委員長報告
───◆─・──◆──── 日程第三 人にやさしいデジタル社会実現に関すること 議長(柳居俊学君)日程第三、人にやさしいデジタル社会実現に関することについて、審査の経過並びに結果に関し、委員長の報告を求めます。 人にやさしいデジタル社会実現特別委員長 江本郁夫君。 〔人にやさしいデジタル社会実現特別委員長 江本郁夫君登壇〕(拍手) 人にやさしいデジタル社会実現特別委員長(江本郁夫君)人にやさしいデジタル社会実現特別委員会を代表いたしまして、本委員会における審査の経過並びに結果について御報告を申し上げます。 新型コロナウイルス感染症への対応によって我が国のデジタル化の遅れが顕在化して以来、各地で急速にデジタル社会の形成が声高に叫ばれるようになりました。 もはや時代にデジタルは不可避でありますが、各自治体が競うようにデジタル化に取り組む今日の現状を見ますと、やみくもにデジタル化を進める事例や、生活に溶け込み難い実感の伴わない実証例など、デジタルという言葉だけが先行し、強調されている懸念もあります。 このため、本県議会では、昨年七月に、人にやさしいデジタル社会実現特別委員会を設置し、教育や産業、福祉等あらゆる分野におけるデジタル化の現状と課題等の把握に努めるとともに、各界で御活躍される七名の方々から御意見をお聞きするなど、調査研究を重ね、このたび報告書を取りまとめました。 それでは、報告書の主な内容について申し上げます。 まず始めに、報告書では、デジタルはあくまでも手段にすぎないということを強調させていただきました。 デジタル化を進めること自体、人間や社会の目的ではないため、デジタルありきではなく、解決したい課題は何かという点に注目し、その解決にデジタルがどう使えるかという視点が優先されなければなりません。 デジタル社会の実現によってもたらされるものは、明治初期や戦後復興期にも匹敵する大転換であると言われておりますが、かつてのように、地域に活気が満ちあふれる景色はデジタルのみで生まれることはなく、デジタル化の先に待っている社会や地域の姿を県民一人一人が思い描くことができ、また変化を実感できてこそ、活力を生み出すことができます。 誰もがデジタルを身近に感じ、子供から大人までが目を輝かせながら生きることのできる地域を興し、また、地域が自ら興る社会こそが、本県が目指す人にやさしいデジタル社会の姿であります。 こうした考えの下、提言を取りまとめたところです。 一つ目として、デジタルの理解と浸透を図る必要があります。 多くの県民がデジタル技術に興味を持つとともに、デジタルに触れることのできる基盤を整備し、その有用性を理解できる機会をより多く設けなければなりません。 デジタル社会の実現や未来志向のデジタルトランスフォーメーションを目指す意義についても、広く県民に理解していただく必要があります。 デジタルトランスフォーメーションで最も重要なことは、何をしたいか、何を変えたいかという変革していくための問いを持つことであり、技術はもちろんのこと、その技術で何をしたいのか、してほしいのか、一人一人が気づくことのできる環境をつくっていかなければなりません。 具体的には、まず、デジタル技術の具体的なイメージが湧かない段階では、行政や支援機関が自ら県民や事業者に出向いた上でニーズを把握し、必要な支援を行う取組も必要であります。 県下全域に光ファイバー網などの強固なデジタルインフラの整備は必須ですが、整備に当たっては、家庭での円滑な端末利用が困難な児童生徒が住む通信条件が悪い地域や、遠隔診療に取り組む地域を優先して整備することの検討も必要であります。 県民や事業者が成功体験を得ることができるよう、課題提起とデジタル技術の活用を組み合わせた、より多くのモデル事業にも取り組む必要があります。 モデル事業については、中山間地域の建設事業者に建設ICTを優先的に導入するなど、選択と集中による的を絞った取組も大切ですが、何よりも成果をデジタル実装へとつなげていかなければなりません。 特別支援学校の現場で導入効果が報告されている人と人をつなぐロボット「OriHime」等の好事例については、積極的に横展開すべきであり、他の自治体で効果が上がっている道路の異状通報システム等についても、県下に広めていく必要があります。 二つ目は、人材の育成であります。 基本は人です。データを見て判断し、改善策を考えるのは人であり、デジタルが単独で動くことはありません。 将来的には、デジタル技術の進化によって全ての人がデジタルを意識せずにその恩恵をひとしく受けられることを期待しますが、それまでは、今の体制や人のネットワークの中で負荷を減らしながら、デジタルを有効利用できる人が増えなければなりません。 具体的には、まず、子供から大人までデジタルに触れる機会を他県にも増して多く設けるとともに、高齢者のスマホ教室等についても、ただ開催するだけでなく、継続的にサポートできる体制づくりが重要であります。 情報通信系企業の退職者などの潜在人材を積極的に活用し、世界を相手にしても引けを取らないデジタル人材が育つことのできる環境の整備も必要です。 変えたいと思う人や地域とデジタル技術者に橋を架けることのできる、つなぐ人材を育てる必要もあり、当面、その役割は、県デジタル推進局が担うべきであります。 県立大学をはじめとする県内大学や専門学校等において、社会人のデジタルに係るスキルの習得や学び直しなどができる環境を整える必要もあります。 三つ目は、利活用の促進であります。 世界に比べて周回遅れとも言われる我が国は、既に確立された最先端のデジタル技術を、人口減少や産業空洞化など様々な社会課題に直面している地方から実装すべきであります。 デジタルの浸透によって、県民誰もが心身ともに健康なウエルビーイングを享受し、地域の再興や活性化を達成しなければなりません。 県民の生命と財産を守る基盤となる、防災情報のデータ化や関係機関の間でのデータ連携の促進等にも取り組む必要があり、そのためには、サービスやその提供体制等について、デジタル格差が生じることなく、誰でも恩恵を受けることができるよう環境を整える必要があります。 具体的には、まず、デジタル技術を使ったサービスを提供する際は、誰もが利用しやすく、また、現在は使えているが、今後、加齢や病気等により使えなくなる人が出てくるということを想定した上で、システムを設計する必要があります。 アクセシビリティー、アクセスのしやすさは基準に準拠することではなく、ユーザーを理解して共感することによって実感を伴う課題解決ができます。 県の組織の中にアクセシビリティーの専門家を入れる、かつその専門家が当事者であるといったことも必要と思われます。 メタバースなどの新しい技術の情報をキャッチし、その活用や導入に挑戦していくこと、また、こうした技術の導入に前向きな企業に対して、技術支援等ができる体制や仕組みを確保し、整備する必要もあります。 デジタル技術は横断的技術であり、DX推進は県の一部署で取り組むことではありません。産業分野はもちろん、高齢者、障害者の社会参加に向けたデジタルの活用など、分野を超えて県全体で取り組んでいく必要があり、県デジタル推進局が、より一層、中心的な役割を果たさなければなりません。 そして、最後は、次のとおりまとめさせていただきました。 今後、急激な速さで普及するデジタル技術は、必ずや人々の生活をより豊かで便利なものへと変貌させる手段となるはずですが、いまだ多くの人々がどう変わるのか実感が湧いていません。 県には、やまぐちデジタル改革が県民に実感できる形で実を結ぶよう、本県のデジタル実装に力を注いでいただきたいと思いますが、足元の県組織内のデジタル化について、紙の業務が不可避な部門は別として、紙が残ったままでデジタルの仕組みを入れるような、変革なきデジタル化とせず、デジタルを前提に業務を再設計し、何より職員自身が真に効率化を感じることが大切であると、付言させていただきました。 以上が、本委員会の審査の経過及び結果の概要であります。 村岡知事をはじめ、執行部におかれましては、本報告書に御理解をいただき、積極的に対応されるようお願いいたします。 最後に、関係の皆様方の格別な御理解、御協力により調査や取りまとめを行うことができましたことに、委員長として改めて御礼を申し上げ、本委員会の報告といたします。 御清聴ありがとうございました。(拍手)