1 水素先進県づくりと上関原発建設計画の変更について 2 その他
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(島田教明君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第一 一般質問 日程第二 議案第一号から第二十二号まで 副議長(島田教明君)日程第一、一般質問を行い、日程第二、議案第一号から第二十二号までを議題とし、質疑の議事を継続いたします。 合志栄一君。 〔合志栄一君登壇〕(拍手) 合志栄一君 新政クラブの合志でございます。通告に従いまして、水素先進県づくりと上関原発建設計画の変更について一般質問を行います。 水素先進県づくりの方向で上関原発建設計画を変更し、上関町の振興を図っていくべきだと考えます。上関原発が建設されることは将来にわたってないと思われるからであります。 なお、ここでいう水素先進県とは、水素の利活用と普及が進んでいる県という意味に加えて、発電事業におけるカーボンニュートラルの実現のために、水素及び水素のキャリアであるアンモニアの利活用に向けて取組が進んでいる県という意味も含めていることを、初めに申し上げておきます。 それではまず、これまで何度も指摘してきたことでありますが、改めて上関原発は建設されることがないと考える、その理由を申し上げます。 理由その一は、原発依存度低減のエネルギー政策の延長線上に、上関原発の建設はあり得ないということであります。 東日本大震災によって誘発された福島第一原発事故は、原発の安全神話を打ち砕き、原発事故のリスクが国の存立に関わる甚大かつ深刻な脅威であることを国民に思い知らしめました。このことから、我が国のエネルギー政策は、原発増進路線から原発依存度低減へと大きく転換しました。福島原発事故後、初めて平成二十六年に策定されたエネルギー基本計画は、このエネルギー政策の路線転換について、震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減すると明記しています。 その白紙から見直すとされた震災前のエネルギー戦略をまとめたのが、震災の前年である平成二十二年に策定されたエネルギー基本計画であります。この計画は二〇三〇年までに、当時稼働していた五十四基の原発に加えて、さらに少なくとも十四基以上の原子力発電所の新増設を行うとの原発増進拡大の計画となっていまして、上関原発は、その新増設の計画の中に位置づけられています。 しかも、ここで留意すべきは、その十四基の新増設計画の原発で未着工八基のうち純然たる新設は、上関原発二基の計画のみであるということであります。ほかの六基は全て増設で、既に原発が立地しているところに新たに建設する計画になっています。 このことから何が言えるのか。上関原発が建設されるとしたら、それは我が国のエネルギー政策が、原発増進路線に回帰したことを意味するということであります。また、そうでない限り、上関原発の建設はあり得ないということであります。 平成三十年及び最新の令和三年に策定されたエネルギー基本計画は、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減すると記しています。このように、原発依存度低減のエネルギー政策の方針は、現在も変わっていません。 そして、これからは水素社会実現という方向性の中で、再生可能エネルギーが主力電源としての役割を担い、水素やアンモニアを燃料とする、もしくは排出されたCO2を回収して貯留・利活用するカーボンフリーの火力発電の社会的実装が進んでいくことが予想され、国のエネルギー政策において、原発が将来的に必要な一定規模確保されることはあっても、以前の原発増進拡大路線に転ずることはないと考えられます。そういう見通しの中で上関原発の建設はあり得ないことは明白であります。 理由その二は、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けた中国電力の取組には、上関原発の稼働は想定されていないことであります。 二〇二一年八月に公表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第六次評価報告書によりますと、極端な高温、海洋熱波、大雨の頻度と強度の増加などは、地球温暖化の進行に直接関係して拡大すると報告されています。まさに気候変動問題は世界各国が取り組まなければならない人類共通の喫緊の課題であり、先進国を中心として二〇五〇年までに自国における温室効果ガスをネットでゼロにする方針が示される中、我が国も二〇二〇年十月に二〇五〇年カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、二〇二一年四月には、二〇三〇年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として、二〇一三年度から四六%削減することを目指し、さらに五〇%の高みに向けて挑戦を続けるとの新たな方針を示しました。 こうした国の方針を受けて、全国の電力事業者大手十社で構成する電気事業連合会は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、業界全体で積極的に挑戦する旨表明し、電力事業者十社は、その実現に向けてプランを策定し取組を本格化させています。 そこで、中国電力の取組はどうなのかを、今年の四月に公表された中電のアクションプラン二〇二三年において見ますと、二〇五〇年までのカーボンニュートラルに向けて、原子力は島根二号機・三号機の稼働が想定されていて、二〇三〇年までには、その早期稼働を実現し、その後二〇五〇年までには、その安定的な運転継続を図るとされています。また、二〇三〇年における電源構成で原子力は二〇ないし二二%となっていますが、この割合は島根二号機・三号機の稼働で達成されるものであります。 二〇五〇年までにカーボンニュートラルを実現するために、上関地点の開発にも取り組んでいきますとの記述はありますが、このアクションプランを見る限り、中国電力において二〇五〇年までに上関原発の稼働は想定されていないことは明らかであります。 なお、資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会は、令和四年九月の分科会で二〇三〇年・二〇五〇年の脱炭素化に向けたモデル試算を示し、原発に関しては、現状の再稼働十基にとどまるケースから、二〇三〇年までに設置変更許可手続済みの全十七基までの再稼働が進むケースのほか、建設中三基を含む三十六基全てが運転開始するケースを想定して分析結果を報告していますが、原発稼働のマックスである三十六基にも、上関原発は含まれていません。 中国電力も山口県も、上関原発の建設はないことを認めて、原発に代わる地域振興策を上関町に示すときを迎えているのではないでしょうか。中電が使用済核燃料の中間貯蔵施設を上関町に提案した背景には、内々のそうした判断があったのではないかと推察しています。 ただ、この提案は、なぜ関西電力の使用済核燃料を受け入れるのかという点で県民の理解を得ることは困難であり、本来原発が立地している敷地内に建設されるべき施設であることから、いずれ撤回されることになるのではないかと見ています。 では、中電が上関町に提案すべきはどういうことなのでしょうか。私は、中電は原発に代わる発電施設の建設を提案すべきだと思います。中間貯蔵施設は、国の補助金が得られ、その面で町の財政が潤うことはあっても、町の産業振興につながるとは思われません。上関町が原発誘致に取り組んだのは、原発が関連する分野の裾野が広く、町の産業振興にも大きく資することになるとの判断があったからだと思われます。 上関町は、一九八二年に当時の町長が原発誘致を表明して以来、町内のみならず、全国からの激しい反対運動の波にさらされながらも、その方針を変えず、今日に至っております。そのことは国のエネルギー政策への協力という面もあり、国や中電は、上関町のそうした姿勢に報いる意味でも、原発に代わる発電施設を提案すべきだと考える次第であります。 では、国のエネルギー政策にも沿い、中電が電力事業の経営戦略にも位置づけることができる発電施設はどういうものなのか。私は、それはこれまでも指摘してきたことでありますが、中国電力が電源開発株式会社と共同で設立した大崎クールジェン株式会社が、実用化に向けて実証実験に取り組んできているCO2分離・回収型カーボンフリーの石炭ガス化複合発電(IGCC)もしくは石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の発電施設であると考えています。 国が現在進めようとしている電力面におけるエネルギー政策は、おおよそ再生可能エネルギーの主力電源化、火力発電のカーボンフリー化、そして原子力発電の三つに大別できます。そのうち原子力に関しては、既存原発の再稼働を進め、二〇三〇年には電源構成割合二〇ないし二二%確保を目指す一方、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組むというもので、その次世代革新炉は、廃炉を決定した原発の敷地内での建て替え、すなわちリプレースの対象として想定されています。 こうした国の原子力に関するエネルギー政策は、島根原発の施設・敷地において確実にその施行を図りつつ、カーボンフリーの火力発電の実装にもしっかり取り組み、そのパイオニアとなる発電施設を上関町に建設するという方向は、国のエネルギー政策にも沿うものであり、中電の経営戦略としても十分妥当性を持つものではないでしょうか。 以上、申し上げましたことを踏まえ質問いたします。 その一は、これからの水素先進県づくりについてであります。 県のホームページには、水素先進県の実現を目指した山口県の取組が掲載されていますが、これには、周南コンビナートの脱炭素化への取組は載っていません。周南コンビナートの取組は、燃焼してもCO2を出さない水素、その水素キャリアであるアンモニアのサプライチェーンの構築を、本県の代表的な石油化学コンビナートにおいて実現し、コンビナートの脱炭素化を図ろうとするものであることから、当然に取り上げられていると思っていました。ところが、そうではありませんでした。理由は、脱炭素化に向けた水素関連の取組は、脱炭素の範疇で施策対応しているので、水素先進県実現への取組には含めていないとのことでありました。 そうしたこれまでのことはさておき、今後は、本県の水素先進県づくりの全体像には、脱炭素のための水素・アンモニア利活用に向けた取組も含めて施策の推進を図るべきと考えます。 そこでお尋ねです。これからの水素先進県づくりの施策の体系はどう考えているのか。また、具体的にどう進めていくお考えなのか、御所見をお伺いいたします。 その二は、上関原発建設計画に関する事情の変化についてであります。 私は、今年の二月県議会の一般質問において、今回同様、上関原発の建設はあり得ないことを指摘して、計画変更に向けて県がリーダーシップを発揮するよう求めました。これに対し、上関原発建設計画については、事情の変化がない中で、計画変更について県が役割を果たすことは考えていない旨の答弁がありました。事情の変化がないというのは、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、解除する考えがないとの見解が国から示されている。また、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、現在も変わっていないとのことで、その旨答弁で述べられています。 そこでお尋ねであります。上関原発建設計画は、平成十三年に電源開発基本計画への組入れが了承され、平成十六年に重要電源開発地点の指定制度が創設されてからは、その制度に基づく指定を受けた計画として今日に至っております。平成二十三年の福島原発事故の以前と以後とでは、重要電源開発地点の指定を受けている点は変わらなくとも、上関原発に係るエネルギー政策は大きく変化しております。 このことに関しては西哲夫上関町長自身が、中国新聞の中間貯蔵施設についてのインタビューに応じて、次のように述べています。「原発の見通しについて中電は「明確に答弁できない」、政府は「廃炉の跡地に次世代原発を造る」とする。それでは上関町は候補地にもならない。原発と中間貯蔵施設では財政や経済への効果は天と地の差がある。だが、座して待つなら衰退する、と考えた。」と。 こうした状況であっても、県は、重要電源開発地点の指定の解除がなければ、上関原発建設計画に関する事情の変化はないとの認識なのか、まず御所見をお伺いいたします。 次に、西町長の発言から、上関町は、現在原発に代わる地域振興策を真剣に模索していることは明らかであります。こうしたことから、上関原発建設計画については、事情の変化がない中で、計画変更について県が役割を果たす考えはないとの方針は改めて、原発に代わる上関町の地域振興策の実現に向けて、県も役割を果たすべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。 その三は、水素先進県づくりの方向での上関原発建設計画の変更についてであります。 ここで言う水素先進県づくりの方向ということで具体的にイメージしていることは、発電の面でも水素の利活用が、実際上は水素のキャリアであるアンモニアの利活用が図られ、火力発電においてアンモニアの混焼が進み、さらには専焼に向かいカーボンフリーが実現していくというものであります。 そうした方向での上関原発建設計画の変更が、どういうものになるかは明らかで、既に申し上げていることでありますが、将来的にアンモニアの混焼・専焼を視野に入れたCO2回収型の、すなわちカーボンフリーの石炭ガス化複合発電(IGCC)もしくは石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)への計画変更であります。この方向での計画変更は、さきにも述べましたが、今日、中電の経営戦略においても妥当性を持つものと見ております。 ついては、ただいま申し上げました方向での上関原発建設計画の変更を、山口県は中国電力に勧告すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。 質問は以上でありますが、以下補足的に申し上げておきます。 既に実用化されている石炭ガス化複合発電(IGCC)の一つに、福島復興電源として福島県の勿来・広野地点に設置され、二〇二一年から営業運転を開始した勿来IGCC発電所があります。 この発電所の概要を紹介した資料によりますと、福島復興への寄与ということで、雇用の面では建設時は、二地点合計二千人。その後、発電所運転・運営、燃料輸送等の恒久的雇用と定期検査時での作業者雇用を見込むとあります。また、経済的波及効果は、環境影響評価着手から運用を含めた数十年間で、福島県内に一基当たり総額八百億円の経済波及効果があると試算されています。こうしたことから、IGCCもしくはIGFCの発電所の設置は、上関町にとって原発に代わる地域振興策になり得るのではないかと思う次第であります。 なお、岸田首相は今月一日、COP28の首脳級会合で演説し、石炭火力新設の終了を表明しましたが、それは温室効果ガスの排出削減対策は取られていない石炭火力発電所のことでありまして、IGCCやIGFCの発電所は、その対象にならないことを申し添えておきます。 以上で、一回目の質問を終わります。(拍手) 副議長(島田教明君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)合志議員の御質問のうち、私からは、これからの水素先進県づくりについてのお尋ねにお答えします。 まず、これからの水素先進県づくりの施策体系についてです。 本県では、周南コンビナートの苛性ソーダ工場から純度の高い副生水素が生成されるという地域特性を生かして、全国をリードする水素先進県の実現に向けた取組を展開してまいりました。 具体的には、新たな技術開発の促進による産業振興や水素社会の実現に向けた地域づくりなどの施策を中心に、環境・エネルギー関連産業の振興に取り組んできたところです。 また、脱炭素化の潮流が速度を増す中、本県のコンビナート企業群では、脱炭素化と将来にわたって国際競争力の維持・強化を図るため、アンモニア・水素等への燃料転換などの取組の検討が進められています。 これらの取組は、やまぐち産業脱炭素化戦略のプロジェクトの中で、それぞれ、水素先進県の実現を目指す環境・エネルギー関連産業の振興と、次世代燃料への転換によるカーボンニュートラルコンビナートの実現として位置づけ、目標の達成に向けた取組を進めているところです。 次に、これからの水素先進県づくりの具体的な進め方についてです。 まず、副生水素という地域特性を生かした環境・エネルギー関連産業の振興については、産業技術センターを核とした先進的な研究開発・事業化支援による産業振興や、燃料電池自動車の導入促進に取り組む市町への支援を通じた地域づくりなどに取り組んでまいります。 一方、周南地域のコンビナート企業では、海外からの大量の輸入を想定したアンモニアサプライチェーン構築による燃料転換に向けた検討が進められており、県としてもこうした取組をしっかりと後押ししているところです。 この取組は、現時点では石炭に代わる燃料の一部としてアンモニアを活用するものですが、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて、将来的には水素の利活用も想定されます。 このため、私は、アンモニアをはじめ、水素を含む次世代燃料への転換に向けた県内企業の動向も見極めながら、産業脱炭素化戦略に基づく関係施策を着実に進めてまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(島田教明君)鈴森産業労働部理事。 〔産業労働部理事 鈴森和則君登壇〕 産業労働部理事(鈴森和則君)水素先進県づくりと上関原発建設計画の変更についての御質問のうち、事情の変化はないとの認識と、水素先進県づくりの方向での計画の変更についてのお尋ねに、まとめてお答えします。 お示しの石炭ガス化複合発電などの次世代の高効率石炭火力発電は、国のエネルギー政策において、その役割や重要性が位置づけられているところです。 原子力については、国は、本年二月に閣議決定したGX実現に向けた基本方針において、地域の理解を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化していくとしています。 そして、その他の開発・建設については、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していくとしています。 こうした中、上関原発については、国から、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、事情の変化がない限り解除する考えはないとの見解が示されており、国のエネルギー政策上の位置づけは、現在も変わっていないと認識しています。 また、地元上関町は町議会の議決を経て原発誘致を決定し、町長が中国電力に対し、原発誘致の申入れをされ、今日に至っており、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は変わりありません。 このように上関原発建設計画については、国のエネルギー政策上の位置づけや地元上関町の政策選択に変わりがないことから、県としては事情の変化がないと認識しているところであり、その変更を中国電力に対して勧告することは考えていません。 副議長(島田教明君)永富総合企画部長。 〔総合企画部長 永富直樹君登壇〕 総合企画部長(永富直樹君)上関原発建設計画に関する事情の変化についての御質問のうち、上関町の地域振興策の実現に向けた県の役割についてのお尋ねにお答えします。 市町におけるまちづくりについては、各市町において、地域の実情や住民のニーズ等を踏まえて、主体的に実施されるものであり、県では、市町の意向を尊重し、適切な役割分担の下、連携を図りながら、広域的な事業等の実施や、市町の取組への支援を行っているところです。 上関町についても、この基本的な考え方に立って、町からの要望を踏まえ、県道の改良工事や、離島航路に対する財政支援などを行っているほか、移住・定住の促進等に連携して取り組んでいます。 さらに、町のニーズをきめ細かく把握するため、毎年、知事が市町から地域の実情や要望をお聴きする機会を設けるとともに、県民局が窓口となって市町との連携強化を図っているところです。 県としては、引き続き、こうした取組を通じて上関町の意向をしっかりと把握しながら、町の地域振興につながるよう適切な支援を行うなど、求められる役割を果たしていきたいと考えています。 副議長(島田教明君)合志栄一君。 〔合志栄一君登壇〕(拍手) 合志栄一君 上関原発のことに関しまして、担当理事のほうから、上関原発にめぐることでの事情の変化はないという答弁があったところであります。事情の変化があるかどうかの議論は水かけ論になりますので、それは避けますが、一つの行政の在り方、あるいは行政に取り組む職員の意識の在り方に関わることとして、参考までに申し上げたいと思います。 それはいわゆる思考の欠如、思考の停止ということが、真摯に現実に向き合って考えていくという姿勢が欠如しているんじゃないかという、そういうことの問題点であります。 二十世紀を代表する政治学者の一人に、ハンナ・アーレントという女史がおられます。彼女はいわゆるユダヤ人の虐殺、いわゆる収容所のほうにユダヤ人を送る役割を果たしたアイヒマンが戦後、亡命しておったのが逮捕されて、裁判にかけられたのを取材して、そして「エルサレムのアイヒマン」という書を出しました。 そこにおいて彼女が示したのは、いわゆる何百万人ものユダヤ人を虐殺したその張本人のアイヒマンは、悪逆無道の悪人であったということじゃなくて、平凡な一凡人で役人であった。ただ彼の場合には、思考が欠如していた。そのために、それほどの大きな罪を犯すことになったと。ハンナ・アーレントが訴えたかったのは、いわゆる悪の凡庸さと。平凡な人間が真剣に考えることを欠如することによって犯す罪の大きさであります。 私は、上関の原発のことも含めまして、本県の職員の皆さん方は、現実にしっかり向き合い、そして県民の立場に立って真剣に考え、そしてなすべき役割を果たしていく。そういう県政の執行に取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)