぐち子育て応援県民税の導入を訴えてきました。地方自治体の課税権には国の同意も必要ですし、知恵を絞って自助努力で税収確保を図ると、逆に地方交付税交付金を減らされてしまう側面があることも確かです。 しかし、これからの地方創生は、多様化したそれぞれの地域のニーズに合った政策に選択と集中できるように、地方自治体の自主課税権の自由度を拡充していくことも国に求めていく必要があると考えます。 知事として、みんなで子育て応援山口県を全国にPRし、子育てするなら山口県と感じてもらうために、どのように取り組まれるのか。また、改めてやまぐち子育て応援県民税の導入に対する御所見をお伺いいたします。 最後に、ICTを活用した今後の教育についてお伺いいたします。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、私たちの生活を大きく変え、デジタル化の加速により、十年先の未来をあっという間に目の前に運んできました。学校教育においても、文科省はGIGAスクール構想として、一年間で約四千億円の投資を行い、オンライン教育の環境整備は飛躍的に進みました。本県におきましても、一人一台のタブレット端末配備など、いち早く県立高校と私立高校におけるICT教育の環境づくりを行ってまいりました。 今後の教育を考えたとき、パソコンなどのITツールをうまく活用できる学校と、そうでない学校の活用格差が生じる可能性があります。ICTを活用した特色ある学校づくりを行っていくには、子供たちのためにはどのような学びを提供すべきかのビジョンをしっかり持つことが重要です。言うまでもなく、ICTは目的ではなく、効率的かつ教育効果を高めるための手段であるからです。 AIなどのツールを活用して、それぞれの子供たちの強みや弱みに応じた学び方の提供、興味や関心のあることに取り組む課題の最適化、進学や就職など進路の最適化、そしてどういった環境下で学ぶのが一番よいかという学びの場の最適化などを提供していくことが重要だと考えます。 そして、それと同時に重要なのは体感教育です。自分の経験を振り返ってみても、実際に自分が体験したグループ学習や部活動、修学旅行はもちろんですが、一生懸命に工夫しながら書いたノートなども貴重な財産になっています。たとえICT教育が進んでも、子供には実際に人と接したり、実際に自分の目で見て体感すること、パソコンの変換に頼ることなく自分の手で書くことなど、仮想空間ではなく実際の現場での体感がとても重要です。 県教委として、本県の県立高校における特色ある教育ビジョンをどのように描き、その実現に向け、ICT教育と従来からの体感教育をどのように組み合わせていかれるのかお伺いいたします。 以上で、民政会を代表しての質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(二木健治君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)井上議員の代表質問にお答えします。 まず、新型コロナウイルス感染症対応とワクチン接種後についてのお尋ねのうち、医療提供体制の確保についてです。 感染力の強いデルタ株の影響等により、県内における感染が拡大する中、私は、県民の命と健康を守るためには、感染した方が必要な治療を受け、安心して療養できる体制を確保することが何よりも重要であると考えています。 このため、まず患者が入院し、必要な治療を受けるための病床について、九月一日から緊急的に二十五床を増床し、合わせて五百五十八床を直ちに入院可能な即応病床として稼働させているところです。 また、宿泊療養施設についても、新たに百室を追加し、合計で五百八十三室を確保するとともに、看護師による日々の健康管理や、容体急変時の迅速な病院搬送体制など、安心して療養できる体制を整備しています。 こうした中、自宅療養を原則とする今般の国の通知については、感染が拡大している地域における緊急的な選択肢として示されたものであり、導入については各自治体の判断によることとされているところです。 このため、本県では、県民が安心して療養できるよう、これまでと同様、症状に応じて入院または宿泊療養施設での療養を基本として対応することとしており、引き続き受入れ体制の充実に努めてまいります。 次に、若者へのワクチン接種の促進についてです。 私は、希望する県民が一日も早く接種を受けることができるよう、十月末の接種完了を目指して、市町や関係機関と一丸となってその促進に取り組んでおり、現在、対象となる十二歳以上の方のうち、二回目の接種を完了した方が六割を超え、全国一位となる進捗で接種が進んでいます。 こうした中、さらなるワクチン接種の促進に向けては、意識調査等において、接種を希望しない割合が高いとされる若い世代の方が、誤った情報に惑わされることなく、接種に対する正しい判断ができるよう、ワクチンの効果や副反応について理解を深めていただくことが重要です。 このため、県では、ホームページや若い世代に身近なSNS等を通じ、発症予防、重症化予防などワクチン接種の効果や、接種部位の痛み、発熱などの副反応について、科学的根拠に基づいた正確な情報の発信に努めています。 また、県医師会と連携し、専門家の立場から、接種の有効性や必要性について、動画配信を通じて広く呼びかけていただいているところです。 現在、本県の若い世代の接種については、三十九歳以下の一回目の接種率が約五一%と、全国に比べ一四ポイント上回っているなど、順調に進捗しているところですが、引き続き市町や関係機関と連携し、若い世代への啓発に取り組んでまいります。 私は、今度とも、医療提供体制の充実やワクチン接種の促進等を通じ、感染拡大防止対策に万全を期してまいります。 次に、ワクチン接種等に応じた社会経済活動の再開についてです。 新型コロナウイルス感染症については、新規感染者数が減少傾向にあるものの、重症患者数が依然として高い水準となっていることから、国において、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間が九月三十日まで延長されたところです。 感染状況は依然として厳しい状況にあることなどから、先月から実施しているデルタ株感染拡大防止集中対策を延長し、感染拡大の抑制に取り組むとともに、感染防止対策の切り札となるワクチン接種を、市町との協力の下、一日も早く進めていくことができるよう取り組んでいるところです。 御承知のように、集中対策においては、感染拡大防止のため、プレミアム宿泊券の利用停止などの需要喚起の取組を抑制するとともに、飲食店等への営業時間の短縮要請をしています。 こうした中、先般、国において、ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方が示されました。 これまで、感染拡大防止に御協力いただいている県民や事業者の皆様には、御負担をおかけしていますが、今後、国が具体化を進める行動制限の縮小・見直しを参考に、本県としても感染拡大を防ぎながら、社会経済活動の再開に向けた取組を進めたいと考えています。 私は、引き続き県民の皆様の命と健康を第一に、社会経済への影響を最小限に食い止めることができるよう、感染症対策の徹底と経済活性化の両立に向けて取り組んでまいります。 次に、脱炭素社会の実現についての数点のお尋ねにお答えします。 まず、県の温室効果ガス削減目標についてです。 県地球温暖化対策実行計画は、国の地球温暖化対策計画に即して、温室効果ガス排出量の削減を図るため、地域や産業の特性を生かした実効性のある施策を総合的かつ計画的に推進するために策定するものです。 令和二年度が計画期間の終期であったことから、今年の三月に改定したところであり、削減目標については、当時の国の削減目標であった、二○三○年度において二○一三年度から二六%削減と整合を図るとともに、本県の温室効果ガスの排出削減対策や吸収源対策の効果も考慮して設定しています。 改定作業を進める中で、国では、昨年十月の菅首相のカーボンニュートラル宣言を踏まえ、削減目標を引き上げる動きも出てきたことから、県実行計画には、今後の国の動向や社会情勢の変化等を踏まえ、必要に応じて見直すことを明記しました。 現在、国においては、新たな削減目標と、その達成のための具体的な方策等を示す地球温暖化対策計画等の見直しが進められており、県では、こうした情報の収集に努めているところです。 また、県議会におかれましては、今年七月に設置した脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員会において、国や県等において講じるべき対策等について協議・検討され、私ども執行部に対し政策提言が行われる予定となっています。 私は、引き続き脱炭素社会の実現に向けた国の動きを注視するとともに、脱炭素特別委員会の御提言をしっかりと踏まえた上で、県実行計画の見直しの必要性について検討してまいります。 次に、カーボンニュートラルを推進していく体制についてです。 県実行計画においては、温室効果ガス排出量の削減や吸収に係る取組について、庁内関係部局の関連施策を幅広く取りまとめるとともに、重点プロジェクトについては評価指標を設定し、毎年度、事業の進行管理を行うこととしています。 こうした関連施策の総合調整や進行管理等については、これまでも副知事をトップとして関係部局長で構成する山口県環境政策推進会議で実施してきており、全庁横断的な組織としての役割を果たしてきたと考えています。 したがって、引き続きこの推進会議により関係部局が連携し、適切な進行管理の下、CO2削減等の取組を着実かつ効果的に推進してまいります。 次に、グリーンリカバリーへの取組についてです。 国においては、経済と環境の好循環をつくる産業政策として、グリーン成長戦略を策定し、あらゆる政策を総動員しながら成長産業を育成していくこととしています。 私は、こうした国の政策にも呼応し、本県の産業特性や強みを生かした取組を一層加速する必要があると考え、本年三月に改定した産業戦略において、環境・エネルギー、水素等を引き続き重点成長分野に位置づけ、企業や関係機関が連携したイノベーションの創出を進めています。 具体的には、産業技術センターに設置したイノベーション推進センターや県独自の基金による研究開発・事業化支援、やまぐちR&Dラボや自動車産業イノベーション推進会議を通じたオープンイノベーションの促進等に取り組むとともに、様々な技術シーズを有する県内中小企業とコンビナート企業との技術交流も進めています。 これらの取組は、産学公金からなる産業戦略本部に進捗状況を報告し、意見を聞きながら推進しており、先日開催した全体会合では、脱炭素に向けて、企業と大学との連携による特色ある研究開発の推進、中小企業が有する技術の活用、企業の環境投資を促す地域金融機関との連携などの意見が示されました。 私は、今後とも産業戦略本部を中心とした体制の下、産学公金の連携を一層強化し、脱炭素社会の実現に向けたイノベーションの創出に取り組んでまいります。 次に、カーボンオフセットの推進についてです。 二○○九年の国連環境計画の報告において、沿岸域に生息する海藻等の水生植物の光合成により吸収されたCO2はブルーカーボンと命名され、新たなCO2吸収源対策として示されています。 こうした中、国土交通省においては、港湾・沿岸域に造成した藻場等によるブルーカーボンを商品化し、企業等に売却することで温室効果ガス排出量を相殺する、いわゆるカーボンオフセット制度の構築を検討していますが、いまだ試行段階です。 また、今年五月に農林水産省が公表した、みどりの食料システム戦略においても、ブルーカーボン量の算定技術等については、研究・開発段階とされています。 このように、現時点でブルーカーボン・オフセットの仕組み等は確立されていないことから、県としては、国の検討状況を注視することとし、まずはCO2吸収源対策として、健全な森林整備等の推進に取り組んでまいります。 次に、ゼロカーボンシティの表明についてです。 私は、地球温暖化の要因である温室効果ガスの排出量を削減していくことは、世界共通の重要な課題と考えており、本県においても、国が進めるカーボンニュートラルに向けた動きに呼応して、地球温暖化対策を積極的に進めているところです。 しかしながら、CO2排出量と森林吸収量の乖離が非常に大きいという本県の現状を踏まえると、現時点では、カーボンニュートラルの実現への道筋を示すことが困難な状況にあります。 このため、今後、公表予定の国の地球温暖化対策計画等の内容を精査するとともに、県議会の脱炭素特別委員会での検討状況等を踏まえながら、表明については慎重に判断したいと考えています。 私は、今後とも、県民や事業者、市町、関係団体と緊密に連携し、脱炭素社会の実現につながる地球温暖化対策にしっかりと取り組んでまいります。 次に、DXの推進についての二点のお尋ねにまとめてお答えします。 本県では、今年三月に策定した、やまぐちデジタル改革基本方針に基づき、デジタル化がもたらす地域課題の解決と新たな価値の創造によって、県民一人一人がこれまで以上の豊かさと幸せを実感できる社会の実現を目指し、県政の各分野でデジタル改革を進めています。 私は、この地域課題の解決と新たな価値の創造に向けたDX自体を、特に他県とは違う特色あるものにしたいと考えており、直面する課題への対応やこれからの成長戦略を見据えながら、本県ならではのDX、やまぐちDXの創設に取り組んでいるところです。 その具体化に向けては、推進体制においては、台湾のオードリー・タン デジタル担当大臣との対談や、第一線の有識者であるCIO補佐官からの助言等を踏まえ、新しい形の活動組織として、官民協働フォーラム「デジテック for YAMAGUCHI」を立ち上げました。 六月の発足以降、既に県内外の企業や市民エンジニアなど四百名を超える方々に御参加を頂いており、各会員が様々な課題を提示して自由に意見を交わし、斬新なアイデアをDXにつなげていく、そうした従来にはない手法で、新たなソリューションやイノベーションの創出を目指してまいります。 また、この活動の一環として、県や市町とスタートアップ企業等が協働するシビックテックにおいては、地域課題の解決に向けて、今後、現場での実証実験を実施し、アプリケーションの開発と社会実装に取り組むこととしています。 さらに、フォーラムの会員同士が技術やノウハウを持ち寄り、課題を抱える地域で実証実験等を行いながら、課題解決のモデルとなる先導的事例を生み出すオープンイノベーションの取組も、現在進めているところです。 やまぐちDXの創出に向けては、こうしたフォーラムを核とする活動だけでなく、5Gを活用した遠隔診断支援など、全国初の様々なモデル事業にも取り組んでおり、この秋に開設するDX推進拠点についても、先進技術を導入し、本県独自の機能を有する施設にしてまいります。 私は、今後もCIO補佐官等の専門的な知見を取り入れ、多様な主体とも一層連携・協働しながら、幅広い分野で、全国に先駆けた本県ならではの特色あるデジタル改革を、強力かつスピード感を持って推進してまいります。 次に、少子化対策の推進についての二点のお尋ねにお答えします。 まず、若い世代への少子化対策についてです。 少子化の流れを変えるためには、若い世代が結婚の希望をかなえ、安心して子供を産み育てることができる環境づくりが重要です。 このため、私は、若い世代の経済的負担感を軽減するため、全国トップクラスの不妊治療費助成制度や多子世帯の保育料軽減制度を整備するとともに、協賛事業所から優待サービスを受けられる子育て応援パスポート制度などに取り組んでいるところです。 また、若い世代が仕事と家庭生活を両立させ、安心して子育てができるよう、やまぐち働き方改革支援センターにアドバイザーを配置し、長時間労働の縮減や短時間勤務等の柔軟な働き方を促進するなど、働きやすい職場環境づくりに向けた企業の取組を支援しています。 一方で、少子化対策は、国と地方が適切な役割分担の下、互いに協力しながら国全体としての対策の強化を図っていくことが重要です。 このため、全国知事会を通じ、国に、経済的な負担軽減措置の拡充、仕事と子育ての両立に向けた働き方の見直しなど、次世代育成支援の抜本強化に向けた提言を行ったところであり、私は、今後とも、実効性のある対策が講じられるよう、国への政策提言などを行ってまいります。 次に、子育て支援と財源確保についてです。 みんなで子育て応援山口県を推進するため、私は、やまぐち子育て連盟を中心に民間資金を活用した、やまぐち子ども・子育て応援ファンドや、企業と子育て支援団体が連携するコンソーシアムなど、社会全体で子育てを応援する取組を一層充実させることとしています。 こうした取組については、子育てポータルサイトで情報発信するとともに、大都市圏での移住関連フェアや、やまぐち暮らしガイドブック等においても、山口県の住みよさの一つとして、子育て支援の取組を紹介するなど、全国にPRしています。 なお、少子化の進展は国民共通の課題であることから、その対策に必要な財源の確保については、国において、国民の理解を得ながら社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討するとされているところです。 このため、お示しのやまぐち子育て応援県民税の導入については考えていないところですが、引き続き、国に対し、必要な財源が確保されるよう要望してまいります。 私は、若い世代に子育てするなら山口県と思っていただけるよう、今後とも、市町や関係団体等と連携し、結婚から子育てまで切れ目のない支援の充実に努めてまいります。 副議長(二木健治君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)ICTを活用した今後の教育についてのお尋ねにお答えします。 AI技術が高度に発達するSociety5・0時代には、ICTを活用した教育活動の充実はもとより、教員による対面授業や子供同士の学び合い、地域社会での多様な体験活動の重要性も一層高まっていくものと認識しています。 このため、県教委では、全ての県立高校に昨年度一人一台タブレット端末等を整備し、ICTを効果的に活用した授業改善の実践研究等にも取り組みながら、知・徳・体の調和の取れた教育を推進しているところです。 こうした中、ICTを活用した本県の教育のビジョンとして、やまぐちスマートスクール構想を掲げ、今年度から、海外とのオンライン交流や、一人一台タブレット端末を活用した全県合同のハイレベル課外授業の実施、不登校等に係る相談・カウンセリングのオンラインでの実施など、ICT環境を効果的に活用した取組を推進しています。 一方、お示しの体感教育については、これまでの教育実践の蓄積を生かしながら、生徒同士のコミュニケーションを重視した授業の充実を図るとともに、インターンシップ等の体験的なキャリア教育や、コミュニティ・スクールの仕組みを生かして地域で行うフィールドワークなどにも取り組んでいます。 また、こうした体験的な活動の中でも、ICTを効果的に活用することとしており、例えば、探究活動において、タブレット端末を使って実験結果をまとめた上で、グループの仲間と議論を重ねたり、地域の方へアンケート調査をする際に、タブレット端末を使いながら分かりやすく説明したりする取組を進めています。 県教委といたしましては、このような取組により、ICTを活用した新たな教育活動と、学校現場におけるこれまでの教育実践を組み合わせながら、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、子供たちの可能性を広げる教育の推進に取り組んでまいります。 副議長(二木健治君)これをもって代表質問を終わります。