1 新たな県づくりに向けた令和5年度当初予算編成について 2 物価高の克服、経済再生の実現について 3 脱炭素社会を見据えた県政の推進について 4 戦略的な海外展開について 5 上関原発建設計画について 6 教育行政について
───◆─・──◆──── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第二十五号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第二十五号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 塩満久雄君。 〔塩満久雄君登壇〕(拍手) 塩満久雄君 皆さん、おはようございます。自由民主党の塩満久雄でございます。 令和四年十一月定例会に当たり、会派を代表して、県政の諸課題について、知事、教育長に質問いたします。 質問に先立ち一言申し上げます。 将来もし帝都の上空に敵機を迎え撃つようなことがあれば、東京は一挙にして焦土と化し、我が軍の敗北である──これは昭和八年、軍部が関東一円で行った関東防空大演習について、桐生悠々という戦前のジャーナリストが書いた社説であります。 彼は続けて、我がほうの航空機を総動員しても、全ての敵機を撃ち落とすことはできず、そのうちの一機でも二機でも帝都の上空に来て爆弾を投下すれば、木造家屋の多い東京は一挙に焦土となるであろうと、十二年後の東京大空襲を予言するかのごとく、我が国の都市防空の脆弱性を指摘しています。 彼は、小生の理想したる戦後の大軍縮を見ることなくしてこの世を去るのはいかにも残念至極と、死の直前まで国の行く末に警鐘を鳴らし続けたのであります。 二十世紀、人類は大きな戦争を二度経験しました。ドイツの哲学者ヘーゲルは、我々が歴史から学ぶことは、人間は決して歴史から学ばないことだと喝破しています。ロシアのウクライナ侵略という現実に直面し、この言葉は万鈞の重みをもって胸に響きます。 度重なる北朝鮮のミサイル発射や台湾海峡の緊迫化など、我が国を取り巻く情勢は緊張の度合いを増しています。我が国が平和と安定を維持していくために、かつての歴史に学び万全に備えることが今ほど求められているときはないということを申し上げ、質問に入ります。 初めに、新たな県づくりに向けた令和五年度当初予算編成についてお尋ねいたします。 発生から三年がたとうとしている新型コロナは、冬場を迎え第八波に入り、依然油断のない備えが必要な状況にありますが、多くの方の御尽力と県民の皆さんの御協力により、コロナの中でも日常生活を取り戻し始めています。 この三年間で疲弊した飲食サービス業や観光業の回復、イベントの再開など、地域経済・社会をしっかりと再生し、活性化させていく、このことは目下の重要課題であります。 同時に、デジタル化の推進や脱炭素社会への対応、人への投資などを官民一体で強力に進め、強い経済と豊かさを実感できる社会をつくることは、我が自由民主党が国民・県民の皆様にお約束したことであり、私ども、全力を尽くしていく覚悟でございます。 こうした中、知事は、三つの維新のさらなる進化による県づくりに向け、やまぐち未来維新プランの最終案を発表されました。また、次年度当初予算編成では、新たな県づくりの本格始動を柱として掲げられ、その具現化に早くも着手されたところです。 これらは、コロナによる社会変革や浮き彫りになった課題をてことして、県政をさらに成長させていこうとするものであり、我が会派としても、しっかりと成し遂げていかなければならない取組と考えております。 また、国においては、デジタル田園都市国家構想に基づく新たな総合戦略や、子供政策の司令塔となる、こども家庭庁などを次年度からスタートさせることとしています。 知事におかれては、国の動向も取り込みながら、デジタル技術の本格的な社会実装など、本県の新たな始動を感じさせる力強い施策を練り上げていただきたいと思います。 あわせて、現在、我が党では、各地域や各界からの、県の予算編成と施策決定に関する御意見や御要望をきめ細かく拝聴しており、こうした県民の声を十分に施策に反映させていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねいたします。知事は、新たな総合計画によって今後の県づくりをどのように進めようと考え、そのスタートとなる来年度当初予算編成にどのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、物価高の克服、経済再生の実現について伺います。 ロシアのウクライナ侵略に端を発する世界的な物価高騰は、日々の暮らしや中小事業者の経営を直撃しています。 コロナ禍からの回復途上にある地域経済が、この物価高によって腰折れすることがないよう、我が会派はこれまでも、ちゅうちょのない財政出動を訴えてまいりました。これを受け、県においては六月補正、九月補正と、矢継ぎ早に対策を打ち出してこられました。 しかしながら、食料品やエネルギー価格は依然高騰を続けており、医療・福祉、農林、水産といった様々な団体が、急上昇するコストを価格に転嫁することも、吸収することもできない、八方塞がりにある窮状を訴えておられます。 こうした中、岸田内閣においては、各般の緊急対策に加え、先般、七十二兆円の事業規模となる総合経済対策を閣議決定されました。本県も、これらに呼応した補正予算案を上程されており、現状に的確に対応されていると評価をしております。 一方、今般の物価高は、コロナを経た世界的なインフレ、それに伴う米国の金融引締めに起因した円安ドル高、さらには、脱炭素化に伴うエネルギー転換などを背景としており、今後の物価動向や経済情勢の見通しは、決して楽観視ができないものです。 コロナ禍からの回復や物価高克服に向け、当面の負担軽減策を講じることはもちろんですが、厳しい情勢の中でも、中小企業を含め本県経済が持続的に成長していけるよう、必要な支援はしっかりと講じていく必要があります。 また、経済活動や県民生活に不可欠な安心基盤の確保は、行政の重要な役割であり、防災・減災、国土強靱化などの基盤整備についても、このたびの経済対策を十分に活用し、強力に取組を進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。医療・福祉をはじめ、様々な事業者が物価高騰に直面する中、物価高の克服、経済再生の実現に向け、どのような考えで補正予算を編成され、どう取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 次に、脱炭素社会を見据えた県政の推進について、二点お伺いします。 知事はこのたび、やまぐち産業脱炭素化戦略の素案を示されました。その中では、脱炭素への移行に必要な環境整備や、競争力確保に向けた支援措置など、我が会派が繰り返し申し上げてきた、県内企業の実情に寄り添った取組について示されています。 もとより脱炭素化とは、一企業、一自治体のみで完結できるものではなく、エネルギー供給の変革からサプライヤーを含めた事業転換、さらには森林資源の利用促進など、幅広い取組を一体的に進めなければ完遂できない課題であります。 こうした全体像の中で、県として講じていくべき具体策を示し、本県の産業が脱炭素社会に対応し競争力をさらに高めていく取組を、しっかりと前に進めていただきたいと思います。 そこで、まずお尋ねします。このたび素案を示された、やまぐち産業脱炭素化戦略により、県は今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見を伺います。 また、知事は先日、二○五○年カーボンニュートラル宣言を表明されました。県としては四十四番目となりましたが、拙速にカーボンニュートラルをうたうのではなく、県勢発展の視点から各分野の方策を慎重に検討されてきた知事の対応は、責任ある立場として当然のことと考えます。 一方、気候変動の対策は待ったなしです。産業、民生にわたる様々な対策を、これまで以上に迅速かつ的確に進めていく必要があります。 そこで、二点目のお尋ねです。知事は、どのような考えで二○五○年カーボンニュートラル宣言を表明され、その対策に今後どう取り組んでいかれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、戦略的な海外展開についてお尋ねいたします。 知事は、先月、実に三年ぶりにASEAN各国を歴訪されました。二木副議長をはじめとした議員訪問団に参加した我が会派の議員からは、ASEAN各国がコロナ禍の中でも絶え間なく発展してきた、そのエネルギーの差に衝撃を受けたと聞いています。 この大きな成長のエネルギーを取り込んでいくことは、人口減少にあえぐ地方にとって重要な視点です。 本県においては、やまぐち海外展開方針に基づきアジアをターゲットにした輸出拡大などに取り組んできましたが、残念ながらコロナ禍で足踏みを余儀なくされています。 その中でも、例えば、下関の事業者においては、シンガポールに向けた加工フグの輸出を拡大されるなど、取組は一歩ずつ前に進んできました。 今回の訪問では、こうした取組の支援機関をはじめ、多くの現地の方と意見交換を重ねられており、私としても、直接のやり取りだからこそ生まれる縁や、若い世代同士による盛り上がりの中から、新たな芽が出てくると期待を高めているところです。 今回の訪問を起爆剤に、コロナ禍でも関係をつないできた取組を再稼働させ大きく発展させていかねばなりません。 世界各国で水際対策の緩和が進み、海外市場に売り込む地域間競争も激しさを増しています。本県がアジアに近いという優位性や、各国に根づいている県人会とのネットワークなどの人的資源を生かし、海外市場における本県の認知度をしっかりと高めていく必要があります。 また、今般の国の総合経済対策では、円安を生かした輸出拡大を支援することとしていますが、こうした施策とも連携し、インバウンド需要の取り込みや、輸出拡大、付加価値の向上、さらには海外人材の受入れなど、旺盛な海外需要により本県経済の活力を生み出していく挑戦を、再び前に進めていただきたいのでございます。 そこでお尋ねします。知事は、このたびのASEAN訪問の成果をどのように受け止められ、また今後、どのような戦略を持って海外展開に取り組まれるのか、御所見をお伺いします。 次に、上関原発建設計画についてお尋ねいたします。 終戦直後に生を受け、昭和、平成の激動の時代を送った私たち世代にとって忘れ得ぬ出来事の一つが、昭和四十八年からのオイルショックです。 経済企画庁長官も務められた作家の堺屋太一さんは、この事態を予測され、近未来小説「油断!」として書かれ、当時の流行語にもなりました。 油断──油を断たれるの言葉のとおり、第四次中東戦争に起因して、ペルシャ湾沿岸の石油産出国が石油価格の大幅な値上げと産出量の削減を決めたことで、特に中東からの石油の輸入に多くを頼ってきた我が国は、エネルギー不足、狂乱的な物価高騰に直面しました。 日々の身近な暮らしでも、夜間のテレビ放映は止められ、スーパーではトイレットペーパーや洗剤を求める大行列が発生するなど、混乱と衝撃をもたらしたのです。 私の経験からも、強く強く感じるのは、エネルギーは国の骨幹であり、エネルギーの安定供給なくしては国が滅びかねないということです。 それを再び思い起こさせたのが、ロシアによるウクライナ侵略に起因する世界的なエネルギー危機です。目の当たりにするエネルギー問題は、カーボンニュートラルの実現を目指す我が国にとって、より深刻さを増します。それだけに、政府が進めようとしている取組の重要さを強く感じます。 政府は、エネルギーの安定供給に向けて、資源・燃料の安定的な調達や省エネルギーの推進などに努力することはもとより、既に技術的に確立している脱炭素電源として、原子力を最大限活用していくために、許可済みの原発の再稼働へ向けて総力を結集することとしております。 また、安全性の確保を大前提とした運転期間の延長や、次世代革新炉の開発・建設など、中長期的な原子力の必要性と在り方についても、具体化に向けた検討を進めております。これは、化石エネルギーに過度に依存することなく、国際環境の変化や災害といった不測の事態にも耐えられる強靱なエネルギー供給構造を築くものであり、まさに将来を見据えた責任ある政策であると、我が会派としては高く評価しております。 さて、本県においては、上関原発建設計画があります。 本計画に関しては、建設予定地である海域の公有水面埋立免許の期間伸長について、十月二十五日に、事業者である中国電力から県に対し許可申請が提出され、知事は十一月二十八日に許可をされました。 平成二十八年八月、令和元年七月に続く、三度目の伸長許可となりますが、知事は埋立免許権者として、これまでも法律上の要件が満たされていれば許可しなければならないとして、一貫した対応を取られており、今回も同様であったとお聞きしております。この姿勢は適切かつ妥当なものであると、我が会派は受け止めています。 また、上関原発建設計画については、二井元知事、山本前知事、そして、村岡知事は一貫して、国のエネルギー政策と地元上関町の政策選択を尊重する立場を取られてきています。 地元上関町においては、十月二十三日の町長選で、原発によるまちづくりを継承された西哲夫町長が七割を超える得票を得て当選されました。 そこでお尋ねします。今回の許可処分に当たっての考え方と、上関原発建設計画について、今後、どのように対応していくのか、知事の御所見をお伺いいたします。 最後に、教育行政についてお尋ねします。 県教委においては、学校と家庭、地域、企業などが連携しながら、子供の学びや育ちを支える、地域連携教育を推進されているところでございますが、三年にわたるコロナ禍の影響もあり、こうした活動が縮小、停滞しています。 柔軟な知識や生きた経験を学ぶ地域連携教育は、子供たちが、将来の予測が困難な時代を生き抜く力を身につけるために不可欠な取組であり、縮小し途絶えさせることがないよう、活性化に向けた取組を進めていかなければなりません。 他方、一人一台端末の活用などにより、大学や企業をはじめ、社会の様々な関係者と連携を進めることで、より質の高い教育の提供が可能となっています。 また昨年度、国ではコミュニティ・スクールの活動の充実等に向けた検討会議を設置されましたが、全国のトップランナーとして、本県の繁吉教育長が参画されたと伺っております。 本県の持つコミュニティ・スクールの基盤を生かし、学習指導要領に掲げられた、社会に開かれた教育課程を、単なる理念にとどめず、実現する仕組みとして具体化していかなければなりません。 子供たちが地域の大人から仕事や産業、郷土の文化を学び、地域をフィールドとして挑戦する。その経験を日々の学びにつなげていく。そうした多様で豊かな学びを定着させ、全国をリードできる取組として推進していただきたいと思います。 そこでお尋ねいたします。地域との連携体制を再構築し、質の高い本県ならではの地域連携教育を実現するため、県教委は今後どのように取り組まれるのか、教育長の御所見をお伺いします。 結びに、去る十月十五日の故安倍晋三先生県民葬儀におきましては、国会議員の皆様や、台湾をはじめ海外からも多くの御参列者を賜り、厳粛かつしめやかに執り行うことができました。 県内各地に設置された献花会場を含め…… 議長(柳居俊学君)塩満議員に申し上げます。時間が参りましたので、注意をいたします。 塩満久雄君(続)一万人を超える皆様方とともに、安倍元総理への哀悼の意を表すことができましたことを、自民党県連といたしましても、衷心より感謝とお礼を申し上げまして、自由民主党会派を代表しての質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)塩満議員の代表質問にお答えします。 まず、新たな県づくりに向けた令和五年度当初予算編成についてのお尋ねです。 県では、これまで、やまぐち維新プランに基づき、「活力みなぎる山口県」の実現に向け、産業維新、大交流維新、生活維新の三つの維新に果敢に挑戦してきました。 こうした中、長期化するコロナ禍等の影響により、県政を取り巻く環境は大きく変化しており、人々の意識や価値観の変化、さらには、デジタル化や脱炭素化をはじめとする社会変革などに、しっかり対応していくことが求められています。 こうしたことを踏まえ、これからの県づくりの指針となる、やまぐち未来維新プランの策定を進めてきたところであり、県議会をはじめ、様々な方々からの御意見を反映するとともに、国の政策との整合も図りながら、このたび、最終案を取りまとめました。 今後は、このプランに沿って、何よりもまず、コロナの危機を克服する、そして、様々な環境変化や社会変革をチャンスと捉え、本県の強みを生かし、潜在力を引き出して大きく伸ばすことにより、三つの維新のさらなる進化を図る取組をスタートさせていきます。 その取組に当たっては、県民の皆様の御理解と御協力を頂くことが重要となることから、目指すべき目標や県の姿を広く県民や事業者の皆様と共有し、県づくりの様々な取組に自主的・主体的に参画してもらえる環境づくりを進めてまいります。 これにより、県民誰もが、山口ならではの豊かさと幸福を感じながら未来に希望を持って暮らせる、安心で希望と活力に満ちた山口県の実現を、県民の皆様とともに目指してまいります。 こうした新たな県づくりの本格始動となる来年度当初予算では、新プランに掲げる、安心・安全、デジタル、グリーン、ヒューマンの四つの視点を踏まえ、これまでの取組を未来志向で再構築し、コロナ禍等で生まれた新たな課題や、深刻度が増した課題への対応に予算を重点配分します。 また、いまだ収束が見通せないコロナの感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るため、引き続き、県民の命と健康を守り抜く万全の対策を講じるとともに、コロナ禍で傷んだ経済の再生に向けて、現下の物価高騰による影響等を的確に把握し、必要な対策を切れ目なく実施してまいります。 さらに、お示しの国の新たな取組とも十分に歩調を合わせるとともに、県民や関係団体などのニーズをきめ細かく把握することにより、実効性の高い施策を構築していきたいと考えています。 私は、県民の皆様の命と健康を守り抜き、コロナで傷んだ社会経済や人々のつながりを再生し、様々な社会変革の先にある新たな未来を見据え、やまぐち未来維新プランの具現化に向けて確かな道筋をつけられるよう、来年度当初予算編成に全力で取り組んでまいります。 次に、物価高の克服、経済再生の実現についてのお尋ねにお答えします。 新型コロナウイルスの影響が続く中、ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰が及ぼす県民の暮らしや企業活動等への多大な影響を緩和することが、現下の最重要課題です。 本県では、これまで、国の物価高騰対策に呼応した、数次の補正予算を編成し、足元の物価上昇の影響を踏まえた、生活困窮者等への支援や中小企業対策など、県民や事業者のニーズに即した支援策を実施してまいりました。 こうした原油価格や物価の高騰は長期化しており、県民生活や地域経済の再生を図っていくためには、私は、引き続き、国、地方が一体となって対策に取り組む必要があると考えています。 そのため、物価高への対応や県内経済の再生、県民の暮らしの安心・安全に向けた基盤整備等の迅速な実施に向けて、先般、国が策定した総合経済対策のうち、本県において速やかに対応すべき取組や、臨時交付金を財源とする本県独自の対策を講じることとし、このたびの補正予算を編成いたしました。 具体的には、まず、国の経済対策と関連して、妊婦や子育て家庭に寄り添った相談支援と経済的支援を一体的に実施するための交付金を創設するとともに、中小企業制度融資において、債務の増大に苦しむ中小企業者の借換え需要等に対応した新たな資金を設定します。 また、補助・直轄公共事業については、防災・減災や国土強靱化の推進、安心・安全の確保などに向けて、優先度が高く重要な箇所について前倒しして予算を計上したところであり、国の取組に沿って、事業効果と経済効果の早期発現に向け、迅速かつ機動的な執行を図ってまいります。 次に、本県独自の物価高騰対策として、電気代等エネルギー価格の急激な高騰により、厳しい経営環境が続いている医療機関や社会福祉施設等に支援金を支給するほか、中小企業制度融資において、賃上げや製品等の価格転嫁の円滑化に必要な資金需要に対応した新たな資金を創設します。 また、学校給食用牛乳の安定供給に支障が生じないよう、供給事業者に対する乳価の高騰分を補助するほか、酪農家の経営継続を図るため、輸入粗飼料価格の高騰分を支援します。 これらの取組については、その効果を一刻も早く県民の皆様に実感していただけるよう、迅速な事業実施を図るとともに、引き続き、物価の動向や経済情勢等を十分に注視し、必要な対策については、今後の補正予算や来年度当初予算において機動的に措置してまいります。 私は、今回の補正予算の執行等を通じて、今後とも、国や市町と連携しながら物価高騰を克服し、県民生活の安定を図るとともに、長引くコロナ禍等により傷んだ社会や経済の再生に向け、全力で取り組んでまいります。 次に、脱炭素社会を見据えた県政の推進についての二点のお尋ねにお答えします。 まず、脱炭素化戦略についてです。 脱炭素化の潮流が速度を増す中、多くのCO2を排出する基礎素材型産業をはじめ、今後、事業スタイルの変革が見込まれる中小企業や農林水産業など、本県の産業界は、脱炭素化に向けて乗り越えなければならない課題に直面しており、対応いかんによっては、本県経済や雇用に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。 私は、こうした危機感や取組の方向性を産業界等と共有し、企業の取組を強力に後押しすることが重要と考え、本年十月、やまぐちコンビナート低炭素化構想を策定し、本構想を核として、産業分野全般にわたる取組の促進に向けた、やまぐち産業脱炭素化戦略の策定に取り組んできました。 これまで、企業や関係団体、産学公金から成る産業戦略本部等を通じてニーズ把握に努めるとともに、分野横断的な視点から庁内での検討を進め、五つの先行プロジェクトと十七の施策の柱の下、具体的な取組とその工程を示すアクションプランを作成し、このたび、素案としてお示ししたところです。 今後、予算編成を通じ、施策のさらなる具体化を図るとともに、企業はもとより、広く県民の皆様の声もお聞きしながらさらに検討を深め、本年度内に戦略を策定することとしています。 また、戦略の具現化に向けては、国レベルでの支援が不可欠であることから、企業ニーズに応じて国の施策も積極的に取り込みながら、脱炭素と産業競争力の維持・発展との両立に向けた、実効性ある取組を進めてまいります。 私は、産業の未来をリードする山口県の創造を目指し、県議会をはじめ、県内企業、大学、市町等との緊密な連携の下、カーボンニュートラルを原動力とした本県産業の成長・発展に全力で取り組んでまいります。 次に、二○五○年カーボンニュートラル宣言についてです。 二○五○年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す、いわゆるカーボンニュートラルへの対応については、国の動きとともに、本県の地域特性や産業特性を踏まえ、進むべき方向性を示す必要があります。 このため、私は、本年五月に環境政策推進本部を立ち上げ、脱炭素化に向けた庁内推進体制を整えるとともに、関連する各種計画の策定等を通じ、企業や有識者、関係団体等の意見を踏まえながら、検討を進めてきたところです。 こうした検討を経て、十月に策定したコンビナート低炭素化構想をはじめ、このたび取りまとめた、やまぐち未来維新プランの最終案や、産業脱炭素化戦略及び地球温暖化対策実行計画の素案において、いずれも二○五○年カーボンニュートラルを目指す方針を明確に示しています。 このことにより、私は、県民や企業の理解の下、県が進むべき方向性が確定できたと考え、脱炭素社会の実現に向け、県内のあらゆる主体が一丸となって各種計画に基づく対策を速やかに実行していけるよう、先週二日、二○五○年カーボンニュートラル宣言を表明しました。 今後は、戦略を踏まえた産業部門の取組はもとより、実行計画に基づく民生部門については、脱炭素型ライフスタイルやビジネススタイルの実現に向け、県民総参加による地球温暖化対策を推進してまいります。 また、国の交付金も有効活用し、家庭や事業所、県有施設への再生可能エネルギーや電動車の導入を促進するなど、各部門の対策を幅広い主体との連携・協働により進めてまいります。 私は、この宣言を機に、多くの県民や企業の参加を促しながら、脱炭素社会の実現と同時に、県内産業のさらなる成長や、安心で安全な県民生活の確保に積極的に取り組んでまいります。 次に、戦略的な海外展開についてのお尋ねにお答えします。 人口減少等により国内市場が縮小する中、私は、県経済の持続的成長を図るため、これまで、やまぐち海外展開方針に基づき積極的な海外展開に取り組んできました。 ここ数年は、新型コロナウイルスの世界的な拡大により、現地訪問による効果的な取組は停滞を余儀なくされましたが、各国で入国制限が緩和されてきたことから、先月、私は、ASEAN地域との交流拡大を図るため、県議会の皆様と連携し、シンガポールとベトナムを訪問しました。 シンガポールでは、私自ら、フグやアンコウなど本県を代表する食の魅力をPRし、早速、取引の意向が示されたほか、ベトナムでは、フグの輸入解禁に向けた検討を担当大臣に約束いただくなど、今後の県産品の売り込みに向け、大きな手応えを感じたところです。 また、コロナ禍でも成長を続ける両国の活力や熱気を肌で感じ、傷んだ県経済を力強い成長へ導くためには、本県の強みや魅力、地理的優位性等を最大限に生かし、旺盛な海外需要を取り込むことが極めて重要と再認識したところです。 このため、このたび最終案を取りまとめた、やまぐち未来維新プランの重点施策に、成長する海外市場への展開や、反転攻勢に向けたインバウンドの拡大を掲げ、重点的かつ具体的な取組を、この機を逃さず再始動させてまいります。 まず、中小企業の海外展開については、七月にシンガポールに設置したサポートデスクも活用し、展示商談会への出展等を支援するほか、ベトナムへの水産インフラ輸出については、現地での実証を本格化させます。 次に、農林水産物等の輸出拡大に向けては、複数事業者の商品をコンテナに混載し、低コストで輸出する、県版エクスポーターによる販路拡大を図るほか、海外ニーズを踏まえた高付加価値な産品の輸出強化に積極的に取り組みます。 特に、本県の強みであるフグや牛肉は、輸出できない国もあることから、規制緩和に向けた二国間協議が加速するよう、国に対して強力に要請してまいります。 さらに、インバウンドの拡大に向けては、水際対策の緩和を受けて、いち早く、海外の旅行会社を招いた視察ツアーや商談会を行ったところであり、今後も機を逸することなく、旅行商品造成やPRなど、誘客促進に向けた取組を積極的に展開してまいります。 加えて、お示しの海外人材受入れについても、相手国における技術の習得や本県の担い手不足の解消に有益であることから、受入れ実績のある介護等の分野から拡大に取り組みます。 私は、今後とも、国の施策と連携し、県人会とのネットワーク等も活用しながら、成長著しいASEAN地域等の需要を取り込み、本県経済の活力を生み出す戦略的な海外展開の取組を強力に推進してまいります。 次に、上関原発建設計画についてのお尋ねにお答えします。 お示しのように、事業者である中国電力から十月二十五日に提出された、公有水面埋立免許の期間伸長の申請につきましては、埋立免許権者として、公有水面埋立法に基づき、法令の規定に従って厳正に審査したところ、正当な事由が認められたことから、先月二十八日にこれを許可いたしました。 正当な事由が認められる場合とは、指定期間内に工事を竣功できなかったことについて合理的な理由があることと、今後埋立てを続行するのに十分な理由があること、すなわち、土地需要があることの二つの要件をいずれも満たす場合です。 まず、竣功できなかった理由については、埋立工事に先立って実施する必要がある海上ボーリング調査について、調査地点付近で複数の船舶を停泊させるなどの行為が継続してあったことなどから調査を終了できず、工事を期間内に竣功できなかったこと、また、訴訟によりその解決を図ることが説明されており、合理的と認められます。 次に、土地需要については、事業者から国に対し、国における次世代革新炉の開発・建設の検討結果や政策の方向性等に適切に対応し、今後とも建設計画を推進していくことを示しつつ、国の検討にかかわらず、上関原発に係る重要電源開発地点指定は引き続き有効かどうかについて照会がなされました。 これに対し、「貴見のとおり、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、事情の変化がない限り、解除することは考えていない」との国の見解が得られたことが示されており、土地需要があると認められます。 このように二つの要件をいずれも満たし、正当な事由があると認められるときは許可しなければならないものであることから、私は、埋立免許権者である知事として、期間伸長を許可したものです。 一方、このたびの許可処分時点において、上関原発の原子炉設置許可申請に係る国の審査会合が開催されていない状況や、中国電力の電力供給計画において上関原発の着工時期が未定とされている状況は変わっておりません。 したがって、引き続き、発電所本体の着工時期が見通せない状況にあることから、私は、前回と同様、原発建設計画が存する県の知事の立場から、発電所本体の着工時期の見通しがつくまでは埋立工事を施行しないことを改めて要請いたしました。 これに対して、中国電力からは、発電所本体の着工時期の見通しがついたと判断できる状況になった時点で改めて県に相談するとの回答があったところであり、工事の施行については、その段階で適切に判断したいと考えています。 私は、上関原発建設計画については、お示しの原子力発電をめぐる国の検討など、様々な環境変化を踏まえつつ、今後もこれまでと同様、地元上関町の政策選択や国のエネルギー政策を尊重するとともに、県民の皆様の安心と安全を守るという観点から適切に対応してまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 社会が急速に変化する中、子供たちが多様な人々と協働し、主体的に未来を切り開いていく力を身につけるためには、子供たちの成長を地域全体で支える社会の実現を目指し、学校、家庭、地域が連携・協働した教育を推進していくことが重要です。 このため、本県では、全国に先駆けて全ての公立学校に導入したコミュニティ・スクールを核として、社会総がかりで子供たちの学びや育ちを支援する地域連携教育に取り組んでまいりました。 こうした中、お示しのように、長引くコロナ禍の影響により地域と協働した活動が減少し、地域連携教育の取組が停滞していることから、県教委では、学校運営協議会のオンラインによる開催や、ICTの活用による好事例の周知などにより、学校を拠点とした地域との連携体制の再構築に取り組んでいるところです。 こうした取組を進めるとともに、今後、より質の高い教育を提供するため、小中学校の九年間を通して学校・地域が連携・協働する教育活動を体系的に示したカリキュラムを地域や家庭と共有し、評価・改善を重ねることにより、実効性のあるものとしていくなど、やまぐち型地域連携教育のさらなる充実に取り組んでまいります。 また、県立高校においては、やまぐち型地域連携教育で育まれた子供たちの資質・能力をさらに伸ばしていくために、大学や企業等、地域の枠を超えて広く社会と連携し、各学校・学科の特色や専門性に応じた高校ならではの取組を支援する、やまぐち型社会連携教育を推進することとしています。 さらに、こうした小中学校から高校までの地域連携の取組を切れ目なく支援していけるよう、校種を超えたつながりを生み出すことができる推進体制の拡充に努めてまいります。 県教委といたしましては、次代を担う子供たちの豊かな学びや育ちの実現に向け、本県ならではの地域連携教育のさらなる推進に全力で取り組んでまいります。