1 ふるさと納税のマーケティングについて 2 新しい資金調達と関係人口について 3 若者の社会参加について 4 農業試験場跡地利用について 5 その他
副議長(島田教明君)藤生宰君。 〔藤生宰君登壇〕(拍手) 藤生宰君 皆様、こんにちは。自由民主党会派新人の藤生宰です。一般質問に先立ちまして、御挨拶と抱負を申し上げます。 四月の県議会議員選挙において初当選させていただきました。御支援してくださった全ての皆様に感謝申し上げますとともに、本日一般質問の機会を与えてくださった柳居議長はじめ、関係する皆様に心よりお礼申し上げます。 さて、地方からの若者の人口流出が問題になっていますが、私も進学を機に県外流出した身です。当時、目的があって県外に出たわけではなく、地域のことをよく知らず、やりたいことが見つからないから県外の大学進学を選び、東京で就職しました。同じような若者はきっと少なくないと思います。無難だから、何となく楽しそうだからと、若者が都会へ流れていく社会構造になっている気がします。 ただ、私は、東京で仕事をする中で、都会に住みながらも故郷や地方のために何かしたいと熱い思いで実際に動かれている人、いわゆる関係人口を間近で見てきました。そのような人たちに触発されて、故郷への思いが強くなり、三年半前に山口に戻ってきました。地方への思いを残している人たちが都会に流れる、そんな状態を悔しいと思っています。 今、自治体が主導的・先進的に地方から国を動かす時代に来ていると思います。人の流れを地方に取り戻す、それには、地域のことは地域でしっかり考えて実行する地域力をつくっていきたい、そのために政治を志しました。本日もその思いで質問を考えてまいりました。初めての質問でお聞き苦しいことも多いと思いますが、通告に従いまして一般質問いたします。 まず、最初にふるさと納税のマーケティングについてお尋ねします。 ふるさと納税は、税収の減少に悩む自治体に対しての格差是正を推進するための構想から二○○八年に創設された制度です。二○○八年度当初は全国で八十一億円規模の受入額でしたが、二○一五年に導入された、ふるさと納税ワンストップ特例制度導入後は急成長し、二○二二年度には一兆円に迫る規模になりました。税収を財源とする地方自治体にとっては、ふるさと納税は巨大な成長市場と言えます。 ふるさと納税制度では、自治体に寄附をした場合、寄附額のうち二千円を超える額について一定の上限まで所得税と住民税から控除されるため、納税者が居住している自治体から寄附先の自治体へ税が移動することとなります。この仕組みにより、東京都では、令和四年度におけるふるさと納税による都民税減収額は五百七十一億円に上ると発表されるなど、返礼品の少ない都市部からの税流出が話題となっています。 しかしながら、税流出は都市部だけの問題ではありません。ここ山口県において、令和四年度のふるさと納税受入額は、県・市町合計すると約三十二億円であるのに対し、本県住民の住民税控除額合計は約三十九億円であり、その差七・二億円が本県から流出していることになります。 また、市町村合計したふるさと納税受入額の本県の全国順位は、制度が始まった二○○八年度当初は四十七都道府県中十九位であったものの、徐々に順位を落とし、令和四年度までの直近四年間は四十五位と低迷しています。 県内市町では、最もふるさと納税受入額の多い下関市で九・四億円、公表されている千七百八十八自治体中では二百四十五位と健闘しているものの、県内十九市町中十一市町が受入額一億円以下、六市町が税流出となっております。 住民税の減収分について、地方交付税で一部補填があるとはいえ、自主財源を調達できる地方のために設けられた制度であるにもかかわらず、本県では税流出している状況となっています。 ここ最近では、税流出が特に深刻な東京都でも、職業体験やスポーツ体験など体験型返礼品を充実させる動きを見せており、自治体間競争はさらなる加熱が見込まれます。 さらに、この十月からふるさと納税の寄附額に占める経費の割合を五割以内に収める五割ルールが厳格化されます。経費には、返礼品の原価、送料、広告費、事務費用、返礼品を掲載するポータルサイト手数料などが含まれます。このうちポータルサイト手数料は、寄附額の約一割が相場となっており、山口県においても、さとふる、ふるさとチョイス、ふるぽ、という三つの大手ポータルサイトに返礼品を出品登録しています。 本来は、地域を応援したいという気持ちを後押しする制度であるにもかかわらず、寄附額の約一割が手数料として都市部のポータルサイト運営会社に流れていることは、留意しなければなりません。今後も手数料率が下がることは見込めませんので、五割ルール厳格化の中、各自治体は返礼品の質・量を見直すことを迫られています。 ふるさと納税上位の自治体には、プロモーションにたけた事業者に委託しているところも多く、県内市町の中にも委託する動きが出てきています。ただ、小規模自治体の場合は、人、金のリソース不足により、委託はおろか十分なプロモーションができていないところもあります。 県においては、出品する返礼品については、市町と競合がないように配慮しているとのことですが、本県の税流出が進む中、待ったなしの対策が必要であり、今こそ市町含めた山口県総力を挙げてのマーケティング力が問われているときではないでしょうか。ぜひ、県がリーダーシップを取ってオール山口での戦略的な取組を進めていただきたく、私から数点提案したいと思います。 一点目は、県によるふるさと納税ポータルサイトの構築です。 寄附額の一割以上を占めるとも言われる大手ポータルサイトの手数料が、今後足かせになるでしょう。手数料が県外に流れる仕組みにも、ふるさとを応援したいという理念からすると疑問が残ります、例えば、民間企業では、まずはアマゾン、楽天などの大型のネットモールに出品して、企業や商品の認知度を上げ、徐々に手数料のかからない自社ECサイトに誘導していく方法を取ることがあります。ふるさと納税においても、手数料のかからない県独自のポータルサイト構築はあり得る対策手段です。そして、同サイト内では、県だけではなく市町の返礼品も扱い、また市町の枠を超えたセットでの提供は県にしかできないことを踏まえ、単品では訴求力の弱い返礼品や小規模市町の返礼品を組み合わせてセットで提供し、相当する寄附額を各市町へ流れる仕組みにします。これにより、大手ポータルサイトに流れていた県内自治体全体での手数料を削減し、返礼品の質や量で他の地域に対する競争力を高めます。 二点目は、インターネット以外の方法での寄附受付・提供です。 山陽小野田市内のゴルフ場では、自動販売機でゴルフ場利用券をふるさと納税返礼品として提供する計画があり、すばらしい発想だなと思います。ゴルフ場に限らず、県外の利用者が多い施設、例えば東京にある県アンテナショップ、道の駅、新幹線駅、空港等のリアルな場所で直接ふるさと納税返礼品を陳列し、提供する。特に、ふるさと納税による国民の節税需要が高まる年末に力を入れてはいかがでしょうか。 三点目は、寄附者データの活用。 ふるさと納税は、リピート購入率が高いと言われます。本県においては、寄附者に対し、お礼の手紙は送付しているものの、翌年以降に寄附を促すアクションはありません。例えば、寄附者には返礼品購入時に寄附の使い道が示されるので、実際に寄附がどのように使われて役に立ったのかを定期的に報告し、関係を継続させ、深めながらリピート販売を促進します。また、新規客獲得に向けては、やみくもに宣伝を打つのではなく、顧客の性別、年齢、地域などの顧客情報を分析し、ターゲティングした上での効率的・効果的なマーケティング施策を展開します。 四点目は、組織。 現在は、ふるさと納税に関しては、税務課、市町課、ぶちうまやまぐち推進課など縦割りとなっていますが、関係する部署から職員が兼務する形での横断型組織をつくり、返礼品開発から審査、市町連携、プロモーションまで対応できる横串の組織を設けることで、窓口の明確化、迅速な情報共有、施策展開を期待します。 以上、私なりの提案を申しましたが、税流出が進む喫緊の状況の中で、ふるさと納税受入額を高めていくためのマーケティングについて、県は具体的・戦略的にどのように取り組まれるのか、御所見を伺います。 次に、新しい資金調達と関係人口についてお尋ねします。 関係人口創出という観点から、私は、ふるさと納税やガバメントクラウドファンディングなど新しい資金調達に注目しています。というのも、国からの交付金など行政機関同士で資金調達するのと異なり、各自治体が自主的な努力で広報しながら一人一人の国民から共感を集め、関係をつくることが求められるからです。ふるさと納税の質問でも申し上げましたが、自治体間競争が過熱する面もあるんですが、自治体側から国民との距離を縮めるチャンスとも言えます。 ふるさと納税利用者の大半は返礼品目当てと言われますが、寄附先の自治体を知るきっかけになるので、返礼品とお礼状を送るという一過性の関わりではもったいない。花巻市、玉名市、延岡市などでは、寄附者データを活用した広報により、実際に地域に来てもらう関係人口づくり施策を展開しています。 また、返礼品を目的としないふるさと納税も確かにありまして、さきの福島第一原発の処理水の海洋放出に際して、いわき市に寄せられたふるさと納税の寄附件数は、平均四倍に急増したと報道されました。 ガバメントクラウドファンディングでは、事業目的や資金の使い道を明確にして寄附を集めますが、神奈川県では、新型コロナウイルスの感染症対策プロジェクトを立ち上げ、短期間で目標以上の寄附額を達成しました。 今夏の大雨災害においても、山口県内では確認できませんでしたが、九州の一部の自治体はクラウドファンディングを実施し、寄附集めに成功しております。 公共性の高い目的を持った寄附は、お金を出して終わりではなく、その後も気になる、見守りたい、関わっていきたいという関係人口の創出につながっていきます。寄附が関係人口を創出し、関係人口が寄附を生むという正のスパイラルが生み出されていきます。 自治体の資金調達手法が多様化する中、関係人口をはじめ多様な人から応援してもらえる山口県にしていくため、新しい資金調達と関係人口づくりをどのように結びつけて進めていくのか、伺います。 次に、若者の社会参加についてお尋ねします。 投票率の低下傾向が続いています。この四月の本県の県議会議員選挙でも約四○%の投票率となり、過去最低を更新しました。年代別には、六十代、七十代の投票率は五○%を優に超えているのに対し、三十代は約三○%、十代、二十代では二○%前後であり、若い世代の投票率の低さが際立っています。 投票率は、民主主義がもっともらしく成立しているかの重要な指標ですが、私は、低投票率になっている社会背景のほうを危惧しており、投票行動だけを促すような選挙啓発キャンペーンなどには限界があると思っています。 政治学者ロバート・パットナムは、ソーシャルキャピタル、日本語では社会関係資本とも呼びますが、一言で表すと、社会や地域における人々の信頼関係・結びつきが投票率に影響を与えることを実証的に示しました。私が危惧している社会背景とは、若者の地域社会とのつながりの薄さ、政治・行政への信頼の薄さです。 私も活動の中で、高齢者の集まりやコミュニティーを見させていただきました。皆さん、助け合いながら率先して地域活動されるし、同級生や同窓生の結束も固い、人や地域社会とのつながりが幸せに人生を送る秘訣だなと羨ましく感じつつも、果たしてそうしたつながりが我々世代、そしてさらに下の若者世代が高齢者になったときに存在するのだろうかと不安を感じ、高齢者と若者のつなぎの世代として何とかしなければいけないなと思った次第です。地方自治は民主主義の学校と言われますが、今それが若者に必要です。 昨年度より、高校の必履修科目として「公共」が創設されました。私の出身校である山口高校で採用されている教科書を拝見しました。表紙の見開きに、十八歳になったら選挙に行こうとあります。第二編の見出しは、自立した主体としてよりよい社会の形成に参画する私たちとあり、従来の公民の科目であった座学中心の「現代社会」と異なり、弁護士を交えた模擬裁判など実施している地域もあります。課題探求やディベートも想定されており、他社と協働して社会に対して主体的に関わる人材育成を期待されていることがうかがえます。 第三編では、ケーススタディーの例として、地球環境、資源エネルギー、生命倫理、国際問題などが挙げられておりますが、教える側の先生は、その分野の当事者でも専門家でもないので教えづらく、生徒の立場からすると問題が大き過ぎて実感が湧きにくいものと思います。それよりは、地方行政で取り組むような身近な課題を学校の外の社会人と議論し、一緒に取り組むようなことができると、地域社会の形成に参画する一員、主権者としての自覚が芽生えるのではないでしょうか。冒頭、私の場合は、地域のことを知らずに県外進学したと申しましたが、高校卒業前に地域の活動や取組を知ることで、夢を持つきっかけづくりにもつながります。 これまで山口県が全国に先駆けて導入を進めてきたコミュニティ・スクールでは、社会総がかりでの地域教育力日本一の実現を目指していますが、そのことも含めて、山口県ならではの、より地域社会に根差した教育活動が科目「公共」の中で展開されることを期待したいのですが、社会に対して主体的に関わる人材の育成に向けて、「公共」の科目指導にどのように取り組んでいかれるのか、御所見をお伺いいたします。 また、デジタルを活用した若者の社会参加についてです。 内閣府の社会意識に関する世論調査によると、国の政策への民意の反映程度は、高齢者ほど高く、若者ほど低いと感じております。一方、政策に民意を反映する方法としては、国民が参加できる場を広げると回答しているのは、若者ほど高く、高齢者ほど低くなっています。このことから、人口構成としてマイノリティーである若者は、選挙制度において無力感を感じており、選挙制度以外のところで意見反映させる場を望んでいることがうかがえます。これに対して、我々大人がそれに応えるだけの準備ができているのか、未来ある若者の目線に立てているのかが問われています。 若者が、社会に参加していることを実感するには、ただ大人から若者に対して意見を聞いて終わるという形式的なものではなく、聞いた結果を成果として可視化することが重要です。学校でアンケートを取られたけれど、その後どうなったか分からないという話も聞きます。デジタルというのは、可視化する上で有効なツールですが、私は、その特徴を生かし、地域課題や政策に関する世代別の考えを見える化するプラットフォームづくりを提案してきました。全世代まとめての集計だと、少数の若者の意見が埋もれてしまうためです。 今や、一人一台端末で小学校からタブレットを扱うデジタルネーティブ世代、彼らに対し、例えば学校においてグーグルフォームなどを活用したウェブアンケートを実施すれば、保護者や教育者のフィルターのかからない生データをリアルタイムに収集、可視化して公開することも可能です。生データは、エビデンスに基づいた政策立案(EBPM)の貴重な情報源にもなります。私自身も一保護者なので、学校においてアンケートを実施されていることは重々承知しておりますが、基本的には学校生活についてのアンケートです。私の意図は、学校外の社会課題も含めて彼らの意見を見える化するということです。 可視化されたデータを基に、大人が政策を実行していけば、若者にとっては地域社会に影響を与えたという成功体験になります。これにより、社会を形成する一員としての自覚が持て、地域活動などの社会参加が促され、結果的には投票率向上にも結びつくものと考えます。 デジタルを活用した若者の社会参加を促す方策について、御答弁いただきたく存じます。 次に、農業試験場跡地利用についてお尋ねします。 山口市大内にありました県農業試験場が農林業の知と技の拠点に統合され、約十八・七ヘクタールの跡地利用が課題になっています。大内地区は、今夏の大雨災害でも浸水被害がありましたが、浸水想定区域の範囲が広く、治水面での課題を抱えていること、また商業施設が立ち並び慢性的に渋滞が発生していることから、跡地利用においては、こうした諸課題に十分に留意した上で検討しなければなりません。 今年度、県では、跡地利用基本計画策定に関する業務について、公募型プロポーザルを実施し、受託事業者を決定されました。この基本計画策定に当たって、民間活力導入に向けたサウンディング調査を実施されるとのことです。サウンディング調査は、事業化検討段階において、事業内容や事業スキーム等に関し、民間事業者の意見や新たな事業提案の把握を行うことで対象事業の検討を進展させるための手法です。サウンディング調査を行う際に留意すべき点は、調査に協力した企業だけが上流の情報を入手でき、事業化する際の公募要項について自社が参入しやすくなるように影響を及ぼし得るということです。民間企業の論理からすれば、調査への協力は先行投資とも言えるので、当然といえば当然です。しかしながら、公平性や地域経済波及の観点からは、サウンディング調査をどのように行ったのか、今年度調査を実施する受託事業者の取引先や関係企業に偏っていないか、業者は幅広く、県外大手だけではなく県内事業者の参入意向も幅広く聞けているか、といったことが重要と考えます。 山口きらら博記念公園についても、交流拠点化への再整備に向け、基本構想を策定されているところであり、山口市内だけではなく、県内各地で「きららパークを話したい会」県民ワークショップを開催されております。私も傍聴いたしましたが、公に県民が参画できる場をつくることは、透明性・納得性を確保する意味で大変すばらしい取組をされていると高く評価しております。 今後、農業試験場跡地利用の基本計画策定に向けましても、県民や県内企業に対する透明性・公平性・納得性をどのように確保されているのか、お伺いいたします。 次に、食と農を軸とした跡地利用可能性についてです。 昨年度末に策定された跡地利用基本構想におけるゾーニングの考え方で中心に置かれているのは、多世代共生、すなわち高齢者をはじめ障害者、子育て世代、若者など多様な人々がそれぞれの役割を持って生涯を通じて活躍できる空間を形成しますという考え方で、私も大いに賛同いたします。そして、私はこれだけ多様な層が一緒に関わることのできるテーマは、我々が生きていく上での根幹、食と農ではないかと考えます。 まず、「農」についてですが、例えば跡地にある遊休農地を体験農園やコミュニティーファームとして活用し、子供や大人、障害者が共同で農作物の栽培・収穫を楽しむことで、人々が集い、つながりを育む場を形成するとともに、食や農への関心を醸成します。遊休農地を活用できることから投資は抑えられ、課題である治水にも貢献できると考えます。 また、本県においては、基幹的農業従事者の平均年齢は七十二・三歳で全国一位、高齢化による担い手不足という課題がある中、農業大学校に通われているようなコアな人材を輩出していくためにも、まずは、農業にちょっと興味がある、体験してみたいというライトユーザーを創出する必要があります。それには、ある程度人口集積している地域にあることが重要であり、山口市が掲げる都市部と農村部の共存という意味でも、本跡地は有効の場所ではないかと思います。 「食」については、そこで取れた野菜や地元食材を使った加工場や地産地消レストラン、六次産業化商品を扱う店舗が考えられ、障害を持つ方も働くこともできるでしょう。農業大学校では、本年七月、学生が構成員となって経営する会社、一般社団法人やまぐち農大を設立しましたので、食と農を通じて学生がビジネスにチャレンジする場として活用することも考えられます。 また、効果的な跡地利用をしていくには、民間の活力活用が不可欠です。 食と農を軸にした開発の例を申し上げますと、イタリアのボローニャ州では、食材専門店により設立された、フィーコ・イータリー・ワールドという世界最大級の食のテーマパークがあり、世界中から人が訪れています。十ヘクタールの敷地の二割ほどが農場や家畜小屋で、そのほか、製造工程を見学できる加工場、同施設内で製造される食材を使った料理が味わえるレストランなどがあり、子供から大人まで食と農を学び楽しめるアグリテインメント施設になっています。 国内では、川崎市総合自治会館跡地に東レ建設が「農・食・健」複合型のコミュニティースペース、コスギアイハグを整備・運営しており、都市部の人でも気軽に参加できるシェアリング農業やアウトドアダイニングを通じて、多様な交流の機会を創出されています。 農業試験場跡地における食と農を軸にした開発の可能性について、お伺いいたします。 最後に、地元小郡のことで一言申し上げます。 小郡は、山口市内では人口が集中している地域ですが、小郡出身者としては長らく県議会議員が出ておらず、五十二年ぶりに小郡から県政へという力強い後押しを頂きました。鉄道の歴史とともに発展した旧小郡町は、県の陸の玄関、交通結節点であり、県央そして県全体の発展に不可欠な広域的拠点としてのポテンシャルを有しています。 平成十年に策定された県政運営の指針、やまぐち未来デザイン21において、小郡地域は、高次都市機能や広域的な交通・情報ネットワークの整備を進め、県政の発展を主導する中核都市を形成する地域とされていました。平成十七年の山口市との合併前後で市役所移転論争はありましたが、小郡への立地は実現しませんでした。それでも、県全体の発展に貢献できるビジネスや交通の広域的な拠点を目指す方向性で、産業交流拠点維新ホールが立地され、メインホールの稼働率は令和四年度で六二%と、目標以上に好調とのことです。 しかし、現実には新山口駅前に建つのはマンションばかり。県外の方からは、新山口駅はのぞみが止まるのに駅を降りても行くところがないと言われます。商店街もかつてのにぎやかさはなく、買物する場所がないので、県内の方ですら、新幹線でわざわざ県外へ行き、お金を消費します。 また、平場の駐車場が多く、慢性的に駐車場が不足しています。民間の力でオフィスビルを建てても、自前で立体駐車場をその横に建てた場合には採算が合わなくなるそうで、都市機能誘導の障壁となっています。 小郡のポテンシャルを生かした立体的な開発、計画的で広域的な拠点形成に向けた次の新たな構想が必要です。県全体のさらなる産業振興や交流人口創出のため、山口市や周辺市町と連携した広域拠点構想づくりに取り組んでいただくことを県へ要望いたしますとともに、私もその一助となれるよう決意を表明いたしまして、一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(島田教明君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)藤生議員の御質問のうち、私からは、新しい資金調達と関係人口についてのお尋ねにお答えします。 少子高齢化、人口減少が急速に進む中、活力ある地域社会を実現していくためには、移住を促進し、都市部の人材を本県に呼び込むとともに、多様な形で地域と関わる関係人口を増やしていくことが大変重要です。 このため、県では、山口つながる案内所を拠点に、地域づくりの取組への参加を呼びかけるプロジェクト等の情報を発信するとともに、ワーケーションの総合案内施設「YY!GATEWAY」の機能も生かしながら、都市部の人材と地域とのマッチングなどに精力的に取り組んでいます。 こうした関係人口の創出・拡大を図る上からも、お示しのあったふるさと納税は、ふるさとや地方に関心を持っておられる方々との間で継続的なつながりを構築することにも資する大変有用な手法であると考えています。 このため、本県では、ふるさと納税を一過性ではなく将来にわたる継続的な関わりに発展させる契機としていけるよう、返礼品として県内を巡る旅行券や現地での体験プログラムを提供し、実際に訪問していただくことで本県とのつながりを深める取組を進めているところです。 さらに、今後、ふるさと納税で資金提供いただいた方に、県の新たな施策であるアウトドアツーリズムやきらら博記念公園の交流拠点化に向けた取組など、魅力ある情報を積極的に発信し、本県への関心をさらに高めていただけるよう努めてまいります。 また、特定の事業を対象としたガバメントクラウドファンディングは、施策の貴重な財源となることはもとより、人々の共感を得られるプロジェクトを通じて、地域への興味・関心を喚起し、継続的な関わりをつくり出すことができる関係人口の創出・拡大に寄与する手法であると考えています。 とりわけ、この仕組みは、地域の伝統文化の継承や歴史的資産の保存や活用、まちづくりなど、中山間地域の活性化につながる取組との親和性が非常に高いのが特徴です。全国的にも、こうした特徴を生かして、寄附を頂いた方に実際の活動への参加を呼びかけ、地域に人を呼び込む契機としている自治体も多くあることから、県としても優良事例の情報収集に努め、市町とも共有を図っていきたいと考えています。 私は、県政の最重要課題である人口減少の克服に向け、将来的な移住の裾野の拡大にもつながる関係人口の創出に、様々な手法を取り入れながら、今後も積極的に取り組んでまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答えを申し上げます。 副議長(島田教明君)松岡総務部長。 〔総務部長 松岡正憲君登壇〕 総務部長(松岡正憲君)ふるさと納税のマーケティングについてのお尋ねにお答えします。 ふるさと納税は、ふるさとへの貢献や自らの意思で自治体を応援できる制度であり、県では、ふるさと納税を財源確保の手段とするだけではなく、県と寄附者とのつながりの構築や県内経済の活性化に資するものとして、取組を進めてきました。 こうした中、県が開発や販売促進に関わっている日本酒や牛肉等の特産品など特徴のある返礼品の提供や、首都圏で配布している山口県ゆかりのお店ガイドブックに返礼品情報を掲載するなど、効果的な情報発信に取り組んできたところです。 近年、全国的にふるさと納税寄附金額が増加し、自治体間競争が激化する中で、県全体の寄附を拡大するためには、県と市町が一体となってマーケティングの視点を取り入れた返礼品の提供やプロモーション等に取り組んでいく必要があると考えています。 このため、これまでふるさと納税の取組については県内自治体が独自に進めてきたところですが、今後は、ウェブ会議等も積極的に活用し、県と市町の関係部署で気軽に相談等ができる場を設け、情報共有や意見交換等を行いながら、県と市町が連携した取組を進めていくこととしています。 具体的には、まず県の寄附者に対して新たにメールマガジン等を送付し、寄附者の関心に合わせた返礼品等の情報を提供するとともに、あわせて、市町のふるさと納税ウェブサイトに直接アクセスできるリンクを設定するなど、市町の寄附拡大にもつなげていきます。 また、県外のふるさと納税関連イベントに県と市町が共同出展するなど、県外在住者に向けた新たなプロモーションを展開するとともに、県内外の先進的な取組の紹介や、効果的な情報発信等を行うためのマーケティング手法を学ぶ研修会の開催等についても検討していきます。 県としては、市町と連携し、マーケティングの視点も踏まえながら、より魅力的な返礼品の提供や効果的な情報発信等を行うことにより、県全体でのふるさと納税の取組を進めてまいります。 副議長(島田教明君)永富総合企画部長。 〔総合企画部長 永富直樹君登壇〕 総合企画部長(永富直樹君)デジタルを活用した若者の社会参加についてのお尋ねにお答えします。 本県の将来を担う若者が、地域や社会の課題の発見や解決に主体的に参画し、成果を実現できる体験や手応えを得る機会をつくることは、持続可能で活力ある県づくりにもつながる重要な取組だと考えています。 特に、デジタルの進展に伴い幼少期からデジタル技術に親しんできた若者が、その強みを生かし、力を発揮できる可能性が高まっていることから、県として、新たな活動の場づくりなどの取組を進めています。 具体的には、学生や市民エンジニアから行政、企業まで、様々な主体が自由に参加できるデジタルコミュニティーを設置し、そこで会員が課題を提示してデジタルで解決に挑む取組などを進めており、高等専門学校の学生によるフードバンクへの寄贈者に感謝の声を伝えるシステムの構築など、様々な成果が生まれています。 また、こうした取組以外にも、高校生が「Y─BASE」のサテライト施設をプログラミングの学習の場とし、商工会議所と連携して、地域のことを学べる小中学生向けのアプリを作成する事例なども生まれており、今後も様々な形で若者のデジタルスキルを地域で生かせる取組を進めていきます。 また、全国ではスマートシティの取組として、オンラインで住民の意見を集め、議論を集約して政策に結びつけるプラットフォームなど新たな仕組みも生まれており、こうした社会参加の手法についても、幅広く情報収集を行い、研究していきたいと考えています。 県としては、引き続き、若者がデジタルを活用しながら主体的に地域の課題解決や地域づくりに参画できる環境づくりなど、若者の社会参加の促進につながる取組を積極的に進めてまいります。 次に、農業試験場の跡地利用についての二点のお尋ねにお答えします。 まず、サウンディング型市場調査についてです。 農業試験場の跡地は、魅力あふれる県都づくりや県央部の広域的なまちづくりにつながる大きなポテンシャルを秘めています。 この有効活用に向け、県と山口市では、地元要望を踏まえて集約された山口市要望のほか、地域で開催されたワークショップ等での意見も伺いながら、新しい未来のまちモデルを構築することを念頭に検討を行い、本年三月、跡地利用の基本構想を策定したところです。 この基本構想では、将来にわたり自立発展し、地域全体の価値が高まる、まちの仕組みの構築を目指しており、その実現に向けては、民間活力の積極的な導入が不可欠です。 このため、今年度から、導入する具体的な施設やゾーニング等を盛り込んだ基本計画の策定を進める中で、その実現可能性を高めるという観点から、民間事業者を対象にサウンディング型市場調査を実施する予定です。 お示しのように、この調査は、民間事業者との対話を通じて、アイデアの収集や課題の抽出、市場性や民間事業者の参入意欲の把握などに有用な手法であることから、透明性・公平性に留意した上で実施することとしています。 具体的には、あらかじめ実施要領を公表し、跡地を利用する事業者を選定する段階で参加企業を有利に取り扱うものでないことを明示した上で、県内外の事業者に広く参加を募ってまいります。 また、調査実施後には、参加事業者の独自のノウハウに係る事項などを除き、結果の概要を公表するなど、透明性・公平性が損なわれることのないよう、適正に実施していく考えです。 県としては、手続の透明性・公平性を確保するとともに、引き続き、事業者や地元住民など幅広い意見の把握に努め、納得性を高めながら、跡地利用基本計画の策定を進めてまいります。 次に、食と農を軸にした跡地利用の可能性についてです。 跡地利用の基本構想では、高齢者や子育て世代など、多様な人々がそれぞれの個性を尊重し、希望に応じて能力を発揮することで、健康でアクティブに活躍することのできるコミュニティーの創造を目指す、生涯活躍のまちづくりを主要テーマとして掲げています。 そうしたまちをつくっていく上では、多世代共生をはじめ地域住民の交流促進、子供や若者の集う場の形成、多様なチャレンジと仕事につながる場づくりなどの観点が重要であることから、これらに見合った施設や機能を検討し、ゾーニングに反映させることとしています。 お示しの体験農園等の内容は、そうした観点に見合うものの一つであると考えますが、導入する施設や機能については、目指すまちづくりの姿を念頭に、地元からの要望や民間事業者の採算性などにも十分配慮しながら、全体の構成の中でバランスを取ることが必要となってまいります。 こうしたことを踏まえ、県としては、今後も山口市が目指すまちづくりの方向性や民間活力の導入可能性の向上などに留意しながら、引き続き、山口市と共に跡地利用の可能性について総合的な検討を進めてまいります。 副議長(島田教明君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)若者の社会参加についてのお尋ねのうち、新科目「公共」についてお答えします。 選挙権年齢や成年年齢が十八歳に引き下げられたことに伴い、若者が主体的に社会の形成に参画する態度を身につけることがより一層重要となり、高等学校においても、生徒が社会との関わりを実感しながら学習することが求められています。 こうした中、昨年度から実施されている「公共」は、生徒一人一人が自立した主体として、よりよい社会の形成に参画し、持続可能な社会づくりに向けて必要な力を育むための科目として新設されました。 実施二年目となる現在、各学校においては、政治や経済など社会の仕組みに関する基礎的な知識や概念等の学習に加え、例えば、人口減少社会にどのように取り組むかなど、地域社会が抱える課題等に関する問いを設定し、一人一台タブレット端末等を活用して、情報を収集・分析したり、グループで議論したことを発表したりする活動に取り組んでいます。 また、「公共」における学びを生かして、まちづくりについて市町の職員と意見交換しながら政策提言を行う活動や、学校運営協議会における地域や学校の課題についての熟議に参加する活動なども行っているところです。 今後は、コミュニティ・スクールが全ての公立高校に導入されている本県の強みを生かし、行政や金融などの専門家や関係機関等との連携を図るとともに、他の教科・科目や総合的な探求の時間、特別活動等とも関連させながら、「公共」の授業が現代の諸課題を多面的・多角的に考察し、生徒のより深い学びにつながるものとなるよう努めてまいります。 県教委といたしましては、引き続き、科目「公共」における学びの一層の充実に努めるとともに、学校の教育活動全体を通して、主体的に社会の形成に参画する態度を育成してまいります。 副議長(島田教明君)本日の一般質問及び提出議案に対する質疑は、これをもって終了いたします。 ───◆─・──◆──── 副議長(島田教明君)以上をもって、本日の日程は全部終了いたしました。 本日はこれをもって散会いたします。 午後二時四十八分散会