討論
議長(柳居俊学君)木佐木大助君。 〔木佐木大助君登壇〕(拍手) 木佐木大助君 日本共産党県議団を代表して、九月定例会議に付託された議案に対する討論を行います。 反対する議案は、議案第一号、二号及び六号の三議案であります。 議案第一号、一般会計補正予算についてです。 総額約百十七億円の補正予算に盛り込まれた新型コロナ感染症対策関連事業八十四億七千五百万円、原油価格・物価高騰対策関連事業二十九億七千二百万円については、県民の願いに沿ったものとして評価いたしますが、まだまだ不足しているものもあります。 それは、水光熱費や食料品など、高騰で苦しむ県民の日常生活への支援策がないことであります。国は十月末に向けた補正予算で、地方創生臨時交付金の上乗せを検討していると仄聞しています。次期補正予算においては、ぜひとも具体化されるよう要望するものであります。 本補正予算の最大の問題点は、安倍元首相の県民葬に必要な経費として六千三百万円が計上されていることです。 我が党県議団は、岸田政権が強行した国葬とともに、県民葬の実施には一貫して反対の立場を貫き、今議会でも様々な角度から論戦を闘わせてきました。重複する点もありますが、改めて、県民葬実施がもたらす問題点を指摘いたします。 第一に、県民葬の実施は、憲法十四条が規定する法の下の平等に反するということであります。 村岡知事は、安倍元首相の県民葬を実施する理由について、憲政史上最長の長きにわたって内閣総理大臣の重責を務められたこと、我が国はもとより、県政の推進に大きなお力添えを頂いたとの説明を繰り返すだけで、安倍元首相の県民葬を実施する、その合理的理由を示すことはできていません。 このことは、結局、時の県当局や議会で多数を占める県政与党の政治的思惑によって、特定の個人を県民葬という特別扱いをすることにほかならず、これが憲法が規定する平等原則と全く相入れないことは明らかであります。 第二に、県民葬の実施は、憲法十九条が保障する思想・良心・内心の自由に反するおそれがあるということであります。 県当局は、県民葬は県としては、最も深く弔意の意を表する形として、県民葬を執り行うと説明しています。ここで述べられている県に県民が含まれているとすれば、県民葬は故人に対する弔意を県民全体として表す儀式、こういうことになります。これが憲法十九条に違反した弔意の強制につながりかねないことは明らかではないでしょうか。 実際、九月二十七日行われた国葬儀を前にした二十日には、総務部長名で各部局長に、国葬当日は国旗・県旗を半旗掲揚する、このことを通知し、その方針を県教育長など知事部局以外の任命権者及び十九の市町の首長に参考として通知をいたしました。県教育長は、県立学校長と出先機関の長などに半旗掲揚するよう通知し、その方針を十九市町の教育委員会に通知しました。 驚いたことに、県教委は六日、国葬や県民葬の実施に反対する市民団体との意見交換の中で、国葬に際しては、県立学校長に半旗掲揚を求めた通知は、職務命令だとした上で、正当な理由なく従わなかった場合は、職務命令違反として処分の対象になり得る、こういう見解を示しています。 さきに触れたように、安倍元首相に対する弔意表明の強制は、憲法十九条が保障する思想及び内心、良心の自由に反するおそれがあります。 周知のように、憲法九十九条は、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ、こう定めています。 公務に携わる人の全てが、国に法秩序の最高規範である憲法の示すところに従い、偏りや誤りのないように政治や行政を遂行する義務を、主権者である国民に対して負っていることを改めて確認をしている規定でもあります。 もちろん一般の公務員は、就任に際して、憲法を尊重擁護するとの趣旨を含んだ宣誓を行うものとされており、行政に携わるに当たっては、この立場を厳守する義務があることは言うまでもありません。 どのような政治的な背景があるかは知る由もありませんけれども、公務員の一員である教育長が、県立学校長に対し、憲法十九条が保障する思想及び良心の自由に反するおそれがある行為に手を染めることを職務命令で強要し、従わなかった場合は処分の対象にする、こんな暴挙が許されるでしょうか。絶対に許されません。 加えて、県民葬に当たっては、会場となる海峡メッセ下関に議員、地方自治体の首長など二千人もの参列者を集め、大々的に儀式を行うこと自体が、県民全体に同調を迫り、安倍元首相への弔意を事実上強制する重大な危険を持つことは明らかであります。 第三に、県民葬の実施と、そのための公金支出について、何ら法的な根拠がないことであります。 知事は、県民葬を行う根拠規定として、地方自治法の二条二項に、地方公共団体は地域における事務を処理すると規定しており、県民葬もその中に含まれていると説明をされました。 この地域における事務に該当するか否かは、言ってみれば、とどのつまり、地方自治法が規定する住民の福祉の増進を図ること、これに寄与するのか否かによって判断されるべきものであります。 我が党が本会議において、この点をただしたのに対し、総務部長は、県民葬の開催は、県民の福祉の増進を図ることと規定した、地方公共団体の存立目的と役割に適合すると強弁をされました。また、県民葬への公金支出がどのような県民の福祉の向上につながると考えているのかとただしたのに対しては、県民葬を執り行うことは、住民の福祉を向上させるという地方公共団体の存立目的に適合するものと考えておりますと、驚くべき見解を示されました。 ここには、集団的自衛権の行使に係る憲法解釈を閣議決定などという手前勝手な手だてで改ざんをして、安保法制を強行した安倍晋三元首相の政治手法と通じるものがあるのではないでしょうか。 あわせて、県当局が繰り返される安倍元首相の功績の評価についてであります。 先ほど宮本議員も述べられましたが、本会議で総務部長は、安倍元首相について、一つ、本県選出の国会議員として、憲政史上最長の八年八か月の長期にわたって総理大臣を務め、地元山口県の取組にも大変な後押しをしてもらうなど、県政の発展に格別の尽力を賜った。二番目、安倍家葬儀に当たっては、八日間で一万三千八百人を超える記帳が集まったことなどを上げて、安倍元首相の功績を天まで持ち上げられ、県民葬実施を合理化しようとしています。 しかし、皆さん、九月二十七日に実施された安倍元首相の国葬について、世論はどう評価しているでしょうか。 今月初旬の朝日新聞による世論調査では、国葬を評価したが五九%、評価するは僅かに三五%にとどまりました。同じく、言ってみれば、皆さん方のあの読売新聞の調査でさえ、よくなかったが五四%と過半数を大きく超えて、よかったは四二%にとどまっています。 県当局による安倍元首相の評価は、あまりに偏ったもので、県庁ぐるみ選挙という大失態を通じて、公選法違反事案に関わる調査チームから敢然と断ち切るよう求められ、自民党へのあしき配慮の呪縛から、もうやめる、いまだに逃れられないと村岡県政は言わざるを得ません。まだ、あの県庁ぐるみの公選法違反事件、一年たってないじゃないですか。しかも、それを教唆した、これは自民党であります。この自民党との呪縛を断ち切っていく、このことは今求められています。 そして、憲法はもちろん、地方自治法にも反する県民葬実施と、そのための公金支出は断じて容認することはできません。 このことをもって、議案第一号に反対するとともに、追加上程された、議案第一号令和四年度山口県一般会計補正予算第二号の組替えを求める動議への賛成討論、併せて、安倍元首相の県民葬儀の中止を求める請願第一号を不採択とした畑原委員長報告への反対討論といたします。 議案第二号は、二○二二年度の建設事業に要する経費の一部負担を市町に求めるものです。 負担金総額は三十八事業で約二十八億円にも上っています。何度も繰り返してきましたが、市町がコロナ対策で大変な苦労をしているさなかであります。せめて、建設事業に要する経費の一部を市町に負担させるような制度はもう廃止をして、市町の財政を側面支援すべきであり、反対をいたします。 議案第六号は、マイナンバーカードの利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の一部を改正する条例についてであります。 これは、マイナンバーカードで取り扱う事務に、外国人に対する生活保護法の規定に準じて行う保護に関する事務を追加するものです。 自公政権は、マイナンバーカードの普及を一気に進めようと躍起になっています。二○二二年度末までに全国民に持たせることを方針に掲げ、昨年三月からは健康保険証との一体化を開始しました。運転免許証との統合も計画しています。 マイナンバーカードの利用を国民生活の様々な分野に拡大することは、個人情報の集中や国家による一元管理の危険が指摘をされています。国民が望んでいるわけでもない全員取得、これを押しつけるべきではなく、本議案に反対をいたします。 次に、意見書一号、台湾のCPTPP、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、これへの参加を積極的に支援するよう求める意見書についてであります。 もともとTPPの対象範囲は、貿易や医療、雇用など広範囲にわたっており、とりわけ深刻な影響が懸念されるのは農業分野であります。輸入牛肉の関税は三八・五%から二七・五%に引き下げられ、十六年後には九%まで下がります。TPP加盟国で大畜産国のオーストラリアやニュージーランドからの輸入が急増し、国内の畜産業に大きな打撃を与えています。 輸入枠が拡大され、オーストラリアに無関税枠が設けられた国民の主食、米でも、輸入の急増が危惧され、日本の農業の将来に大きな不安材料となっています。 今まさに国連憲章、そして国際法も踏みにじるロシアのウクライナ侵略によって、世界中の食料や資源、これの安定供給に大きな影響が及んでいます。 ロシアとウクライナで輸出市場の三割を占める小麦をはじめ穀物価格、原油価格、資源価格の高騰は、食料や生産資材の調達への不安に拍車がかかっており、国際紛争時の不測の事態が一気に食料事情を悪化させることが現実に起きています。 食料、肥料、飼料などを海外に過度に依存していては、国民の命を守れないことは明らかであります。貿易自由化を求めて調達国を増やすことは、食料安全保障とも全く真逆の道であります。日本農業に大きな影響を及ぼすCPTPPの参加国を増やそうとすることには賛同できず、同意見の採択には反対をいたします。 以上で、日本共産党県議団の討論を終わります。 大変な御清聴ありがとうございました。(拍手)