1 令和5年梅雨前線豪雨災害について 2 医療・福祉現場の処遇改善に向けた診療報酬等の改定について 3 産業脱炭素化の推進について 4 観光振興について 5 教育行政について 6 警察行政について
───◆─・──◆──── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第十七号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第十七号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 江本郁夫君。 〔江本郁夫君登壇〕(拍手) 江本郁夫君 皆さん、おはようございます。いい天気になりました。自由民主党会派の江本郁夫でございます。 令和五年九月定例会に当たりまして、自民党会派を代表いたしまして、県政の諸課題につきまして、知事、教育長及び県警本部長に質問をいたします。 質問に先立ち一言申し上げます。 この夏の梅雨前線による記録的な豪雨や、猛烈な雨をもたらした台風は、本県はじめ全国各地の自治体に甚大な被害をもたらしました。これらの災害によりお亡くなりになられた方々に謹んで御冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。私ども自由民主党は、被災地域の復旧・復興と安心・安全の回復に全力を傾けてまいる所存であることを、まずもって申し上げます。 また先月、ハワイ州マウイ島において、大規模な山火事により多くの方がお亡くなりになり、かつ甚大な被害を受けられたことに対し、心からのお悔やみを申し上げますとともに、一日も早い復興に心を寄せてまいりたいと思います。 さて、岸田総理におかれましては、去る九月十三日に、第二次岸田再改造内閣を発足させ、経済、社会、国際情勢の様々な変化を力として、我が国の閉塞感を打破するための新たな布陣をしかれました。そのスタートに当たり、岸田総理は、政策の第一の柱に経済を掲げ、攻めの経済への転換とデフレからの脱却を確実なものとしていく、そのための経済対策を早急に策定し実行すると述べられたところであります。 本県においては、この夏の祭りやイベントが本格開催されるなど、地域社会は着実に回復しつつありますが、その一方で、足元の物価高や、百三十万人を割り込んだ人口減少など、持続的な成長のためには多くの課題を乗り越えなければなりません。 我が自由民主党は、国の政策や経済政策と緊密に連携を図りながら、こうした県政の課題にしっかりと向き合い、成長と分配の好循環による経済成長の実現に向け、全力で取り組んでまいりますとともに、人口減少の進む中にあっても、地域経済と暮らしを再生し、将来に希望の持てる山口県をつくり上げていくために、引き続き総力を挙げていく決意であることを申し上げ、通告に従いまして順次質問をいたします。 まず、令和五年梅雨前線豪雨災害について二点お尋ねします。 六月下旬から七月にかけての大雨は、本県を含め九州北部や秋田県などにおいて、道路や橋梁の崩落、大規模な土砂崩れや住宅の浸水、さらには死者・行方不明者も相次ぐなど、全国的に深刻な被害をもたらしました。 本県においても、六月二十九日の深夜から降り始めた雨により、記録的短時間大雨情報や土砂災害警戒情報が繰り返し発表され、下関市では一時間当たりの降水量が百ミリを超えるとともに、県内各地で二十四時間降水量が観測史上最大となるなど、まさに記録的な大雨となりました。 この猛烈な雨により、県中西部を中心に、土砂崩れや河川の氾濫、住宅の浸水や道路の寸断による集落の孤立、大規模な断水、JR美祢線の橋梁流失や山陰本線の橋脚傾斜など、暮らしを支える社会インフラは広範囲にわたり被害を受け、被災地域の皆さんは、今も不自由な生活を余儀なくされています。また、農地や農業用施設、社会福祉施設や文化財なども浸水被害により使用できなくなるなど、事業活動にも大きな支障が生じています。 これら被災した道路や河川、農業用施設などの復旧は、目下急務の課題です。このたびの補正予算においては、災害復旧対策として約百三十七億円を計上されたところですが、一日も早く社会基盤を復旧し、日常の暮らしや事業活動を取り戻せるよう、迅速な予算執行と早期の工事着手に、県の総力を挙げて取り組んでいかねばなりません。 また、今回の災害において残念ながらお亡くなりになられた方、行方不明となられた方がおられます。県ではこれまでも災害の都度、防災対策の見直しと充実を図ってこられましたが、このたびの被災を踏まえ、改めて市町や関係機関と連携して検証を行い、備えの精度を一層高めていく必要があると考えます。 同時に、我が自由民主党が強く推進してきた、防災・減災、国土強靱化対策によるハード整備については、各地に甚大な被害をもたらしている線状降水帯の発生など、自然災害が年々頻発化・激甚化している中、今回の被災状況も踏まえ、これまで以上に対策の強化を図っていく必要があります。 とりわけ、平成二十二年の七月十五日、大雨災害の際にも、流域が大きな被害に見舞われた厚狭川の河川改修については、美祢市や山陽小野田市からも県に対し強く要望されているところであり、早期に対策を講ずることが地元住民の安心・安全の回復には不可欠です。 国においては、現在取り組んでいる国土強靱化五か年加速化対策が令和七年度に完了する後も、継続的・安定的に対策を進めるべく、先般、中期計画策定を政府に義務づけた、国土強靱化基本法の改正が行われたところであります。 県においても、河川しゅんせつや堤防整備など、これまでの取組による防災・減災効果の検証と、その周知をしっかりと行いながら、現行対策の一層の強化を図るとともに、県土の強靱化に向けたさらなる対策の構築についても、着実に取組を進めていく必要があると考えます。 そこでお尋ねいたします。今回の大雨災害による被害の迅速な復旧にどのように取り組まれるのか。また、このたびの災害を踏まえ、今後の防災対策の強化と、防災・減災、国土強靱化の推進にどのように取り組まれるのかお伺いいたします。 二点目として、JR美祢線及び山陰本線の復旧についてお尋ねします。 知事は、被災直後からJR西日本に対し、この二路線の早期復旧を要望するとともに、国土交通大臣に対しても、柳居議長と共に財政支援を直接要望されるなど、スピード感を持って対応されており、その結果として代行バスの早期運行にもつながっているところです。 美祢線、山陰本線は、地元住民の日常生活を支えるとともに、鉄道を活用した観光振興なども進めてきた、地域にとって重要な公共交通であります。同時に、この二路線は、人口減少や少子高齢化が進む中で利用が減少し続けている路線でもあることから、今後の復旧に関わる、JRとの折衝などの取組については、県は引き続き、被災した沿線自治体の思いに寄り添い、地元と一体となって対応を進めていかねばなりません。 そこでお尋ねします。今後、県はJR美祢線及び山陰本線の復旧にどのように取り組んでいくのか、知事の御所見をお伺いします。 次に、医療・福祉現場の処遇改善に向けた診療報酬等の改定についてお尋ねいたします。 少子高齢化が急速に進展する中、我が国の医療・福祉を取り巻く環境は大きく変化しており、国民・県民が将来への不安を感じることなく、安心して住み慣れた地域で暮らしていくためには、良質な医療や介護、障害、保育等の福祉サービスが受けられる体制を構築することが極めて重要となります。 言うまでもなく、医療や福祉などの社会保障制度は、県民の安心や生活の安定を支える重要なセーフティーネットであり、その医療・福祉サービスの体制を支える要は人です。 現在、岸田政権の下では、新しい資本主義を掲げ、人への投資や国内投資を促進する政策が展開されております。これにより国内産業全体では、賃上げ率が三・五八%と、三十年ぶりの高い水準となるなど、足元の経済活動には力強い動きが見られ、日本経済の好循環が生み出されています。 こうした中、岸田総理は新内閣の発足に当たり、新しい資本主義を加速し、物価上昇率を上回る賃上げを継続的に実現するための政策を進めるとの決意を、改めて力強く述べられたところです。 しかしながら、医療や福祉の現場を支えている従事者の給与については、国が定める報酬等により事業所の収入が決定され、経済成長や民間企業の賃上げに連動した仕組みになっていないこと等から、他分野に比べて給与の引上げが思うように進んでおらず、医療・福祉の人材の確保に当たり、深刻な影響が懸念される厳しい実態にあります。 こうした中、来年春には、診療報酬・介護報酬の同時改定と、保育等の公定価格の改定が行われる予定になっていますが、昨今の物価高騰により関係施設・事業所の経営環境が厳しい状況にある中、そこに従事する方々の給与を他分野と同様に引き上げていくためには、報酬等の大幅な改定が必要であります。 このため、私ども自民党県連は、来る十月一日、県内の関係団体の皆さんと一体となって、各報酬・公定価格の大幅改定を求める決起大会を開催することとしているところであり、医療・福祉関係者の勤務環境や処遇の改善を図ることで、賃上げによる地域経済のさらなる好循環を実現し、質の高い医療・福祉サービス体制をしっかりと確保していくことに、全力で取り組む所存であります。 県では現在、修学資金貸付けや人材バンクなど、医療・福祉の人材確保対策に積極的に取り組んでおられますが、それらの取組を最大限に生かすには、処遇の根幹となる給与面の改善が必要不可欠です。県におかれても、我々と声を一にして、医療・福祉の各報酬・公定価格の大幅改定を実現すべく、国に強く働きかけを行っていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。物価高騰等により医療・福祉関係事業者等の経営環境が厳しい状況にある中、現場で従事する方々の給与を引き上げるため、県では診療報酬等の改定に向けてどう取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 次に、産業脱炭素化の推進についてお尋ねします。 県では、本年三月に策定した、やまぐち産業脱炭素化戦略の下、二○五○年カーボンニュートラルの実現に向け、温室効果ガスの排出割合が大きいコンビナート企業の取組や、脱炭素化に伴い事業スタイルの変革を迫られる中小企業、二酸化炭素の吸収源として重要な役割を担う農林水産業への支援など、産業分野における事業者の脱炭素化への取組を進めておられます。 こうした中、先般、国において、脱炭素成長型経済構造移行推進戦略、いわゆるGX推進戦略が閣議決定されました。この戦略により、GX経済移行債を活用した先行投資支援や成長志向型カーボンプライシング構想など、GX実現に向けた基本方針やGX推進法、GX脱炭素電源法によって具現化された新たな政策の早期実現に向けた動きが一段と加速化されることとなります。 スピードを増す変革の波に対し受け身では、競争力を高める機会を逸してしまいかねず、危機感とさらなる発展を目指す意欲を、官民がしっかりと共有し取り組まなければなりません。 現在、本県コンビナートでは、こうした意識の下、スピード感を持って取組が進められています。その一つが、周南地域におけるアンモニアのサプライチェーン構築におけるファーストムーバーとなる取組ですが、先日開催された県のコンビナート連携会議において、私の地元である宇部・山陽小野田地域においても、県の支援も受けながら企業間連携による新たな実証が開始されることが発表されました。この取組も世界的にまだ例のないものだと伺っており、その成果が本県産業の将来につながることを大いに期待しているところです。 こうした横断的かつ戦略的な企業間連携がコンビナート企業において進むのは、これまで産業戦略本部の下、様々な取組を官民が一体となって進めてきた素地があるからこそだと考えます。引き続き県が潤滑油となり、これらに続く新たな取組の創出に向け、議論を一段と活発化させていただきたいと思います。 また、こうした民間主導の取組を支え、脱炭素社会の現実的かつ着実な移行を実現するためには、カーボンニュートラルポート形成など、産業基盤の整備・高度化を国や県が主体となり確実に進めていくことも重要だと考えます。 県においては、国や民間の刻々と変化する情勢やニーズに的確に対応しながら、本県産業の成長・発展に資する産業脱炭素化を、しっかりと推し進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。本県の産業競争力の維持・強化に向けた脱炭素化戦略を展開するため、今後どう取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いします。 次に、観光振興についてお尋ねします。 全国の観光地ではコロナ禍前のにぎわいが戻ってきています。とりわけインバウンド需要の回復は急速に進んでおり、日本政府観光局によると、六月の訪日客数はコロナ後初めて二百万人を超えるとともに、観光消費額は既にコロナ禍前と同水準の数値まで回復し、順調なGDPの成長を下支えしています。 また、先月十日からは、中国からの日本への団体旅行が約三年半ぶりに解禁されており、インバウンド需要はさらに増加することが見込まれています。 繰り返し申し上げていますように、円安基調や、日本の物価水準がインフレに苦しむ世界の国々の中では安定していることを背景に、外国人観光客の消費意欲は非常に高まっており、こうした旺盛なインバウンド需要を取り込むことが、地域経済にとっても重要となっています。 こうした中、知事は今年度に入り積極的に海外を訪問され、トップセールスや地元有力者との関係の深化に取り組まれているところです。私どもとしても、本県と海外との歴史的なつながりを軸にした海外訪問に、新たな経済的・文化的関係をつくり出す可能性を感じているところであり、だからこそ知事には、海外訪問で得た可能性の芽を具現化し、県経済の成長や地域活性化という成果にしっかりとつなげていただきたいと考えております。 私自身も七月の台湾訪問団の一員として、デジタル担当大臣であるオードリー・タン大臣や新竹市長との意見交換、台湾の一番の友人と唱えられた安倍元総理の写真展などに出席させていただき、深い知見を得ることができました。 また、本県出身者が日本統治時代に創業した林百貨でのPRイベントでは、多くの方が本県のために積極的に行動していただく姿に感銘を受け、本県に対する高い関心や親近感を直接肌で感じたところです。 本県には、角島や元乃隅神社、錦帯橋、秋吉台、萩の城下町など、既に外国人観光客から人気の高いスポットに加え、三方を海に開かれた本県で取れる海の幸や豊かな自然が育む農産物など、食や体験、文化などに関心の高い外国人観光客の需要を満たす魅力的な素材が多数あります。こうした本県の強みを十分に生かし、この高まる関心やインバウンド需要という絶好の機会を逃がすことなく、裾野の広い観光関連産業の潤いへとつなげるよう取り組んでいただきたいと思うのです。 そのためには、現地での積極的なプロモーションにより本県誘客へとつなげていくことはもとより、チャーター便の運航等により、外国人観光客を直接本県へ呼び込む取組を進めていくことも重要です。これまで実績のある台湾や韓国からの山口宇部空港へのチャーター便の運航などにもしっかり取り組んでいただき、具体的な成果へとつなげていただきたいのです。 そこでお尋ねいたします。本県の観光振興に向けて、急激に高まるインバウンド需要の取り込みにどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いします。 次に、教育行政についてお尋ねします。 教育は人なりと言われるように、教育の質や成果を左右するのは、いつの時代も学校で子供たちと接する教員であります。しかしながら、現在、その教員の置かれた状況は看過できないものとなっています。 先般、国が公表した勤務実態調査によると、時間外在校等時間が、国指針で定める月四十五時間以上となっている教員の割合が、小学校で六割、中学校で七割を超えており、中学校では四割近い教員がいわゆる過労死ラインを超えて働いていることが判明いたしました。加えて、大量退職、大量採用などを背景に、近年、全国的に採用倍率が大きく低下し、教員不足も指摘されています。 本県においても、今年度、中学二、三年生のいわゆる三十五人学級化が一時凍結され、また六月には、来年度の本県公立学校の教員採用試験に関わる志願状況が発表されましたが、その倍率は全体で二・五倍と、過去最低の水準にまで下がっています。 このような状況を受け、文科省の諮問機関である中央教育審議会の特別部会においては、先月、緊急提言がなされ、現在の教員を取り巻く状況は、我が国の未来を左右しかねない危機的状況にあると言っても過言ではないとして、持続可能な教育環境の構築に向け、教育に関わる全ての者の総力を結集して取り組む必要性を強く指摘しています。 子供たちの学びを充実させ、その可能性を最大限引き出すためには、関係者が連携して、教員が子供の学習指導などの専門性を発揮でき、また、教育内容の変化にもしっかりと対応できるための時間を確保していくことが必要不可欠です。それにより、教育の質の向上が図られ、ひいては教職の魅力回復、志願者の確保にもつながっていくのではないでしょうか。 県教委では、平成三十年三月に、山口県学校における働き方改革加速化プランを策定され、これまで様々な取組を進めておられます。しかし、残念ながら、教員をはじめ学校教育全体として、目に見えた変革が実感できるとは言えない状況にあります。いま一度、教員の業務の在り方そのものを見詰め直し、大胆に整理していく必要がありますが、そのためには県教委のリーダーシップが何より重要となります。 県教委におかれては、強力なイニシアチブを発揮し、市町教委や保護者、地域など関係者が一体となって、有為な人材が教員を目指し、また教員が高い意欲と誇りを持って働くことができる環境づくりを進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。教員の確保や過度な働き方が全国的な課題となり、本県においても中学二、三年生の三十五人学級化が一時凍結となるなど大きな影響が生じている中、教員の力が最大限発揮できる環境づくりに今後どのように取り組まれるのか、教育長の御所見をお伺いいたします。 最後に、警察行政についてお尋ねします。 本年八月二十八日付の人事異動により、第三十九代目の山口県警察本部長として阿久津正好警視長が着任されました。着任会見において新本部長が、県民の期待と信頼に応える強い警察を基本姿勢に県民の皆さんから頼られる警察を目指す、安全・安心の確保に向けて職員としっかりと汗をかいていくと力強い決意を語られたことに、私も一人の山口県民として、大変心強く感じるとともに、本部長のリーダーシップにより、県内の治安維持と県民の安心・安全をしっかりと確保していただきたいと、大きな期待をしているところです。 県内の治安情勢に目を向けますと、昨年中の刑法犯の認知件数は、全国的には増加に転じたものの、県内では前年を下回り、交通事故発生件数についても減少を続け、交通死亡事故については昭和二十六年の統計開始以後、最少件数を更新するなど、県警職員の皆さんの献身的な日々の活動が実を結んでいます。 その一方で、昨年中は、県内におけるうそ電話詐欺被害について、県警が各種対策を講じているものの、百七件発生、約二億五千万円もの被害が発生しています。本年においても、被害が連続して発生したことで、二度にわたってうそ電話詐欺特別警戒警報が発令される事態にまで発展しています。 こうした状況を踏まえ、会見の中で本部長は、山口県内におけるうそ電話詐欺などの特殊詐欺の現状について、非常に深刻な情勢であるという強い危機感を表明されています。 また、先ほども取り上げましたが、今夏の大雨による災害は、甚大な被害をもたらし、いまだ行方不明の方もおられるなど、災害への迅速な対策や対応も不可欠であります。 さらに、不正アクセスやフィッシング詐欺、サイバー事案に関する相談や事件は、全国的に増加傾向にあります。山口県も例外ではなく、昨年県警に寄せられたサイバー関係の相談件数は四千四百六十八件となり、昨年より五百一件も増加し、県民が身近に不安を感じている状況にあります。 阿久津本部長の前職は、警察庁サイバー捜査課長であると承知しております。ぜひともその知識と経験を生かして、山口県民の不安の払拭と安全・安心の確保に御尽力いただきたいと強く願っています。 そこでお尋ねいたします。山口県民一人一人の安心・安全な社会の実現に向けて、山口県警察職員と共に汗をかき、今後どのようなリーダーシップを取られるのか、このたび着任された警察本部長の御所見をお伺いいたしまして、自由民主党会派を代表しての質問を終わります。 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)江本議員の代表質問にお答えします。 まず、令和五年梅雨前線豪雨災害についてのお尋ねのうち、迅速な復旧と、このたびの災害を踏まえた今後の取組についてです。 このたびの豪雨により被災された地域の皆様が一日も早く元の生活を取り戻せるよう、公共土木施設や農業用施設など、地域住民の生活を守る社会基盤を早急に復旧することは極めて重要です。 このため、私は、被災後速やかに、県議会や関係市の皆様と共に、国に対して、災害の早期復旧に向けた支援などについて緊急要望を行い、その結果、激甚災害への指定や災害査定手続の簡素化等が図られたところです。 県においても、デジタル技術を活用し、多くの職員や測量・設計業者が被災状況や復旧方針などの情報を共有すること等により、査定に向けた作業の迅速化・効率化を図り、通常より約一か月早い、八月初旬には災害査定を開始することができました。 さらに、甚大な被害を受けた美祢市については、県職員の派遣や技術的助言を行うなど、早期復旧に向け、幅広く支援をしているところです。 県では、既に、災害復旧工事の発注も鋭意進めており、引き続き、被災市町と連携し、総力を挙げて、被災箇所の早期復旧に取り組んでまいります。 また、頻発化・激甚化する自然災害から県民の生命や財産を守るためには、これまでの取組による防災・減災効果の検証と、その周知を行った上で、河川改修をはじめとしたハード対策や、住民の主体的な防災活動の推進などのソフト対策を一層強化することも重要です。 具体的には、ハード対策として、河川改修、砂防堰堤の整備、緊急輸送道路等ののり面対策や橋梁の耐震化、老朽ため池の改修などを、近年の気象状況等も踏まえ、緊急性の高いものから、国の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策の予算等も活用し、精力的に進めていく考えです。 こうした考えの下、お示しの厚狭川については、再度災害を防止するため、川幅の拡幅や堤防の整備などの抜本的な河川改修を実施するとともに、関係市をはじめ、あらゆる関係者が協働して、水害を軽減させる流域治水の取組も進めてまいります。 また、ソフト対策として、このたびの災害を受け、市町防災主管課長会議等を臨時に開催し、住民の適切な避難行動の促進につながるよう、市町による避難情報の発令の在り方について検証を行うなど、今後の自然災害に備え、市町と連携しながら、防災対策の一層の強化に取り組みます。 私は、県民の暮らしの安心・安全はあらゆることの基本であるとの認識の下、迅速な災害復旧はもとより、災害に強い県づくりに向けて、市町や関係機関等と緊密に連携し、ハード・ソフト両面から、防災対策の強化と、防災・減災、国土強靱化の推進に全力で取り組んでまいります。 次に、JR美祢線及び山陰本線の復旧についてです。 鉄道は、通勤や通学など沿線住民の日常生活はもとより、地域の経済活動や観光振興などに大変重要な役割を果たしており、被災した場合には、事業者の責任において、速やかに復旧させる必要があると考えています。 このため、私は、被災直後から、JRに対し、沿線自治体と連携して早期復旧を要請し、また、国に対しても、県議会と共に、JRが行う復旧への十分な財政支援などの要望を行ってきたところです。 こうした中、先日、JRから被害状況や被災原因等が公表され、山陰本線については、引き続き調査分析中であるとされた一方で、美祢線については、平成二十二年に続く、厚狭川を起因とする大規模な被害であり、県による厚狭川全体の河川改修計画の検討が必要との見解も示されたところです。 私は、厚狭川については、再度災害を防止するため、抜本的な河川改修を実施することとしており、今後、JRに対し、こうした考えも示しながら、引き続き、両路線の早期復旧を強く要請してまいります。 また、こうした要請に併せ、沿線自治体等においても、鉄道復旧後を見据えて、路線の活性化を進めていく必要があると考えており、今後、各路線の利用促進協議会で、関係者による議論がさらに深まるよう、県としても積極的に関わっていくこととしています。 とりわけ、美祢線においては、これまで実施してきた取組の検証や課題の整理をした上で、スピード感を持って実効性ある利用促進策の検討を進められるよう、美祢市に設置したJR美祢線災害復旧対策室を核として、協議会の中に新たな検討チームを設けることを、沿線自治体やJRに働きかけてまいります。 私は、今後とも、沿線自治体と一体となって、美祢線と山陰本線の一日も早い復旧を目指すとともに、復旧した鉄道が地元住民の日常利用や観光交流でしっかりと活用され、地域の活力創出につながるよう、全力で取り組んでまいります。 次に、医療・福祉現場の処遇改善に向けた診療報酬等の改定についてのお尋ねにお答えします。 私は、全国よりも早いスピードで、人口減少・少子高齢化が進行する本県において、県民誰もが、住み慣れた地域で、健康で安心して暮らし続けていくためには、質の高い医療・福祉サービスの提供体制を確保することが極めて重要であると考えています。 そのサービスを担うのは人であり、県では必要な人材の確保に向けて、関係団体等との緊密な連携の下、幅広い取組を行っているところです。 具体的には、県内就職に向けた修学資金の貸付け、ナースセンターや福祉人材センターによる相談・就労あっせん、潜在看護師・介護士・保育士等の復職支援、離職防止に向けた働きやすい職場づくりの促進などの取組を行っているところです。 しかしながら、医療や福祉のニーズがさらに増大・多様化することが見込まれる中、必要な人材を確保することが、今後、より一層重要になってくるものと考えています。 こうした中、国においては、人への投資や構造的な賃上げの実現に向けた取組が積極的に進められており、今年の春闘では、産業全体で三十年ぶりとなる高い水準の賃上げが実現したところです。 一方で、お示しのとおり、医療・福祉関係の従事者の給与は、公的価格の下、物価が高騰する中、経営状況の悪化による賃上げも進まず、その結果、必要な人材が他分野に流出するとともに、これらの従事者は就業人口の約一三・五%を占めていることから、地域経済全体への影響も懸念されます。 現在、国において、来年春の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定と、保育等の公定価格の改定に向けた議論が進められています。 県としては、この機を逃すことなく、厳しい現場の実態や人材不足の状況、事業者の経営環境等を国に伝えるとともに、政府要望を通じて、従事者の賃上げにつながるよう、大幅な報酬等の改定の実施について、強く働きかけてまいります。 私は、県民の皆様がいつまでも安心して暮らし続けられるよう、関係団体や市町等と緊密に連携を図りながら、良質な医療・介護・障害福祉・保育等の提供体制の充実に向けて、しっかりと取り組んでまいります。 次に、産業脱炭素化の推進についてのお尋ねにお答えします。 脱炭素と経済成長をともに実現する、GXに向けた取組の成否が、企業や国家の競争力に直結する時代に突入し、我が国においても、GX推進戦略に基づく、新たな政策の実現に向けた動きが加速しています。 私は、こうした国内外の動向に機敏に対応するとともに、競争力を失いかねないという危機感や、さらなる発展を目指す意欲を産業界と共有し、共に困難な課題を乗り越えていくことが極めて重要と考えています。 このため、やまぐち産業脱炭素化戦略に、産学公金の緊密な連携や、国の施策の積極的な取り込みを、取組方針の視点として位置づけた上で、カーボンニュートラルコンビナートの実現などの各種プロジェクトを強力に推進することとしています。 まず、企業間連携の促進に向けては、県内三地域ごとの連携体制の構築・活性化や、地域で連携可能な事業のコーディネートを進めています。 私自身も、三地域の企業、大学、金融機関等が参画する山口県コンビナート連携会議で直接意見交換を行い、今後の取組の方向性等について議論を深めているところです。 こうした取組をはじめ、六十億円の脱炭素社会実現基金を活用した、県独自の複数年にわたる補助制度により、お示しの世界初となるセメント製造におけるアンモニア混焼の実証開始などの成果が出ているところであり、今後も、企業の脱炭素化への挑戦を後押ししてまいります。 また、国の施策の取り込みに向けては、現在検討されている、アンモニアや水素の供給拠点化への大規模な補助事業の獲得を目指し、県内各地域の将来のエネルギー需要を把握するとともに、関係企業と情報を共有し、新たな連携方策の検討も進めることとしています。 さらに、産業基盤の整備・高度化に向けては、企業の脱炭素化の取組と密接に関係する港湾について、徳山下松港を皮切りに、港湾脱炭素化推進計画を順次策定し、計画に沿った整備を進めるなど、国とも連携しながら積極的に取り組んでまいります。 私は、今後とも、国の施策の方向性を的確に捉え、県内企業の意欲的な取組を共有しながら、産学公金の連携の下、脱炭素という厳しい変革を乗り越え、産業の未来をリードする山口県の創造に向け、全力で取り組んでまいります。 次に、観光振興についてのお尋ねにお答えします。 社会経済活動の回復や円安に伴う割安感などを背景に、海外における訪日旅行への人気が高まっており、今後も、訪日外国人観光客の大幅な増加が期待されます。 私は、これを絶好の機会と捉え、旺盛なインバウンド需要を確実に取り込み、本県観光の発展的再生につなげていくことが重要と考えており、本県の強みである豊かな自然や多彩な食等を生かしながら、海外からの誘客対策の強化やチャーター便の誘致に向けた取組を推進していくこととしています。 まず、誘客対策の強化については、韓国や台湾などの重点市場に配置した観光プロモーターと連携し、本県の魅力を生かした旅行商品の造成を働きかけるとともに、私自らによるトップセールスをはじめ、情報発信会や商談会の開催など、戦略的なプロモーションを展開していきます。 特に、台湾においては、七月に県議会訪問団と共に訪れ、台南市と締結した、観光、物産、経済等に関する覚書に基づき、今後、国際旅行博への出展のほか、マラソンなどのスポーツツーリズム等による交流促進を図ることにより、誘客拡大につなげていきます。 また、本県の取組に協力していただける、現地の観光・物産関係者を、新たにアンバサダーに任命したところであり、こうした方々とのネットワークを活用し、さらなるインバウンドの拡大や県産品の輸出拡大を図っていくこととしています。 次に、チャーター便の誘致については、お示しのとおり、外国人観光客を直接本県に呼び込むことができる重要な取組であることから、空港利用促進団体や現地に配置した観光プロモーターと連携し、積極的な誘致活動を行っているところです。 こうした取組の結果、韓国については、来年一月から、山口宇部空港と仁川国際空港を結ぶ週三便の連続チャーター便の就航が決定しました。 今後、現地の航空会社や旅行会社を招いた視察ツアーの実施や、認知度向上に向けた情報発信の強化などにより、さらなる誘客拡大を図っていくこととしています。 また、台湾については、本県へのインバウンド需要をさらに喚起するため、台南市での大規模イベントへの出展等も活用しながら、絶景や温泉、多彩な食や文化など魅力的な観光資源を広くPRし、旅行商品の造成を促進することにより、チャーター便の早期就航につなげていきます。 私は、本県の観光振興に向け、県議会をはじめ、市町や観光事業者と緊密に連携しながら、誘客対策の強化やチャーター便の誘致を進め、インバウンド需要の取り込みに全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 近年、全国的に教員の長時間勤務や教員不足が大きな問題となっている中、教職の魅力を高め、優れた人材を安定的に確保するとともに、教育の質の向上に向けて、教員の力が最大限発揮できる環境づくりを進めるためには、何よりも学校における働き方改革を推進することが重要であると考えています。 これまで、県教委では、山口県学校における働き方改革加速化プランに沿った取組を推進してきたところであり、時間外在校等時間の縮減など一定の成果があったものの、お示しのとおり、教員の勤務の実態は依然として厳しい状況が続いています。 このため、現在、策定を進めている、今後五年間の本県教育の指針となる山口県教育振興基本計画では、時間外在校等時間の上限方針の遵守に向けた新たな推進指標を掲げ、ICTやコミュニティ・スクールなど、本県の強みを生かすとともに、国の緊急提言も踏まえ、働き方改革に係る取組を積極的に推進することとしています。 具体的には、今年度新たに全ての県立高校等に導入した、テストの採点や自動集計等がパソコン上でできるクラウド型採点システムや、学校・保護者間における連絡手段のデジタル化など、ICTのさらなる活用により、業務の効率化を図り、負担軽減を進めてまいります。 また、教員業務支援員やICT支援員など、教員以外の支援スタッフの配置の充実や、学校を支援する外部人材のさらなる活用により、教員が授業やその準備に一層注力できる環境を整備することとしています。 さらに、教員の勤務実態や働き方改革に係る取組のウェブ上での見える化や、県内全ての公立学校に設置した学校運営協議会における協議などを通して、家庭や地域、社会と幅広く現状や課題の共有を図るとともに、課題解決に向けた取組への参画を促進するなど、連携・協働体制を充実させてまいります。 こうした取組を総合的かつ計画的に推進するため、業務改善の方針や学校現場への支援等を具体的に示した働き方改革加速化プランについては、これまでの成果と課題を踏まえて改訂することとしており、新たなプランにおいても、県教委のリーダーシップの下で、実効性ある取組を力強く進めてまいります。 県教委といたしましては、市町教委や学校、家庭、地域と一体となって、学校における働き方改革を一層推進し、次代を担う子供たちの豊かな学びや育ちの実現に向け、教員が高い意欲と誇りを持って働くことができる環境づくりに全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)阿久津警察本部長。 〔警察本部長 阿久津正好君登壇〕 警察本部長(阿久津正好君)県民の皆様が安全・安心に暮らせる社会を実現するための取組についてのお尋ねにお答えいたします。 県内の治安情勢につきましては、議員お示しのとおり、刑法犯認知件数や交通事故発生件数が減少傾向にある一方で、うそ電話詐欺被害やサイバー犯罪に関する相談については、依然として高い水準で推移するなど、治安情勢はいまだ厳しい状況だと認識しております。 県警察としては、こうした情勢を踏まえ、様々な課題に着実に対応し、安全で安心に暮らしたいという県民の皆様の期待に応えていくことが重要であると考えております。 そこで、まず、日々の生活の中で、警察の活動を身近に感じていただくため、制服警察官によるパトロールや、一一〇番などの通報への迅速・的確な対応を進めるとともに、凶悪犯罪の徹底検挙、あるいはストーカー、DVなどの人身安全関連事案への対処を進め、県民の皆様が不安に感じる犯罪の検挙や抑止活動を推進してまいります。 また、うそ電話詐欺につきましては、犯行グループの徹底検挙はもとより、防犯機能付電話の設置促進や最新手口の情報発信、金融機関やコンビニなどと連携した水際対策、これを強力に推進してまいります。 脅威の増大するサイバー犯罪に対しては、本年四月に新設いたしましたサイバー犯罪対策課を中心に、部門横断的な捜査を推進し、取締りを強化するとともに、広く県民の皆様に対して防犯情報を発信し、サイバー空間における県民の安全・安心の確保に努めてまいります。 交通死亡事故抑止対策については、引き続き、高齢者の方々などへの対策に取り組むとともに、事故に直結する悪質・危険な違反の取締りを強力に推進してまいります。 そのほか、大規模災害等の緊急事態に対しては、様々な事態を想定し、関係機関や団体と連携した対策を講じるなどして、適切に対処してまいります。 私は、県民の期待と信頼に応える強い警察という、山口県警察の基本姿勢にのっとり、県民の皆様が頼れる警察を目指して、安全・安心の確保のために誠心誠意取り組んでまいりたいと考えております。 その上で、安全・安心な社会の実現は、県民の皆様と総ぐるみで取り組んで、初めて達成できるものであることから、関係機関・団体と連携を図りつつ、地域に根差した活動をしっかりと推進していくとともに、日々変化する社会情勢や新たな治安課題にも柔軟に対応し、組織一丸となって諸対策を講じてまいります。