討論
議長(柳居俊学君)橋本尚理君。 〔橋本尚理君登壇〕(拍手) 橋本尚理君 自由民主党新生会の橋本尚理でございます。 まずもって、先ほど行われた有近議員の討論、最大限の賛辞を贈らせていただきます。心に響きました。 ただ私も通告をいたしておりました。会派を代表して、議案第一号の補正予算案に賛成、請願第一号の県民葬儀の中止を求めることについて不採択とした委員長報告に賛成、また先ほど提出された補正予算の組替え動議に反対の立場から討論をさせていただきます。 まずもって、安倍先生に心から哀悼の意を表させていただきます。 七月八日午前十一時三十分過ぎ、私は、山口県神社庁で行われていた山口県神社総代会役員会が終わり、私の車に乗り、エンジンをかけました。その直後、テレビから安倍元総理が奈良で遊説中に凶弾に倒れ、心肺停止の状態で病院に搬送されましたと臨時ニュースが流れてまいりました。まさか、本当に、何が起こったのかと、ただただ驚き、心肺停止と言われたが、何とか命だけは助かってほしいと、まさに神様に祈りました。 そして、思い出しました。平成十九年九月十二日、山口県神社関係大会が終わり、これもまた、私の車に乗った直後に流れた臨時ニュースが、安倍総理体調不良に、総理を辞職でした。神社界にとって最も必要で最も頼りにしていた安倍先生の、決して聞きたくはない臨時ニュースが二度まで、山口県神社庁行事の直後に聞かされなければならないのかと、山口県神社庁の神様を恨みました。 さらに、ニュースを見て、奈良県警の警備体制に驚愕をいたしました。誰一人として背後を警備する者がおりませんでした。その瞬間、奈良県警に対し強い憤りと怒りを覚えたのは、私だけではなかったはずであります。 そして、多くの国民の願いも神様には通じず、夕刻、非情にも御逝去されたとの報道がありました。 我が国日本にとって、世界にとっても、総理辞任後でさえ、最も必要とされていた、固い信念と強いリーダーシップを持った政治家安倍晋三先生が、非業の死を遂げられたのであります。しかも、我が国の将来を決める参議院議員選挙の遊説中にであります。まさに殉職をなされたのであります。 ここで、まず申し上げておきます。総理大臣を憲政史上、最も長い間務められた現職の衆議院議員が国政選挙遊説中に凶弾に倒れ、殉職されたのであります。国葬でお見送りする、至極当然のことであります。何の疑いをも挟む余地はないのであります。 国葬、県民葬に反対をする人たちの主張は、おおむね法的根拠がない。弔意の強要である。モリカケ、桜、旧統一教会問題、この三点ではないかと思います。 まず、法定根拠がないの問題について述べさせていただきます。 世界の国々の中で国葬を法律に定めている国は、ごくごく僅かです。アメリカやイギリス、中国も、多くの国は法律で定めておりません。 我が国においては、国葬に関しては、内閣府設置法に、内閣府の所掌事務として、国の儀式の事務に関することが明記され、閣議決定を根拠として行うことができるとあり、何ら問題はありません。 ただ吉田元総理の国葬では、国会審議がなされた。今回は国会審議がなされていないとの批判もあります。ただ県民葬においては、今定例県議会の本会議場でも、常任委員会でも十分に審議がされており、何ら問題はありません。 次に、弔意の強要であります。国葬、県民葬は、憲法十九条に違反した弔意の強要に当たると声高に論じられておられますが、ワイドショーやテレビを見ると、国葬に対し反対を叫ぶ人々の集会やデモが、会場である武道館近くや国会議事堂周辺、また全国各地で開かれており、共産党の志位委員長や社民党の福島党首がマイクを握り、堂々と反対を訴えておられました。 しかし、このような集会やデモに中止命令が出たのでしょうか。逮捕者が出たのでしょうか。我が国では、言論の自由が保障されております。すばらしい国であるんです。このことをテレビを通じて、多くの国民に知らせてくれたものと思います。弔意の強要は決してしていないという事実を、テレビを通じて、多くの国民は理解できたのではないかと思います。 ただ非常に残念な光景をテレビで目にいたしました。国葬が開始された午後二時を過ぎても、これらの集会やデモが続いていたのであります。議場におられる共産党や社民党の皆さんも、自分の選挙遊説中に葬儀に出くわしたら、マイクを落とし、静かに通り過ぎておられませんか。何人であれ、亡くなられた、その方の葬儀に対し、静かに哀悼の意を表するのが、人としての道であります。ましてや、礼節を重んじる日本人としての誇りではないのでしょうか。言論の自由は保障されているが、倫理観を失ってしまったこの国の姿は、私たちが目指している国の姿では決してないのであります。 さらに、残念なことがありました。安倍先生の郷里である我が山口県のニュースで、国葬反対の集会に参加した共産党のK議員や民政会のT議員がニュースに映っておられました。その映像を見て、同じ山口県民として恥ずかしい思いをしたのは、私だけではないはずです。ほかにも参加された県議がいらっしゃるかもしれませんが、参加された県議の方は、県民葬を行っても山口県は弔意の強要はしないということを、既に我が身をもって体験をされているものだと思います。 もう一点、モリカケ、桜、旧統一教会についてであります。 政治家の実績には、多くの人が功績と評価しても、一部の人の偏った視点から見ると、罪過と評価されることが多々あります。私でさえ、安倍元総理の取られた数々の政策に、全て賛成しているわけではありません。中には、なぜこんな政策を取られるのかと疑問を抱いた政策も幾つかありました。 ただ、野党の皆さんが追及し続けている、モリカケ、桜、旧統一教会については、確かに多少の疑義が持たれ、説明不足の点はあったかもしれません。ただ、これらの問題で、我が国の国体が揺らぐのでしょうか。それほど大きな問題なんでしょうか。私に言わせれば、無理やり分けるとしても、小さな罪過なのかなとは思いますが、この小さな罪過を殊さら大きく取り上げ、安倍元総理の死をも政争の具にしていると感じられます。 多くの人々が認める功績について述べさせていただきます。 第一次安倍政権においては、短い期間ではありましたが、戦後レジームからの脱却を掲げられ、朝日新聞を筆頭にする左翼マスコミから右翼、タカ派、ナショナリストといった負のレッテルを貼られながらも、教育基本法の改正、防衛庁の省への昇格・格上げ、さらには歴代総理の誰一人として明言されなかった、自由民主党結党時からの党是である憲法改正を総理として初めて宣言をされました。その第一歩として、国民投票法を制定されたことは、皆様よく御存じのとおりであります。 続いて、第二次安倍政権では、内政ではアベノミクスにより低迷していた我が国の経済を驚異的に回復をなされました。外交では、戦後七十年談話の中で、我が国が一部の国に対して長年続けてきた謝罪外交に終止符を打たれました。安全保障面では、平和安全法制、特定秘密保護法、国家安全保障会議の新設などなど、我が国の独立と平和を守るために、日米同盟を一段と強化された。これらの功績は、歴代総理の中でも最も高く評価されております。 マスコミや野党から、平和安全法制は戦争法案である、徴兵制が始まる、戦争に巻き込まれる。特定秘密保護法では、表現の自由が抑圧されるといった非難が当時、浴びせられておりましたが、結果を見てください。全くのデマでありました。 おじい様の岸信介総理がまさに命をかけて成し遂げられた日米安全保障条約の改定により、我が国の独立と平和は長らく守られてきましたが、昨今の中国の軍事力強化、北朝鮮の核開発、ミサイル発射、ロシアの軍事力によるウクライナの侵略など、今世界の安全保障状況は激変をしております。我が国がいつ何どき、侵略されても、何の不思議でもない状況となっておるんです。 そこで、安倍総理は強いリーダーシップと真摯な外交力で築き上げ、インド太平洋構想、クアッド、日米豪印四か国協力など、日米関係をはじめとして、アジア太平洋諸国との絆も深め、現在の我が国の独立と平和がしばらく続くであろうと言われております。 安倍総理の御逝去に対して、アメリカはホワイトハウスに半旗を掲げ、イギリスは女王陛下から天皇陛下に弔意が示され、インドでは政府庁舎に半旗を掲げ、ブラジルは政府が三日間の服喪をされるなど、外務省には二百五十九の国・地域・国際機関から千七百通以上の弔意が寄せられました。中には中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領の弔意も含まれております。外交面だけ見ても、世界の首脳からこれだけ高い評価、信頼を得た総理は、安倍先生だけなのであります。 ここで申し上げておきたいことがあります。国葬に関するテレビ朝日の報道の中で、ある記者が大喪の礼に比べて国家元首や首脳の参列があまりにも少ない。岸田総理の弔問外交は大失敗であると発言をされました。このとき私は強い怒りを覚えました。言うまでもなく、彼が例えた大喪の礼は、昭和天皇陛下の御葬儀であります。世界が認める最も高貴な人、これはイギリスの女王やタイの国王ではありません。世界でただ一人のエンペラー、天皇陛下なのであります。このことは日本人でも知らない方がいるかもしれませんが、世界では常識であります。世界で最も高貴な方、昭和天皇陛下の大喪の礼を引き合いに、現政権を批判するテレビ朝日を許すことはできませんでした。 以上、述べさせていただいたように、我が国の独立と平和を守り、世界の多くの国との友好関係を強化された安倍晋三元総理大臣の国葬、そして安倍先生の郷里であり、こよなく愛してくださった山口県が県民葬を執り行うことは、至極当然のことであり、何の疑いをも挟む余地がないことから、委員長報告に賛成、動議に反対であることを申し上げさせていただきます。 終わりに、一言申し上げます。安倍先生の突然の悲報を受け、私は安倍先生が官房長官時代に官房長官室で、先生から頂きました著書「美しい国へ」を思い出しました。(掲示)この本であります。 その際、先生より揮毫していただきました。平成十八年七月二十四日となっています。この揮毫していただいたおかげで、私はこの本を読み終わった後、この本を人にあげることはできませんでした。そして、事務所にしまってありました。思い出しまして、探して取り上げ、そして読み直してみました。 当時、安倍先生から頂いたとの印象は、安倍先生らしいなあという印象しか残っておりませんでした。ただ今回、読み直してみると、読んでいる最中に、幾度も幾度も涙が流れてまいりました。美しい国への題名どおり、我が国が自信と誇りを持てる美しい国にするためには何をすべきか、一つ一つ書いてありました。一つ一つ総理になられて実行されておられました。本当に当時は、安倍先生らしいなあで終わったのが、この原点をそのまま総理になられても貫かれたと感動いたしました。 そして、この帯に書かれている文章を紹介いたします。「私は政治家を見るとき、こんな見方をしている。それは闘う政治家と闘わない政治家である。闘う政治家とは、ここ一番、国家のために、国民のためにとあらば、批判を恐れず行動する政治家のことである。闘わない政治家とは、あなたのいうことは正しいと同調はするものの、決して批判の矢面に立とうとしない政治家だ。私は、常に闘う政治家でありたいと願っている。」とありました。まさにそのとおりの政治家人生を歩まれた方だと思います。 そこで、どうか岸田総理におかれましては、世論に左右されることなく、国家のため、国民のためとあれば、批判を恐れず闘う政治家になっていただき、安倍先生の悲願である憲法改正を成し遂げていただきますようお願いをいたしまして、討論を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)これをもって討論を終結いたします。