討論
議長(柳居俊学君)中嶋光雄君。 〔中嶋光雄君登壇〕(拍手) 中嶋光雄君 お疲れさまです。社民党・市民連合の中嶋光雄です。 提案されております議案第二号に反対をいたします。あとの議案及び意見書案全てには賛成をいたします。また、請願第一号から五号についての委員長報告は不採択でしたが、採択すべきとの立場で討論に参加いたします。 まず、議案第二号 令和五年度の建設事業に要する経費に関し市町が負担すべき金額を定めることについてです。 この問題は、そもそも地方分権改革推進法に基づき、平成十九年四月、内閣府に地方分権改革推進委員会が設置され、同委員会の勧告で、国と地方の役割分担の考え方、基礎自治体への権限移譲をはじめ、地方行財政に関する全般的・抜本的な改革の必要性が挙げられ、国を巻き込んでの議論が白熱した問題です。 こうした流れの中で、当時の本県の二井関成県知事が、全国知事会の国直轄事業負担金制度改革プロジェクトチームリーダーとして大変に御苦労され、平成二十三年度には、維持管理費負担金の全廃にまでこぎ着けられていますし、全国知事会の直轄事業負担金制度の改革に関する申合せで、その中で国直轄事業負担金は廃止すべきである、さらには市町村負担金は直轄事業負担金制度の改革の趣旨を踏まえ、同様に見直すと取りまとめられています。 しかし、全国知事会が国に対して毎年行われています施策及び予算についての提案・要望の中で、直轄事業負担金制度の改革の確実な推進の要望事項が平成三十年度から削除されてしまいました。 全国知事会も国会も、共にかつての民主党政権時代の熱気はどこへやら、その後、この事案は取り上げられていません。とはいえ、これらの制度の廃止や地方への権限と財源の移譲は、国と地方の役割分担の見直しにもつながり、真の地方分権改革のためにも速やかに実施されるべき事案です。 さて、提案されています市町負担額の総額は、約二十九億三千万円超にも上っています。 県、市町とも厳しい財政事情ですので、地域主権の確立に向けて、この問題の政府要望の復活・実現に向かって、村岡知事におかれましては、全国知事会等を通じて、負担金制度廃止について声を上げていただくよう御要望申し上げ、本議案には反対をいたします。 請願一号から五号について。 中間貯蔵施設を一言で言うと、行き場のない使用済燃料の仮置場。行き場のないというのは、本来の行先とされる再処理工場に運び出せない事態が起こっているためです。 使用済核燃料を青森県六ケ所村にある再処理工場に運んで、中に含まれているプルトニウムを回収し、再び燃料として利用する計画になっていたのですが、プルトニウムを利用するはずであった高速増殖炉の開発は頓挫してしまいました。 実験炉、原型炉、実証炉と段階を踏まないと実用できる炉に至りませんが、第一段階の「常陽」は二○○七年から事故停止中。第二段階の「もんじゅ」は、事故や不祥事が続き二○一八年に廃止措置。当然、実証炉など計画のめどすら立っていません。 このためプルトニウムは、当初の予定どおりには消費されず、日本は既に四十六トンものプルトニウムを保有しています。八キロあれば長崎型原爆が造れるといいますから、日本は潜在的な核大国なのです。この余剰プルトニウムには、国際社会の厳しい目が向けられています。 事故と不祥事続きで、再処理工場は二○二一年度上期、MOX燃料加工工場は二○二二年上期に竣工の計画だったのですが、何と二十六回目の完成時期の先送りで、次の完成時期は二四年度のできるだけ早期とする方針が発表されていますが、再処理を待つ使用済燃料で受入れプールはもう満杯になっています。 仮に、再処理工場が完成しても、フル稼働することのできぬ深刻な事情があります。 二○一八年に、原子力委員会は、日本が保有する原爆材料のプルトニウムが減らない限り、六ケ所再処理工場を操業させない方針へと転換しています。二○一八年七月三十一日、我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方の改定のことです。 岸田首相といえども、日本の余剰プルトニウムに神経をとがらせるアメリカや周辺諸国の目があり、これを恣意的に撤回することなどできません。つまりフル稼働はできないので、この渋滞はなかなか解消されません。 蛇足ながら、プルサーマル計画のMOX燃料は、フランスからの輸入で、アメリカから輸入するウラン燃料の十倍の価格だそうで、しかも、プルサーマル計画での使用済燃料は、プールの寿命を超える長期間の冷却が必要で、当初から行く先がなく、原発サイトでの永久保管が宿命づけられた代物のようで、電力会社も本気でやる気はなく、核燃料サイクルを取り繕うための見せかけにすぎないと、専門家は見ています。 一方、各原発サイトにある使用済燃料プールの容量には限界があって、実はもうそんなに余裕がなくなってきている。関電の場合、使用済燃料プールは、再稼働すると、関電の試算でも五年から七年で満杯になるとされています。トイレなきマンションと言われてきた原発が、文字どおり詰まって流れなくなるのです。 そこで計画されているのが、中間貯蔵施設です。別に仮置場を造ることで、とりあえずこの詰まりを解消しようというのです。 具体的には輸送時にも使用する金属容器キャスクに使用済燃料を入れ、コンクリート建屋に保管します。原発の専用港から船で中間貯蔵施設の専用港に運ばれ、専用道路を使って保管建屋に運ばれることになります。 船が着くたびに、周辺は厳重警備の戒厳令状態になるでしょうし、立地条件によっては、日常生活や経済活動への影響も考えられます。 原発の格納プールは、水の中に貯蔵する水冷式ですが、中間貯蔵施設は自然に流れる空気による空冷式です。地震による水抜けなどの心配がないため安全性は向上します。一方でポンプなどを必要としないため、立地しても多くの雇用を生み出すことはありません。 また、中間貯蔵施設の固定資産税や使用済核燃料税収入を期待する声も聞こえてきますが、わずかな固定資産税の増も地方交付税交付金と相殺されてしまいますし、核燃料税の多くは放射能の影響調査や放射線監視など、核施設が存在するために必要となる仕事に使われますので、期待どおりにはならないでしょう。 高速増殖炉計画がうまくいかず、最終処分計画も見通しが立たない中で、行き詰まりが表面化してきました。それにもかかわらず、再稼働を強行せんがための苦肉の策が中間貯蔵なのです。つまり問題を拡大生産してしまう装置であると言えます。 中間貯蔵施設の最大の問題は、名前に中間とついているものの、実際には永久貯蔵になりかねないということです。最長五十年とされている貯蔵期間が終了したときには、六ケ所再処理工場は閉鎖されているかもわかりません。搬出できる再処理工場はありません。高速増殖炉は実用化される見通しもなく、第二再処理工場が建設されるめども全く立っていません。 危険性に関して言うと、確かに原発のように暴走し、短時間で拡大するような事故は起こりにくいかもしれません。しかし、わずかな放射能漏れを検知し、その段階で対処するという作業がミスなく繰り返される必要があります。 高度な緊張を長時間にわたって維持することのコストとストレスは、相当なものであると言います。 さらに保管が長期に及ぶ可能性と放射能の総量が原発に比べてはるかに大きいことを考慮すれば、中間貯蔵施設が抱える潜在的な危険性は決して小さいとは言えません。このことが、中間という安易な言葉で覆い隠されたまま立地活動が続けられています。 国は、二○一五年十月に、使用済核燃料対策に関するアクションプランを策定しています。国と電力会社による協議会の設置や、電力会社に貯蔵能力増強を要請しています。まさに国策民営を押しつけるプランです。 これまでの関電は、中間貯蔵施設立地対策について様々な取組を行っています。例えば、和歌山県御坊市では、市議会に誘致を検討する特別委員会が設けられ、候補地にされる自治会の市民が視察旅行に連れ出されるなど工作が続きました。 しかし、市議会の特別委員会は二○一○年に解散、推進派の中心だった議員の方も二○一一年の選挙で引退されてしまいました。高レベル処分場の適地マップが公表された際に、仁坂和歌山県知事は、打診されることも嫌と、異例なコメントを出されております。 経済産業大臣は、各社がより連携・協力して取組を加速すること、共同の貯蔵も考えては。これに、電事連会長は電気事業者共通の課題であるとの認識の下、より連携・協力して取組を進めていくと応じています。 今回の上関町への中間貯蔵施設問題は、上関町長の判断だけで済ます問題ではないと思います。国が後ろに控えている大問題との認識での対応を山口県としてすべきです。 核燃料サイクルというアメリカには五十年前に見限られ放棄された計画にしがみつく日本は、実は原子力後進国だそうで、英語圏では福島第一原発事故でなく福島核災害──Fukushima Nuclear Disasterと言われており、福島核災害では、四号炉燃料プールに熱い使用済核燃料が大量に存在し、その状態確認も電力と水の供給も長時間途切れたことから、アメリカは燃料プールにおける使用済核燃料溶融を強く懸念し、横田基地からアメリカ市民の緊急脱出を行った。まさに奇跡的な偶然によって箱根以東の東日本全域が無人の核の荒野となる最悪の事態が避けられたのだということを忘れてはならないと思います。 また、九月二十日に、中国電力社長が、中間貯蔵施設は、誰も一○○%安全とは言えないとしつつ、最終処分場には絶対なり得ないと答え、核燃料サイクルをより確実に回すために非常に重要とも語っておられます、とのインタビュー記事が報じられています。 中電社長の絶対なり得ないは、建前にすぎません。そもそも核燃料サイクルが破綻している中で原発を稼働させようとするから中間貯蔵が必要になってきているわけですから、核燃料サイクルをより確実に回すために中間貯蔵が必要などと言うのは、本末転倒というか、論理破綻というか、現状認識のいいかげんさを露呈しているのではないかと私は思わざるを得ません。 核燃料サイクルが実現しようがしまいが、核のごみの最終処分が、そう簡単に実現しないという事実に変わりはありません。使用済核燃料が行き場を失い、大渋滞を起こそうとしている今こそ、この根源的な問題と正面から向き合う絶好の機会なのではないでしょうか。 再稼働せんがために、その場しのぎで仮置場を造って、さらに多くの核のごみを生み出し続けるというのは大変無責任な行為です。核のごみを私たち世代の責任であると考えるのであれば、何よりもうこれ以上核のごみは増やさないことです。 電力会社の会計帳簿上は、使用済核燃料は有用資産、リサイクル資源として計上されていますが、やがて負の資産、超危険で厄介なだけの廃棄物となります。何しろNUMOは、使用済核燃料イコール高レベル廃棄物とみなしています。 その場しのぎの中間貯蔵に反対をいたします。そして、これまでの計画が既に破綻してしまっていることを直視するよう議員先生方各位にお訴えをいたします。 以上のことなどにより、請願第一号から五号について、委員長報告は不採択でございましたが、採択すべきであると思います。 ぜひとも御賛同をお願い申し上げ、討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)