1 県づくりの基本的方向について 2 その他
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(二木健治君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第一 一般質問 日程第二 議案第一号から第五十七号まで 副議長(二木健治君)日程第一、一般質問を行い、日程第二、議案第一号から第五十七号までを議題とし、質疑の議事を継続いたします。 合志栄一君。 〔合志栄一君登壇〕(拍手) 合志栄一君 新政クラブの合志でございます。通告に従いまして、県づくりの基本的方向について一般質問を行います。 村岡知事、三期目、御当選おめでとうございます。 失礼を顧みずに申し上げれば、村岡知事の一期目は、前知事が病で辞職された後を受け継ぎ、県政運営を安定的に継続されたことは評価されていいと思いますが、なかなか村岡カラーを打ち出すまでには至りませんでした。 二期目は、徐々に村岡カラーを打ち出しつつ、後半二年は、コロナ対応が最優先の県政運営となりました。このことでは、ワクチン接種率で全国の都道府県第一位で推移するなど、村岡知事のリーダーシップの下でのコロナ対応は、他県と比べても遜色なく、大方の県民の支持を得ていたように思われます。 そして、いよいよ知事三期目を迎えられました。私は、これからが本当の意味での村岡県政の始まりであり、本格的な村岡カラーによる県政運営が行われるようになるものと見ております。 したがって、三期目は、村岡知事が、政治家としての真価が問われ、四期目、五期目も県政運営を託するのかどうかの評価が定まる期となります。 私は、そのことへの期待も込めまして、県づくりの基本的方向について思うところを述べ、御所見をお伺いいたします。 質問の一は、自律分散型地域社会の形成についてであります。 生かし合いの関係を基本とする自律分散型地域社会を形成していくことが、これからの国づくり、地域づくりの目指すべき方向であると考えます。 そこでまず、ここで言う生かし合いの関係を基本にするとは、どういうことなのか、私なりの考えを申し述べたいと思います。 私は、市議、県議、市長、そしてまた県議と、多年にわたり山口の地において地方政治に携わり、様々な課題に取り組み、人の世の移り変わりを見てきました。 そして、私なりに到達した一つの世界観があります。それは、私たちが生きている世界は、生かし合いの関係が基本であり、その生かし合いの関係の中に位置づけられ、役割を果たすものが、存在を支持されて存続し、栄えていくということであります。裏返せば、生かし合いの関係の中に位置づけられないものは、時の経過の中で淘汰されていくという世界観であります。 このことは、人や企業などの栄枯盛衰においてだけではなく、世の中の制度、仕組み、ルールなどにおいても同様で、そうしたものの改革とは、生かし合いの関係を、時代や環境の変化に対応して改め進化させていく取組であるべきであり、その妥当性は、生かし合いという観点から検証、評価されるべきと考えています。 次に、自律分散型ということについてであります。 御案内のように、我が国は、明治維新を経て、徳川幕藩体制という封建制の国家から、中央集権の近代主権国家への転換を成し遂げました。 この体制変革の成功により、我が国は帝国主義の時代に、欧米列強の植民地になることを回避し、帝国主義の時代における国際社会の構成単位である主権国家として世界の中で枢要な地位を占めるに至りました。この明治以来の中央集権の統治構造は、現在も基本的に変わっていません。 思いますに、私が山口市議会議員をしていた昭和五十年代は、地方の時代ということが、しきりに強調されていました。その後、そうした主張は、地方分権を促す動きとなり、一九九九年(平成十一年)には地方分権一括法が成立しました。 さらに、二〇一五年(平成二十七年)からは、地方創生が担当大臣を置いて推進されて今日に至っています。 このように国による地方重視の施策の推進が図られてきていることは確かですが、それが功を奏しているかといえば疑問であります。 私たちは、現在の中央集権の構造を残したままでは、本格的な地方活性化はできないことを知るべきなのではないでしょうか。 そして、その中央集権管理型統治は、時代的役割を終えて、新たに自律分散型統治の国家への転換を図るべき時を迎えているのではないか。そうすることにより、日本は新たな活力を生み出し、飛躍を実現していくことができるのではないか。中央集権管理型の場合よりも自律分散型のほうが、国を構成する地域や人、また企業や様々な団体・組織等が有する個々の力を、より引き出し発揮させることができるのではないか、私にはそう思えてなりません。 そういう思いの背景には、デジタル技術の進化とインターネットの普及がもたらしている組織の在り方の劇的な変化があります。 これまでは、ピラミッド型にイメージされる中央集権管理型の組織が一般的でしたが、これからは、網の目でイメージされる多極分散型の組織が増えていくと見ています。 その網の目多極分散型組織を成り立たせているのが、デジタル技術であり、インターネットを含むネットシステムでして、そのテクノロジーに支えられた多極分散型組織は、組織構成員のマンパワーの最大化においても、課題解決の最適解の形成という面においても優れており、次第に従前のピラミッド型組織に比して優位性を持つことが周知され、広まっていくのではないかと予想しています。 ただ、そのためには、多極を構成する個々の存在が、組織の目的や方向性を共有し、自律的に役割を果たしていくことが求められます。 したがって、網の目多極構造で自律分散型の組織が、これからの時代、望ましい組織の在り方になっていくと考えられ、そのことは、国の在り方においても同様なのではないかと思う次第であります。 インターネットが普及し、高速大容量の情報通信インフラの整備が進んでいる我が国においては、既にハード面においては、国の統治の在り方を、中央集権型から自律分散型に転換していく素地は整っていますし、現岸田政権が掲げるデジタル田園都市国家構想は、その環境をより望ましい方向にレベルアップしていくものと思われます。 岸田総理は、自らが提唱する新しい資本主義に関して、今年の文藝春秋二月号に寄稿し、その中でデジタル田園都市国家構想を、地方を重視する新しい資本主義実現に向けた成長戦略の重要な柱と位置づけ、この構想実現のため、デジタル基盤を、道路、港湾、空港のように公共インフラとして整備する必要があり、海底ケーブルで日本を周回するデジタル田園都市スーパーハイウエーを三年程度で完成させ、日本中津々浦々どこにいても、高速大容量のデジタルサービスが使えるようにする旨、述べています。 願わくば、私は、この地方重視の施策としてのデジタル田園都市国家構想が、これまでの中央集権管理型統治における地方重視路線の延長ではなく、その域を超えてデジタル基盤が整った国における望ましい統治構造の在り方を追求する取組となることを期待するものであります。 そこでお尋ねであります。 その一は、都道府県を極とする自律分散型国家への移行についてであります。 私は、国の統治構造の中央集権型から自律分散型への転換は、明治維新のように一挙に体制変革をするというのではなく、順を追ってだんだんにという意味での漸進的移行により転換を図っていくのが現実的で、その第一段階は、都道府県を極とする自律分散型国家への移行だと考えています。そのためには、国メニューに沿い、国査定を経た地域活性化だけに予算がつくという在り方は、改められなければなりません。 そして、それぞれの都道府県内における地域活性化策の実現及び地域課題の解決は、基本的に都道府県と域内市町とで取り組むことができるよう、必要な財源・権限・情報の確保が保証されている仕組みの構築が図られるべきと考えます。 ついては、そうしたことも含め、都道府県を極とする自律分散型国家への移行に向けて、山口県からその動きを起こしていくことを期待するものですが、このことにつき御所見をお伺いいたします。 お尋ねのその二は、山口県における自律分散型地域社会の形成についてであります。 私は、デジタル技術やインターネットなどのテクノロジーが、自律分散型組織の比較優位を実現していると申し上げましたが、中国における共産党統治のツールとしてデジタル技術が駆使されていることからも明らかなように、使い方によっては、人を管理支配する強力な手段となるのもデジタル技術であります。 要は、デジタル技術は、人の思いを形にする上において極めて優れた技術であることからして、どういう思いで、どのような地域社会を実現していくためにこの技術を活用していくのかが、政治行政に携わる者には問われることになります。 そこで、そのことに関心を向け、私なりに至った結論が、生かし合いの関係を基本とする自律分散型地域社会の形成を目指すのが、デジタル化によって実現すべき望ましい方向であるということであります。 このことも、その方向性をもって漸進的に進めていくべきで、本県の人、企業、様々な組織・団体等のそれ自体の在り方やネットワーク、また、公共交通や医療の在り方など、県民の生活に関わる事業の仕組み、さらにはオープンイノベーションなどの産業振興に係る環境整備等、本県のあらゆる分野においてそれぞれの構成単位が、デジタル技術を活用して自律分散しながら生かし合いの関係でつながっている、そういう意味での生かし合いの関係を基本とする自律分散型地域社会の形成こそ、村岡知事が目指される「活力みなぎる山口県」の実現に至る道であると考えます。ついては、このことにつき、御所見をお伺いいたします。 質問の二は、上関原発建設計画の変更についてであります。 上関原子力発電所の建設は、その必要性が国のエネルギー政策において薄れており、建設の可能性は将来的にないことを認めて、それに代わる発電所建設への計画変更を図ることが、原子力発電所建設計画に賛同し、受け入れて国のエネルギー政策に協力してきた上関町に対して、国や県が取るべき誠意ある態度であると考えます。 国が描く電力に関するエネルギー政策の長期ストーリーが見えてきました。 今日、エネルギー政策は、電力分野においても脱炭素化を図りつつ、安定供給を実現していくことが求められています。 この課題に応えるこれまでのシナリオは、再生可能エネルギーと原発のセットでした。それが現在、再生可能エネルギーとCO2を排出しないカーボンフリー火力発電とのセットという方向へのシナリオ変更が図られています。 その新たなシナリオに基づく長期ストーリーは次のとおりであります。 その一は、再生可能エネルギーによる発電の拡大を推進し、主力電源にしていく。その二は、CO2を排出しないカーボンフリー火力発電の社会的実装を進めていく。その三は、再生可能エネルギーとカーボンフリー火力発電により必要な電力が安定的に確保できるようになるまでの間、原子力発電は、補完的かつ過渡的な役割を担うベースロード電源として活用する。その四は、原子力発電は、既設の原子炉の稼働で対応できるので、原発の新増設やリプレース、建て替えは行わない。以上であります。 このストーリーは、昨年十月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画(以下略称六次エネ計画)や、国が現在進めているエネルギー政策などから見えてくるものでして、以下そのことに関し、述べていきたいと思います。 まず、ストーリーその一、再生可能エネルギーの主力電源化についてであります。 このことに関しては、六次エネ計画は、再生可能エネルギーについては、主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組むとの方針を明記し、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギーが、二〇五〇年の発電量で占める割合を、参考値ということでありますが、約五〇ないし六〇%としています。 次に、ストーリーその二、CO2を排出しないカーボンフリー火力発電の社会的実装についてであります。 再生可能エネルギーによる発電は、天候に左右されやすく出力変動が大きいので、調整電源かつベースロード電源としてこれをバックアップし、電力の安定供給を実現しているのが火力発電でありますが、CO2の排出量が多いのが問題でした。 この問題の解決なくして、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現はあり得ません。 そこで現在、我が国では、CO2を出さないカーボンフリーの火力発電所の開発と、その社会的実装に向けて、二通りの取組が進められています。 一つは、燃焼してもCO2を出さない水素・アンモニアを燃料として活用した火力発電への取組であります。 もう一つは、CO2回収装置を付設した高効率石炭火力発電への取組です。 前者の取組としては、東京電力と中部電力との折半出資会社で、日本最大の火力発電所である株式会社JERAが、昨年八月から愛知県の碧南火力発電所で始めているアンモニアの燃焼試験があります。 この試験は、粉状の石炭にアンモニアを混ぜて燃やす実証試験で、少量のアンモニア混焼から始めて、三年後には二〇%混焼を実現し、二〇四〇年代には、アンモニア一〇〇%の発電を目指しています。 こうしたJERAの火力発電ゼロエミッション化を目指すカーボンニュートラルへの取組が、菅総理の就任後最初の所信表明演説における二〇五〇年カーボンニュートラル宣言をリアリティーあるものにしました。 後者の取組としては、中国電力と電源開発が折半出資で設立した大崎クールジェン株式会社のプロジェクトがあります。これは、瀬戸内海に浮かぶ島、広島県大崎上島町でありますが、そこで行われているもので、石炭火力の発電効率をガス化と複合発電により究極まで高めると同時に、排出されるCO2は、分離・回収してCO2の排出実質ゼロを実現しようとするものであります。 複合発電は二通りありまして、ガスタービンと蒸気タービンによる複合発電IGCC、それにさらに燃料電池を組み合わせた複合発電IGFCであります。 平成二十八年三月から始まった実証試験は、三段階ありまして、第一段階では、IGCCの発電効率の向上、設備の耐久性、設備費を含む発電コストなどの全ての目標をクリア、第二段階では、IGCCの九〇%以上のCO2分離・回収に成功、そして、本年三月から第三段階に移り、IGFC実装に向けた実証実験は、今年度中に完了する予定であります。 加えて、大崎クールジェンでは、分離・回収したCO2をコンクリート素材や燃料などに再利用するカーボンリサイクル(CCUS)の技術確立に向けたプロジェクトが、二〇二五年三月までを事業期間として進められています。 以上のようなカーボンフリー火力発電の実証試験の成果を踏まえ、今後は、カーボンフリー火力発電の実用化とその社会的実装が確実に進んでいくものと思われます。 次に、ストーリーその三、原子力発電は、補完的、過渡的なものになるについてであります。 これまでCO2を出さないで、安定的に電力を供給する発電施設として重要視されていたのが原発でしたが、そのことはカーボンフリー火力発電においても可能になりますので、カーボンフリー火力発電の社会的実装が進んでいけば、原発の役割は、おのずと補完的、過渡的なものとなり、その必要性は次第に薄れていくことになると思われます。 このことは、六次エネ計画が、二〇五〇年の電源構成見通しにおいて、原子力単独の比率を示していないことからもうかがえます。 六次エネ計画で注目すべきは、電源構成に初めて水素・アンモニア発電が取り上げられたことです。 水素・アンモニア発電は、CO2を出さないカーボンフリー火力発電でJERAが、その実用化に向けて実証試験に取り組んでいることは、さきに紹介しましたが、その水素・アンモニア発電の電源構成比率が、二〇三〇年は一%程度とされ、二〇五〇年は、参考値ということでありますが、一〇%程度と想定されています。 それに奇妙と思われますが、原子力とCO2回収型火力発電、すなわちカーボンフリー火力発電を一くくりにして、二〇五〇年における電源構成を三〇ないし四〇%としています。こうしたことから、何が読み取れるのでしょうか。 私は、福島原発事故以後も、電源のベストミックスということで、原子力発電は、電源構成比率において二〇ないし二二%を将来にわたって確保していくとされていたエネルギー政策の基本方針の転換があったと見ています。 水素・アンモニア発電やCO2回収型高効率石炭ガス化複合発電などの社会的実装を進めていくことで、あえて、いまだ国民の反対が根強くある原発の新増設はなくとも、電力の安定供給と、二〇五〇年カーボンニュートラルは実現できるとの判断の下、六次エネ計画は策定されたものと考えられます。 原子力からカーボンフリー火力への方向へかじを切ったことを象徴的に示しているのが、二〇五〇年における水素・アンモニア発電の電源比率一〇%であり、原子力の電源比率が単独で示されず、カーボンフリー火力と一くくりで、三〇ないし四〇%とされたことであります。 そして、ストーリー四、原発の新増設・リプレースは、行わないについてであります。このことは、ストーリー三からも明らかなことです。 国は、二〇五〇年、カーボンニュートラルに向けて必要な原子力発電は、既設の原発で対応できると判断しているものと考えられます。 このことは、昨年十月の六次エネ計画の策定に際して、萩生田経済産業大臣が、現時点で原子力発電所の新増設・リプレースは想定していないとの考えを表明し、従来の政府方針を踏襲する姿勢を明確にしたことからも明らかであります。 二〇五〇年ニュートラルの実現に既設の原発だけではなく新設の原発も必要というのであれば、新しい原発の建設・稼働には、少なくとも三十年前後の歳月を要することから、現時点において原発の新増設の方針を打ち出し、着手しておかなければなりません。そのことを経済産業大臣が否定したことからも、国は二〇五〇年カーボンニュートラルを、原発の新増設なしに実現していくとの方針を確定していることがうかがわれます。 それなら、二〇五〇年以降に原発の新増設があるのかということですが、カーボンニュートラルと電力の安定供給が、基本的に再生可能エネルギーとカーボンフリー火力で実現できるのであれば、その先にも原発の新増設はあり得ないのではないでしょうか。緩慢な退場、これが将来的に原発がたどる道であろうと思われます。 なお、中国電力の島根三号機は、建設が完成しており、既設の原発とみなしていいと考えています。 以上、るる申し上げてまいりましたが、この目的はただ一つ、上関原発の建設は、将来にわたってないという事実を分かってもらうためであります。 そして、原発の受入れで町の振興を図ろうとしてきた上関町に、原発に代わる発電施設の誘致が実現するよう上関原発建設計画の変更に、県が主導して取り組むべきことを訴えるためであります。 では、原発に代わる発電施設は何でしょうか。私は、それは大崎クールジェンプロジェクトで取り組まれているCO2回収型で高効率の石炭ガス化複合発電所であると考えます。 カーボンフリーの火力発電は、水素・アンモニア発電という方向もありますが、本県の場合、中国電力が取り組んでいる大崎クールジェンプロジェクトの成果であるCO2回収型のIGCC、もしくはIGFCを導入する方向が妥当であることは言うまでもありません。 以上の理由から、上関原子力発電所の建設計画は、CO2回収型の石炭ガス化複合発電所(IGCC)、もしくは石炭ガス化燃料電池複合発電所(IGFC)の建設計画に変更することを提案します。 ついては、この上関原発建設計画の変更につき、県が主導的役割を果たすことを期待するものですが、御所見をお伺いいたします。 私の質問は以上ですが、このたびの質問は、国の総合資源エネルギー調査会の委員である橘川武郎教授、国際大学大学院の教授でありますが、この橘川教授からの教示や発表しておられる見解に負うところが多いことを申し添えまして、私の一般質問を終わります。(拍手) 副議長(二木健治君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)合志議員の御質問のうち、私からは、自律分散型地域社会の形成に関して、都道府県を極とする自律分散型国家への移行についてのお尋ねにお答えします。 我が国では、現在、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に向け、国と地方との適切な役割分担の観点から、住民に身近な行政は地方公共団体において処理することを基本に、国から地方への権限移譲と地方税財源の充実強化を目指す地方分権改革が進められています。 また、地方が人口減少の克服と地域の活性化に向け、自主的・主体的に地方創生に取り組んでいけるよう、国においては、地方創生推進交付金等の必要な財源措置を講じ、地方の取組を強力に後押ししているところです。 こうした中、本県では、人口減少・少子高齢社会にあっても、活力に満ちた産業や活気ある地域の中で、県民誰もがはつらつと暮らせる「活力みなぎる山口県」の実現を目指し、やまぐち維新プランに沿って、本県の強みを生かした産業振興や持続可能な地域社会の形成に向けた取組を進めています。 私は、これらの施策や地域活性化の取組は、どこまでも各地方公共団体が、地域の実情や特色を踏まえ、住民ニーズや意見をしっかりと踏まえながら実施していくべきものと考えています。 そして、その実現に向けて、国に対しては、引き続き地方と対等の立場に立って、我が国の将来を見据え、地方分権改革と地方創生の推進に一層力を尽くしていただくことを強く期待しています。 この考えの下、県としては、自らの判断と責任により、地域の実情に沿った行政を展開し、よりよい行政サービスの実現を図る観点から、毎年、国に対し、政府要望等を通じて、地方税財源の充実を要請するとともに、さらなる権限移譲や義務づけの廃止などの提案を行っているところです。 こうした取組の結果、これまで、地方に影響を及ぼす国の政策を国と地方で協議する場が制度化され、事務の執行を直接義務づけない法律も増加しています。 さらに、地域の自主性を著しく制限する従うべき基準の緩和が進み、地方の負担となっている法定計画の見直しの検討も始まっています。 また、現在、国においては、お示しのように、急速に進化するデジタル技術等を生かして、国がデジタル実装のための共通基盤を整え、地方がこれを効果的に活用しながら、個性豊かな地域づくりを進めるデジタル田園都市国家構想も検討されています。 私は、引き続き、国と共に地方分権改革と地方創生を推進し、さらには、国のデジタル田園都市国家構想ともしっかりと連携を図りながら、お示しの自律分散型国家への移行にも資する、山口県の新たな未来に向けた県づくりを積極的に進めてまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(二木健治君)平屋副知事。 〔副知事 平屋隆之君登壇〕 副知事(平屋隆之君)山口県における自律分散型地域社会の形成についてのお尋ねにお答えします。 将来にわたって、安心で希望と活力に満ちた山口県を築いていくためには、市町はもとより、企業や団体、大学など、様々な分野で主体的に活動を行っておられる皆様と思いを共有し、連携・協働しながら県づくりの取組を進めていくことが重要です。 このため、県では、毎年度、様々な分野の有識者で構成されております山口県活力創出推進会議を開催して、県づくりへの御意見や御提案を伺い、その後の施策展開に反映させています。 また、施策の実施に当たっては、幅広い分野で関係団体等とのネットワークを構築し、それぞれの持つ知見やノウハウを結集することで、より大きな成果の創出に取り組んでいるところです。 こうした中、お示しのデジタル技術は、その活用によって、多様な主体との連携・協働をさらに広範で緊密なものとするだけでなく、おのおのの力や役割分担に沿った主体性を最大限に引き出し、今までにはない手法で地域や社会の課題を解決し、新たな価値を創造する、そうした大きな可能性を有していると考えています。 この考えの下、県では、デジタル技術を積極的に活用し、市町や関係団体、企業等と連携をしながら、MaaSや遠隔医療等の社会実装を目指し、実証実験に取り組むとともに、多様な主体の参画を得て、産業分野におけるオープンイノベーションを促進するなどの取組を鋭意進めているところです。 さらに、企業や団体から市民エンジニアまで、幅広い主体が参加する官民協働フォーラムを立ち上げ、その参加メンバーによって中山間地域でのスマート物流や、道の駅を核としたスマートフォンによる高齢者支援など、様々な取組が進められています。 県としては、引き続き、県政のあらゆる分野で、デジタル技術を効果的に活用し、多様な主体と緊密に連携・協働した取組を一層推進することにより、山口県のさらなる活力の創出を図ってまいります。 副議長(二木健治君)三浦商工労働部理事。 〔商工労働部理事 三浦健治君登壇〕 商工労働部理事(三浦健治君)上関原発計画の変更についてのお尋ねにお答えいたします。 国の第六次エネルギー基本計画では、火力発電について、排出される二酸化炭素の回収・貯留等により脱炭素化を図ることや、次世代の高効率石炭火力発電である、お示しのような石炭ガス化複合発電などの技術開発等を推進することが記載されています。 また、原子力発電については、運転時には温室効果ガスの排出がないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与するベースロード電源として、必要な規模を持続的に活用していくとされています。 このように、エネルギー基本計画の中で、今後のエネルギー政策の方向性が示される一方、国からは、上関原発の重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、解除する考えはないとの見解も示されており、エネルギー政策上の位置づけは現在も変わっていないと認識しています。 また、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、現在も変わりありません。 県としては、上関原発建設計画については、これまで一貫して地元上関町の政策選択や国のエネルギー政策を尊重するという立場で対応しており、事情の変化がない中で、御提案のあった計画変更について県が役割を果たすということは考えておりません。