1 後を絶たない通学路の交通事故防止対策について 2 ため池の維持管理について 3 野生鳥獣対策について 4 グリーンツーリズムについて 5 地域包括ケアシステムについて 6 歯科技工士の養成について 7 その他
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(島田教明君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第一 一般質問 日程第二 議案第一号から第二十二号まで 副議長(島田教明君)日程第一、一般質問を行い、日程第二、議案第一号から第二十二号までを議題とし、質疑の議事を継続いたします。 林直人君。 〔林直人君登壇〕(拍手) 林直人君 皆さん、こんにちは。自由民主党の林直人です。通告に従いまして一般質問をさせていただきます。 後を絶たない通学路の交通事故防止対策についてお伺いいたします。 警察庁によると、二○一六年から二○二○年の五年間で、登下校中の事故で死亡したり重傷を負ったりした小学生は九百八人であったと公表されました。大きなランドセルを背負い、汗だくになって登下校している愛らしい小学生の命を、なぜ私たち大人が守ってあげられないのでしょうか。 核家族化や共働きが日常となった昨今、私たち保護者は、事故のニュースやサイレンを聞くたびに不安で胸が苦しくなります。 歩行者の安全が保たれるべき横断歩道で事故が多発しています。運転者は、横断歩道の手前で停止や減速をする義務がありますが、信号機がない場合、歩行者が待っているにもかかわらず、停止せず通過する車が多くいます。 山口県の横断歩道一時停止率は四八・五%と低く、一位の長野県は八四・四%と大きく劣っています。 警察庁の統計では、横断歩行者等妨害等の取締りについて、十年前の四倍を超える三十三万六千五百四件を取り締まっており、歩行者優先が徹底される社会を目指したいと啓発しています。 二○一九年、滋賀県大津市で、右折車と直進車が衝突し、直進車が歩道にいた園児らの列に突っ込み、散歩中の園児二人が死亡し、園児十一人と保育士三人が重軽傷を負いました。 二○二一年には、千葉県八街市で、飲酒運転のトラックが下校中の児童に突っ込み、二人が死亡し、三人が重傷を負いました。負傷した保護者の一人は、大人が子供の命を奪っている、ドライバーがちょっと気をつけるだけでも事故を防げると話されました。 悲惨な交通事故を防止するために、私たちは何をすべきか。まず、人の命を大事に思う心を幼少期から教育によって養うこと。これは人の基盤として備えるものですが、同時に物理的デバイスによる抑制を早急に構築すべきだと考えます。 日本はドライバー優先の環境が多く、ストレスなく車を走らせることができますが、ヨーロッパでは歩行者優先の環境を随所に感じるため、人が多く行き交う場所では物理的にスピードが出せなくなっており、日本で多い歩行者の死傷者数割合は半数以下となっています。 私は、歩行者優先の環境であるゾーン30プラスを集中的に計画し施行するべきだと考えています。罰則での抑止力はもちろん必要ですが、ゾーン内での道路構造を改良し、物理的にスピードが出ないようにすべきです。 歩道のカラーリングや盛り上げ塗装のハンプを設置し、環境構造によってスピード抑制と歩行者優先を認識できるようにするのです。 人の心や理性は、コンディションによって変化します。そのような不安定なものに大切な子供の命を預けることはできません。 そこでお伺いします。本県では安心・安全な交通環境の整備を推進され、抑制効果の高いゾーン30プラスを推進していくと伺っております。歩行者優先の優しい社会を物理的デバイスによって構築し、運転者の安全運転意識向上と指導取締りを強力に推進すべきだと考えますが、県及び県警本部長のそれぞれの御所見をお伺いいたします。 次に、ため池の維持管理についてお伺いいたします。 全国に約十五万か所あるため池は、降水量が少なく流域の大きな河川に恵まれない西日本の瀬戸内側に多く造成され、農業用水を貯水する池として古くから活用されてきました。 本県でも令和五年度には七千六百十七か所のため池が存在していますが、江戸時代に造られた貯水施設等ため池の老朽化が深刻な問題となっています。 二○一八年七月の西日本豪雨災害では、河川の氾濫だけではなく、三十二か所のため池が決壊し、人的被害も発生しました。 国は、全国ため池緊急点検を実施し、被災リスクのある八万八千百三十三か所のため池を確認しました。結果、千五百四十か所のため池が応急措置を必要とし、ブルーシートによる保護や低水位管理を行いました。 国はこれまで、防災重点ため池の基準を、大規模なため池や急な修繕が必要なため池としていましたが、見直しを行い、決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設等、人的被害を与えるおそれがあるため池と対象を変更しました。 本県の防災重点農業用ため池は千二百七十六か所で、二○二一年四月に開設された、ため池サポートセンターやまぐちによって保全・管理の支援がなされています。 春と秋のパトロールに加え、要請があった場合の緊急時点検、防災・減災に関わる技術指導を実施され成果を上げていますが、本県でも過去には多くのため池決壊による災害が発生しました。 二○一○年、下関市豊田町での災害は、線状降水帯による豪雨によって、ため池の貯水位が急激に上昇し、堤体内部に発生した水道、パイピングによって、取水施設周辺と洪水吐き周辺が決壊しました。このため池下流の集落には、多量の土砂が流れ込み、多くの民家が全半壊し、一億円を超える被害が発生しました。 二○一三年には、萩市須佐と弥富、阿武町福田上のため池が決壊しています。 大切な人や安心した生活を守るためには、所有者による日常管理が不可欠ですが、所有者不明や所有者の高齢化で放置されたため池が後を絶ちません。 二○一九年七月一日、農業用ため池の管理及び保全に関する法律が制定され、農業用ため池の管理者や所有者は、ため池に関する情報を都道府県に届け出ることによって、危険高まる特定農業用ため池の防災工事を施行するように命令、そして、代執行の権限が整えられました。 二○二○年十月一日には、防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法が施行され、集中的かつ計画的に推進することが定められましたが、土地改良事業団体等の現場では、地元の合意形成が進まず、なかなか工事の着工まで至っていない。法律の失効は、令和十三年三月末だが困難極まりないとお聞きします。 権利関係が複雑化して所有者を特定できない場合や、工事内容について地元の合意形成が困難な場合など、現場は時間と労働力を費やさなければならない状況となっています。 そこでお伺いします。想定を超える豪雨災害が頻発し、甚大な被災を繰り返している本県において、全国五番目に多いため池の管理・保全をどのように進めていくのか。そして、防災工事等推進計画の進捗状況はいかがなものなのか、お伺いいたします。 次に、野生鳥獣対策について質問いたします。 鹿が悪さしてやれんけえ、もうやめたほうがええじゃろうと思うちょるんよ。今まで地域の農地を美しく管理されてこられた農林業従事者の皆さんから、最近よく伺う言葉です。 大切に育てた野菜やお米、果樹が食い散らかされ、長い時間をかけて育まれた豊かな森林が荒らされる。野生鳥獣による農林業への被害は、日本各地で暗い影を落としています。 令和四年度、日本の農作物被害額は約百五十六億円、森林被害は約五千ヘクタールに及びました。 本県でも約三億一千四百万円の農業被害と二十三ヘクタールの森林被害が発生し、大きな打撃を受けています。 農業者の平均年齢が七十二・三歳と、日本で一番高齢者に支えられている本県の農林業において、野生鳥獣による被害が農林業離れに拍車をかけてしまっているのです。 私の住んでいる下関地域、県西部一帯には、ニホンジカが集中的に生息しています。戦後の乱獲によって、昭和三十年代前半には、県北西部で五十頭余りに減少し絶滅が危惧されたニホンジカですが、現在では、本県は中央値で四万頭を超える個体数の生息が推定されています。 県では、平成九年に、シカ対策検討報告書を取りまとめ、平成十一年に、山口県ニホンジカ保護管理計画を策定しました。 昭和三十七年に指定していたオスジカ捕獲禁止区域を解除し、平成十四年に策定した第一期特定鳥獣保護管理計画の下、狩猟に関わる規制の緩和や、狩猟期間の延長等による狩猟の推進のほか、有害鳥獣としての捕獲や電気柵設置等による防護の強化、生息環境の整備等を総合的に実施してこられました。 ニホンジカは、特に管理すべき鳥獣、第二種特定鳥獣管理計画に区別され、新たな管理目標の制定と年間捕獲目標数の拡大を行い取組を進めています。 鹿による農林業被害は、平成二十六年度をピークに減少傾向でしたが、近年は増加傾向であり、今後もなお一層の捕獲を推進しなくてはなりません。 令和四年度における鹿の捕獲数は九千七百四十二頭と過去最高となっていますが、直近の将来予測によると増加傾向であり、県が目指す生息個体数五百頭程度に管理するには年月がかかる見通しです。 今後、本県の農林業を守るために、個体群管理とともに侵入防止対策と生息環境管理が不可欠です。柵の設置等による被害防除と放任果樹の伐採、餌場・隠れ場の撲滅を農村集落で話し合い、ビジョンを描くことが大切です。 地域をどのように守っていくのか、地元の合意形成に協力し推進していくことによって、本県が守るべき県民の安心と信頼が保てるのだと思います。 効果的でありながら日本の美しい里山の風景を汚すことのない防護柵の設置と環境整備を進めていくことが、持続可能な農林業に最も必要なことだと考えます。 そこでお伺いします。農林業に甚大な被害をもたらしている野生鳥獣を、今後どのように管理し、県民の生活圏域を守るために防除していくのか。そして、美しい里山をどのように守っていくのか、御所見をお伺いいたします。 次に、グリーンツーリズムについて質問いたします。 日本経済は、長年の相対的デフレとロシアによるウクライナ侵略によって、かつてないほどの円安状況にあります。 輸入に頼らざるを得ない原油やガスといったエネルギー価格の高騰は、私たち生活者に大きな負担となり、家計を圧迫しています。 人口減少は国力の低下を招き、バブル期世界一位であった日本の国際競争力も過去最低の三十四位となりました。 そんな状況下で、世界が興味を寄せるクールジャパンがあります。それは、日本の観光産業です。 世界各国で人気のある日本食や温泉、伝統文化体験が、円安の影響を受けて安く日本で体験できるチャンスと、多くの外国人観光客が来日しています。 日本政府観光局の発表では、二○二三年七月の訪日外客数は、二○一九年コロナ前の八○%に迫る二百三十二万六百人を記録しました。 なお、日本行きの海外旅行制限措置が続いていた中国を除く総数では、一○三・四%と新型コロナウイルス感染症拡大前の実績を上回っています。特に、関係改善が進む韓国をはじめとした東アジア地域からは、多くの訪日を頂いていますし、制限の解除された中国からも日本にどんどん押し寄せています。 二○一九年外国人旅行客数三千二百万人、外国人旅行消費額約四・八兆円と、過去最高を記録しました。しかし、東京都や大阪府、京都府の主要観光地に外国人観光客があふれかえるオーバーツーリズムが問題となり、政府は新たな観光立国推進基本計画を示しました。 従来提供されていたマイクロツーリズムを外国人旅行客向けにブラッシュアップして、新たな観光地の創出につなげるといったものです。 地方を周遊するツアーで滞在日数を増やすほか、地域ならではの食事や自然といった特色を生かしたツアーを充実させて旅行の付加価値を高める取組です。 本県は、風光明媚な環境の魅力と、そこで収穫できる食材に恵まれたポテンシャルの高い県です。過疎と言われる町であっても、緑豊かな農村地域において、その自然・文化・人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動、グリーンツーリズムに適した場所があります。 都市部とは異なり、安価で長期滞在できる民泊やゲストハウスを積極的に普及推進すべきだと考えます。 本県の外国人観光客数は、二○一八年、四十五万七千九百九十七人をピークに下降し、コロナ禍を経てなお低迷が続き、昨年はピーク時の一割強である五万一千三百四十六人となりました。 国内需要は、回復の兆しが伺えるものの、GDPの個人消費はマイナスとなり、インバウンド需要に頼らざるを得ない状況です。 そこで、ピンチをチャンスと捉え、サービスから交流へと転換を図ってみてはどうでしょうか。 民泊やゲストハウスを利用した農林漁業の体験型ツーリズムで、訪日客の取り込みと地域活性化を期待します。 本県で宿泊した外国人客は、アメリカとヨーロッパが四七・四%を占めていますが、彼らの目的は買物ではなく、エコロジーな異文化体験と自然に触れることです。 日本ならではの野菜や果物を収穫したり、里山でタケノコやキノコを取ったり、魚釣りをして一日を過ごす日本の生活を共に楽しむのです。インフルエンサーによって関係人口の増加も期待できます。 そこでお伺いします。優れた自然環境のある本県において、豊かな地域資源を活用した里山と里海生活を体験していただくことは、一時的な観光とは異なる交流が生まれ、地方への新たな人の流れを創出することにつながります。本県は、このグリーンツーリズムへの取組をどのように進めていくのか、県の御所見をお伺いいたします。 次に、地域包括ケアシステムについてお伺いいたします。 「寝たきり老人ゼロ作戦」の著者である故山口昇医師は、一九六六年、広島県御調町の赴任した病院で、脳血管疾患等で緊急搬送された患者に積極的な救命外科手術をしていました。しかし、リハビリをして退院した患者が、半年から一年後に褥瘡や寝たきりが原因で再入院してくるようになったのです。 その多くは、おむつを当てた状態で認知症状が進んでいました。寝たきり老人を個人の問題として見るのではなく、社会の変化に伴う家族介護力の低下や療養環境の問題、孤立などの複合的な要因と捉えました。 今までの対応では課題解決が困難と認識し、新しいサービスの整備と住民参加の推進による解決策の開発、組織改革にまでアプローチした実践は、まさに地域包括ケアシステムの先駆けとなりました。 男性が主な稼ぎ手となり、女性が家庭の責任を持つ。このような性別分業体制は、現在でも国民意識の中に色濃く存在します。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法等、働く女性の地位向上に制度改革が推進力となっていることは間違いありませんが、まだまだ十分とは言えない結果で、国民のマインドをなかなか払拭できていないのが現状です。 このような社会の中で、働く女性割合が増加しています。女性の二○二二年、十五歳から六十四歳の就業率は七二・四%と、この十年で男性の上昇率四%を大きく上回り、一二%余りも上昇しています。 性別に関係することのない均等待遇の変化は、データでも可視化できるようになってきています。 しかし一方で、政策主導できない家庭内ではどうでしょうか。出産、育児、介護とライフステージの中で、就業と大きく関わるイベントに男女が性別を超えた関わりを持っているでしょうか。私は、女性の負担割合が増えていると危惧しています。 人の手が必要となる高齢者等の要介護者は、QOLを向上させるために食事と排せつが最も重要なケアだと自身の介護経験から感じています。 食事は、買物から調理、後片づけまで、そして排せつは、便の清拭から自尊心の尊重にまで及ぶ心のケアまで。女性に比べ男性は経験が不足していることに加え、日本社会が女性に依存してきました。 私は、全ての国民に対して介護体験を行うべきだと考えます。そして、女性の家政負担を男性のそれと均等にすべき政策をとる必要性を感じています。 地域包括ケアシステムを利用者側から見ると、その地域の社会資源を利用して要支援・介護生活を送ることですが、サービス利用者となる要介護者とその家族は主権者として、決して消費者となることなく、介護保険サービスや住民ボランティア等を利用することが重要であると考えます。 地方では、限られた社会資源を共有しなければ、サービスが足りていない状況です。そして、潜在する男性の介護力を高めることによって、何とか乗り切っていかなければなりません。 そこでお伺いします。全国より高齢化が進む本県、とりわけ中山間地域では、生活に必要な医療や介護、社会資源が不足しています。サービス提供側の担い手不足によって、住み慣れた地域で生活を望む高齢者が、サービスの充実している場所に移り住まなければならない状況になりかねません。こうした状況を踏まえ、県は地域包括ケアシステムの推進にどう取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 最後に、歯科技工士の養成についてお伺いします。 本年七月十日、県内唯一の歯科技工士養成施設、下関歯科技工専門学校が、二○二六年三月をもって閉校することを前提に、来年度以降の募集停止を発表しました。 本県歯科保健の後退を招きかねない重大な事態が迫ろうとしています。 国家資格である歯科技工士のニーズは現在高まっています。 業界での急激なデジタル化により、CAD/CAMを使いこなせる人材や、次々に開発される新素材への対応が求められています。 歯科技工士を取り巻く環境は大きく動き出した昨今、若い世代への求人は多くあり、現に女性の就業歯科技工士は年々増加しています。 歯科医療分野は、歯科材料関連メーカーや企業との間で常に開発競争が激しく、発展著しい分野であり、確かな技術があれば、そのような関連企業への就職も広がっています。 本県は、このまま後ずさりをしていくのか、積極的に推進して前に進むのか、まさに土俵際の状況と言えるのではないでしょうか。 また、高齢者、特に要介護高齢者の多くは、虫歯のリスクが高いなど、口腔内に問題を抱えているにもかかわらず、適切な歯科治療を受けることができないと言われています。 実際、厚生労働省の年齢別歯科受診率調査によれば、高齢者の歯科受診率は七十五歳から七十九歳をピークに、その後急激に減少している実態が明らかとなっています。 こうした高齢者の歯科治療において、ますます重要となっているのが、歯科の訪問診療であり、歯科医師に加えて歯科技工士も訪問すれば、義歯の調整などがスピーディーに処置できるだけでなく、将来的にはその場で義歯を即座に作って取り付けることが可能になるとも期待されています。 県議会の議員提案条例である、山口県民の歯・口腔の健康づくり推進条例では、「全ての県民が、その居住する地域にかかわらず、等しく歯科保健医療サービスを受けることができる環境を整備することは重要な課題である」と規定しています。 そのためには、歯科医療に欠かせない歯科技工士を計画的に確保・育成できる仕組みや体制が必要であり、近年全国的には、歯科技工士と歯科衛生士の両方の資格を取得可能な養成所も出てきています。人材の確保や収入の向上といった点では、大変有効な対策だと考えます。 そこでお伺いします。山口県民の歯・口腔の健康づくり推進条例の実効性を確保する上で、歯科技工士の養成施設が失われる事態となっていることに対しまして、県はどのように認識されているのか。そして、今後どのような方針、お考えで人材育成を図っていかれるのか、御所見をお伺いいたしまして、私の一般質問とさせていただきます。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(島田教明君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)林議員の御質問のうち、私からはグリーンツーリズムについてのお尋ねにお答えします。 グリーンツーリズムは、豊かな自然環境や地域の伝統文化など、地方ならではの特色を生かして、地域に人を呼び込む取組であり、その推進は交流人口の拡大とともに、中山間地域の活性化にもつながるものと考えています。 このため、県では、市町や地域団体、宿泊施設等で構成する、やまぐち元気!むらまち交流推進協議会を中心に、都市住民や学生をターゲットとした農山漁村での滞在型旅行の誘致を取組の中心に据え、その拡大につながる取組を積極的に進めてきました。 取組の結果、農家や漁家民泊による体験型の修学旅行等の受入れ地域が拡大し、その中から都市住民などとの継続的な交流、さらには地域の農産物を生かした特産品づくりや、イベント等による空き家の活用促進など、一時的な観光にはない様々な成果も生まれてきています。 こうした中、特にコロナ禍を経て、インバウンドも含めて旅行者の意識や行動が大きく変わってきました。 物消費から体験型の事消費を求める傾向が一層強まっており、農山漁村で多彩な体験と交流を楽しむことができるグリーンツーリズムへの需要はさらに高まっていると考えています。 私は、こうした変化は本県にとって大きなチャンスだと受け止めており、これを追い風として、都市住民等をターゲットとした誘致の取組を着実に進めるとともに、拡大を続けるインバウンド需要についても、しっかりと取り込んでいきます。 そのためには、まず何よりも、本県ならではの魅力にあふれ、そこの場所でしか味わえない特別な体験コンテンツの充実が必要です。 このため、自然を満喫できるアウトドアプログラムを新たに開発するとともに、伝統文化や農林漁業の体験などについても、海外の方々の心もつかめるものとなるよう、さらに磨き上げを行っていきます。 また、こうしたコンテンツを今後、旅行予約サイトに掲載し、SNS等を活用して広くPRすることに加え、受入れ体制の強化とおもてなしの充実も重要であることから、宿泊先の拡大や体験プログラムのインストラクター等の人材育成などについても取組を強化していきます。 私は、インバウンドも含めた交流人口のさらなる拡大と、それによる地域の活性化に向け、今後とも市町や地域、民間団体等と緊密に連携しながら、グリーンツーリズムの取組を積極的に推進してまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(島田教明君)片山土木建築部長。 〔土木建築部長 片山克浩君登壇〕 土木建築部長(片山克浩君)後を絶たない通学路の交通事故防止対策に関するお尋ねのうち、県の所見についてお答えします。 県では、子供や高齢者等を悲惨な交通事故から守るため、関係機関と連携し、交通状況や地域の実情に応じて、通学路等における歩道整備や交差点改良などの交通安全対策を推進しているところです。 具体的には、教育委員会・学校、警察等と連携して、通学路の合同点検を実施し、そこで抽出された危険箇所等において、ハード・ソフト両面から、より効果的な対策を総合的に検討・立案し、防護柵や路面標示など可能なものから速やかに実施しています。 こうした中、お示しのゾーン30プラスは、住宅地等の身近な生活道路において、速度規制と併せて物理的デバイスの設置による対策を講ずることで、抜け道利用の抑制や車両の走行速度の低下等に大きな効果が期待できることから、通学路の交通安全対策にも有効な手法と考えています。 このため、県では、その導入促進に向け、地域の実情に詳しく、生活道路の交通安全対策を主体的に担う市町に対し、国や警察等と連携しながら、物理的デバイスの設置効果や各地の取組事例を紹介するなど、引き続き情報提供や助言等を行ってまいります。 県としては、今後とも人優先の考えの下、安心・安全な交通環境の確保に向け、重点的・計画的に、通学路等の交通安全対策を推進してまいります。 副議長(島田教明君)三坂農林水産部長。 〔農林水産部長 三坂啓司君登壇〕 農林水産部長(三坂啓司君)ため池の維持管理についてのお尋ねにお答えします。 近年、自然災害が頻発化・激甚化する中、老朽化した農業用ため池の適切な管理・保全や計画的な整備を図ることが重要です。 このため、県では、令和三年度から十年間の整備目標を定めた、ため池防災工事等推進計画に基づき重点的に防災工事を進めてきたところであり、期間内の整備目標四百か所に対して、令和四年度末時点で八十か所、二○%と計画どおり進捗しているところです。 こうした中、県としては、今後とも農業生産や農村生活の安心・安全の確保に向け、農業用ため池の迅速かつ計画的な整備や、管理保全体制の一層の充実強化に取り組むこととしています。 まず、ため池の迅速かつ計画的な整備に向けては、地元の合意形成が円滑に進むよう、経年劣化の状況を共有し、利用実態等に応じた最適な整備内容について、ため池管理者との協議を重ねることにより、速やかな事業化を促進します。 また、防災工事の実施に際しては、特に老朽化が著しく、緊急度の高いため池から確実に工事に着手できるよう、国の防災・減災予算を最大限活用しながら、計画的な整備を進めてまいります。 次に、管理保全体制の一層の充実強化については、県のため池サポートセンターや専門知識を有する災害ボランティアの機能も活用し、定期的な点検パトロールや大雨後の緊急点検、さらに、ため池管理者への技術指導などにより、農業用ため池の劣化状況等の監視体制を強化します。 また、ため池の劣化状況を一元的にデータベース化し、必要な管理・保全対策に活用するとともに、大雨等の際のため池の状況を、市町やため池管理者と共有できるスマホアプリのさらなる普及を進め、情報共有体制の強化を図ります。 県としては、今後とも、市町や関係団体、ため池管理者等と連携し、農業用ため池の迅速かつ計画的な整備や適切な管理・保全に積極的に取り組んでまいります。 次に、野生鳥獣対策についてのお尋ねにお答えします。 野生鳥獣による農林業被害は、耕作放棄や離農の要因にもなるなど、農山村に深刻な影響を及ぼしており、その対策は重要な課題です。 このため、県では、これまで市町や関係団体等と連携し、総合的な鳥獣被害対策に取り組んできたところであり、これにより被害額は平成二十二年度以降、減少傾向にあるところです。 しかしながら、令和二年度以降、鹿に関する被害が再び増加傾向にあるなど、野生鳥獣による被害は依然として厳しい状況にあることから、県としては、今後より一層、防護と捕獲の両面から重点的な取組を進めることとしています。 まず、取組を迅速かつ効果的に進めていくため、各集落において被害状況や対策の改善点等を調査・点検した上で、実効性の高い防護や捕獲対策の実施に向けたプランの作成を支援し集落内での共有を図ります。 また、適切な防護を図るため、侵入防止柵の設置等を進めるとともに、放任果樹や農地等に隣接する森林の伐採を行い、鳥獣の餌場や隠れ場を排除するなど、集落へ近づかせない環境を整備していきます。 次に、捕獲対策については、狩猟免許の取得経費の助成による担い手の確保や、猟友会等関係団体と連携した積極的な捕獲を進めるとともに、今年度から新たに、狩猟による捕獲及び埋設に係る経費を支援し、個体数の減少につなげてまいります。 また、より効果的な捕獲を可能とするよう、これまで下関市と長門市で禁止されていた、くくりわなの制限を解除するとともに、デジタル技術を活用した、わなによる捕獲を通知するシステムなどの新技術の導入も促進していきます。 県としては、今後とも、市町や猟友会等の関係団体との連携を一層密にし、本県の美しい里山を守るため、深刻化する鳥獣被害の防止対策に積極的に取り組んでまいります。 副議長(島田教明君)國吉健康福祉部長。 〔健康福祉部長 國吉宏和君登壇〕 健康福祉部長(國吉宏和君)地域包括ケアシステムについてのお尋ねにお答えします。 高齢化が進行し、医療や介護の需要の増大・多様化が見込まれる中、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、医療、介護、予防、住まい、生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの推進に取り組んでいくことが重要です。 とりわけ、お示しの中山間地域においては、人口減少や高齢化の急速な進行により、高齢者を支える様々なサービスや、その担い手の不足が生じていることから、家事援助や外出支援などの生活支援サービスの充実や、限られた事業者による効果的な医療・介護サービスの提供が必要となっています。 まず、生活支援サービスの充実については、サービスの創出等を行うコーディネーターを養成し、男性の介護力も活用して、遠距離の移動を伴う買物や持ち運びが困難なごみの持ち出しなど、中山間地域に不足する生活支援サービスの担い手を確保することとしています。 次に、効果的な医療・介護サービスの提供については、訪問看護と介護サービスを一体的に提供する事業所の設置を計画的に進めるとともに、中山間地域等における介護報酬の加算制度や、事業所の人員・設備基準等の緩和制度を活用し、市町と連携して介護サービスの確保に努めているところです。 また、国においては、中山間地域など地域の特性に応じた介護サービスの提供の在り方について、ICTの効果的な活用などの様々な検討が行われており、県ではその状況も踏まえ、市町や関係団体の意見も伺いながら、地域の実情に応じたサービスを確保してまいります。 県としましては、こうした取組を通じ、市町や関係団体等と連携しながら、中山間地域をはじめ県内全域にわたり、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けていくことができるよう、地域包括ケアシステムの推進に積極的に取り組んでまいります。 次に、歯科技工士の養成についてのお尋ねにお答えします。 歯と口腔の健康の保持・増進を図ることは、健康で質の高い生活を営む上で重要であるため、県では、お示しの推進条例に基づき策定した計画に沿って、これまで県民の歯科疾患の予防や口腔機能の維持・向上に取り組んできたところです。 とりわけ、高齢化が進展する本県では、口腔機能の維持・回復を図る義歯等を製作する歯科技工士は重要な役割を果たしていることから、県歯科医師会や県歯科技工士会等と連携して、歯科専門職の確保に取り組んでいます。 具体的には、まず、歯科技工士を目指す学生が増えるよう、歯科技工業務のデジタル化に伴うニーズや、多様な就職先等を紹介したポスターやチラシを作成し、県内の高等学校等への配付や、公共交通機関の広告やデジタルサイネージへの掲載により、認知度の向上を図っています。 また、将来、歯科技工士として歯科医療を担うことが期待される子供や学生を対象に、模型の作成等を通じて、楽しみながら歯科技工業務に触れることができる職業体験会を開催し、魅力発信にも取り組んでいるところです。 全国的に養成施設数や入学者数が減少する中、本県でも養成施設の募集停止により、今後、歯科技工士の人材確保がますます困難になることが懸念されることから、歯科技工士を計画的に確保・育成する体制整備が必要です。 このため、県では、デジタル化に対応できる歯科技工士の育成や、離職防止・復職支援等に向けて、県歯科医師会や県歯科技工士会等で構成する県歯科保健医療提供体制検討会において、これらの課題への対応策を検討してまいります。 県としましては、こうした取組を通じて関係団体等と連携し、引き続き、歯科技工士など歯科専門職の確保や資質向上に一層努めてまいります。 副議長(島田教明君)阿久津警察本部長。 〔警察本部長 阿久津正好君登壇〕 警察本部長(阿久津正好君)通学路の交通事故防止対策についてのお尋ねのうち、県警察の取組についてお答えいたします。 県警察では、令和三年の千葉県八街市で発生した痛ましい事故などを受け、通学路における子供の安全を確保するため、道路管理者、教育委員会などと連携して、ハード・ソフトの両面から各種対策を行っているところであります。 通学路等の生活道路における交通安全対策は、安全・安心な道路交通環境を構築する上で極めて重要であることから、対策の一つとして、一定の区域をゾーンとして設定し、最高速度三十キロ規制を行うゾーン30を県下四十八か所に整備しております。 これら整備した地区のうち、約八割の地区において人身交通事故の発生が抑制されていることから、ゾーン30については、交通事故抑止に一定の効果があるものと考えております。 さらに、ゾーン30の効果をより一層高めるためには、議員お示しのとおり、物理的デバイスとの適切な組合せによるゾーン30プラスを整備し、自動車の速度を抑制することにより、安全・安心な通行可空間の整備、これを推進することとしております。 本年十一月末現在、県内でのゾーン30プラスの運用はありませんが、来年度の運用開始を目指し、複数の自治体と整備場所など具体的な内容の協議を行っており、今後、地域住民の方々の理解を得るなどして整備を進めていくこととしております。 また、県内の横断歩道上での人身交通事故は減少傾向で推移はしておりますが、信号機のない横断歩道における車両の一時停止率の民間調査によると、議員お示しのとおり、約半数の車両が一時停止しておらず、ドライバーに歩行者優先が徹底されていない実態にあります。 こうした状況を受け、横断歩道における歩行者の安全確保とドライバーの歩行者優先意識の高揚を図る横断歩道ハンドサイン運動の広報啓発や、横断歩行者妨害に対する重点的な取締り、登下校時間帯における可搬式オービスを活用した速度取締りなどを強力に推進してまいります。 今後も県警察といたしましては、通学路における子供の安全確保、さらには、ドライバーの歩行者保護意識の向上に向け、関係機関・団体などとも連携しながら、ハード・ソフトの両面から総合的な対策を行い、安全・安心な道路交通環境の構築に努めてまいります。