討論
議長(柳居俊学君)合志栄一君。 〔合志栄一君登壇〕(拍手) 合志栄一君 新政クラブの合志です。 山口県議会において、使用済核燃料中間貯蔵施設の上関町への誘致に反対する決議を採択することを求める趣旨の請願第一号から第五号は、産業観光委員会で不採択となった旨、委員長報告がありました。 私は、このことに反対の立場から討論に参加いたします。 上関町は、あくまでも中国電力──以下、中電と申します。あくまでも中国電力から提案があった使用済核燃料中間貯蔵施設の立地可能性についての調査を受け入れたのであって、施設設置を受け入れたわけではない。したがって、このことに関しては、今の状況を見守るべきで、県としての考えの表明は控えるというのが、今議会における県のスタンスでありました。 しかし、調査後の上関町の判断が妥当なものとなるためには、立地可能性のみならず、中間貯蔵施設をめぐっての様々な議論や意見を踏まえることが望まれます。このため、調査段階の時点であっても、上関町への中間貯蔵施設設置に関して、率直な議論や意見の表明があっていいと考え、討論に参加することにいたしました。 私は、まず、山口県政は、この事案にどういう方針で対応すべきかについて、三点、思うところを申し上げたいと思います。 第一点は、関西電力──以下、関電と申します。関西電力の使用済核燃料の本県への搬入・貯蔵は拒否すべきだということであります。 このたび、中電が上関町に提案し、立地可能性を調査することになった使用済核燃料の中間貯蔵施設は、関電との共同の施設として計画されています。中電は、中間貯蔵施設の整備は、単独でやるより共同でやったほうがコストを抑制できる旨説明していますが、そうであれば関電が整備する中間貯蔵施設に中電が参加することにすればいいのではないでしょうか。現在、中間貯蔵施設の整備を喫緊の課題として迫られているのは関電でありまして、中電ではありません。 私が、関電の使用済核燃料の搬入・貯蔵は拒否すべきと主張するのは、関電が使用済核燃料の管理・貯蔵に関する課題を解決しないままに原発を稼働させたそのツケを本県が払う必要はないと考えるからであります。 二○二三年三月末時点における中電と関電の使用済核燃料の貯蔵状況は、中電は四百六十トンでありますが、関電は実にその八倍の三千六百八十トンであります。このことからも明らかなように、関電にとって使用済核燃料の管理・貯蔵をどうするかは、経営上の最大の課題であります。 関電の全原発七基が立地する福井県は、二十五年以上前から中間貯蔵施設を県外に設けるように求めていまして、関電は、二○二一年に、二○二三年末までに示すことができなければ、同県高浜町にある高浜一号機、二号機などは運転しないと公言しました。 しかし、青森県むつ市の中間貯蔵施設を共同利用する案も拒否され頓挫し、窮余の策としてフランスへの使用済核燃料搬出を計画するなど、関電がこの問題の解決に苦慮している事情は分かります。 しかし、関電はそういう状況の中でも五基の原発を稼働させ、そのことにより関電は、電気料金を安く設定しています。本年六月の標準家庭向け電気料金、規制料金で電気使用量二百三十から二百六十キロワットにおきまして、関電の場合、月額五千二百三十六円で全国大手電力会社十社の中で最も安く、中電は月額七千七百二十円ですので、中電利用の標準家庭は、関電利用の標準家庭と比べて二千五百円余高い電気代を月々払っていることになります。 二○一六年以降、電力小売市場は完全自由化されましたが、それでも本県では中電の利用者が最も多いと思われます。高い電気料金を払っている県民が多い本県が、なぜ安い電気料金の地域のツケを引き受けなければならないのか、県民の理解を得ることは困難であります。 関電の使用済核燃料の搬入・貯蔵を容認するような県政は、県民の信頼を失うことになると懸念しております。このことに関しては、明確に拒否の方針を明らかにすべきであると考えます。 第二点は、島根原発の使用済核燃料の中間貯蔵施設の整備が必要であれば、それは島根原発立地の敷地内に整備するのが望ましいとの考えを明らかにすることであります。 なぜなら、中間貯蔵施設は使用済核燃料の燃料プールと同様に、原子力発電所を構成する一体的な関連施設として原発敷地内に設置するのが一般的だからであります。 経済産業省資源エネルギー庁関係の審議会の委員等を歴任し、電力業界にも詳しい橘川武郎氏──橘川先生は今年の九月から国際大学の学長でありますが、その橘川武郎氏は、中電が上関町に中間貯蔵施設を提案したことに関し、インタビューを受け、中間貯蔵施設は、使用済核燃料を運ぶリスクもあるため、原発の敷地内に設けるのが世界の主流だ。島根原発内での建設でないことに驚いたとコメントしています。 現に、中部電力と四国電力、九州電力は自社の原発敷地内に中間貯蔵施設を設ける計画を掲げています。 島根原発の使用済核燃料の中間貯蔵施設は、島根原発の敷地内に整備するのが望ましいことは明らかであり、本県はその立場に立つべきと思います。 第三点は、本県の水素先進県づくりの方向性の中で、上関町振興につながる施策を提示することであります。 私たちは、上関町が地域振興策として原発誘致を打ち出し、このたびは中電が提案した中間貯蔵施設の受入れにも前向きの対応をしていることを批判することはできません。批判されるべきは、福島原発事故以後、国のエネルギー政策が、原発増進から原発依存低減に転換されたことにより、上関原発建設の可能性はなくなったにもかかわらず、その事情の変化を真摯に受け止めることなく、原発に代わる地域振興策を上関町に示し得なかった山口県政ではないでしょうか。 私は、本県が進める水素先進県づくりの方向性の中で、上関町振興につながる施策は必ずあると見ていまして、そうすることが本県の将来に向けた望ましい県づくりの実現につながると思っています。そうした思いから、もし仮に上関町に中間貯蔵施設が建設されることになれば、本県の水素先進県づくりに向けた将来ビジョンも含め、本県の県づくりの可能性が大きく損なわれるのではないかと危惧しています。 以上、申し上げました三点の思いから、私は、請願一号から第五号に賛成し、これら請願を不採択した委員長報告には反対であることを改めて表明して、討論を終わります。(拍手) 議長(柳居俊学君)これをもって討論を終結いたします。