1 電力対策について 2 その他
議長(柳居俊学君)合志栄一君。 〔合志栄一君登壇〕(拍手) 合志栄一君 新政クラブの合志です。通告に従いまして電力対策について一般質問を行います。 質問の一は、電気料金高騰の影響と対策についてであります。 電気料金の高騰が、県民生活と県内企業の経営を直撃しています。平成二十八年に電力小売が全面的に自由化されまして七年が経過しようとしていますが、中国エリアにおける令和四年十月の販売電力量において、新電力の占める割合は一割前後にとどまり、中国電力が一般家庭向けの低圧電力においては八七%、企業等向けの高圧・特別高圧電力においては九一%を占めています。 したがいまして、中国電力のデータに基づいて電気料金高騰の実情をまず明らかにしたいと思います。 まず、一月当たり二百六十キロワットアワー使用の一般家庭、これは四人家族で非オール電化の家庭を想定したモデルケースでありますが、このモデルケースの場合、販売電力量の六八%を占めている自由料金で見ますと、令和四年一月は、月額七千五百四十二円であったのが、一年後の本年一月には一万一千五十八円となり、四七%値上がりしています。 一方、燃料費調整による上限が設けられているため、電気料金の値上げに制限がある規制料金の場合は、同様モデルケースの一般家庭で令和四年一月は七千五百八十九円であったのが、本年一月は八千二十九円で、値上率は六%にとどまっています。 中国電力は、本年四月からの新料金では一般家庭向けの低圧電力の料金は、自由化料金も規制料金もほぼ同一水準にする方向で料金設定を行っているため、自由化料金は僅かですが値下げとなり、規制料金は三○%ほどの値上げとなる見通しであります。 このため、モデルケースの一般家庭の本年四月の電気料金は、いずれも一万四百円前後となり、昨年一月から三千円程度値上がりしたことになりますが、同ケースで令和三年一月の料金は六千四百六円ですので、それと比すれば四千円強の値上がりであります。 ただ、昨年十月に閣議決定されました電気・ガス価格激変緩和対策により、令和五年一月から九月までの使用分において、低圧の電気料金は一キロワットアワー七円、九月分は三・五円差し引かれることになりますので、モデルケースの一般家庭においては千八百二十円の値引きとなるものの、年金生活者や子育て世代で家計のやりくりに苦慮している家庭等にとっては、生活が苦しくなる厳しい電気料金の値上げであることに変わりはありません。 次に、企業等の産業用高圧電力使用の場合、六キロボルト高圧電力で契約電力一千キロワット、月間電力量二十八万キロワットアワーのモデルケースでは、令和四年一月は電気料金が五百十六万円であったのが、本年四月からの新料金では九百七十六万円となる予定であります。 ただ、高圧電力の場合も本年一月から九月までの使用分の料金については、国の価格激変緩和対策により、一キロワットアワー当たり三・五円、九月分は一・八円差し引かれますので、そのことを考慮しましても八百七十八万円となり、令和四年一月に比して七○%の値上げであります。 こうした電気料金の高騰は、企業の経営努力の範囲を超えていて、事業継続の見通しが立たなくなると、企業経営者からは、悲鳴に近い訴えの声を聞いています。 電気料金高騰の要因は、燃料価格の上昇と高止まりで、その背景の一つには、ロシアのウクライナ侵略を受けて、世界で液化天然ガスLNGや石炭といった資源を確保する動きが活発化していることがあるようです。 その収束の見通しは不透明でありますが、そうした状況の中において、県民生活と企業経営をどう守っていくのか政治の責任が問われています。 そこでお尋ねです。まず、県は、電気料金高騰の県民生活や企業経営への影響をどう見ているのか、お伺いいたします。 次に、県民の生活を守り、企業の事業継続を図っていくために、電気料金高騰への対策が求められていますが、このことにどう取り組むのか、御所見をお伺いいたします。 質問の二は、県の電力行政についてであります。 私は、主たる役割が上関原発建設計画に係ることである県の電力行政の現状を終わらせる決断のときを、本県は迎えていると考えています。 これまで何度も議会において指摘してきたところでありますが、将来にわたって上関原発が建設されることはあり得ません。 民主党の菅政権のときに閣議決定されたエネルギー基本計画は、二○二○年までに我が国の総発電の五○%以上をゼロ・エミッション電源にするため、原子力の新増設を少なくとも十四基以上とする内容で、その計画において建設が位置づけられていたのが上関原発でした。 その後、東日本大震災が発生し、福島第一原発が津波に襲われて陥った過酷事故は、偶然の結果がよい方向に向いたため、東日本壊滅という最悪事態は回避することができましたが、国の存立自体を脅かすリスクを原発が内包していることが明らかとなりました。 このため、原発新増設の計画は改められ、その後のエネルギー基本計画においては、原発への依存後は可能な限り低減していく方針が明記されてきました。 こうした国のエネルギー政策の延長線上に、上関原発の建設はあり得ないことは明白であります。 私は、昨年の二月県議会で、今後の我が国のエネルギー政策において、原発が担う役割は補完的なものとの見方を示しました。 現岸田政権は、原発推進に転じたかのように報じられていますが、その中身は既設原発の再稼働と運転期間の延長が主なものであって、原発の補完的役割をやや強化して延長しようというものであります。 したがって、上関原発の建設は、岸田政権による原発推進の視野には入っていないと見て間違いないと思われます。 資源エネルギー庁の原子力国際戦略検討小委員会の委員を務めた経歴を持つ評論家市川眞一氏は、原子力産業新聞に昨年十一月、「原子力利用に一歩踏み出した岸田政権」と題して寄稿し、政府、電力業界にとって残された課題は、福島第一原子力発電所の事故前に既に建設の初期段階にあった東京電力・東通一号機、建設準備中だった日本原電・敦賀三・四号機、東北電力・東通二号機、中国電力・上関一・二号機、九州電力・川内三号機、計七基について結論を出すことだろうと指摘しています。 そして、上関原発一・二号機、東通原発一・二号機の四基は、炉型が沸騰水型軽水炉ABWRで、福島第一とベースは同一の沸騰水型であることも論点になる可能性は否定できないと述べ、上関原発建設計画が国民の理解を得ることの困難さを示唆しています。 その上で、岸田総理が原子力の活用継続に一歩踏み込んだことを評価し、次のように結んでいます。 再生可能エネルギーと原子力、水素、アンモニアを組み合わせ、かつ使用を避けられない化石燃料については、二酸化炭素回収・有効利用・貯留いわゆるCCUSなどの技術を活用してカーボンニュートラルを達成する。これが次世代の日本のエネルギー戦略の基本になる道筋がようやく見えてきたと言えるだろうと。 中国五県のエリアでこの道筋を展望した場合、上関に建設されるべきは原発ではなく、将来、アンモニア発電への移行も可能なCO2回収型の石炭ガス化複合発電IGCC、もしくは同様のCO2回収型の石炭ガス化燃料電池複合発電IGFCであると考えます。 中国電力は、広島県大崎上島町の瀬戸内海の島で、このIGCC、IGFCの実用化に向けて実証実験を行っており、その成果を同じ瀬戸内海に面する上関で生かすことが望ましいと考えます。 中国エリアにおける原子力発電は、島根二号機の再稼働が認められ、既に建設が完成している島根三号機の営業運転が開始されれば十分で、あえて世論の強い反発を押し切ってまで上関原発を建設する選択は、もはやあり得ないと見ています。 上関にCO2回収型カーボンフリーのIGCCもしくはIGFCを建設した場合、将来的には水素のエネルギーキャリアであるアンモニアの混焼、さらにはアンモニア専焼の発電への移行も想定されます。 燃やしてもCO2を出さないことから、脱炭素の切り札として期待が高まっているアンモニア発電が、上関において実現すれば、中国エリアにおける電力供給は、主に再生可能エネルギーと原子力そしてカーボンフリーの火力により行われることになり、カーボンニュートラルの達成に大きく近づくことになります。 本県は、瀬戸内コンビナートにおいて全国の一割の水素を生成する水素先進県であり、そのことを本県産業の強みとして活用する施策の推進を図っていますが、水素のエネルギーキャリアであるアンモニアによる発電への活用も検討されていいテーマであると考えます。 以上、申し上げましたことを踏まえ、お尋ねいたします。 本県の電力行政は、上関原発建設計画をCO2回収型の石炭ガス化複合発電IGCC、もしくは石炭ガス化燃料電池複合発電IGFCに変更する方向でリーダーシップを発揮し役割を果たすべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。 以上で、一回目の質問を終わります。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)合志議員の御質問のうち、私からは電気料金高騰の影響と対策についてのお尋ねにお答えします。 液化天然ガスや石炭の価格高騰による電気料金への影響について、本年一月分の関連指標は、対前年比で消費者物価指数が約二割、企業物価指数では約五割と急激に上昇しており、県民生活や企業経営に大きな影響を与えているものと考えています。 このため、県では今年度、累次にわたり原油価格・物価高騰対策を実施し、県民や事業者への支援に取り組み、また、電気事業を所管する国に対しては、実質的な負担軽減につながる制度設計について、全国知事会を通じて要望してまいりました。 その結果、国の総合経済対策において、電気料金の激変緩和対策が実施され、今年一月使用分から料金引下げが行われており、一定の負担軽減が図られています。 こうした中、電気料金をはじめとする物価高騰は、今後もさらなる上昇や高止まりが懸念されていることから、私は、来年度予算においても引き続き、厳しい状況にある県民や事業者への影響緩和を図るための対策を講じてまいります。 具体的には、まず県民が利用する施設等でのサービス継続を図るため、医療機関や社会福祉施設等の光熱費をはじめ、公共交通事業者の燃料費や、学校・保育所等の食材費に対する支援を実施します。 また、企業の事業継続に向けて、省エネ・業務効率化に資する設備導入補助や、経営診断等によるデジタル経営への転換支援、リスキリングによる人材育成支援などにより、生産性向上を図ります。 さらに、経営の安定に向けて、原油価格・物価高騰対応資金など資金面からの支援や、クラウドファンディングを活用した頑張るお店応援プロジェクト、運送料の値上げに対応したEC送料支援などにより消費需要を喚起します。 私は、電気料金等の物価高騰が県民生活や企業経営に与える影響を最小限に抑えることができるよう、国の対策に適切に呼応しながら、引き続き必要な対策を講じてまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 議長(柳居俊学君)三浦商工労働部理事。 〔商工労働部理事 三浦健治君登壇〕 商工労働部理事(三浦健治君)県の電力行政についてのお尋ねにお答えいたします。 火力発電については国の第六次エネルギー基本計画において、排出される二酸化炭素の回収・貯留等による脱炭素化や、お示しの石炭ガス化複合発電などの技術開発等を推進していくとされています。 一方で、原子力発電についても、運転時に温室効果ガスの排出がないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与するベースロード電源として、必要な規模を持続的に活用していくとされています。 このように次世代の高効率石炭火力発電や原子力発電は、国のエネルギー政策において、その役割や重要性がしっかりと位置づけられています。 こうした中、上関原発については、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、解除する考えはないとの見解が国から示されており、国のエネルギー政策上の位置づけは現在も変わっていないと認識しています。 また、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、現在も変わりありません。 上関原発建設計画については、このように事情の変化がない中で、御提案のあった計画変更について県が役割を果たすことは考えておらず、県としては、これまで同様、地元上関町の政策選択や国のエネルギー政策を尊重するという立場で対応してまいります。 議長(柳居俊学君)合志栄一君。 〔合志栄一君登壇〕(拍手) 合志栄一君 二回目の質問でありますが、少し時間がありますので、一回目の質問で、福島第一原発事故は、偶然の結果がよい方向に向いたので、東日本壊滅という最悪事態は回避されたということを申し上げましたが、たまたま昨日、山大前の本屋に寄っておりましたら、こういう(掲示)「福島第一原発事故の真実」という本がありまして、これはNHKのメルトダウン取材班というのが十年かけて、千五百人以上の関係者取材で浮かび上がった事故の真相ということをまとめた本がありましたので、それを買い求めて、ちょっとこう見ていきましたら、エピローグのところで、先ほど私が申し上げたことを裏書きするようなことがありましたので、まずそれを紹介いたします。 「エピローグ十年目の「真実」あの事故で死を覚悟したときはあったのか。この十年、事故対応にあたった幾人もの当事者にそう尋ねてきた。」これは福島原発事故の当事者ですね。 ほぼ例外なく「死ぬと思った」という答えが返ってきた。とりわけ事故四日目の三月十四日、二号機が危機に陥った時、「もう生きて帰れないと思った」と語る人が多かった。家族に宛てて書いたという遺書を見せてくれた人もいた。このとき、冷却が途絶えた二号機は、何度試みてもベントができなくなり、なんとか原子炉を減圧したが、消防車の燃料切れで水を入れることができず、原子炉が空焚き状態になった。テレビ会議では、吉田所長や武藤副社長が血相をかえて「格納容器がぶっ壊れる」「とにかく水を入れろ」と怒鳴っている。 後に吉田所長は、「このまま水が入らないと核燃料が格納容器を突き破り、あたり一面に放射性物質がまき散らされ、東日本一帯が壊滅すると思った」と打ち明けている。吉田所長が語った「東日本壊滅」は、事故後、専門家によってシミュレーションが行われている。当時の菅総理大臣が、近藤駿介原子力委員会委員長に事故が連鎖的に悪化すると最終的にどうなるかシミュレーションをしてほしいと依頼して作成された「最悪シナリオ」である。そこに描かれていたのは、戦慄すべき日本の姿だった。 最悪シナリオによると、もし一号機の原子炉か格納容器が水素爆発して、作業員が全員退避すると、原子炉への注水ができなくなり、格納容器が破損。二号機、三号機、さらに四号機の燃料プールの注水も連鎖してできなくなり、各号機の格納容器が破損。さらに燃料プールの核燃料もメルトダウンし、大量の放射性物質が放出される。その結果、福島第一原発の半径百七十キロ圏内がチェルノブイリ事故の強制移住基準に達し、半径二百五十キロ圏内が、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になるとされている。半径二百五十キロとは、北は岩手県盛岡市、南は横浜市に至る。東京を含む東日本三千万人が退避を強いられ、これらの地域が自然放射線レベルに戻るには数十年かかると予測されていた。 この東日本壊滅の光景は、二号機危機の局面で、吉田所長だけでなく最前線にいたかなりの当事者の頭をよぎっている。しかし、二号機の格納容器は決定的に破壊されなかった。なぜ、破壊されなかったのか。 このことについて触れている文章を紹介いたします。 あの二号機の極限の危機。核の暴走を食い止めようと、吉田所長らは、爆発や被ばくの恐怖と闘いながら決死の覚悟で現場にとどまり、知恵を絞り出して、原子炉に水を入れ続けた。しかし二号機の格納容器が破壊されなかったのは、肝心なときに水が入らなかったり、格納容器の繋ぎ目の隙間から圧が抜けたりといった幾つかの偶然が重なった公算が強い。 こう記されています。 この極限の危機において、人間は核を制御できていなかった。それが「真実」である。 こういう指摘でありますね。 もう一つ、評論家の市川氏の寄稿を紹介いたしまして、上関原発で計画されている原子炉の型は、福島第一原発の炉の型と同一であるから、そのことが論点になる可能性を否定できないということについてもうう少し補足しておきますと、アメリカにおいて、西部には、アメリカのカリフォルニアとか、あっちのロサンゼルスとか、西部のほうには福島第一原発原子炉と同型の沸騰水型軽水炉の原発は建設されていません。 東部には、沸騰型軽水炉の原発があるんですけれども、なぜアメリカは、東部には沸騰水型軽水炉の原発を設置しているけど、西部には設置していないかというと、西部には地震が多いからですね。地震が多いところにおいて、その型の原子炉の原発を建設するのは危険であるということで建設されていないんですね。 ところが、地震が多い日本の国に対して、そのアメリカにおいては、地震が多い地域には建設されない型の原子炉が、ある意味、輸出・建設されたという事実があります。そういうことが論点になる可能性があるということを指摘しているわけであります。 そういうことを踏まえますと、繰り返しになりますが、あえていろんな世論の反発を押し切ってまで上関に原発が建設されるということはあり得ないということを、私は確信している次第であります。 今回、電気料金の高騰のことについて関心を向けまして、それで、県の電気、電力に関することを所管しているところに、いろいろ聞いたりしているときに、私自身が感じましたのは、これほど電気料金が高騰して、県民生活あるいは企業経営等に大きな影響があるのに、県の電力行政の主たる関心は上関原発にあるなということを感じて、果たしてこれでいいのかという疑問を持ったことからであります。 ある意味、私から申し上げれば、国のエネルギー政策による不作為、そして、それに寄りかかって経営判断を避けている中国電力。それに、いつまでも県の電力行政がお付き合いする必要はないのではないかということであります。 貴重な県の人材を、そういう見通しがないことにいつまでも投入する、配置する必要はない。それを改めていく政治の決断が今求められている。 公有水面につきましては、たしか昨年の十一月に許可判断がされて、期限は令和九年の六月までということで、四年半、村岡知事三期目の間には、このことについて許可するかどうかの判断を迫られることは県にはないわけでありますけれども、私は、そういう一つの将来の展望が見えないことにいつまでも、県の電力行政は関わることはやめる判断をすべきときが来るのではないのかなと思っているところであります。 公有水面埋立法は、法定受託事務で、知事に権限が、免許権はあるわけでありまして、どう判断するかというのは、最終的には知事に委ねられている面もあります。 知事自身の政治的な決断によりまして、ある意味、三すくみの状況になっている上関原発建設計画に終止符を打って、新しい一つの展望を切り開いていかれることを要望いたしまして、私の一般質問を終わります。(拍手) ───◆─・──◆──── 議長(柳居俊学君)この際、暫時休憩をいたします。再開は、午後一時の予定でございます。 午前十一時四十一分休憩