1 人工知能(AI)の活用に向けた取組について 2 本県の海外展開について 3 発達障害児支援について 4 持続可能な医療提供体制の構築について 5 激甚化する災害に立ち向かうための取組について 6 人口減少対策について
議長(柳居俊学君)猶野克君。 〔猶野克君登壇〕(拍手) 猶野克君 皆さん、おはようございます。公明党の猶野克でございます。早速ですが、通告に従い、公明党会派を代表して質問をさせていただきます。 初めに、人工知能、AIの活用に向けた取組についてお尋ねいたします。 遊より始めよとは、四百メートルハードルの日本記録を持ち、走る哲学者と言われる為末大氏の言葉であります。 このことについて、人工知能研究者で随筆家の黒川伊保子氏は、大変、共感を持たれ、脳科学分野の観点からも非常に理にかなっていることを講演されています。 アスリートを育てるために、癖のない初期段階から子供たちに一流教育を施す。一流になるためには、最短の近道ですが、その先の世界レベルで戦う超一流にはたどり着かないと結論づけられておりました。 遊、すなわち遊びから得る子供たちに蓄積される脳の情報には、とても重要な要素が備わっていくそうです。そして、一流から超一流、すなわち熟達するためには自身と向き合い、乗り越えることが必要とされ、脳科学分野では、そのときこそ、遊から得て蓄積された情報を自ら引き出す必要があると話されておりました。 最初からちゃんとした情報を人から与えられると、一般受けする一番よい形に成長するが、超一流になる、すなわち大成するときに脳の中に必要な情報が備わっていない。子供の失敗を親が未然に防ぐと脳のセンスを悪くすると言われ、私も目が覚める思いで講演を聞かせていただきました。 さらに黒川氏は、生成AIにどのような質問をするか、つまらない質問をすればつまらない答えしか返ってこない、チャットGPT、生成AIの聞き方にも作法があると語られ、これからの新たな時代に求められる人間力とは、生成AIの力を最大限に引き出す能力であると提言されました。世に人工知能を生み出した黒川氏の発言には、事実に裏づけされた説得力がありました。 例えば、皆さんが神奈川県の観光名所に行きたいと仮定します。神奈川県に詳しくない方はインターネット等で情報収集されると思いますが、そのとき、どのように検索されるでしょうか。多くの人は、神奈川県、スペース、観光と入力検索すると思います。そうすると、その結果ほとんどが横浜と箱根の情報が出てきます。 次に、横浜や箱根はよく知っているので、それ以外の観光地を検索したい場合、皆さんならどのように検索されるでしょうか、少し考えてみてください。いろいろな検索方法がありますが、神奈川県、スペース、観光、スペース、マイナス横浜、マイナス箱根と入力すれば横浜と箱根を抜いた検索ができます。いわゆるマイナス検索というものです。御存じでしたでしょうか。これはネット検索の一つの作法であります。 ネット検索と生成AIは異なりますが、生成AIの力を最大限に引き出すために必要な能力は、発想力と対話力と言われています。これは非常に面白いと感じております。超デジタル時代の到来にもかかわらず、より本質的な人間力が求められるからであります。 二十世紀は、我々の発想力と対話力はあまり重要視されていませんでした。むしろ個人的な考えや発言を控え、組織人としての協調性が求められてきました。大胆な発想で企画を生み出す能力や人前でプレゼンする対話力は、経営者やごく限られた人で、ほとんどの人は入社から与えられた仕事を黙々とこなすことを求められてきました。 歯車の部品がそのとおり動かなければ組織が動かなくなると、何度も指導された時代です。それは生産性を上げるために必要だったかもしれません。しかし、時代が昭和から平成に入り、二十一世紀を迎え、少しずつ個々の能力やオリジナリティーが尊重され、多様性が認められる時代に突入してきました。 私もAIの到来によって、より本質的な人間の力が求められる時代を迎えたと確信する一人であります。そしてAI技術の急速な発展は認めつつ、本質的な人間力を高めるために、行政や教育のなすべき支援がとても重要であり、地域社会における適切なAIへの理解と利用の促進が不可欠であると考えます。 兵庫県では、チャットGPTの活用策を検討するため、若手職員を中心としたプロジェクトチームを発足されました。若手職員の柔軟な発想を生かして、自由に議論してもらうのが狙いです。 チームは、業務効率化や行政サービス向上に向けた具体的な活用策を探るほか、情報漏えいのおそれや不確実な部分など、チャットGPTの運用上の懸念事項に対する対応方法についても検討していくとされています。 地域や学校の現場においても、まだまだAIに対する理解が不足しており、基本的な理解を広げる取組が必要だと考えます。そのために、まだチャットGPTなど生成AIに触れたことのない児童生徒たちにも、例えば操作体験の機会を提供することも重要な取組であると考えます。 また地域においても、県民がAI技術を活用して、地域社会に貢献するための取組に対する支援や、大学にも協力していただきながら、そのリソースを提供していくことも考えられます。 そこでお尋ねします。AIは今や産業界や日常生活において重要な役割を果たしており、私たちの未来に計り知れない影響を与える技術です。地域社会においても、AIの理解と利用が進むことで様々な課題解決につながっていくと信じております。 学校におけるAI教育、AIを活用した地域社会の課題解決や改善などの取組、生成AIを活用した県業務の効率化等、県としてどのように進められていくのか、御所見を伺います。 次に、本県の海外展開についてお尋ねします。 本県の海外展開の基本方針として、本県の持つ強みや地理的優位性を最大限に生かし、世界の活力を本県に取り込む。これにより活力みなぎる県づくりの推進基盤である産業力・観光力の強化を図るとあります。 少子高齢化や人口減少により、県内市場の縮小が見込まれる中、国内だけではなく、海外に目を向けた新たな市場の開拓は大変重要な取組であります。 山口県議会では、海外との友好を促進し、親善を図ることを目的として、昭和四十七年中国、昭和六十一年韓国、平成二十五年台湾、令和元年ASEAN、令和三年ハワイなど、超党派の議員による友好促進議員連盟が発足し、各都市との交流を重ねてこられました。 諸先輩議員が築いてこられた交流の道筋が、行政と連携した海外展開の礎につながっていると確信します。 本年七月、台湾友好・調査訪問団の一員として参加させていただきました。柳居議長、島田副議長をはじめ、県議会の皆様、そして事務局や全ての関係者の皆様に、貴重な機会を頂きましたこと、この場をお借りして深く感謝申し上げます。 台湾は、一九九○年代から工業化し、急速な経済成長を遂げてきました。私がITエンジニアとして初めて訪れた二十五年前からハイテク技術に優れ、当時、既にアメリカに次ぐ世界第二位のITハードウエア産業国と言われてきました。見たことのないデザインや用途のIT機器が次々と開発製造され、台湾のポテンシャルの高さに驚いた記憶があります。 経済面でも二○二二年に台湾の一人当たり名目GDPが日本を超え、先日訪れた台湾の市街地の風景はエレクトロニクス関連の大企業が立ち並ぶ大都市へと変貌を遂げていました。 今回の調査訪問は、各都市で大きな成果を得たと確信しています。 新竹市は、まさに今の台湾を象徴するハイテク産業都市であり、その行政や議会との面会・意見交換の機会を得ました。 台南市では、令和三年の県議会の友好交流の覚書から、県執行部の観光・物産等の分野交流に深化した今回の覚書の締結。さらに台北市での台湾デジタル庁・タン大臣との面会では、AIについて国民の価値観を埋め込み、皆の願いと交流を取り入れたAIの開発に取り組む、それはAIを皆で育てつくり上げ、台湾の価値観に合った素養をAIに身につけさせるとの想像を超える大臣の発想に、日本との大きな乖離を感じました。 また、都市間移動で乗車した台湾高速鉄道、新幹線部品は、本県の在住企業がそのほとんどを製造していること、獺祭をはじめとした本県の地酒や農林水産物、観光地のPRとともに、本県の歴史や文化が台湾の方々にどこまで認識されているかなど、現地でしか知り得ないことを直接肌で感じることもできました。 今回の調査訪問の成果は、一朝一夕で得られるものではなく、県議会の諸先輩方が長年苦労を重ね、積み上げてこられたからこそ成し得た成果であることを改めて実感しました。 そして、今回をまた原点に、さらなる成果へとつなげていくために、大いなる希望とビジョンを持って取り組む必要があります。 自治体の海外展開は、地元の発展に寄与できる一方で、現地の特性やニーズに合わせた綿密な計画と時間をかけて培った人と人との真の交流から生まれるパートナーシップが成功の鍵になると考えます。 またどの国や地域に展開するのか、どの産業や分野に注力するのか、徹底した市場調査や分析を行い、現地の消費者ニーズ、法的規制、文化的な違いなどを正しく理解し戦略的に進めていく必要があります。 そこでお尋ねします。このたびの台湾訪問をどのように評価されているのか、また今後どのような戦略に基づき海外展開の成果を上げていかれるのか、県の御所見を伺います。 次に、発達障害児支援についてお尋ねします。 自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する児童生徒数は、平成十九年度以降、毎年約六千人ずつ増加しています。また通級による指導を利用する発達障害にある児童生徒数も増加の一途です。 直近十年間を比較すると、全国の児童生徒数は一割減少する一方で、特別支援教育を受ける児童生徒数は、平成二十四年度は三十・二万人に対して、令和四年度は六十一・八万人と倍増しています。 特に、特別支援学級の在籍者数は二・一倍、通級による指導の利用数は二・五倍と増加が非常に顕著に表れています。 こうした中、文科省において、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議が立ち上げられました。 直近の会議報告では、校内支援体制の充実、通級による指導の充実、特別支援学校のセンター的機能の充実、インクルーシブな学校運営モデルの創設などについて提言されています。 また県民からの御相談で驚いたことは、障害が重いと言われる十六歳以上の発達障害児の進路先が見つからないという内容でした。 この御子息は知的障害ではないが、学習障害や注意欠陥多動性障害など障害を抱えておられ、通常の学級についていけないお子さんです。 高校の進学を希望するも、全日制高校では仮に入学できても、今後、進級できるか等の不安を抱えておられ、発達障害の生徒への支援に手厚い高校は県内では少なく、その御子息に合った学校が見つからないとのことでした。 将来的な就労を考えれば、就労支援が充実している総合支援学校がよいそうですが、学校教育法の関係条文には、発達障害の文言は含まれておらず、入学の条件から重い発達障害だけでは受入れ困難という難しい現状があるそうです。 こうした中、十六歳以上の発達障害児を支援する動きもあります。あるボランティアの方は学校に行きたくても行けない、もしくは授業についていけない発達障害の課題を抱える児童生徒に対して一人一人細やかなケアができる環境をつくりたいと、フリースクールの立ち上げを検討されていました。 しかし、私の地元宇部市においては、フリースクールに通う家庭に対して補助金を支援する制度がありますが、その対象者は小学校から中学校に限定され、十六歳以上の生徒は対象となっていません。障害児支援が切れ目のない支援につながっていない現状も訴えられておられました。 今後もこうした発達障害の児童生徒を取り巻く環境は、その増加に併せてさらに厳しい状況が続くと考えられます。 そこでお尋ねします。発達障害児の中学校段階における進学に向けての進路指導・学習指導などの取組の強化や、子供の特性・実情に応じた高等学校等の学びの場の充実など、さらなる支援を行っていくことが大変重要であると考えますが、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、持続可能な医療提供体制の構築についてお尋ねします。 第七次医療計画が策定された二○一七年度では、地域包括ケアの推進が重要な柱とされ、地域での医療、介護、福祉などの連携を強化し、高齢者や慢性疾患患者に対するホームケアが強化されました。 急速な高齢化を背景に、住み慣れた地域で人生の最期まで暮らし続けることができるよう、住まい、医療、介護、予防、生活支援が包括的・一体的に提供される体制の構築が進められました。 一方、本県でも将来にわたり持続可能な医療提供体制の構築を基に、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者の働きやすい環境を整備し、医療人材の確保や資質の向上を図っています。 しかし、人口の高齢化、若年層の減少、医師や看護師、医療施設の配置状況など、医療を取り巻く環境は刻々と変化しており、県内においても計画の進展状況は大きな地域差があります。 また第七次医療計画には、コロナなど新興感染症対策等が十分に盛り込まれておらず、これまでの課題や経験を踏まえた第八次に向けた医療計画の対応方針を固める必要があります。 また、近年では、慢性腎臓病、CKDが全国で千三百三十万人、二十歳以上の成人の八人に一人いると考えられ、新たな国民病とも言われています。 以前、私も糖尿病予防について議会で取り上げましたが、糖尿病性腎症は減少傾向となっているものの、透析患者数の増加は依然歯止めがかかっておらず、糖尿病以外を原疾患とする透析患者が年々増加し、医療財政の運営から見ても五疾病対策のみならず、広く腎臓病対策に取り組む必要があると考えます。 そのほか、医療の質の向上を図るための施策や医師確保、災害時の医療体制や医療のデジタル化、そして新たな医療技術の導入の検討なども計画策定において重要事項であると考えます。 そこでお尋ねします。本年は第八次医療計画を策定する時期であり、これらの課題を踏まえつつ医療機関、自治体、関連団体、住民などが協力して地域の特性やニーズに合わせた具体的な医療計画を策定することが重要です。より効果的で持続可能な医療提供体制の構築に向け、今後どのように取り組んでいかれるのか、県の所見を伺います。 次に、激甚化する災害に立ち向かうための取組についてお尋ねします。 この夏、日本を襲った大雨は、甚大な被害を各地でもたらしました。本県においては、特に厚狭川が増水し、JR美祢線の南大嶺駅─四郎ケ原駅間で川をまたぐ橋と線路が崩落する大きな被害となりました。 美祢線は、来年三月に全線開通百周年を迎え、さらなる利用拡大を目指していたさなかであり早期復旧が強く望まれるところであります。 村岡知事も崩落直後、すぐに現地視察をされ、柳居議長と共に、国に対して大雨被害に係る緊急要望を出されており、素早い対応に敬意を表しております。引き続き、一日も早い復旧・復興と被災者の生活に寄り添った支援をお願いします。 今回も多く耳にしたのが線状降水帯であり、もはや台風と同等の新たな自然の脅威と言っても過言ではありません。この線状降水帯がもたらす大雨によって、毎年、数多くの甚大な災害が生じていますが、気象庁によると発生メカニズムには未解明な点が多く、現在の観測技術では、いつどこで線状降水帯が発生し、どのぐらいの期間継続するか等、事前に正確な予想をすることができないと公式見解を述べています。 しかし、私たちは、大雨を止めることはできませんが、災害を防ぐこと、災害が起こったとしても小さくすること、防災・減災の備えは可能です。国土強靱化によるハード面の備えをしっかりと進めながら、同時に、地域の実情に沿ったソフト面の対策をきめ細やかに進めていくことが重要です。 我々公明党は、これまでも地域防災力の向上を重点施策として位置づけ、被災時に誰一人取り残されることがないよう、市町における個別避難計画やタイムラインの策定を推進してきました。 県においても、過去、豪雨災害を受け、逃げ遅れゼロを目指した対策の強化などに取り組んでこられたところです。こうした取組を一層推進するとともに、このたびの災害を踏まえ、住民の適切な避難行動につながる避難指示や、情報共有の在り方などについて、改めて実効性を高めていくことが重要であると考えます。 そこでお尋ねします。今回の大雨による被災者支援や一日も早い復旧・復興に向けた取組、及びこのたびの災害を踏まえ、激甚化する災害に立ち向かうための防災・減災と、地域防災力の向上の取組を進めていただきたいと思いますが、県の御所見を伺います。 最後に、人口減少対策についてお尋ねします。 先月二十五日に公表された人口移動統計調査で、本県の人口が、統計開始以降初めて百三十万人を割ったという報道がなされました。日本全体で見れば、昨年より八十万人減り、十四年連続で減少。調査以降、最大幅の減少となったほか、初めて四十七都道府県全てで人口が減りました。 この人口減少問題は、我が国に限らず、地球環境問題と並ぶ世界的な問題であり、二十一世紀、世界が直面する文明の危機と呼ばれています。 日本の少子高齢化は、まさにその先頭を進んでおり、よそに学ぶべき国がない深刻な状況であり、この事態を最も重く受け止めなければならないと考えます。本県だけで解決できる課題ではありませんが、人口減が著しい本県が範を示すことによって、未来への希望が見いだせると信じています。 生涯に孫を持たない割合を示す数値があります。女性の年代別に比較すると、現在八十代半ばは九%に対して、今の二十代前半では四一%になる見込みです。今後、半世紀の間に現在ある家系の四割程度が消える計算になります。 この状況は、分断や対立のリスクを生む可能性を秘めています。子や孫のいない人は、将来社会への投資に税金を払うことに矛盾を感じる一方で、子育てを経験した人は、税負担を免れた人たちが自分の子世代が支える社会保障サービスを同等に受けることに不満を持つかもしれません。 既に今の子育て支援策に対して手厚すぎるのではと、理解を得られない方からの意見がありますが、人口減少に直結する少子化問題については、人口減少は決して人ごとではないことを理解していただくことも重要な取組であります。 支え合いの仕組みである我が国の社会保障は、少子化の影響をもろに受け、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と言われています。経済が右肩上がりで現役世代に厚みがあった時代に確立した現行制度は、今後、必要な人に給付が行き届くよう、全ての国民が年齢に関係なく能力に応じて支え合う全世代型社会保障への改革が急務です。 本年二月に行われた衆議院予算委員会で、京都大学大学院の柴田准教授は、これまでの出生数を見るとラストチャンスではないか。今後、数年間で非常に大胆な政策・制度変更しなければ、結婚や出産が増えることはかなり難しいと提言されました。 公明党は、昨年十一月、子育て応援トータルプランを発表し、結婚、妊娠・出産から子供が社会に巣立つまで切れ目のない支援策を打ち出しました。その後、政府が具体策を示した、こども未来戦略方針には、我が党の主張が大きく反映されています。 この戦略方針では、二○三○年代に入るまでが少子化傾向を反転するラストチャンスと位置づけ、若者・子育て世代の所得向上と、次元の異なる少子化対策を車の両輪として進めると明記されました。 さらに二十四年度から三年間を集中取組期間と定めた、加速化プランの実現が掲げられております。 今後、少子化対策はまさに正念場であります。この危機感を広く県民と共有し、家庭だけではなく、社会全体で子供を育むという視点で対策を前に進めることが重要であります。 かつて介護保険制度を導入し家族だけに介護の負担を押しつけない、介護の社会化が図られたように、子育てや教育に係る負担の大幅な軽減が急がれます。 人口減少対策を講じるに当たっては、社会減や自然減の要因分析などによって本県の実情もしっかりと把握し、若者や女性の県内への定着に向けて住みやすい環境づくりを進めることも必要であると考えます。 そこでお尋ねします。人口減少問題は自治体が持続かつ永続的に発展していくためには解決しなければならない重要課題でありますが、その課題解決のためには、県が広く県民の理解を促すと同時に、様々な実効性ある取組を構築していくことが重要だと考えます。 未曾有の人口減少問題に対し、持続可能な社会を目指して、本県としてどのように取り組むのか、県の御所見を伺いまして、私の代表質問を終わります。 御清聴大変にありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)猶野議員の代表質問にお答えします。 まず、人工知能、AIの活用に向けた取組についてのお尋ねです。 AIの活用が生活や産業など様々な分野で進められる中、生成AIという新たな技術が登場・拡大するなど、AIの技術は急速に進化しており、今後、社会や経済にさらに大きな変化をもたらすことが見込まれています。 私は、本県のデジタル改革を推進する上でも、AIの活用は不可欠であり、その技術の進化に的確に対応し、それを効果的に活用することで、県が抱える様々な社会課題の解決策を、より多く、より早く生み出すことができると考えています。 そのため、私は企業や行政などに対して、AIの技術や使用方法等の理解促進を図り、その活用を後押しするとともに、お示しの発想力や対話力など、AIの力を引き出す能力を有する人材の育成にもしっかりと取り組んでいきます。 このうち、まずAIの理解促進に向けては、広く県民にAIの仕組み等を学ぶ学習プログラムを提供しているほか、生成AI等の可能性をテーマとしたCIO補佐官による特別講演も開催しました。 特に、生成AIについては、企業等から非常に高い関心が寄せられたことから、今後もAI関連企業によるセミナーを開催するなど、理解促進と活用への機運を高めていきます。 また、AIの活用に向けては、「Y─BASE」でのコンサルを通じて、企業等におけるAIの導入支援を積極的に行うとともに、AIを活用した市民エンジニアや学生などによる地域の課題解決への取組を進めており、今後は大学とも連携しながら取組の拡大を図ります。 さらに、県政の各分野でのAI実装も進めており、AIを活用したインフラメンテナンスや子育て支援等に取り組むとともに、地域交通の確保や環境美化の推進など、AIを活用した新たなプロジェクトも展開してまいります。 こうした取組に加え、行政分野での生成AIの活用も進めるため、現在「Y─BASE」に県独自でセキュリティーの高い生成AIの実証環境を構築し、これを市町にも開放し、業務の効率化などにつながる活用方法の検討を進めているところです。 AIの活用能力を有する人材の育成に向けては、発想力等を高めるデザイン思考を学ぶ講座の開設や、学校教育において、生成AIなど新しい技術の理解を深め、情報活用能力を育む教育を推進するなど、AI時代に対応した様々な取組を進めていきます。 こうした中、七月には、生成AIの活用等をテーマに、台湾でオードリー・タンデジタル担当大臣と対談をいたしました。 今回の対談を通じ、大臣から今後のAIの活用の指針ともなる大変有益な示唆を得たことから、これを踏まえたCIO補佐官とのミーティングも行っており、今後、新たなAI活用施策の構築にも取り組んでまいります。 私は、AIの適切かつ効果的な活用を図ることにより、やまぐちデジタル改革をさらに加速させ、それにより県民の暮らしをより豊かで便利なものとすることができるよう、今後も積極的に取り組んでまいります。 次に、本県の海外展開についてのお尋ねにお答えします。 人口減少等により国内市場が縮小する中で、成長する海外市場への展開を図ることは極めて重要であり、コロナ禍から社会経済活動が正常化した今こそ、取組強化の絶好の機会と考えています。 このため、私は、県議会と連携して、これまで構築してきたネットワークも十分に活用しながら、海外でのセールス活動を本格的に再開したところです。 お示しの台湾では、政府要人や企業の方々との交流を通じて、観光・物産や経済分野における協力関係を深め、県議会立会いの下で台南市と覚書を締結するなど、交流のレベルを一段階引き上げることができたと考えています。 また、同市で私自ら、絶景や温泉、日本酒など本県の魅力をPRし、多くの来場者から高い関心を示され、台湾における本県の可能性の大きさを再認識したところです。 私は、今回の訪問の成果も生かし、引き続き台湾など東アジアや、成長を続けるASEAN地域をターゲットに、県内企業の海外展開や農林水産物等の輸出拡大、インバウンドの拡大を柱として海外展開を戦略的に進めてまいります。 まず、県内企業の海外展開に向けては、シンガポールに設置したサポートデスクによる市場調査や、県人会の協力の下で結成した海外展開応援団から得た生の情報やニーズを的確に把握・活用し、企業の取組を支援していきます。 また、台湾が半導体や蓄電池産業の世界的な集積地であることから、先月、産学公により設置した協議会とも連携しながら、企業間取引の活性化につなげていきたいと考えています。 さらに、友好関係にあるベトナム・ビンズン省との経済交流の拡大や、来月実証を始めるキエンザン省における水産インフラ輸出構想の早期具現化に取り組んでまいります。 次に、農林水産物等の輸出拡大に向けては、本年設立した輸出推進会議の下で、輸出先や品目に応じた生産、加工、流通等の幅広い事業者によるユニットを構築し、本県の強みである日本酒や和牛をはじめ、多彩で魅力ある県産品の売り込みを一層強化していきます。 また、フグについては、台湾やベトナムへの輸出が禁止されていることから、国による規制緩和の交渉と連動しながら、引き続き政府関係者等への働きかけを行ってまいります。 次に、インバウンドの拡大に向けては、韓国や台湾などの重点五市場に配置した観光プロモーターと連携し、本県への旅行商品の造成を働きかけるとともに、情報発信会や商談会の開催など戦略的なプロモーションを展開していきます。 特に、台湾においては、現地で人気の高い台湾プロ野球と連携した観光PRや大規模イベントへの出展など、集中的なプロモーションにより誘客拡大を図っていきます。 こうした取組をより実効的に進めるために、本年度改定を行う、やまぐち産業イノベーション戦略に新たに海外展開推進プロジェクトを追加し、取組を加速させてまいります。 私は、成長を続ける海外市場との交流拡大により、海外の活力をしっかりと取り込み、本県経済の活性化につなげてまいります。 次に、持続可能な医療提供体制の構築についてのお尋ねにお答えします。 私は本県の高齢化や人口減少が進展する中にあっても、県民が生涯を通じて、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、保健医療計画に基づき、保健医療をめぐる環境の変化等に的確に対応し、良質な医療を持続的に提供できる体制の整備に取り組んでいるところです。 こうした中、今後は、慢性疾患の増加など高齢化に伴う医療ニーズの変化への対応や、不足が見込まれる医療従事者の確保、新型コロナウイルス感染症の教訓を生かした体制整備など、様々な課題や経験等を踏まえ、将来を見据えた取組を強化していくことが必要であると考えています。 このため、私は、県民の安心・安全を支える保健医療提供体制の構築と、地域の保健医療を担う人材の確保と資質の向上の視点に立ち、第八次保健医療計画の策定を進め、持続可能な医療提供体制の確立を図ってまいります。 まず、保健医療提供体制の構築に向けては、医療機関をはじめとする関係者が求められる医療機能や役割分担について認識を共有した上で取組を展開することが重要であることから、がんや災害医療、在宅医療など個別分野の協議会等において議論を進めているところです。 とりわけ、感染症医療については、次期計画において、新たに新興感染症医療を追加し、国や医療機関等との連携の下、コロナの経験や地域の実情を踏まえた入院・外来医療や自宅療養支援など、感染初期から速やかに立ち上がり確実に機能する体制を構築してまいります。 なお、お示しの慢性腎臓病などは、がんや糖尿病等の五疾病には該当しないものの、健康増進の取組との連携が必要な疾病であることから、早期発見や重症化予防の取組等について検討を進めてまいります。 次に、人材の確保と資質の向上については、県では修学資金制度を活用し、医師・看護職員の確保に努めてきたところであり、平成二十八年度以降、三十五歳未満の若手医師数は減少傾向から増加に転じるなど、一定の成果が現れているところです。 今後は、保健医療従事者の高齢化・不足に加え、医師の働き方改革が求められていることから、医療従事者のさらなる確保や勤務環境の改善に向けた支援など、取組の一層の充実強化が必要です。 このため、医療関係者等で構成される協議会等における議論を通じ、医師・看護師等の県内就職支援や離職防止、定着支援等に総合的に取り組むとともに、関係機関と連携した専門性の高い研修の実施による医療従事者の資質向上などに努めてまいります。 私は、市町や関係団体等と連携し、医療機関や地域の住民等による議論を踏まえ、限られた医療資源の中で、地域で必要とされる医療が確実に提供されるよう、効率的で質が高く、持続可能な医療提供体制の構築を進め、本県の地域医療の充実に全力で取り組んでまいります。 次に、激甚化する災害に立ち向かうための取組についてのお尋ねにお答えします。 このたびの豪雨災害では、住宅や農地への大規模な浸水、河川護岸の損壊や鉄道橋梁の流出など、甚大な被害が発生し、県民生活や経済活動に深刻な影響が生じたところです。 私は、被災された方々が、一日も早く元の生活を取り戻すことができるよう、復旧・復興に全力で取り組むとともに、今後も想定される大規模な自然災害に備え、災害に強い県づくりに一層取り組んでいく必要があると考えています。 このため、まず、復旧・復興に向けては、今回、災害対策の本格的な実施に要する経費として、およそ百三十七億円の補正予算を編成したところであり、今後、激甚災害の指定による国の財政的支援も活用しながら、公共土木施設や農林水産施設等の早期復旧に精力的に取り組んでまいります。 また、災害救助法に基づく被災者の応急救助を行うとともに、県単独の措置として住家の全壊・半壊世帯等に災害見舞金を支給し、被災者生活再建支援法の対象とならない地域の被災世帯には国制度と同等の支援金を支給するなど、被災者に寄り添った支援を行うこととしています。 さらにJR美祢線及びJR山陰本線は、地域住民の日常生活に不可欠な交通手段であるとともに、地域経済活動の重要な基盤であることから、JR西日本に対し、引き続き早期復旧を求めていきます。 次に、災害に強い県づくりに向けては、防災・減災対策の強化や地域防災力の向上を図るため、ハード・ソフト両面から必要な取組を効果的に進めてまいります。 具体的には、まずハード面では、河川改修、砂防堰堤の整備、老朽ため池の改修などを近年の気象状況等も踏まえ、緊急性の高いものから、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策の予算等も活用し、計画的に進めていきます。 また、ソフト面では、お示しの個別避難計画やタイムラインの策定に向け、国や庁内関係課と連携しながら、先進事例の提供や福祉専門家の派遣など、地域における取組の加速化を図ります。 さらに、地域防災力の向上を図るためには、地域住民による主体的な防災対策を促進することが重要であることから、地域の避難体制づくりや、地域防災の要である自主防災組織の活性化に向けて、県の自主防災アドバイザーを活用しながら、引き続き市町と一体となって取り組んでまいります。 加えて、このたびの災害を踏まえ、市町が発令する避難情報の発令基準の必要な見直しを促進するとともに、県のホームページ「防災やまぐち」において提供する防災・災害情報の内容を充実することなどにより、住民の適切な避難行動につなげていきます。 私は、市町や関係機関との緊密な連携の下、引き続き、災害の早期復旧と被災者救済対策等に全力で取り組むとともに、激甚化する災害に立ち向かうため、防災・減災対策や地域防災力の充実強化に向けた取組を積極的に進めてまいります。 次に、人口減少対策についてのお尋ねにお答えします。 人口減少は、経済活動や地域社会、県民生活に深刻な影響を及ぼす本県の最大かつ喫緊の課題であり、未来に責任を持つ私たちは、不退転の決意でこの克服に挑戦していかなければなりません。 とりわけ、その大きな要因である少子化は、一層深刻度を増しており、子育てにおける経済的負担や仕事と子育ての両立への不安、家事・育児負担の女性への偏りなど、様々な理由が複合的に重なり合い、出生率の低下をもたらしています。 また、本県においては、女性を中心とした若者の県外流出が続いており、このことが少子化の進行をさらに加速させています。 こうした中、国では、本年六月のこども未来戦略方針において、児童手当の拡充等による経済的支援の強化や、若者・子育て世代の所得向上、全ての子供・子育て世帯への支援の拡充、共働き・共育ての推進等の対策を掲げ、年末に向けてその具体化が進められています。 私は、こうした国の動きに呼応し、さらなる子育て支援の充実や、子育てに対する社会全体の意識改革につながる取組など、国の政策との相乗効果を高める県独自のきめ細かな施策を進めるとともに、本県への若者の定着を促進し、若者を呼び込むための取組を強化することが不可欠であると考えています。 そのためには、当事者である若い世代や女性のニーズをしっかりと把握し、分析することが必要であり、子育て世帯や大学生を中心に、結婚・子育てや県内定着・回帰に関する希望・意識等について生の声を聞くとともに、民間の専門事業者から学生の就職動向等を収集しているところです。 また、住民に身近な市町に対しても、子育て支援や移住の促進など、人口減少対策に資する取組等について意見を聴取しています。 これらを基にして、若者や女性に焦点を当て、本県の実情に即した、より効果的な施策を構築していくこととしており、県民の皆様にこうした考えをしっかりとお示しし、重点的に取組を進めてまいります。 一方で、人口減少の流れを変えるのは容易ではなく、当面の人口減少に対応し、県民の皆様が豊かで幸せに暮らせる社会をつくっていくことも重要です。 このため、デジタルを活用した生活サービスの提供や、中山間地域における支え合いの仕組みづくり、住み慣れた地域で安心して医療・介護の提供を受けることができる体制の整備など、地域の維持・活性化につながる取組を充実強化してまいります。 私は、市町等と改めて危機感を共有した上で、県議会をはじめ幅広く御意見を伺いながら、新たな、まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定を進め、持続可能で活力ある山口県の実現に向けて、県民の皆様の理解と協力の下、人口減少の克服に積極的に取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)発達障害児支援についてのお尋ねにお答えします。 全国的に特別支援教育への理解が進み、発達障害のある生徒が毎年一定数高校へ進学する中、高校入学後も安心して学ぶためには、一人一人の教育的ニーズに応じた中学校からの継続的な指導や支援と、高校における学びの場の充実が重要であると考えています。 このため、まず中学校段階においては、個に応じた指導方法や教材の工夫を行うなど、特別支援教育の視点を取り入れた学習指導を進めるとともに、入学後の早い時期から教育相談を進め、生徒や保護者に的確な進路情報を提供するなど、障害の状態や興味・関心に応じた進路指導の充実に努めています。 また、特別支援教育を受けてきた生徒についての指導や合理的配慮の状況等を個別の教育支援計画等にまとめ、高校に適切に引き継ぐこととしています。 高校においては、中学校から引き継いだ個別の教育支援計画等を基に、生徒の教育的ニーズを把握し、通級による指導を実施するとともに、特別支援教育に関する専門性の高い教員の配置校を増やすなど、学びの場の充実を図っているところです。 また、中学校からの情報を学習指導に生かすためには、全ての教員の専門性の向上が重要であることから、発達障害のある生徒への具体的な指示や問いの仕方などを学ぶセミナーや、発達障害に関する専門家による研修を実施しているところです。 今後、義務教育段階から高校卒業までの切れ目ない支援と、全教職員による組織的な対応をより一層進めるためには、中学校・高校双方の管理職のリーダーシップによる校内支援体制の強化がますます重要となることから、特別支援教育の視点を取り入れた学校経営等に関する研修を実施することとしています。 県教委といたしましては、発達障害のある生徒が、希望を持って進路を選択し、安心して学校生活を送ることができるよう、進路指導、学習指導などの取組の強化や、学びの場のさらなる充実に努めてまいります。 ───◆─・──◆──── 議長(柳居俊学君)この際、暫時休憩をいたします。再開は午後一時の予定でございます。 午前十一時四十八分休憩