討論
議長(柳居俊学君)有近眞知子さん。 〔有近眞知子さん登壇〕(拍手) 有近眞知子さん 自由民主党会派を代表して、提出された全ての議案、意見書案、決議案及び請願第一号を不採択にすることに賛成し、補正予算組替え動議に反対の立場から討論を行います。 まず、議案第一号令和四年度一般会計補正予算には、社会福祉関係施設や畜産業者に対する原油価格・物価高騰対策支援、経営悪化に直面する中小企業への追加支援が盛り込まれています。 これらの補正予算は、私たち自民党も、関係する団体や事業者等から直面している経営や運営面での窮状をお聞きしているものです。 ぜひ予算成立後は、これらの支援や補助金が真に必要としている方々に一日も早く行き届くよう、時期を失することなく、速やかな執行に努めていただきますようお願いします。 また、執行して終わりではなく、常に支援効果と課題を検証するとともに、今後、国・政府において策定される総合経済対策、補正予算編成の動向等も注視し、さらなる追加支援の要否や事業スキームの見直しを含めた検討も進めていただくようお願いします。 特に、畜産業者への影響が極めて大きい配合飼料の高騰に対しては、今回の緊急的な支援だけにとどまらず、来年度以降も見据えた中長期的な対策も必要になってくると思います。 ロシアのウクライナ侵略の長期化など、現下の厳しい世界情勢を考え合わせると、海外からの輸入が断たれるといった事態は、もはや現実のものとして考えざるを得ず、県内循環の仕組みづくりなど、県自らがリスク対策の強化に取り組まなければならないのは、自明の理となっています。 こうした点から、今議会で村岡知事が県独自の種子条例制定に着手されることを表明されたことは、時宜にかなったものと言えると思います。 また、新型コロナ対策については、発生届の見直し等が行われる中で、陽性の方が安心して療養できるための医療提供体制、相談支援体制の強化を図るための補正予算が計上されています。 本議会の一般質問では、保健所の対応などに疑問を呈するような発言もありましたが、折に触れ、現場の実態を見てきた私たちからすれば、二年以上にわたるコロナとの闘いの最前線に立つ保健所職員の皆さんの肉体的・精神的な疲労と苦痛は計り知れないものと思いますし、その使命感には頭が下がる思いでいっぱいです。 引き続き、県民の命と健康を守るために御尽力を頂きたいと思いますし、こうした現場の職員の方々を県庁の組織を挙げて支援する体制づくりを進めていただくようお願いします。 次に、先ほど総務企画委員長より報告されました抗議決議についてです。 国際社会からの警鐘を無視して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮は、今年に入ってからも、これまでにない頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返しており、特に、今週四日朝に発射された弾道ミサイルは、日本の上空を通過し、太平洋に落下し、一時、青森県と北海道にJアラートが発動されるという事態を引き起こしました。 我々は、この暴挙を断じて許すことはできません。本決議は、北朝鮮によって繰り返される軍事的挑発行為に対して抗議と非難の意を強く表明するものであり、全員の賛同により採択されることを期待します。 最後に、故安倍晋三先生県民葬儀に係る補正予算、請願、補正予算組替え動議について、一括して意見を申し上げます。 安倍晋三元内閣総理大臣は、常に闘う政治家でありたいという御信念の下、どのような批判も恐れず、国家国民の平和と安全を守るとの強い使命感から、戦後レジームからの脱却を掲げ、歴代内閣が果たし得なかった我が国の基本問題の解決に向け、諸政策を果敢に進められてきました。 その中で、第一次政権時から、熱い思いで訴え続けてこられたのが憲法改正です。 その思いに裏打ちされた実行力はすさまじく、命をかけて国を守る自衛隊の違憲論争に終止符を打とうと、国民投票法を成立させるとともに、平成二十四年以降は憲法改正を自民党の公約に掲げ、不退転の覚悟で先頭に立ち続けられました。 本当に悲しいことに、安倍先生と御一緒に憲法改正の実現の日を迎えることはかなわなくなりましたが、国内外をめぐる幾多の国難を前に、今や憲法改正は国家の重要課題となり、国民の皆様の間にも、日本と国民を守るために憲法はどうあるべきか、憲法改正がなぜ必要なのかという議論を進めるべきとの声が高まってきていますし、国会においても憲法審査会での議論が進みつつあるなど、その実現も現実味を帯びてきています。 また、日本のあるべき未来を見据え、断固たる決意とリーダーシップで実現されたのが、集団的自衛権の行使を可能とする平和安全法制です。これにより、戦後日本の安全保障政策が大きく転換され、我が国の防衛力が強化されたのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり) 平和安全法制が国会で議論された当時には、物事を一面からしか捉えない拙速な反対、抗議の声も飛び交いましたが、その後の今日に至る国際情勢の急変を見るにつけ、国を守るためには何をなすべきなのかがはっきりと見えてきました。 特に、今年二月から始まったロシアによる一方的なウクライナ侵略、中国による覇権拡大、台湾有事危機、北朝鮮によって繰り返し行われている弾道ミサイルの発射といった、我が国が危機に陥りかねない現実を前に、多くの国民の皆様は、平和安全法制が持つ重要性、安倍元総理の決断の重みを改めて感じています。 一方で、安倍元総理は、自由で開かれたインド太平洋構想の実現に向けた日米豪印四か国の協力の枠組み、クアッドを構築され、自由・民主主義・基本的人権・法の支配という普遍的価値を共有する国同士が連携して、この地域の平和と安定に責任を持っていく姿を示されました。今議会で台湾の参加を支援するよう求める意見書を提出しているCPTPPも、安倍元総理が主導的役割を果たされ実現したものです。 また、官房副長官をお務めのときに、当時の小泉総理の訪朝にも同行された安倍元総理は、拉致問題が表面化した早い段階から、日本人として、国会議員として、そして総理として、拉致問題の解決をリードしてこられました。 安倍元総理ほど、拉致被害者家族に寄り添いながら、対話と圧力の原則を貫きつつ、問題の全面解決に向け心血を注がれた方はおられなかったと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり) 先月の国葬儀の式壇に、安倍元総理の御遺骨、議員バッジとともに、拉致被害者救出を誓うブルーリボンバッジが備えられていたのが、そのあかしではないでしょうか。 第二次安倍政権発足後、国内では、日本経済を立て直すため、経済政策アベノミクスを強力に推進され、株価、経済成長率、企業業績、有効求人倍率、国と地方の税収が増加・上昇するなど、国内経済に著しい効果をもたらされました。 さらに、教育再生、人づくり革命にも力を注がれました。その思いは、戦後七十年談話の中で語られた、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりませんという言葉に象徴されています。 事実に基づかない反日的内容の記述が多い歴史教科書で学ぶ子供たちが、日本の未来を担うことに危機感を抱き、先人の歩みを公教育で伝えるため、教育基本法を改正して愛国心教育を明記されました。 また、幼児教育・保育の無償化、保育の受皿の整備、保育士の処遇改善、高等教育の無償化なども、次々と実現されました。 このように、安倍元総理は、外交・安全保障、経済、教育など、我が国が直面する様々な危機に対し、次々と成果を上げ、世界の中で再び日本の存在感を大きく高められました。 そして、特筆すべきは、七月の安倍家葬儀、先月の国葬儀には、本当に多くの方が献花に詰めかけられましたが、その中には、若者の姿がとても多かったということです。これから未来に向かって生きる若い世代からこれほどまでに共感を得られた総理は、これまで一人もおられなかったと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり) だからこそ、安倍元総理の存在により、計り知れない恩恵を受けてきた山口県こそ、こうした安倍元総理の御功績を自らたたえ、また、国内外からの感謝や哀悼の意、若い世代の思いをしっかり受け止めるべき立場にあるのです。 個人的感情は別にして、国家国民を第一に考え、命がけで政治活動に挑み、命がけで日本を、我々を守ってこられた、そして、憲政史上最長の期間、内閣総理大臣としてこれほどまでに貢献された方が、ほかならぬ山口県選出の国会議員であるならば、日本人として、山口県民として、その御功績、御貢献にふさわしいお見送りをするのは、むしろ当然のことではないでしょうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり) 今議会では、一部の会派議員から、世論調査の結果などを理由に、国葬儀は国民の半分以上が反対している、民主主義に反するといった意見がありました。 しかし、民主主義を声高に言うのであれば、一部の人が一部の人の声を聞く世論調査や内閣支持率ではなく、より厳格かつ公正な手続により行われる選挙を尊重すべきです。選挙によって国民から選ばれた政権与党が、定められた手続と合理的な理由に基づいて実施する政策こそ、民主主義そのものであり、何よりも尊重されるべきものです。仮に、世論調査や内閣支持率などによって、政策を変更したり決定したりするようなことがあれば、それはむしろ民主主義の精神を没却するものであり、政治家としての使命と役割を自ら放棄するようなものです。 県民葬儀をめぐる報道や議論の中で何より悲しいことは、本県選出の国会議員が、総理という重責を長く務められ、それが国内外から高い評価を受け、そして、現職国会議員のまま、しかも選挙の応援演説という、まさに政治活動のさなかに銃撃されるという、あまりに衝撃的な最期を遂げられたにもかかわらず、当の山口県が、礼節を尽くし、最後を静かにお見送りする、そんな人間として当たり前のことさえできないということです。 そんな山口県を、一体、誰が愛し、誰が評価してくれるでしょうか。 日本人の礼儀や伝統、文化は、海外から高く評価されています。どうすれば日本人のようになれるのかと研究されているほどです。それなのに、国葬儀反対の論陣を張る一部報道の影響もあり、国葬儀の最中に反対派がデモを行い、会場の外で参列者と衝突する、そんな恥ずかしい光景が世界に発信されてしまいました。日本人であれば、せめて当日ぐらい、日本の品格を著しく損なうような行為を慎み、日本人らしく、つつましやかに、礼節をわきまえることができなかったものかと、返す返すも残念でなりません。 そもそも、このたびの国葬儀を執り行うことに、法的手続の瑕疵はありません。それは、県民葬儀も同じです。民主主義のルールにのっとって決められたことでも、自分の意見と違えば力でねじ伏せようとする、それは自分自身を、そして民主国家の根本を否定するようなものです。 我々山口県議会が今、県民のためにやるべきことは、安倍元総理が残してくださった多くの遺産をどう生かし、山口県の未来を明るいものにしていくかという、前向きで建設的な議論です。将来の予測が困難な時代、しかも時間は有限なのですから、将来につながる議論に時間と労力を有効に使っていくべきです。 以上申し上げた考え、理由から、故安倍晋三先生県民葬儀に係る補正予算は必ず成立させなければなりませんし、県民葬儀の中止を求める請願には何ら納得できる論拠がなく、委員長報告のとおり不採択にすべきと考えます。 また、当然のことながら、先ほど提出された補正予算の組替え動議は、到底認めることはできません。 今、日本は、安倍晋三というかけがえのない人を、最も必要としている時代に失ってしまいました。あれから三か月がたとうとする今もなお、私たちは深い悲しみと喪失感の中にあります。多くの県民の皆様も、同じ気持ちではないでしょうか。安倍元総理を選んだのは、ほかならぬ山口県民です。感謝と哀悼の気持ちをお伝えし、厳かにお見送りしたい県民も多くいらっしゃいます。ぜひとも、山口県らしい県民葬儀を実現してまいりましょう。 そして、私ども自由民主党は、安倍晋三先生の御遺徳を忘れることなく、先生から頂戴した数々の御教示、強い国づくりにかける確固たる信念をしっかりと胸に刻み、日本と山口県の発展のために邁進することを、故安倍晋三先生と県民の皆様にお誓い申し上げ、討論とさせていただきます。 御清聴ありがとうございました。(拍手)