委員長報告
───◆─・──◆──── 日程第三 脱炭素社会における産業発展方策調査に関すること 議長(柳居俊学君)日程第三、脱炭素社会における産業発展方策調査に関することについて、調査の経過並びに結果に関し、委員長の報告を求めます。 脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員長 友広巌君。 〔脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員長 友広巌君登壇〕(拍手) 脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員長(友広巌君)脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員会を代表いたしまして、本委員会における審査の経過並びに結果について御報告を申し上げます。 地球温暖化への対応は、私たちが避けて通れないものですが、国における二○五○年カーボンニュートラルや、二○三○年を当面の目標とするエネルギーミックス実現などの具体的な取組は、石炭などの化石燃料を中心としたエネルギー構造を抜本的に変えるものであり、産業面での大きな影響等も懸念されるところであります。 このため、本県議会では、昨年七月に、脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員会を設置し、企業の調査や執行部からの調査報告、文献等により調査研究を重ね、委員間での協議を行い、県内企業をはじめ、県経済、雇用や県民生活において懸念される影響や課題等の把握に努めたところです。 その調査結果として、産業面への影響、電力の安定的な確保、そして、県や市町における取組の三つの観点から、これからの政策の在り方を十七項目の提言として取りまとめをいたしました。 なお、調査結果及び提言は多岐にわたるものであり、その詳細は、お手元の報告書においてお示しをさせていただき、報告書の主要な点について申し上げることといたします。 まず一つ目は、産業面における影響と求められる取組として七項目の提言であります。 本県は、第二次産業の割合が大きい工業県で、基礎素材型に特化し、大量のエネルギーが必要という産業特性を有しておりますが、これを支えてきたのは、安定供給性や経済性等に優れた石炭による火力自家発電であります。また、自動車産業や発電事業者の火力発電所も所在しており、他県に比べて産業部門からのCO2排出割合が高くなっております。 こうした中、カーボンニュートラルへの取組は、石炭に代わるエネルギー源の安定確保をはじめとして、企業の努力だけでは対応が困難な課題も多く、また、多大な設備投資や研究開発など、個々の企業にとって大きな負担を伴うことから、対応いかんでは、企業の存続はもとより、本県の経済・雇用等への極めて大きな影響が懸念されるところであります。 つきましては、本県経済の発展の源であり、本県の活力、雇用を支える産業がさらに発展をしていくための方策として、まずは、石炭の使用削減を着実に進めることができる環境整備、企業の競争力確保のための支援措置、企業の脱炭素化コストを社会全体で負担することの国民理解の醸成について、提言として整理をしたところであります。 次に、整備が進む徳山下松港の港湾インフラが、カーボンニュートラルの具現化も踏まえて長期に活用できますよう、国際バルク戦略港湾については、適切な施策を講じる必要があります。 また、自動車の電動化に伴う関連部品の生産拠点の整備や、既存の部品製造事業者の業態転換等への支援など、歴史的な技術革新のさなかにある自動車産業に対する支援が必要であります。 そして、カーボンニュートラルの流れは、新しいビジネスチャンスの機会でもある一方で、既存の事業スタイルの変革も迫る可能性が高く、地域経済を支える中小企業への経営面での支援等は不可欠でありますし、本県の中山間地域や海洋環境などを支える農林水産業のさらなる発展のため、スマート化や森林・林業の活性化等は課題であり、それぞれ提言として整理をいたしました。 二つ目は、暮らしや地域産業を支える電力の安定供給体制の確保についての六項目の提言であります。 電力は既に社会経済活動全般において、いっときたりとも絶やすことができないインフラとして深く浸透しており、その安定供給の確保は極めて重要な課題であります。 二○一一年三月の東日本大震災による原発の事故以降、再生可能エネルギーによる電力供給は増加をしていますが、電力としての不安定さは現状では否定できません。 したがって、安定供給電源としてこれを補っている石炭火力発電を使用しないということは、停電のリスクを高め、産業はもとより、医療や交通をはじめとした生活基盤に甚大な障害を生じるおそれのあるブラックアウトの発生という最悪の事態も想定され、これは絶対に避けなければなりません。 このため、県民の暮らしの安全や地域産業を支えるため、まずは地域の電力供給を支える発電事業者に対する支援について提言としております。 また、脱炭素に不可欠な再生可能エネルギーの導入促進として、再エネ主力電源化の切り札とされております洋上風力については、日本版セントラル方式の早期確立など、関係自治体と連携した国の責任ある対応を、大規模太陽光発電や陸上風力発電施設の整備については、防災面でのさらなる配慮や太陽光発電施設の廃止後の撤去や原形復旧などについて、国の対策のさらなる強化を、そして、再エネの導入促進に不可欠な送電線網の整備促進等を提言として整理をしております。 また、民間企業が山口県沖で試掘調査を予定しているガス田開発の動向を見極めながら、県内への産業波及にもつながるよう国に必要な対応を、さらには、地域の特性を生かした独自の取組への支援などの県の取組を、国においても支援する措置をそれぞれ提言として整理をいたしました。 三つ目は、世界的な潮流であるカーボンニュートラルを新たな県勢発展の機会とするため、県や市町における取組について、四項目の提言です。 まず、国や地域企業の課題を踏まえた県としての総合的な戦略の策定と、それを実現するための組織の整備、さらには果敢な施策の推進であり、その具現化を県に対して強く求めるものです。 次に、徳山下松、宇部地区の港湾インフラ等を活用し、脱炭素エネルギーの拠点化を進めるとともに、独自の支援策の拡充強化等、さらには、再エネの導入拡大に向けた支援や市町による取組の加速等、また、県内における蓄電池産業の育成などの課題を提起しております。 加えて、カーボンニュートラルは産業、個々の企業の経営、県民の暮らしなどへの影響が大きいことから、その具現化に向けた具体的な対応等の検討をしっかりと進め、企業や県民の理解と積極的な参加を得るように努力をした上で、必要な宣言や施策を推進されることについて、それぞれ提言として整理をいたしました。 また、カーボンニュートラルの取組は過渡期であり、今後、新たな課題等が生じることも想定し、県内企業等のニーズの把握等を機動的、迅速に行い、必要な政策提言などを適切に行うことが必要であることを提起しています。 以上が、本委員会の審査の経過並びに結果の概要であります。 本委員会は、ただいまの提言等を整理した本報告書をもって、今後、国、県に対して要請活動を行うこととしておりますが、村岡知事をはじめ、執行部におかれましては、本県産業が置かれた極めて厳しい状況をこれまで以上にしっかりと御認識をいただき、県内産業のさらなる発展に向け、適切に対応されるようお願いをいたします。 最後に、新型コロナウイルスのデルタ株やオミクロン株による感染拡大という大きな制約の中での委員会活動となりましたが、関係の皆様方の格別な御理解、御協力により、調査や取りまとめを行うことができましたことに、委員長として改めてお礼を申し上げ、本委員会の報告とさせていただきます。(拍手)