1 新型コロナウイルス感染症の対応について 2 人口減少・少子化への対応について 3 県の農林水産業の成長産業化について 4 脱炭素社会の実現について 5 県民葬開催の意義について
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(二木健治君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第十九号まで 副議長(二木健治君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第十九号までを議題とし、質疑の議事を継続いたします。 井上剛君。 〔井上剛君登壇〕(拍手) 井上剛君 皆さん、こんにちは。民政会の井上剛です。 早速ですが、会派を代表し、県政の諸課題に対し質問させていただきます。 まず初めに、新型コロナウイルス感染症の対応についてお聞きします。 新型コロナウイルス感染症が我が国に確認されてから二年半、七月からのオミクロン株BA・5による第七波では、一日の感染者数も全国で過去最高を更新しました。 感染については、ウイルスも変異を繰り返すことで、感染力は上がるが弱毒化すると言われ、さらに、ワクチン接種の広がりと自然感染による免疫保持者の増加により、重症化防止効果が出てくるので、感染者数増加に比べて重症者数が少なく、軽症化してくると考えられていました。 実際に第七波では、感染者数は過去最高を記録していますが、全国の一日の重症者数のピークで見ますと、第一波から第五波のあった二○二○年一月から昨年十二月末までの二年間では二千二百二十三人、今年の一月から六月の第六波では千五百七人に対し、今回の第七波では六百四十六人と大幅に下がってきています。 しかし、同様の期間で一か月平均の死亡者数で見ますと、第五波までの二年間では七百六十六人、第六波の六か月間では二千百四十八人、そして第七波の七月から九月二十五日までの約三か月では約四千四百人と上昇しています。 同様の期間で本県の死亡者数を見ましても、最初の二年の一か月平均が約四人、第六波では約十五人、そして第七波では約六十六人と激増しています。 この死亡者数について、発生当初は感染によって重篤な肺炎症状となり、お亡くなりになられた方が多かったのですが、今の変異株では、感染症そのものでお亡くなりになられたのではなく、基礎疾患があった方が感染をきっかけとして、持病が悪化してお亡くなりになるケースが増えているために、重症者は少ないが死亡者数が多くなっていると言われています。 そのために、ある県の知事は、死亡者数のカウントを見直すべきだ等の意見をおっしゃっています。 しかし私は、死因は別であっても、きっかけは新型コロナウイルス感染症に感染したことで持病の悪化を招いたと考えられる限りは、見直しはすべきではないと考えています。それは、新型コロナウイルス感染症に対して油断を招いてしまうと考えるからです。 また、感染者の全数届出については、医療現場の負担軽減のために、本日から高齢者などに限定した重点化が全国一律で運営が開始されています。 私は、簡略化については、最初に感染が広がった第一波の令和二年五月二十九日から運用を開始したHER─SYSの内容を見直すべきだと考えていました。 それは、氏名などの基本情報、発症日などの検査診断に関する情報、入退院日など措置などの情報、行動歴など積極的疫学調査関連情報など、入力項目が多く設定されていたからです。 こうしたこともマイナンバーを活用する、そして感染症も二年以上経験したのですから、患者さんの命を守るため、医療機関や保健所の負担軽減のために、今、何が本当に必要な情報項目なのかを現場の声を聞いて見直すことで、全数届出は継続すべきと考えていました。 今回の重点化で、発生届の対象外となった方を対象とした健康フォローアップセンターを運営することとなっていますが、第七波では、一日最高で約二万三千人の方が自宅療養等をしており、自宅療養者の方が保健所などに相談しようとしても、電話がつながらないといった苦情を多く聞いています。 一点目として、知事として今後の本県の感染者の命を守るために、発生届の全数届出の見直しに対し、どのように考え、自宅療養者が安心できるようどう対応していかれるのか、お伺いいたします。 二点目は、医療体制の整備についてです。 先ほど御案内したように、変異株によって感染者数は増加し、持病が悪化してお亡くなりになるなど、死亡者数が増加する事態となっています。 今後、症状が軽いが基礎疾患がある方で宿泊療養や自宅療養を希望した方、基礎疾患がなく、宿泊や自宅療養をしている方の容態急変に対応できる医療体制の整備が急がれます。 今回の第七波での死亡者数の増加の要因を、県はどのように分析し、今後、患者さんの命を守るための医療体制の整備にどのように取り組むのか、お伺いいたします。 三点目は、ワクチン接種についてです。 現在、六十歳以上の方と基礎疾患のある方、かかりつけ医さんから接種を勧められた方は四回目を、十二歳以上の一般の方は三回目まで、五歳から十一歳までの子供さんも三回目までの接種が行われています。 全県の全人口に占める三回目まで接種した方は約六九%であり、若い方の接種がなかなか進んでいないのが現状です。 それに加えて、六十歳以上の方で四回目の接種を今は見送る方も増えています。それは、新たに供給が開始された新しいワクチンを待つという方が増えているからです。 今まで供給されていたワクチンでは、現在主流となっているオミクロン株に対する感染・発症予防効果が低く、新しく開発された二価ワクチンは、それに対応していると報道されているからです。 しかし、国として新しく供給されるワクチンは、どのくらいの量を確保でき、どのように供給していくのか、前回の接種からどの程度間隔を空ける必要があるかなど、おおよその接種計画などの情報が少ないために、どうすべきかと迷っている方も多いのも事実です。 オミクロン株対応二価ワクチンは、BA・1に対してはウイルスの働きを抑える中和抗体の値がファイザー社製で一・五六倍から一・九七倍に、モデルナ社製で一・七五倍に上昇したとされています。 しかし、現在主流となっていますBA・5では、その効果は低くなると言われています。 さらに米国では、BA・5対応ワクチンの接種も開始され、どうせならそのワクチンをいち早く打つためにそれを待つという方も出てくる可能性があります。感染しての重症化を防ぐためには、今あるワクチンを積極的に接種したほうがよいとする意見もある中で、県として、ワクチン接種の促進をもっと積極的に発信しなければならないと考えます。 県として、新しいワクチンの入荷も踏まえ、今後、どのように接種を促進していかれるのか、お伺いいたします。 次に、人口減少・少子化への対応についてお伺いいたします。 人口減少・少子化に歯止めがかかりません。二○二一年十月一日の山口県の人口は、前年に比べ一万四千六百七人減の百三十二万七千四百五十二人となりました。 対前年度比でも一・一%減少と、三十六年連続の減少で過去最大となりました。 令和三年の人口増減を見ますと、県外転入・転出に伴う社会増減は三千五百九十九人の減少となっていますが、高卒や大卒の学生の県内就職支援活動などで県内の就職率の向上や移住促進などで減少幅が小さくなっています。 その一方で、自然増減は一万一千四百九十六人減と減少拡大が続いています。人口学的には、人類は多産多死、多産少死、少産少死、少産多死というサイクルで流れていくと言われ、日本では少子化に歯止めがかからない上に、二○二四年から年間百五十万人以上が亡くなる多死時代に突入することから、自然減はさらに加速していく模様です。 大人になったら結婚して、子供を産んでというのはもう古い話で、生き方の多様化、経済的理由などで結婚をしないことを選択する人も増加しています。 したがって、婚姻数や出生数が多少改善されたところで大きな流れは変わらず、人口構造の新陳代謝には少なくとも百年はかかると言われており、人口は減少し続けると言われています。 こうしたことを考えますと、人口は減り続けるという現実を前提に、少子化を少しでも食い止めることに併せ、人口減少に合わせた適応戦略を考えていかなければならないフェーズに来ていると言えます。 人口減少の克服を最重要課題としています本県におきましても、二○二一年の合計特殊出生率は一・四九となり、二○二四年目標の一・七への引上げが厳しい状況です。 本県の将来推計を見てみますと、二○四五年には人口が百四万人へと減少する見込みで、年齢三区分で見ますと、十五歳から六十五歳までのいわゆる生産年齢人口は約二十万人も減少しています。 こうした人口減少・少子化の影響は、労働力供給の減少、現役世代の負担増大による疲弊、市町のサービス低下など、マイナスのことが考えられます。 活力ある県を維持していくには、こうした流れの中でも若い方や労働力のある方々に、山口県に住むことを選択していただけるような、全国に先駆けた思い切った政策が必要です。 山口県だから安心して子供を産める、あるいは子供ができるから山口県に住みたいと出産を希望する方に選ばれるような思い切った政策です。 子育て支援で人口増加に転じた明石市では、五つの無償化を掲げました。遊び場、一歳までのおむつとミルク、第二子以降の保育料、中学校の給食、高校三年生までの医療費です。 こうしたことを県内の市町と連携して、県内全ての市町で実施することも大きな話題になると考えます。 また、労働力の確保として、高齢者・障害者・女性の就業環境の整備、高付加価値型の新規産業分野の創出、疾病や要介護状態の防止と高齢期における社会参加の推進、デジタル化やロボット等による省人化による生産効率向上なども進めなくてはなりません。 また、地方行政もサービス低下を招かないような地域連携したデジタル化の推進なども必要です。 県として、人口減少が進む国内にあって、活力ある山口県として他県に打ち勝つために、どのように適応した戦略に取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。 次に、農林水産業の成長産業化についてお伺いいたします。 農林水産業は、食料の安全と安定供給という基本的な役割に加え、県土や自然環境の保全など、多面的な機能を有している重要な産業です。 しかし近年では、担い手の減少や高齢化、産地間競争の激化、異常気象による生産不安など多くの課題に直面しています。 こうした課題に向け県では、今後、十年程度を見通した本県農林水産業のあるべき姿を見据え、当面、五年間の着地点までの着実な歩みを刻む、やまぐち農林水産業成長産業化行動計画を平成三十年に作成し、今年度が計画の最終年度となっています。 計画は、四つの柱、十九の重点項目、六十九の数値目標からなり、中核経営体を核とした山口県農林水産業の成長産業化を目指すものです。 二○二一年までの実績を見てみますと、未来を担う人材や中核経営体の育成では、新規就農者や女性リーダー、経営参画者の育成は順調に上がってきていますが、担い手の経営面積などは目標に大きく届かない様子です。 生産意欲と需要を創造する、ぶちうま!維新については、コロナ禍の影響もあり、主要なブランド品目の販売量や大都市圏への販路拡大は目標を大きく下回っています。 そして、全体の動向を見ましても、総農家数、販売農家とも年々減少の一途であり、かつ、基幹的農業従事者の四分の三以上が六十五歳以上の方です。また、経営耕地面積が一ヘクタール未満の経営体が約六六%も占めています。 林業については、減少の一途でありましたが、近年では新規就業者も増加しつつありますが、林業経営体数は減少傾向が止まりません。水産業も同様な傾向です。 農林水産省が三月に公表した二○二○年の農業総産出額を見てみますと、山口県は前年より四十億円減少した五百八十九億円で全国四十二位となっています。 以前は新潟県など米どころが上位の常連でしたが、需要の低下もあり、稼げる農業への内訳が一変し、畜産や園芸への転換を進めた九州勢が上位に位置してきており、トップテンには鹿児島県、宮崎県、熊本県が入っているだけでなく、沖縄県を除く九州七県の最下位である大分県でも千二百八億円で全国二十六位です。 躍進を遂げた宮崎県では、みやざきブランド確立戦略構想を進め、作ったものを売るから売れるものを作るを目標として、高級マンゴーのブランド「太陽のタマゴ」や宮崎牛、日向鶏など商品の質を高めるとともに、畜産物と花卉を除く全てのブランドに月二検体以上の残留農薬検査を義務づけ、基準値を超えた場合は迅速に出荷停止措置を取れる安心・安全を前面にした体制も整えたのです。 本県も県産農林水産物のブランド力強化として、味や品質に優れ、全国に誇れるやまぐちブランドを県内外に積極的に販売しようと、ぶちうま!アンバサダーを活用したSNSによる情報発信や、大都市圏での商談会出展ややまぐちフェアを行ってきました。 しかし、主要なブランド品目、ゆめほっぺ、日本酒、長州黒かしわ、乾椎茸、きじはたの販売量は、二○一七年基準で、二○二○年は三%減であり、今年度目標の二○%増を達成することが難しい状況です。 耕作規模に関して、私がある若い農家の方から伺った話では、近年、農業機械も進化し、大型で作業効率も上がってきた。周りにはまだまだ作れる農地が多く残っているし、作るだけの労力も確保できる。問題は、販路開拓に加えて、それを保存しておく技術で、それがないから作っても腐らせるだけになる。近年、毎年のように繰り返される異常気象を考えると、安定的に一年中にわたって県産の農産物、特に野菜を新鮮な状態で供給できる保存技術と保管庫が必要と考えるとおっしゃっていました。 また、人の確保においても、近年では、農業に興味のある都市住民の方が、多様な働き方の中で別の仕事をしながら農業をする半農半Xや、ワーケーションと農業を組み合わせた農ケーション、繁忙期の異なる複数の地域の農協が連携し、就業期間終了後に次の就職先を紹介し合う取組など、多様な農業への関わり方も出てきています。 そして、近年の異常気象による不作や大規模自然災害、豚熱などの動物疾病、新型コロナウイルスなどの感染症の流行、ロシアによるウクライナ侵攻など多様化する生産リスク・供給リスクを考えると、若い方が安心して、成長産業として農林水産業に挑んでいただくためにも、食料の安定供給だけでなく、先ほど御案内のように保存・保管できる体制も必要になってくると考えます。 そこでお尋ねします。やまぐち農林水産業成長産業化行動計画の最終年に当たり、この五年間の活動を振り返り、どのように分析され、今後の農林水産業を取り巻く環境をどう捉え、今後、新たな計画の作成を含め、どのように農林水産業の成長産業化を進めていかれるのか、お伺いいたします。 次に、脱炭素社会の実現についてお伺いします。 二○二○年九月議会から、私はこの問題をずっと取り上げ、県の取組について聞いてきました。 国内を振り返ってみますと、全国で毎年のように大規模自然災害が繰り返され、多くの方がお亡くなりになり、そして住居を奪われる方も多く発生しています。 さらに、世界中でも異常気象が観測され、中には国の存続を脅かすような状況も起きています。 産業革命以降、化石燃料を活用して発展してきた我々にとって、地球温暖化対策は次の世代にこの地球を引き継ぐために、最も重要な課題だと言えます。 こうしたことから、具体的な目標として二○五○年カーボンニュートラルが掲げられたのです。 この気候変動対策は我々の最大の課題ではありますが、さらなる発展をもたらす新たな技術革新のチャンスでもあるのです。 今までの県の答弁や対応には、大規模自然災害で被害を受けた方々の気持ちや、脱炭素化を進めなくてはならない事業所の危機感や使命感とのギャップを感じ、残念な気持ちでいっぱいでした。 しかし、県も国の動きや社会情勢の変化、そして県議会脱炭素特別委員会の政策提言なども踏まえ、今年五月三十日に知事をトップとする山口県環境政策推進本部を立ち上げられました。 そしてこのたび、二○二六年度までの五年間を計画期間とする新たな総合計画の素案が示され、その中で活力に満ちた山口県をつくる四つの視点の中に、脱炭素化であるグリーンが示されたのは評価するところです。 また本県は、産業部門及びこれに関連する工業プロセス部門の温室効果ガスの排出割合が約七○%と非常に大きいことから、産業脱炭素化推進室を設置したことも大変評価するところです。 そして、本県経済を支えているコンビナート企業や関係自治体を中心とした山口県コンビナート連携会議を九月二日、産業戦略本部の全体会合を六日に開催し、やまぐちコンビナート低炭素化構想として、コンビナートを構成する製造業のエネルギー起源のCO2について、二○五○年カーボンニュートラルの実現、そして中間的な目標として、二○三○年度に二○一八年度比三二%削減を掲げ、さらなる高みを目指すとしました。 私としては、やっとここまで来たかの思いです。 しかし、残念なのは脱炭素化に取り組む本気度がまだまだ伝わってこないことです。せっかく立ち上げた本部会議も、五月三十日に第一回を開催した以降、開催の計画も聞きません。 最大の課題であったコンビナート群が目標を掲げたのに、これらを受け、来年二月に県としての温室効果ガス削減目標を決めるとされています。 勝負の十年と言われる二○三○年まであと八年しかないのに、目標や計画づくりにあまりに時間をかけ過ぎです。県内の各事業所も、大きく何が課題かは分かっています。それを実行に移すだけの技術的支援や資金的支援などが必要なのです。それを後押しできるのは、政治の力でしかないのです。 脱炭素化の情報は日々変化しており、それを牽引する本部会議は、少なくとも三か月に一回ぐらいで開催しなければ遅れてしまいます。常にトップが興味と関心を示さない限り、物事はなかなか進まないのです。 改めて、地球温暖化が原因とされる大規模自然災害で被害を受けられた方々の気持ちや、この地球環境を守るため、事業所の存続をかけ脱炭素化を進めている事業所の危機感や使命感を踏まえ、知事として脱炭素化に取り組む思い、決意をお伺いいたします。 次に、ゼロカーボンシティの表明について一言申し上げます。 この質問はもう四回してきましたし、話題にするのは今日で五回目になります。これまで宣言した自治体は七百六十六自治体で、表明自治体総人口は約一億一千八百五十三万人にもなりました。 本県は、三市が表明したのみです。もうここまで来たら、最後の最後に宣言したほうがニュースになってよいのかもと自虐的に考えてしまうほどです。 なぜ、私がこの宣言にこだわっているのかと不思議に感じる方もいらっしゃると思います。それは、県という大きな組織がとてつもない大きな課題に、人の気持ち、行動を変え立ち向かっていくには、トップの姿勢がとにかく大事なのです。 大きな組織はタンカーと一緒です。順調なら惰性で前に進んでくれます。しかし、方向を変えなければならないとき、小さな船ならすぐに曲がってくれますが、タンカーは面かじいっぱいにかじを切っても、やっと、それもゆっくりと方向を変えてくれるしかできないのです。 県として変革しなければならないと判断したなら、トップは面かじいっぱいにかじを、それも早く切らないとだめなのです。 脱炭素化は地球全体としても大きな課題であり、本県にとっては本当に大変な課題です。だからこそ、私はこの宣言にこだわってきたのです。その思いを酌み取っていただき、早期の宣言を期待したいと思います。 最後に、県民葬の開催の意義についてお伺いいたします。 参議院議員選挙の投票日直前の七月八日、国内外に大きな衝撃が走りました。安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中に、多くの聴衆の前で凶弾に倒れたのです。 改めまして、衷心より哀悼の意を表します。 平和と言われたここ日本で、この突然にして衝撃的な事件は、国内外で大きな悲しみをもたらしました。 十二日に行われた葬儀では、近しい人のみによる家族葬の形式だったのですが、多くの国民が最後のお別れにと会場周辺に集まり、車が通過した沿道では、頭を下げて祈る人や涙を流す人、安倍さんありがとうと声をかける方もいらっしゃいました。 また、凶弾に倒れられた現場をはじめ、全国各地に設けられた記帳所にも多くの方が弔意に訪れました。 そして、事件から六日後の十四日、岸田総理は、憲政史上最長の在任期間、内政、外交で大きな実績、外国首脳を含む国際社会から高い評価、選挙期間中の突然の蛮行による御逝去の四点を挙げて国葬とすることを表明し、いよいよ明日、開催されます。 国葬について、事件直後はその衝撃などから開催に対して賛成の声が多かったのですが、旧統一教会などとの関わり問題が明らかになってくるにつれ、反対の声が半数を占めるようになりました。 本県でも、十月十五日に下関市で県民葬を実施するとし、この議会に補正予算案が上程されています。 そこでお尋ねします。知事は国葬における国民の多様な意見がある中、県民葬を実施する意義をどのように考えておられるのか、知事の思い、お考えをお伺いいたします。 そして、国葬に対するある程度の基準づくりの必要性も言われ始めています。 国葬令が戦後廃止され、内閣の閣議によって決定された例外的対処として、元首相の吉田茂さんの国葬が一九六七年に実施され、亡くなられた安倍晋三元首相は二人目となります。 しかし、その根拠の説明が不十分と言われています。新聞各社が実施したアンケートでも、実施に反対が過半数を占め、国民に理解が得られているとは言い難いからです。 一方で、過去の県民葬を見たとき、佐藤栄作元首相、橋本正之元知事、岸信介元首相、安倍晋太郎元外相、田中龍夫元知事、そして今回の安倍晋三元首相と六人目になります。その方々は、いずれも政治家の方です。 実際に村岡知事も記者会見で、首相経験者や現職の国会議員が亡くなったときとする過去の県民葬の実施の基準を示し、説明されました。 他の都道府県を見ましても同様で、我が国では国葬や県民葬では、そのときのトップの判断で、政治家のみが対象として扱われるような気がします。 諸外国で国葬を実施された方を見てみますと、皆さんのよく知っている方では、自然哲学者であったアイザック・ニュートンさん、修道女のマザー・テレサさん、レゲエ歌手のボブ・マーリーさん、F1レーサーのアイルトン・セナさんなど、いろんな分野で、国にとって多大な功績のあった方が対象となっています。 私は県民葬では、同様に県出身者で世界的に政治や文化、経済などで多大な功績があった方を対象とするある程度の基準をつくり、有識者の意見を取り入れ開催判断するようなルールを、この際、つくるべきだと考えます。県民葬実施の基準づくりに対し、県の御所見をお伺いいたします。 以上で、私の代表質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(二木健治君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)井上議員の代表質問にお答えします。 まず、新型コロナウイルス感染症の対応についての数点のお尋ねのうち、全数届出の見直しと自宅療養者への対応についてです。 重症化リスクの高い方を守ることに重点を置くため、発生届の提出をこれまでの全数から高齢者等に限定する見直しが、本日から全国一律で導入されます。 また、発生届の見直しに合わせ、感染動向を把握するため、今後は、患者の総数を年代別に集計し、国に報告することとなります。 私は、感染者の大半が軽症・無症状であるオミクロン株の特性や、医療機関や保健所の負担軽減を考えると、このたびの見直しは妥当なものであると考えています。 こうした見直しにより、発生届の対象外となる方の自宅療養については、これまで保健所管理の下で健康観察が行われてきましたが、今後は自己管理が基本となります。 このため、発生届の対象外の方も、安心して自宅で療養していただくには、支援体制の整備が重要と考えており、このたび、自宅療養者フォローアップセンターの機能を強化し、健康相談や生活相談等に、二十四時間対応できる体制を確保したところです。 また、自宅療養者が急増した場合にもしっかりと対応できるよう、センターの相談員を増員するとともに、新たにウェブによる受付を導入したところであり、今後とも、安心して療養できる環境整備に取り組んでまいります。 次に、死亡者数の増加要因と医療体制の整備についてです。 まず、第七波での死亡者数の増加要因についてですが、感染力が非常に強いオミクロン株の特性により、感染者数が爆発的に増加したことに伴うものと考えています。 また、死亡者のうち、約九割の方は基礎疾患を有する七十歳以上の高齢者であり、高熱や脱水等をきっかけとして全身症状が悪化したケースが多いと分析しています。 次に、医療体制の整備についてですが、症状に応じて適切かつ速やかに治療を受けられるよう、医療機関の御協力により、現在、入院病床として六百八十床を確保するなど、受入れ体制の拡充を図ったところです。 また、現在主流のオミクロン株による感染は、自宅療養者が約九割を占めていることから、療養期間中の症状急変時に備え、自宅療養支援体制の充実が重要と考えています。 このため、自宅療養者フォローアップセンターには医師や看護師を配置し、健康上の不安等の問合せに、二十四時間対応できる体制を整備したところです。 また、症状が悪化した際には、速やかに身近な医療機関を受診できるよう、地元医師会等の御協力の下、現在、三百五十九の医療機関と四百五十三の薬局において、診療や配薬等を行う体制を整備しており、今後、さらなる拡充を図ってまいります。 私は、引き続き、医師会等関係機関と連携し、医療提供体制や自宅療養者の支援体制の充実強化に取り組んでまいります。 次に、ワクチン接種についてです。 ワクチン接種は、感染対策を進める上で極めて重要であることから、これまで、市町や医療機関等と緊密に連携し、全国トップクラスのスピードで接種の促進を図ってきたところです。 こうした中、今般、新たに承認されたオミクロン株対応ワクチンは、重症化予防はもとより、感染や発症予防に高い効果が期待されており、本県には、十月上旬までに約三十三万回分が、十月半ば以降は対象者全員分のワクチンが、順次供給される見込みとなっています。 私は、インフルエンザとの同時流行への懸念や、冬の感染拡大期に備えるためには、できるだけ多くの方に速やかにこのワクチンを接種していただきたいと考えております。 このため、接種の促進に当たっては、若年者の方の接種率が他の年代に比べて低いことから、仕事帰り等に気軽に接種していただけるよう、金曜日の夜間や休日に県広域集団接種会場を開設するなど、ライフスタイルに合わせた接種機会の確保に取り組んでまいります。 また、若年層の方にワクチン接種による効果や安全性についての理解が一層進むよう、新たに若者向けの広報動画等を作成し、県や市町のホームページ、SNSを通じて効果的な情報発信に努めてまいります。 さらに、オミクロン株対応ワクチンは、現在流行しているBA・5を含め、オミクロン株全般に効果があることから、接種時期を迎えた方は速やかに接種をしていただくよう、積極的に呼びかけてまいります。 私は、引き続き、市町や医療機関等との連携を密にし、新型コロナワクチン接種の促進に取り組んでまいります。 次に、人口減少・少子化への対応についてのお尋ねにお答えします。 本県では、高齢化の進展により死亡者数が高止まりする一方で、出生数は年々減少するとともに、若年層を中心に進学や就職による県外流出が続いており、人口減少が加速しています。 このため、県ではこれまで、市町をはじめ企業や関係団体と一体となって、若い世代が結婚の希望をかなえ、安心して子供を産み育てることができる環境づくりを進めるとともに、大学リーグやまぐち等と連携しながら、若者の県内定着の促進を図ってきました。 しかしながら、出産の大宗を占める二十五歳から三十九歳までの女性人口は、今後さらに減少していくことが見込まれており、出生数の低下が続くものと想定されます。 これに歯止めをかけるため、やまぐち未来維新プランの素案では、重点的に施策を進めるプロジェクトの一つに、結婚、妊娠・出産、子育て応援を掲げ、やまぐち結婚応縁センターでのマッチング体制の強化等を進めるとともに、社会全体で子育てを応援する取組をさらに充実することとしています。 また、コロナ禍を契機に時間や場所にとらわれない働き方が普及し、大都市圏に住む若者を中心に地方への関心が高まっています。 今後は、こうした方々を一人でも多く呼び込んでいけるよう、デジタル関連企業やサテライトオフィス等の誘致を進め、就業先を確保するとともに、地方創生テレワークとワーケーションを一体的に推進するなど、若者や子育て世代の移住促進に向けた施策の充実強化に努めていきます。 人口減少が進む中にあっては、こうした取組と併せて、地域や産業の活力を維持・創出し、持続可能な社会をつくっていく取組も重要となります。 このため、人口減少が著しい中山間地域において、地域による支え合いの仕組みづくりを行う、やまぐち元気生活圏づくりについて、デジタル技術や特定地域づくり事業協同組合制度など、新しい技術や手法も活用しながら、取組の加速化を図ります。 また、県外にいながらも本県と継続的に関わり、その知識や経験を生かして、地域の活性化に貢献いただける関係人口の創出・拡大に向け、山口つながる案内所を拠点に、情報発信や登録の促進、フォローアップ等の取組を強化していきます。 将来の労働力不足への対応については、働きたい女性と女性の雇用に積極的な企業とのマッチングの強化や、働きやすい職場環境づくりの促進等により、女性の就業率を引き上げるとともに、多様な就業機会の確保・提供や職業訓練の充実等により、高齢者・障害者の就業促進を図ります。 さらに、やまぐちDX推進拠点「Y─BASE」や、山口県産業技術センターに設置したIoTビジネス創出支援拠点を核に、産業分野はもとより、介護やインフラメンテナンスなど県政のあらゆる分野で生産性の向上や、業務の効率化・省力化につながるDXの取組を推進していきます。 私は、あらゆる主体と連携しながら、出生率の向上と社会減の縮減等に取り組むとともに、人口減少下にあっても、地域の活性化や産業の持続的な成長につながる取組を積極的に進め、安心で希望と活力に満ちた山口県をつくってまいります。 次に、県の農林水産業の成長産業化についてのお尋ねにお答えします。 農林水産業は、県民の健康の維持や健やかな成長に欠かせない農林水産物の安定供給とともに、中山間地域を中心とした地域経済を支えており、さらに、県土や自然環境の保全、水源涵養や土砂災害防止等といった多面的な機能を有しています。 このため、私は、平成三十年に策定した、やまぐち維新プランに強い農林水産業育成プロジェクトを位置づけ、担い手の減少・高齢化が進む中にあっても、強い農林水産業を育成できるよう、中核経営体を中心とした取組を展開してきたところです。 また、分野別計画である、やまぐち農林水産業成長産業化行動計画についても、やまぐち維新プランに合わせ、中核経営体を核とした山口県農林水産業の成長産業化をキーワードとして、同年に策定しています。 これら両計画の農林水産分野の指標については、お示しの中核経営体数や新規就業者数、法人等の経営に参画した女性数などは順調に進捗しています。 一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外食需要の落ち込み等により、酒米生産量や大都市圏への販路拡大などは計画を下回っている状況であり、今後は、商談のオンライン化と対面販売を併用した販売戦略の強化が必要と考えています。 また、担い手の減少・高齢化をはじめ、気候変動や国際情勢の変化などの生産リスクの増加、漁獲量の減少など、本県の農林水産業は、依然として様々な課題に直面しています。 このため、私は、今議会でお示ししている、やまぐち未来維新プランの素案において、重点的に政策を進める維新プロジェクトに、引き続き、強い農林水産業育成プロジェクトを位置づけています。 このプロジェクトでは、農林水産業の担い手の安定的な確保を図るとともに、生産性の向上や大都市圏等への需要拡大に資するデジタル技術の普及・定着を進めることで、強い農林水産業を育成することとしています。 具体的には、来年四月に供用開始となる、農林業の知と技の拠点等を核として、全国トップ水準の支援策による新規就業者の確保・定着や、UJIターン者や参入企業に対する技術習得支援などにより、地域を支える多様な担い手を確保します。 また、県産農林水産物の大都市圏等への戦略的な販路拡大に向けて、ブランディング支援による対象品目の拡大や、ECサイトの機能拡充、SNSの活用等による飲食店や幅広い消費者層への販路開拓を図ります。 さらに、スマート農林水産業の開発・普及や、デジタル技術を活用した水産資源の管理強化と栽培漁業の一体的な推進等により、県産農林水産物の供給体制を強化します。 なお、農林水産業の分野別計画については、やまぐち未来維新プランの策定に合わせ、検討を進めることとなります。 私は、これまでの取組の成果や課題を踏まえ、JAや県漁協等の関係団体と連携しながら、強い農林水産業の育成にしっかりと取り組み、成長産業化を進めてまいります。 次に、脱炭素社会の実現についてのお尋ねにお答えします。 温室効果ガス排出量の増加による地球温暖化の進行は、猛暑や集中豪雨をもたらすなど、県民生活にも大きな影響を及ぼしています。 また、脱炭素化が世界的な潮流となる中、国は、高い削減目標を掲げ、社会経済全体の大規模な変革に取り組むこととしており、産業界においては、従来の省エネの取組だけでなく、エネルギーの需給構造等の抜本的な変革が求められています。 私は、こうした国の動きや社会情勢の変化に的確に呼応し、脱炭素化の取組を加速することにより、安心で安全な県民生活の確保と本県産業力の強化という大きな課題に取り組んでいく必要があると考えています。 このため、やまぐち未来維新プランにおける四つの視点の一つにグリーンを掲げ、このたび取りまとめた素案でも、県政の各分野で脱炭素化に向けた取組を総合的かつ計画的に進めていくこととしています。 とりわけ、産業部門・工業プロセス部門の温室効果ガス排出割合が高い本県では、産業分野での取組が極めて重要であることから、まずは、本県コンビナートの将来像や目標を示す、やまぐちコンビナート低炭素化構想を先行して策定し、このたび最終案を取りまとめたところです。 また、この構想を核として、産業分野における取組を促進するための効果的な施策やロードマップを示す、やまぐち産業脱炭素化戦略の本年度中の策定に向けて、山口県環境政策推進本部内に設置した専門部会等で集中的な議論を進めています。 さらに、この戦略と並行して、現在進めている地球温暖化対策実行計画では、産業分野を含む県政各分野における温室効果ガス排出量の削減目標の再設定と、これを達成するための施策や気候変動の影響に対する適応策などの見直しを行うこととしています。 実行計画の改定に当たっては、産学官が連携し、共通の目標に向けた施策の具体化が必要であり、事業者や市町等へのヒアリングや、環境審議会等での議論を通じて検討を進めるとともに、戦略と整合を図りながら、本年十一月を目途に素案を取りまとめることとしています。 また、施策の実現に向けては、国の支援が不可欠であることから、私自らが先頭に立ち、国が検討している官民投資等を本県に呼び込むことができるよう、政府要望等を通じて財政支援や技術支援の要望を行ってまいります。 なお、お示しのゼロカーボンシティの表明については、脱炭素化に係る企業や県民の理解と積極的な参加を得られるような取組を進めながら、実行計画や戦略などの検討状況を踏まえ、慎重に判断したいと考えています。 私は、今後とも、県民、関係団体、事業者、市町と緊密に連携し、脱炭素社会の実現に取り組んでまいります。 次に、県民葬開催の意義についてのお尋ねにお答えします。 去る七月八日、安倍晋三元内閣総理大臣が、民主主義の根幹たる参議院議員選挙の街頭演説中に銃撃され、御逝去されたことは、私自身も大変衝撃を受けたところであり、改めて心から御冥福をお祈り申し上げます。 故安倍元総理は、卓越した政治手腕とリーダーシップを発揮され、憲政史上最長の八年八か月の長きにわたって内閣総理大臣の重責を務められ、アベノミクスによるデフレ脱却や日本経済の再生、国際社会における日本の地位向上などに向け、我が国を力強く導かれ、偉大なる御功績を残されました。 また、地方の元気なくして日本の再生なしとの信念の下、人口減少に歯止めをかけ、地域の活性化を目指す地方創生の実現に向けた取組を強力に推進されるとともに、地元山口県の取組にも大変な後押しを頂くなど、県政の発展にも格別の御尽力を賜りました。 突然の御逝去から三日後の七月十一日、県庁及び下関市、長門市に設置した記帳所には、七月十八日までの八日間に一万三千八百人を超える方が記帳に来られるなど、大変多くの県民の皆様の弔意が寄せられたところです。 こうした故安倍元総理のこれまでの数々の御功績や、多くの県民の皆様から哀悼の意が寄せられている状況を踏まえ、最も深く追悼の意を表する形として県民葬を十月十五日に執り行うこととし、今回の補正予算に所要の経費を計上いたしました。 明日開催される故安倍元総理の国葬をめぐって、国民の間に様々な御意見があることは私も認識していますが、本県においては、これまでも内閣総理大臣や知事経験者、現職の国会議員など、国政や県政の推進に多大な御貢献をされ、御功績を残された方々を対象に県民葬を執り行ってまいりました。 こうした過去の開催例に照らしても、私は、憲政史上最長の長きにわたって内閣総理大臣の重責を務められ、我が国はもとより、県政の推進についても大変なお力添えを頂いた故安倍元総理の県民葬を執り行うことが適当であると考えています。 また、県民葬の実施については、これまでの開催例も踏まえ、諸般の事情を総合的に勘案し、その都度、県において判断し、決定する必要があるものであり、その基準をあらかじめ定めておくことは困難であると考えています。 私は、故安倍元総理の御遺徳をしのび、その多大なる御貢献と御功績をたたえ、謹んで深く追悼の意を表するにふさわしい県民葬となるよう、関係者とともに準備を進めるとともに、その趣旨を県民の皆様にもよく御理解いただけるよう、今議会の審議の場などを通じ丁寧な説明に努めてまいります。 副議長(二木健治君)これをもって代表質問を終わります。