1 令和5年度当初予算について 2 デジタル改革の深化・加速化について 3 産業脱炭素化戦略の推進について 4 幹線道路網の整備について 5 教育行政について 6 警察行政について
───────────── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第六十一号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第六十一号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 友広巌君。 〔友広巌君登壇〕(拍手) 友広巌君 皆さん、おはようございます。自由民主党の友広巌です。令和五年二月定例会に当たり、自由民主党会派を代表して、県政の諸課題について、知事、教育長及び県警本部長に質問をいたします。 質問に先立ち、一言申し上げます。 今月七日、岸元防衛大臣が体調不良のため、大変残念ながら任期半ばで衆議院議員の職を辞されました。平成十六年に当選されてから約十八年間、我が国の外交・防衛の政府要職を歴任されるとともに、私ども地域の様々な声にも真剣に対応されるなど、日本を守り本県の未来を開くため、まさに力の限りを尽くされました。 改めまして、その御功績と御苦労に対し、ここに深い敬意と感謝の意を表し、何よりも一日も早い御回復を心よりお祈り申し上げます。 昨年二月二十四日の勃発から一年がたった今もなお、ロシアによるウクライナ侵攻はますますエスカレートの様相を呈しています。 また、急速に軍備増強を進める中国や過去に例のない頻度で弾道ミサイルを発射する北朝鮮など、我が国を取り巻く安全保障上の課題や脅威のレベルは増す一方です。 力による一方的な現状変更という許されざる暴挙が、一国の指導者の野心により現実化してしまった現在の国際情勢の中で、我が国の平和と安定、国民の生命・財産、そして国土を守るためには、こうした暴挙を無謀なものとして思いとどまらせる抑止力を、自国として万全かつ速やかに備えておくことが不可欠であります。 岸田内閣においては、昨年十二月に、安全保障政策の基軸となる新たな三文書を策定し、防衛体制の抜本的強化など、緊迫する国際情勢を踏まえ、我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換をする決断をされたところですが、我が会派といたしましても、国の抑止力を着実に向上させるための責任ある判断であることを確信しているところであります。 さて、我々山口県議会議員の今期任期もあと二か月となり、県民の皆様の真を問う統一地方選挙が、いよいよ間近に迫ってまいりました。 今期、我が会派は、コロナ禍という経験のないパンデミックに県全体が直面する中、県民の命と健康、そして雇用と暮らしを守り抜くため、ちゅうちょのない財政出動や機動的な対応を県に訴え、医療体制の万全の確保はもとより、休業要請協力金やエッセンシャルワーカーへの支援など、過去に例のない規模とスピードによる様々な支援策を県民の皆様に届けてまいりました。 また同時に、本県の未来を見据え、ポストコロナ社会におけるデジタル改革の必要性や、脱炭素化に対する本県の産業特性を踏まえた対策の重要性、また戦略的な海外展開の再起動などを繰り返し訴え、村岡知事の県政運営にしっかりと反映されてきたところであります。 今期の最後となる本定例会におきましても、我々自由民主党会派は、足元の物価高騰をはじめとした県民の皆さんが直面をしている課題をしっかりと県政に届けるとともに、本県が着実に成長していくよう、未来に向けた骨太な議論を行ってまいる所存であります。 そして、来る統一地方選挙、衆議院補欠選挙におきまして、我が自由民主党山口県連は、県政・国政与党として、実績と実現力、本県の未来に対する思いを掲げ、また、我が国の暮らしと安全を守り抜く責任と覚悟を訴え、多くの県民の皆様の負託を頂けるよう全力で戦い抜く覚悟であることを申し上げ、質問に入ります。 初めに、令和五年度当初予算についてお尋ねいたします。 三年にわたるコロナ禍にようやく出口が見え始め、社会経済は平時に戻りつつあります。 しかしこの間、少子化は一層深刻度を増す危機的な状況となり、人手不足が経済回復の足かせとなるなど、コロナによる影響は、従来からの地方の課題をさらに進行させる結果となっています。 また、エネルギー価格高騰に伴う物価高は、あらゆる県民生活や事業活動にとって大きな負荷となっています。 県政がこうした様々な課題を抱える中、県では、昨年十二月にやまぐち未来維新プランを策定されたところであり、来年度は新たな県づくりを本格的にスタートさせる年となります。 冒頭で申し上げたように我が会派は、ポストコロナの社会を見据え、デジタル改革や産業脱炭素化への対応など、困難でもこれを乗り越えることで未来を切り開いていく取組に、県としても果敢に取り組まなければならないと、繰り返し申し上げてきました。 また、一月初旬には、自由民主党山口県連として、市町や友好団体から頂いた約八百件に及ぶ要望を五十九項目の超重点要望事項として取りまとめ、村岡知事に要望したところでもあります。 このたび提出された当初予算案は、こうした我が会派の要望も踏まえ、本県の未来に向けて、三つの維新のさらなる進化に挑戦をする施策がしっかりと盛り込まれ、また、取組の継続性と実効性を担保すべき政策については、新たに基金も創設されようとしています。 加えて、我が会派が強く主張した物価高騰対策については、緊急的な対策に加え、ソフトランディングに向けた県内循環の仕組みづくりなどの中長期的対策も示されるなど、総じて、このたびの予算案は、私どもの要望に対し真摯に対応していただいたところであります。 平成二十六年にスタートした村岡県政も今年で十年目に入ります。知事がこれまで発言され取り組まれてきた様々な政策が、しっかりと実を結んでいくことが真に求められています。 未来維新プランの本格スタートに当たる来年度の当初予算により積極果敢に取組を進め、知事の描く未来図に向けて着実に成果を生み出し、その果実を目に見える形で県民の皆様の元に届けていただきたいのです。 また、そのためにも、物価高騰や地域社会の回復など、現下の課題にも、生き目のいくきめ細やかな対応をお願いする次第です。 そこでお尋ねをいたします。やまぐち未来維新プランに基づく新たな県づくりに向け、令和五年度当初予算に込めた知事の思いと、来年度の取組を進めるに当たっての決意を伺います。 次に、デジタル改革の深化・加速化についてお尋ねをいたします。 知事は、本県が抱える課題やコロナ禍がもたらした社会変革を未来への成長につなげるため、令和三年三月に策定された、やまぐちデジタル改革基本方針に基づき、地域のDX創出やデジタル人材の育成などに着実に取り組まれています。 もはや時代にデジタル技術は必要不可欠であり、AI開発でしのぎを削る諸外国の例を見ても、デジタル化によって人々の生活はより豊かで便利なものへと変化しています。 しかしながら、我が国においては、デジタルの恩恵が社会全体に浸透しているとは言い難い状況であり、紙のほうがかえって分かりやすい手続も残るなど、いまだ移行期から抜け出せてはいません。 本県においては、基本方針から二年が経過し、様々な実践に果敢に取り組んでおられる一方で、実証段階にとどまっているものも多くあり、デジタル改革の実現に向けては今がまさにその正念場であります。 先般策定された、国のデジタル田園都市国家構想の総合戦略では、デジタル実装に取り組む自治体数を二○二七年度までに千五百に引き上げるとの目標が掲げられ、そのために光ファイバーや5G環境、人材育成などの基盤整備を強力に推進することも示されました。 我が会派が度々訴えているように、地方においてこそデジタルを優先的に活用していくべきであります。デジタル改革にいち早く着手している本県においては、こうした国の政策と歩調を合わせながら、時に国に先んじるよう、デジタル実装のスピード感を上げ、改革の果実を県民にしっかりと届けなくてはなりません。 医療、教育、防災、子育てなど暮らしに身近な分野において、これまでのAIや5G等の技術を活用した取組の成果をさらに発展させていく必要があります。 また、産業面においては、製造現場でのDXを実現し生産性の向上を図ることが重要であり、担い手不足・高齢化が深刻な農林分野においては、四月に供用が開始される農林業の知と技の拠点が核となり、スマート農林技術の現場への実装を加速することが、強く求められています。 デジタル改革によって得られる一つ一つの果実が、多くの県民の日々の暮らしや仕事、事業活動に浸透し、地方における豊かさの向上に結びつくものとなるよう、県では、デジタル実装を改革の目標に掲げ、これまでの取組を大きく発展させるよう、しっかりと進めていただきたいのです。 そこでお尋ねをいたします。知事は、デジタル改革の深化・加速化に向けてどのように取り組んでいかれるのか、御所見をお伺いをいたします。 次に、産業脱炭素化戦略の推進についてお尋ねをいたします。 知事はこのたび示された、やまぐち産業脱炭素化戦略の最終案に沿って、十億円を上回るコンビナート企業群などへの支援策をはじめ、県組織の体制強化も打ち出されました。 具体的な取組やロードマップが示されたことにより、産業脱炭素化に対する方策がいよいよ目に見える形となってきたところであり、今後の実効性とその成果に、地元企業はもとより県民の皆様からも大きな期待が寄せられています。 一方で、我が国の脱炭素化に向けた動きは加速しています。先般、開催されたGX実行会議では、水素・アンモニアの導入促進など、今後十年間を見据えた取組が明示されるとともに、百五十兆円を超える官民協働のGX投資に向け、GX移行債の創設や二十兆円という大規模な政府資金の投入策が講じられようとしています。 さらに、現在審議中の国の来年度予算には、カーボンニュートラルに向けた革新的な技術開発や、クリーンエネルギー自動車の導入に対する支援も盛り込まれるなど、まさに施策を総動員して脱炭素化を推進しようとしています。 また、県内企業の動きも急であり、例えば、私の地元である周南コンビナートにおいては、企業間連携によって、アンモニアの供給網の整備や、カーボンリサイクル製品の製造、バイオマス発電などの取組に着手されています。 こうした研究開発や設備増強に対して、国の支援を着実に結びつけられるよう、県には、地域特性に応じたソフト面の支援を強化するなど、各企業・各地域の声に寄り添い、後押しをすることが強く求められています。 また、産業基盤の面からも、国際バルク戦略港湾の整備と並行して、カーボンフリーの新たなエネルギー供給の拠点であるカーボンニュートラルポート形成に向け、国、県が一体となって着実に取組を進めていかなければなりません。 もとより、事業変革に迫られる中小企業や、CO2の吸収源として重要な役割を担う農林水産業への支援も欠かすことはできません。 こうした点で、脱炭素化を強力に推進するために、県が組織再編により体制を整備されたことは時宜にかなったものと評価をしていますが、産業脱炭素化という社会全体の大きな変革を本県に取り込むためには、目に見える成果が不可欠なのであります。 県においては、前例にとらわれることなく新たな発想で取組を進められ、そして、これまで育んだ本県の優れた産業競争力を強化し、また飛躍することによって、県経済を成長軌道へと押し上げていただきたいのです。 そこでお尋ねをいたします。本県産業が直面する脱炭素化への対応と産業競争力の強化・維持の両立を図るため、新たな戦略の具現化に向けて今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いをいたします。 次に、幹線道路網の整備についてお尋ねいたします。 本県の強みを最大限に引き出し、新たな人や物の流れを創出・拡大するためには、その基盤となる幹線道路網の整備促進が不可欠です。 また、近年、頻発する大規模な自然災害から県民の皆様の安心や安全を確保するためにも、信頼性の高い道路ネットワークの構築は、極めて重要になっています。 このため、これまでも我が会派では、山陰道の全線開通をはじめ、下関北九州道路の早期事業化、岩国大竹道路の事業促進など、幹線道路網の整備促進を強く訴えるとともに、関係の皆様と一丸となって国への要望活動も精力的に行ってきたところです。 その結果、遅れていた山陰道の三隅─長門間においては、昨年、ルート等を示して地元説明会が開催され、先月には、都市計画審議会が開催されるなど、事業化に向けた手続が進み出しました。 そのほか、俵山・豊田道路や木与防災など、既に事業化された区間についても、トンネル工事や橋梁工事が着実に施工されています。 また、下関北九州道路については、都市計画や環境アセスメントを進めるための調査に移行し、環境アセスメントに関する住民説明会が開催されるなど、事業化に向けた歩みが進められています。 加えて、岩国大竹道路をはじめとする他の高規格道路や国道二号富海拡幅などの幹線道路についても、早期整備を目指し、工事や調査が実施されるなど、県内全域にわたり多くの事業が展開されています。 その一方で、県内の山陰道の整備率はいまだ二割に満たず、未着手区間も五割を超えているのが現状です。 下関北九州道路の事業化についても、事業手法の検討や環境影響評価、都市計画の手続など、まだまだ多くの手続を行う必要があり、道路の整備は道半ばであります。 また、慢性的な交通渋滞や重大な交通事故の発生、自然災害による通行規制、視界を遮る生い茂った草木の繁茂などの課題の解消も急がれています。 安心で希望と活力に満ちた山口県を実現するため、知事におかれては、このような本県の道路をめぐる課題を解消し、いまだ事業化されていない区間の早期事業化に向けた動きを加速化させるとともに、既に事業化された区間についても、早期完成に向け一層の事業促進を図るなど、幹線道路網の整備に強力に取り組んでいただきたいと思うのです。 そこでお尋ねをいたします。本県産業力強化や交流拡大を図り、災害時にも機能する信頼性の高い道路ネットワークを構築するため、山陰道をはじめとする幹線道路網の整備に今後どのように取り組んでいくのか、御所見をお伺いをいたします。 次に、教育行政についてお尋ねをいたします。 先月、政府は、新型コロナウイルス感染症の位置づけを見直すことを決定し、四月以降は学校でのマスク着用は求めない方針を示すなど、教育においてもコロナ禍の出口が見えてきました。 この三年間、学校現場では、全国一律での長期休業も経験する中、感染症の流行状況に応じてオンラインと参集型の授業を併用するなどの工夫もしながら、コロナ禍の中でも子供たちの学びを止めることなく教育を進めてこられました。 一方で、国の調査結果が示すように、活動機会の減少に伴う体力の低下や、子供たちの生活リズムの乱れ、学校生活上の制限などの生活環境の変化による不登校の増加など、コロナ禍は教育の分野に爪痕を残しているのも事実です。 また、本県が誇るコミュニティ・スクールの仕組みを活用した地域連携の取組や、運動会や文化祭といった体験的な活動が多くの制約を受け、停滞していたのも否めないところです。 今後、知・徳・体の調和の取れた伝統ある本県の教育力を取り戻していくためには、こうしたコロナ禍の影響を大きく受けてきたところにしっかりと目配りをしていかなければなりません。 同時に、コロナ禍の中で普及したデジタルツールやデータを活用して、個々の生徒に応じてきめ細やかに対応した学習を実現することも、これからの教育には求められます。 文科省では、今後、GIGAスクール構想により全国の小中学生に配布した約九百万台の端末から得られるデータを、学習のつまずきの発見や指導の改善に活用するよう検討が進められています。 本県では、高等学校段階を含む全ての公立学校に一人一台端末を整備しましたが、その活用には地域や学校によりばらつきがあるなど、あまねく学習効果が得られるにはいまだ至っていません。 国の知見も取り込みながら、このICT環境を最大限に活用し、児童生徒一人一人に応じた個別最適な学びを実現していかなければなりません。 県教委には、コロナ禍で制約を受けた子供たちの学びをしっかりと取り戻すとともに、それにとどまらず、より豊かで魅力ある学びへと本県教育を発展させていただきたいのです。 そこでお尋ねをいたします。社会経済がコロナ禍から平時に戻る中、本県教育力の回復とポストコロナ社会における新たな学びの実現に向け、県教委としてどのように取り組まれるのか、教育長の御所見をお伺いをいたします。 最後に、警察行政についてお尋ねをいたします。 警察庁によると、治安の指標とも言える刑法犯認知件数は、昨年、六十万一千三百八十九件と二十年ぶりの増加に転じ、日本の治安が悪くなったと感じる人の割合が半数以上となるなど、我が国の犯罪情勢は厳しい状況にあるとの懸念が示されています。 中でも、警察に対応を求めるものとして、不正アクセスやフィッシング詐欺などのサイバー犯罪の比率が増加し続けており、インターネット空間における犯罪に対して、その匿名性や不透明性から多くの国民が不安を感じていることがうかがえます。 本県でも被害が発生した、海外の収容所から携帯電話で日本の若者たちを操っていたとされる一連の強盗事件など、コロナ禍を経てデジタル社会の実現が加速的に進む中、サイバー犯罪に代表されるように、県民の安心・安全の確保のため警察が求められる課題は複雑化しており、警察組織・警察官の対処能力の向上が喫緊の課題となっています。 こうした中、県警察においては、警察庁と連携したサイバー犯罪への対応体制の構築や、捜査力の強化などの取組を進めることとされています。 私どもとしても、運転免許行政をはじめとした行政サービスの向上と併せて、技術革新や社会課題の変化に対応できる人材の育成や組織の変革を迅速に進められることを期待しているところです。 その一方で、地域の安全・安心の拠点とも言える警察署などの施設や設備は、多くが建設から半世紀以上経過している現状があり、こうした地域拠点が、サイバー犯罪への対応やデジタル化など社会の変革に対応し得るものとなっているのか、不安を感じる声があるのも事実です。 また、周南警察署をはじめ、十年、数十年に一度の災害が発生した際の災害拠点としての機能が十分に発揮できない施設もあると聞き及んでおり、中長期的な視点でこうした課題にも応えていく必要があります。 やまぐち未来維新プランに基づき、県全体が技術革新を取り入れながら新たな未来に向けた県づくりを進める中、その反面、生じてくる課題や県民の不安にしっかりと応えていくことが、県警察の重要な役割です。そのためのハード・ソフト両面からの警察機能の不断の刷新に、県警本部長が先頭に立ってしっかりと取り組んでいただきたいのです。 そこでお尋ねをいたします。犯罪や事件が高度化・複雑化する中、安全・安心の基盤である警察機能の充実強化にどのように取り組んでいくのか、県警本部長の御所見をお伺いをいたしまして、自由民主党会派を代表しての質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)友広議員の代表質問にお答えします。 まず、令和五年度当初予算についてのお尋ねです。 人口減少の進行をはじめ、三年に及ぶコロナ禍や、それによる社会経済活動の低迷、デジタル化や脱炭素化等の社会変革、ウクライナ情勢を発端とした物価高騰など、県政を取り巻く環境は大きく、急速に変化をしています。 私は、こうした環境変化をしっかりと捉え、単にコロナ前に戻すだけではなく、様々な社会変革の先にある新しい未来に向けて、本県の経済や暮らしをより高いレベルに引き上げていく発展的再生を実現させるという強い思いを持って、このたびの予算を編成しました。 予算編成に当たっては、やまぐち未来維新プランに基づく新たな県づくりを本格的に始動する予算と位置づけ、プランに掲げる、安心・安全、デジタル、グリーン、ヒューマンの四つの視点を踏まえ、これまでの取組を未来志向で再構築するとともに、コロナ禍等で生まれた新たな課題や深刻度が増した課題への対応に重点的な予算配分を行いました。 まず、安心・安全の確保では、コロナ禍の経験を踏まえ、将来にわたって県民の命と健康を守る取組の充実強化として、県立総合医療センターの抜本的な機能強化に向けた取組などを進めていきます。 デジタル実装の加速化では、県民一人一人が豊かさと幸せを実感できる人にやさしいデジタル社会の構築に向け、県政の各分野・各地域でのデジタル実装を進め、やまぐちデジタル改革をより高いレベルに押し上げます。 脱炭素社会の実現では、カーボンニュートラルを原動力に本県産業が成長と発展を遂げていくため、産業関連の設備投資・研究開発を支援するほか、県民や事業者の自発的な行動変容を促す、県民総参加による地球温暖化対策を推進します。 また、人づくり、新たな人の流れの創出では、結婚から妊娠・出産、子育てまでの切れ目のない支援や本県の未来を担う人づくりの取組を一層充実させます。 さらに、コロナ禍で失われた人と人とのつながりや活力を再生し、コロナ前よりも元気な地域をつくるため、山口きらら博記念公園を県の中核的な交流拠点として、本県の活力を創出・発信してまいります。 これらのプランに掲げる重点施策の推進に当たっては、令和四年度二月補正において新たな基金を創設し、計画期間にその取組を着実に実行することにより、確かな成果につなげていきたいと考えています。 さらに、現下の物価高を踏まえ、光熱費高騰に対する支援や消費需要喚起策などの物価高騰緊急対策に加え、県産飼料の生産拡大支援や、賃金引上げ・価格転嫁を促進する中小企業制度融資の融資枠を確保するなど、中長期的な課題にも対応した支援を行います。 私は、安心で希望と活力に満ちた山口県の実現に向け、本予算を通じ、コロナ禍や現下の物価高で傷んだ社会経済を再生させるとともに、三つの維新のさらなる進化を図る取組を速やかにスタートさせ、県民の皆様がその成果を早期に実感できるよう、全力で取り組んでまいります。 次に、デジタル改革の深化・加速化についてのお尋ねにお答えします。 デジタルは、本県が抱える様々な課題を解決するための切り札となり、また、新たな価値を創造し、地域の持続的な成長へのチャンスを生み出す大きな可能性を有していることから、私は、その力を積極的に活用する、やまぐちデジタル改革の取組を強力に推進しています。 これまでの全国に先駆けた様々な挑戦を経て、社会の中での実装事例も生まれており、私は、こうした成果をさらに増やし、多くの県民の皆様に届けるため、本県のデジタル改革を実装の本格展開を図る次のステージへと、しっかりと押し上げていかなければならないと考えています。 折しも、国は、デジタル田園都市国家構想総合戦略において、地方のデジタル実装による課題解決への取組を支援するとし、また、県議会の人にやさしいデジタル社会実現特別委員会からも、改革の成果を県民が実感できるよう、デジタル実装に力を注ぐべきとの提言を頂きました。 まさに今、デジタル実装に向けて大きく踏み出していかなければならない。私は、そうした考えの下、やまぐちデジタル改革基本方針を改訂し、県民の皆様がデジタルで社会や暮らしが変わったと真に実感できるよう、実装を改革の主眼へと据え、力強く取組を進めていきます。 そして、実装への各分野の取組をデジタル推進局が中心となり戦略的に推進するため、新たにデジタル実装推進基金を創設し、これを最大限有効活用すること等により、実装に向けた施策を重点的かつ集中的に展開していきます。 具体的には、県民に密接な分野において、デジタル実装によって暮らしの質を向上できるよう、子育て世帯を支援する病児保育の予約システム導入や、教育データに基づく個別最適な学びを実現するためのクラウドサービスの活用などの取組を進めます。 産業面では、DX推進拠点「Y─BASE」のDXコンサルや、中小企業のデジタル活用支援等により、各現場のデジタル実装による生産性向上やビジネス変革、新規事業創出などへの取組を強化します。 農林分野については、農林業の知と技の拠点が強い農林業の実現に向けた変革の核となり、産学公連携による山口型スマート技術の開発を推進するとともに、データを活用した営農管理システム等の現場実装を加速するなど、取組の高度化を進めます。 さらに、デジタル実装を支える基盤となる光ファイバー網等の整備や、デジタル人材の確保・育成の取組も新たに基金を活用し、強力に推進していきます。 私は、県民一人一人が豊かさと幸せを実感できる人にやさしいデジタル社会の構築に向け、本県のデジタル改革をより高いレベルへと押し上げられるよう、デジタル実装を果敢に推進する、やまぐちデジタル改革の深化・加速化に全力で取り組んでまいります。 次に、産業脱炭素化戦略の推進についてのお尋ねにお答えします。 脱炭素化の潮流が速度を増す中、本県産業がカーボンニュートラルを原動力とし、さらなる成長と発展を遂げるためには、取組の方向性や課題を産業界等と共有し、事業者の取組をしっかりと後押ししていくことが重要です。 このため、私は、昨年十月に策定したコンビナート低炭素化構想を核として、産業分野全般にわたる、やまぐち産業脱炭素化戦略の策定を進めてきたところであり、今後、戦略の具現化に向け、予算及び推進体制の両面から思い切った措置を講じ、実効性ある取組を強力に進めることとしました。 まず、予算面では、安定的な財源を確保し、企業投資等の予見性を高めることができるよう、六十億円の脱炭素社会実現基金を創設し、これを活用した新規施策を中心に集中的な取組を展開します。 本県経済の屋台骨であるコンビナートについては、各地域での連携体制の構築と活性化を図りながら、CO2排出削減や次世代燃料・素材の供給基地化に向けた施設整備や研究開発に対し、県独自に複数年にわたる大規模な経済的支援を行い、国の支援策の取り込みにつなげてまいります。 あわせて、重要なインフラである徳山下松港においては、国際バルク戦略港湾施策を推進しつつ、将来の西日本エリアにおける次世代エネルギーの供給拠点化に向け、新たに設置する協議会において取組の具体化を進め、令和五年度を目途に港湾脱炭素化推進計画を策定することとしています。 また、自動車産業の電動化シフトに対応した県内企業の業態転換や新事業展開を支援するとともに、中小企業の水素関連産業への参入促進や脱炭素経営の普及啓発、制度融資による資金繰りの支援等に取り組みます。 さらに、自動車の電動化やエネルギー利用の効率化等に不可欠である蓄電池や半導体関連産業等は、今後の成長が見込まれることから、新たに最大五十億円の補助金を創設し、戦略的な企業誘致を進めることとしています。 加えて、農林業の知と技の拠点を核とし、脱炭素化等に対応する山口型スマート技術の開発・実装を加速するとともに、エリートツリーによる再造林の推進やJクレジットの活用促進など、CO2吸収源対策に資する取組を進めます。 体制面においても、脱炭素化をはじめ急速な社会変革に的確に対応するため、産業戦略部と商工労働部を一体化し、新たに産業労働部を設けるとともに、機能や人員をさらに拡充した産業脱炭素化推進室を設置し、総合的なマネジメントや企業ニーズの把握を行いながら、目に見える成果の創出を図ってまいります。 私は、今後とも、産学公金の緊密な連携の下、脱炭素化という変革を乗り越え、産業の未来をリードする山口県の創造に向け、新たな戦略の具現化に全力で取り組んでまいります。 次に、幹線道路網の整備についてのお尋ねにお答えします。 私は、安心で希望と活力に満ちた山口県を実現するためには、迅速かつ円滑な物流の確保や交流人口の拡大に資するとともに、大規模災害時にも機能する道路が必要不可欠と考えており、やまぐち未来開拓ロードプランに基づき、幹線道路網等の整備を重点的・計画的に進めているところです。 具体的には、まず、山陰道のうち三隅─長門間については、市街地や観光拠点等に直結する重要な区間であり、地域の利便性・安全性の向上のため、早期に整備を進める必要があります。 このため、県としては、政府要望や知事会等の機会を捉え、早期事業化を要望するとともに、昨年八月に示された国の計画案を基に、周辺道路等の整備の検討や都市計画の決定に向けた手続を鋭意進めてきたところです。 さらに、私は、こうした取組を令和五年度の新規事業化に確実につなげるため、今月、柳居議長をはじめとした議員連盟や期成同盟会の皆様とともに、斉藤国土交通大臣に直接お会いし、改めて早期整備の必要性を強く訴えてまいりました。 また、その他の区間についても、引き続き、あらゆる機会を通じて、事業中区間の一日も早い完成はもとより、未着手区間の早期事業化を国に要望するなど、山陰道全線の早期完成に向けた取組を加速してまいります。 次に、下関北九州道路については、関門地域の一体的な発展を担う重要な基盤であることから、国や二県二市と連携し、都市計画や環境アセスメントを進めるための調査を行っており、今年度、環境影響評価に係る審査会を開催するなど、取組を着実に進めているところです。 また、整備促進大会や産学官の連携によるシンポジウムを開催するなど、機運醸成や広範にわたるコンセンサスの形成にも努めています。 今後とも、事業化に向けた調査検討を迅速かつ着実に進めるとともに、議員の皆様や経済界とも連携しながら、早期実現に向け精力的に取り組んでまいります。 さらに、事業中の国道二号や国道百八十八号、小郡萩道路などの早期完成はもとより、地元の期待が大きい国道二号の台道から鋳銭司間などの事業化についても、国に強く要望してまいります。 また、県民の皆様が、安心・安全で快適に道路を利用していただけるよう、引き続き地域の課題やニーズに応じ、渋滞対策や適切な維持管理等にも努めていく考えです。 私は、本県の活力の源となる産業力の強化や交流の拡大、県民の安心・安全の確保に向け、その基盤となる幹線道路網の整備に積極果敢に取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 コロナ禍の約三年間、県教委では、学校における感染防止対策の徹底を図るとともに、全国に先駆けてICT環境を整備し、オンライン授業が実施できる体制を整えるなど、子供たちの学びを保障し、安心・安全に学校生活を送ることができるよう取り組んでまいりました。 しかしながら、この間、学校内外での交流機会の減少や人間関係の変化、生活リズムの乱れ等により、地域と連携した活動の停滞や体験活動機会の減少、いじめ・不登校の増加など、コロナ禍の影響による様々な課題が顕在化・深刻化しています。 このような中、本県の教育力を回復し、子供たちの豊かな学びを実現していくためには、まずは、こうした課題の解決に全力で取り組むことが重要であると考えています。 このため、コロナ禍で停滞した地域連携教育の再加速に向け、新たな推進体制の整備や子供と大人が学び合う場の創出などに取り組むことにより、希薄化した人と人とのつながりを取り戻し、社会総がかりで子供たちの学びや育ちを支援してまいります。 また、地域や企業、大学等と連携した自然体験活動のモデル事業を新たに実施することとしており、これを全県に展開することで、子供たちの体験活動の機会の充実に取り組んでまいります。 さらに、いじめ・不登校等の未然防止を図るため、全国初の取組として、中学・高校入学前の段階からスクールカウンセラーによる教育相談を実施する体制を構築し、新たな学校生活等に不安や悩みを抱える新入生への重点的な支援を行うこととしています。 こうした取組により、コロナ禍で直面した諸課題の解決を図ると同時に、ポストコロナ社会における新たな学びの実現に向けては、全ての県立学校に整備したICT環境をさらに効果的に活用していくことが必要です。 このため、タブレット端末の利用により蓄積された学習履歴などの教育データを学習指導等に活用することで、児童生徒一人一人に合った学びを支援してまいります。 また、海外の学校との遠隔授業や、選抜性の高い大学を志す高校生を対象とした課外授業、専門高校等における資格取得のための講座などをオンラインで実施することにより、学校の枠を越えて切磋琢磨し、学ぶことのできる機会の創出に積極的に取り組むこととしています。 県教委といたしましては、市町教委や関係機関等との緊密な連携の下、コロナ禍で制約を受けてきた子供たちの学びをしっかりと取り戻すとともに、本県の強みであるICT環境を生かした質の高い教育の実現に向けて全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)中西警察本部長。 〔警察本部長 中西章君登壇〕 警察本部長(中西章君)警察機能の充実強化についてのお尋ねにお答えします。 議員お示しのとおり、昨年、全国では刑法犯認知件数が二十年ぶりに増加に転じたほか、うそ電話詐欺の認知件数や被害額も前年より増加するなど、懸念される状況となりました。 一方、県内では、刑法犯認知件数やうそ電話詐欺の認知件数、被害額については減少しているものの、サイバー犯罪に関する相談件数が四千件を超え、過去最高となるなど、安全・安心なサイバー空間の確保は喫緊の課題となっています。 また、全国で殺人にまで至った一般民家などを対象とした連続強盗事件が発生しており、当県でも、同一犯行グループによるものと見られる事件が昨年十一月に発生しております。 当県の事件については、速やかに実行犯全員を検挙しており、現在、警視庁等と合同で指示役の特定など全容解明を進めているところでありますが、これら凶悪事件の発生が、体感治安を脅かす大きな要因になっていると認識しています。 県内におけるこれらの事件では、当県とは全く縁のない実行犯らが、指示役から秘匿性の高い通信アプリなどで指示を受け、県内に入り犯行した後、直ちに県外に逃走するなどの特徴があり、こうした犯罪の広域化・スピード化に対応するためには、最新の捜査ツールの導入等による、捜査の一層の高度化・スピード化が求められる状況となっています。 さらに、限られた人員をこれらを含めた捜査活動、警察活動に的確に対応させていくためには、あらゆる業務を積極的にデジタル化し、合理化・効率化を図ることによって、真に人にしかできない仕事に貴重な人的資源を集中投入していくことが、より重要となってきます。 加えて、議員お示しのとおり、警察活動の基盤であり、災害等の発生時には災害警備活動の拠点となるべき警察署等の施設についても、老朽化が進み、機能性や県民サービスの面からも不備が生じているものが多々あり、これらへの対策も喫緊の課題となっております。 こうした観点から、県警察においては、先日発表された、やまぐち未来維新プランにおいて、サイバー犯罪対策の強化や社会の変化に対応した捜査力の強化、さらには警察部内のデジタル化、そして、老朽化した警察署や交番等の集中的な建て替え整備の推進等、様々な施策を策定させていただきました。 県警察では、これらの施策を実現するため、来年度は、サイバー犯罪対策に特化したサイバー犯罪対策課や捜査の高度化に対応する捜査支援分析課、さらには警察部内のデジタル化を一層推進していく情報技術推進課を新たに立ち上げ、それぞれ専門的な人材の確保・育成はもとより、必要なデジタルツールや捜査の高度化に資する資器材を計画的に整備してまいることとしております。 また、防府警察署や周南警察署をはじめとする老朽化、狭隘化した警察署についても、災害警備活動の拠点として、あるいはデジタル化や感染症への対応、利用者の利便性向上の観点からも十分となる施設とすべく、集中的かつ計画的な建て替え整備を進めてまいりたいと考えております。