1 コロナ後における地方創生の実現について 2 若者や子育て世代に寄り添った少子化対策の推進について 3 地域経済の好循環の実現について 4 持続的成長を目指した産業戦略の推進について 5 戦略的な海外展開の推進について 6 教育行政について
───◆─・──◆──── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第十号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第十号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 守田宗治君。 〔守田宗治君登壇〕(拍手) 守田宗治君 皆さん、おはようございます。自由民主党の守田宗治でございます。 令和五年六月定例会に当たり、自由民主党会派を代表して、県政の諸課題について、知事及び教育長に質問いたします。 質問に先立ち一言申し上げます。 四月に行われた山口県議会議員選挙において、我が自由民主党は、確かな実績と地域に根差した政策を県内各地で訴え、多くの県民の皆様からの御理解と御支持を賜りました。 我が党は、今回の選挙を通じて寄せられた御意見や御要望を、村岡知事が進めるコロナ禍からの再生や、県の新たな未来づくりにしっかりと反映させ、県民の皆様の視点に立った政策の実現に全力を尽くしてまいります。そして、山積する県政の諸課題に真正面から向き合い、果断に対応してまいる意を新たにしていることを、まずもって申し上げます。 さて、ロシアのウクライナ侵略という蛮行に世界が直面する中、先月、我が国が議長国となりG7広島サミットが開催されました。ゼレンスキー大統領の電撃来日も実現し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するというG7の強い決意と結束が改めて世界に示されたのであります。 かねて申し上げているように、ロシアの暴挙、中国による台湾への威圧、度重なる北朝鮮のミサイル発射など、現在の国際秩序は、かつてないほどの不安定な状況にあり、その安全保障環境の緊張がエネルギー高騰や、世界経済の下振れリスク、食料・経済安全保障への対応など、暮らしや事業活動に大きな影響を与えています。 この歴史的転換点ともいうべき大きな変化の中、国民と国益を守り、強い経済と地域の活力を取り戻すため、一つ一つの課題にしっかりと答えを出していくことが政治に課せられた責務であります。 その根幹とも言えるものが憲法改正であります。 我々自由民主党は、国のありようを示す憲法を時代にかなったものとするため、結党以来の党是である憲法改正の早期実現に向けて、国民的な議論を活性化し、幅広い御理解を得るための努力を真摯に積み重ねてまいる所存であります。 そして、私ども自民党会派は責任ある県政与党として、地域の再生なくして強い日本の再生なしとの信念の下、その底力が本県にはあると確信し、社会・経済が著しく変動する中でも、将来を見据えた本県の活力の創出と、県民一人一人の豊かさの向上を実現するために、引き続き全力で取り組んでまいる決意であることを申し上げ、通告に従い質問をいたします。 初めに、コロナ後における地方創生の実現についてお尋ねします。 先月八日に、新型コロナの法律上の位置づけが五類へと変更されたことで、三年余りにわたるコロナ禍への対応は出口へと向かい、県民生活はようやく平時を取り戻しています。 知事は、さきの二月定例会において、県の発展的再生に向け全力で取り組むとの決意を述べられました。まさに今こそ、コロナ後の反転攻勢ともいうべき取組を一気呵成に進めていかねばなりません。 こうした中、本年四月、国が公表した将来推計人口では、二〇七〇年に日本の総人口が八千七百万人まで落ち込むと報告されました。本県においても、二〇二五年に百三十万人を割り込むとの推計は、これより早いペースで進行することが見込まれています。 人口減少は静かなる有事とも言われますが、本県を含め地方では、様々な分野での影響が顕在化しています。中山間地域の集落の存続、インフラの維持や森林の保全、産業を支える労働力不足など、数多くの課題が深刻化しているのです。 本県がコロナ禍からの再生に取り組み、地域の発展を図るには、この人口減少と、それがもたらす様々な課題に、いま一度しっかりと向き合わなくてはなりません。 このような中、県では、これまでの地方創生の取組の深化を図る次期まち・ひと・しごと創生総合戦略の素案を示されたところです。 この戦略策定を契機として、人口流出の原因分析と検証をしっかりと行い、これを食い止めるには何が求められているかを改めて把握し、その声に応える政策を考えていかなければなりません。 また、人口規模がいや応なく縮小する中で、いかにして地域の活力を高め、社会システムを維持していくかという困難な課題についても、真剣に考えていかねばなりません。 技術革新は劇的に進み、国においても様々な制度改革や規制緩和、ルールづくりが進められています。県がいち早く進めてきたデジタル改革も、国や産業界の動向を迅速に取り込むことで、こうした課題の解決に、しっかりと結びつけていくことが成果として求められると考えます。 県におかれては、県政の最重要課題である人口減少の克服を見据えながら、コロナからの再生とさらなる発展を実現させていくため、確かな戦略を示し、今後の県政を力強く前へと進めていただきたいと思うのであります。 そこでお尋ねいたします。コロナ禍が出口に向かい、県全体が活力を取り戻しつつある中、加速する人口減少を克服し、地域の再生とさらなる飛躍を実現するため、県は今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 次に、若者や子育て世代に寄り添った少子化対策の推進についてお尋ねします。 少子化は、申し上げるまでもなく、我が国の国力と地域の活力、社会基盤の維持に直結する喫緊の課題であります。 先日公表された全国の出生数は、初めて八十万人を割り込み、過去最低を更新しました。コロナ禍を経て、少子化は政府の予想より十一年も早いペースで進んでいるのであります。 若年人口が急激に減少する二〇三〇年代に入るまでがラストチャンスであり、ここ数年の対策によりトレンドを反転させなければ、この先の人口減少を食い止められなくなるとさえ言われております。 こうした危機感から、岸田総理におかれては、次元の異なる少子化対策に不退転で挑む決意を示され、先日の会見において、こども未来戦略方針を示されるなど、その取組を具体化されています。特に、来年度からの三年間を集中取組期間と位置づけ、対策を加速化する方針を明らかにされたところです。 本県においては、これまでも子育てするなら山口県を掲げ、安心して子供を産み育てることができる環境づくりや、コロナ禍の中での結婚応援などに積極的に取り組んでこられたところです。 しかしながら、県内の出生数を見ますと、二年連続で八千人に届かず、また、合計特殊出生率は一・四七と、全国平均に比べ高い水準ではあるものの、希望がかなった場合の出生率である一・七との乖離は、依然として広がっているのが厳しい現実であります。 少子化対策には、これさえすればという即効薬はなく、若者・子育て世代の生活全般にわたる総合的な対策が必要であり、現在のトレンドを反転させるには、国と地方とが共に強力な施策を講じ、一体となって取り組んでいくことが重要となります。 とりわけ、全国よりも早いペースで人口減少が進む本県においては、本県の実情に合わせた、子供・子育て政策の抜本強化を図っていかねばなりません。国が不退転の決意で対策に取り組む中、本県としても、若者や子育て世代の声にしっかりと耳を傾け、地方にできる手だてを部局の壁を乗り越え、一丸となって、改めて検討していくことが必要だと考えます。 県議会においても、少子化は待ったなしの瀬戸際にあるとの危機感を持って、新たな特別委員会を立ち上げるよう調整が進められているところであり、我が会派としても、地域の声や課題を届け、必要とされる取組について、しっかりと提言してまいる所存であります。 県におかれては、議会とも両輪となって、国の対策と、地方のきめ細かな政策をしっかりと組み合わせた、真に実効性のある対策を打ち出し、スピード感を持って若者・子育て世代に届けていただきたいのです。 そこでお尋ねします。県では、若者や子育て世代に寄り添った少子化対策の推進について、今後どう取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 次に、地域経済の好循環の実現についてお尋ねします。 コロナ禍からの回復と正常化に向けた動きは、本県の地域経済においても、業種による差こそあれ着実に進み、景気回復の兆しが見えてきています。 一方で、資源・原材料価格の高騰や人手不足といったマイナス要因は、依然として和らぐことなく存在し、大きな不安要素となっているのが事業者の皆さんの置かれた現状です。 コロナ後における回復を確かなものとし、地域経済の好循環を実現するためには、持続的な賃上げを起点として、次いで、消費意欲の改善と物価の安定的な上昇、そして、企業収益の改善と投資の加速という、いわゆる正のスパイラルに向けて、ステップを着実に踏んでいくことが不可欠です。 経団連によりますと、この春の賃上げ率は三十年ぶりの高い水準となる約四%となり、国においても構造的賃上げを最重要課題として取り組むと、強調されているところであります。 地域経済の好循環の実現は、今がまさに分水嶺であり、本県においてもこの回復基調を確かなものとし、さらなる成長軌道へと結びつけていくため、きめ細かに取り組まなければなりません。 そのためには、まず、賃上げの動きを広く波及させていくことが重要です。本県においては、資源・原材料価格の上昇などが足かせとなり、賃上げにちゅうちょする中小企業も多くあるのが現状です。 同時に、下振れリスクには丁寧に対応していく必要があります。とりわけ、人手不足は、あらゆる業種で常態化しており、人員の確保が難航すれば、生産活動やサービスの低下、ひいては事業継続そのものに影響しかねないといった声は、我が会派にも多く寄せられています。 また、エネルギーや原材料の価格は、依然高止まりしており、様々な業種において、厳しい経営を強いられています。これまでも申し上げてきたように、物価高による窮状を乗り切るために、状況に応じた対策は迅速に講じていかねばなりません。 このたびの補正予算案は、国の対策や事業者の現状に対し、的確に対応されたものと評価していますが、こうした対策により、県内事業者の努力をしっかりと支えることはもちろん、この追加策を含めた総合的な支援により、ボトルネックを解消し、地域経済の自律的な成長へと結びつけていくことが重要であります。 今後、国の財政出動も平時へと転換していく中、県におかれては、今の回復基調を効果的に後押しすることで、地域経済の好循環が確実に実現されるよう、その取組を加速していただきたいのであります。 そこでお尋ねいたします。賃上げ、人手不足や資源・原材料価格の高騰など、県内事業者が抱える足元の課題を乗り越え、コロナ後の地域経済の好循環を実現していくために、県は今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 次に、持続的成長を目指した産業戦略の推進についてお尋ねします。 県では、やまぐち産業イノベーション戦略の下、本県の最大の強みであるものづくりを中心とする、高い技術力や集積力を生かした産業戦略の取組を官民一体で進めてこられました。 これまでの取組により、産業競争力の強化に資する港湾、工業用水道、道路など産業インフラの充実をはじめ、成長分野における企業誘致、さらには、瀬戸内の基幹企業と地域中核企業との技術交流の進展など、着実な成果を上げておられます。 一方で、アフターコロナの回復から、さらに持続的な成長を目指すためには、こうした中長期的な視点による産業力の強化に、今まで以上に力を入れなければなりません。 本県産業の持つ強みやこれまでの成果を生かしつつ、脱炭素化への対応や、半導体など新たな成長分野の集積、中核となる企業の創出や、人材の育成・確保など、社会経済の構造的変化を捉え直し、高い目標を掲げ取り組まなければなりません。 とりわけ、脱炭素化への対応は、本県の産業競争力の行方を左右する重要な課題であり、着実な実行が求められます。 周南地域においても、コンビナートの四社がアンモニアのサプライチェーン構築に向けて動き始めています。石油化学コンビナートの脱炭素化に向けたこの取組は、全国に先駆けたファーストムーバーとなるものとして国からも高く評価されており、県や市の後押しがあったからこそ、構想が前に進んだものと伺っております。 こうした民間企業を主体とした様々な挑戦を行政としても引き続きしっかりとサポートし、官民が一体となった取組として、目に見える成果を着実に積み重ねていかなければなりません。 我が会派としても、脱炭素化への対応が円滑に進むよう、独自の議連活動を行っているところであり、新たに立ち上げに向けた調整が進められている議会特別委員会におきましても、県内企業に寄り添った施策検討が進むよう、引き続き、現場の実情をしっかりと酌み取り、その声を届けてまいりたいと考えています。 県では、今年度、社会変革を踏まえた課題に対し、実効性のある施策を強力に推進していくため、産業戦略部と商工労働部を一体化し、産業労働部を設置されました。 この新たな組織を最大限に機能させ、脱炭素化をはじめとする社会課題の解決と、経済活性化とを一体的に推進する産業戦略に取り組み、持続的な成長力のある本県産業をしっかりと形づくっていただきたいと思うのであります。 そこでお尋ねします。本県の持続的な成長を目指した産業戦略の推進に、県は今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 次に、戦略的な海外展開の推進についてお尋ねします。 我が国においても、ようやく海外との往来が回復しています。円安基調も継続する中、本県としても、海外需要を地域の活力に生かす挑戦にしっかりと取り組まなければならないと、我が会派は繰り返し申し上げてきました。 県においては、農林水産物の輸出や、クルーズ船の誘致など、目に見える形での取組を進められているところではありますが、本県の豊かな農林水産物や中小企業の技術力、観光資源の可能性など、海外展開の取組をさらに拡大させる余地は、まだ十分にあります。 こうした中、県においては、先日、台南市と、観光・物産等の分野における交流について、覚書を交わされることを発表されました。今議会終了後、知事が台南市を直接訪問し、締結式が行われる予定であります。 我々県議会においては、平成二十五年に日台友好促進山口県議会議員連盟を設立し、また、令和三年には、台南市議会と友好交流に関する覚書を締結するなど、台湾との間には、議員間での交流を一つ一つ積み重ねてきた深い絆があります。 コロナを経てようやく実現に至るこのたびの覚書締結を皮切りに、改めて、県、県議会、関係機関が一体となり、産業や観光、交流などの分野における取組をさらに加速させ、確かな成果につなげていかなければなりません。 また、昨年の議員団によるASEAN訪問においても、今後の展開に資する多くの提案を得ており、さらに先日は、ベトナム・ビンズン省から訪問団も来県され、交流拡大に向けた様々な意見交換も行われたところです。これらを芽吹かせ、新たなビジネスや交流の創出につなげるよう、着実に取り組まなければなりません。 県においては、農林水産物などの東アジアやASEAN地域への輸出拡大に向け、先月、新たに輸出推進会議を設置され、また、中小企業の海外展開を支援するためのサポートデスクも、昨年シンガポールに設置しておられます。こうした体制を最大限機能させ、一つ一つの海外展開の取組を着実に実現していただきたいと思います。 同時に、インバウンドはまさに今がチャンスなのであり、都市部を中心に押し寄せる外国人観光客の波を本県にもしっかりと呼び込むことで、活力再生の起爆剤としていかねばなりません。 海外展開をめぐる地域間・企業間競争も激化する中、こうした勢いに乗り遅れることなく、スピード感ある取組を進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。台湾やASEANなどをターゲットにした戦略的な海外展開の推進に、県は今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。 最後に、教育行政についてお尋ねします。 先ほども触れましたが、少子化の進行により、子供の数は今後さらに減少していくことが、残念ながら確実となっています。また、データ量で人間をはるかに上回る生成AIの出現は、大きな可能性を予感させる一方で、人間の学びや仕事の価値そのものを問い直すようなインパクトをもたらす技術革新でもあります。 次代の担い手となる子供たちは、まさに我々の想像を超える社会を生き抜き、自ら社会を構築していく力を身につけていくことが求められており、その力を育む公教育の質の向上は、地方にとっても国全体にとっても、先送りのできない重要課題であります。 こうした中、国においては、我が国の教育施策の総合的な推進を図る新たな教育振興基本計画を閣議決定され、これを受け、県教委においても、来期の山口県教育振興基本計画について、その素案を示されたところであります。 本県では、これまでの計画に基づき、全ての公立学校にコミュニティ・スクールを導入し、本県ならではの地域連携教育を推進するとともに、将来を見据えた高校再編や、特色ある学校づくりに取り組んでこられました。また、コロナ禍の中でも、全国に先駆けてICT環境を整備するなど、教育の充実に努めてこられたところであり、こうした県教委や現場の取組を我が会派としても高く評価しているところであります。 その一方で、学校現場においては、デジタル技術と教師の指導力とをどう組み合わせていくかという模索や、コロナ禍の影響による不登校の増加、教員の確保や働き方改革など、学校教育の在り方にも関わる数多くの課題に直面しています。 教育振興基本計画は、今後五年間の本県教育の方向性を示すものであり、技術革新や社会の変化を踏まえ、どのような教育を目指していくのかという絵姿を力強く示していく必要があります。同時に、決して容易ではない現場の課題に対しても、解決に向けた方向性を計画の中でしっかりと打ち出し、一つ一つ乗り越えていかねばなりません。 教育は、まさに未来への投資です。県教委におかれては、将来の活力をつくり出す子供たちが、自らの力を最大限に伸ばすことができる教育の実現に向け、本県教育の充実と刷新に真正面から取り組んでいただきたいのであります。 そこでお尋ねします。次期山口県教育振興基本計画の策定に当たり、本県教育の目指すべき姿をどのように描き、教育現場の諸課題の克服と、未来を見据えた教育の充実に、今後どのように取り組まれるのか、教育長の御所見をお伺いしまして代表質問といたします。 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)守田議員の代表質問にお答えします。 まず、コロナ後における地方創生の実現についてのお尋ねです。 人口減少は、経済活動や地域社会、県民生活に深刻な影響を及ぼす本県の最重要課題であり、コロナ禍からの発展的再生を図り、持続可能で活力ある山口県を実現するためにも、その克服に真正面から挑戦していかなければなりません。 コロナ禍により少子化が加速し、一旦は縮小した東京圏への転入超過も再び拡大に向かうなど、人口減少をめぐる状況は一段と厳しさを増しており、私は、これまで以上に強い危機感を持って、地方創生の取組をさらに充実強化し、それを迅速に進めなければならないと考えています。 国においても、急速な少子化が我が国の経済・社会システムの維持を困難にするとの危機意識に立ち、今をラストチャンスと捉え、次元の異なる少子化対策が検討されており、残された期間の余裕はありません。 私は、こうした認識の下、新たにまち・ひと・しごと創生総合戦略を策定することとし、今般、そのたたき台となる素案を作成したところであり、今後これを基に、確かな成果へとつながる戦略をつくり上げていきます。 それに向け、まず、その転出が人口減少の大きな要因であり、従前より戦略のターゲットとしてきた、若者や女性にさらにしっかりと焦点を当て、対策の実効性を高めていきます。 当事者の皆さんに改めて意見を伺うことなどにより、意識や価値観、ニーズや課題等を十分に把握し、その声に応える、今の時代に即した、効果的な少子化対策や本県への定着を促進する施策の構築を図ります。 さらに、近年大きく増加している移住者のさらなる拡大に向けても、若者や子育て世代を呼び込む施策を強化していきます。 同時に、高齢化が進行し、当面の人口減少が避けられない現実を踏まえ、そうした前提の下で、対策を考えることも重要であり、人口減少の中にあっても、持続可能な経済・社会を築くため、各分野の取組を一層深化させなければなりません。 このため、産業では、生成AIなど先進的なデジタル技術も積極的に取り入れ、生産性向上や新たな価値を生み出すイノベーションの創出を図るとともに、GXの推進等による成長支援などを進めます。 交流では、インバウンドの拡大による観光需要の取り込み、生活では、デジタルによる生活サービスの提供や将来にわたり自立発展できる未来のまちづくりの推進など、地域の維持・活性化につながる取組を強化します。 改めて言うまでもなく、人口減少の克服は、決して容易ではありませんが、未来の世代が山口県で希望を持って暮らすための基盤を今しっかりとつくっていく必要があります。 私は、こうした考えの下、今後、国における少子化対策の動向等も見極めつつ、県議会をはじめ、市町や県民の皆様の御意見を伺いながら、本県の実情に即した実効性のある総合戦略を策定し、これにより本県の地方創生を成し遂げられるよう、全力を尽くしてまいります。 次に、若者や子育て世代に寄り添った少子化対策の推進についてのお尋ねにお答えします。 本県の昨年の合計特殊出生率は、一・四七と、全国十一位となっており、全国的には低位ではないものの、出生数は七千七百六十二人と、五年前と比べ、二割以上減少しており、少子化に歯止めがかかっておらず、大変憂慮すべき状況にあります。 少子化の進行は、社会経済の根幹を揺るがしかねない喫緊の課題であり、私は、将来の本県の活力の維持に向け、より強い危機感を持って、対策を講じていく必要があると考えています。 こうした中、国においては、次元の異なる少子化対策の実現に向けて、若い世代の所得向上、社会全体の構造・意識の改革、全ての子供、子育て家庭への切れ目ない支援を基本理念とする、こども未来戦略方針を閣議決定し、今後三年間で集中的に実施する取組が示されたところです。 県では、これまでも、やまぐち未来維新プランに基づき、結婚、妊娠・出産、子育てに対する切れ目のない支援や、子供と子育てに優しい社会づくりに取り組んできたところです。 具体的には、少子化の主な要因である未婚化、晩婚化へ対応するため、開設以来二百七組の成婚を達成した結婚応縁センターの取組に加え、やまぐち婚活応縁隊の結成や、結婚の魅力を伝えるキャンペーンイベントの開催により、社会全体で結婚を応援する取組を強力に進めています。 また、育児の悩みや不安感の軽減を図るため、身近な場所で、妊娠・出産・育児の相談に対応する、まちかどネウボラをこれまでに八十七か所設置しており、今年度から助産師を派遣することで、さらに子育て家庭に寄り添った伴走型相談支援の強化に取り組んでいます。 今後、少子化トレンドを反転させるためには、議員お示しのとおり、こうした取組に加え、これまで以上に、国と地方が一体となった取組を進めるとともに、本県の実情に合わせた、きめ細かな施策を組み合わせて実施していく必要があります。 少子化の要因は、出会いの機会の減少や、仕事と子育ての両立の難しさ、家事・育児負担の女性への偏りなど、多岐にわたることから、その解決に向け、全庁を挙げてさらに議論を深め、幅広い観点から施策を構築してまいります。 また、その前提として、当事者のニーズを的確に把握することが重要であることから、今年度実施する子育て支援に関する県民意識調査等を通じ、若者や子育て世代の声にしっかりと耳を傾けるとともに、県議会の御意見を頂きながら、より一層実効性を高め、少子化対策を推進してまいります。 私は、少子化は、待ったなしの瀬戸際にあることから、今後とも、国や市町、関係団体等と連携し、スピード感を持って、若者や子育て世代に寄り添った少子化対策を推進し、この難題に全力で立ち向かってまいります。 次に、地域経済の好循環の実現についてのお尋ねにお答えします。 コロナ禍から地域経済の回復に向けた動きが強まる中、資源・原材料価格の高止まり、さらには深刻化する人手不足が事業者にとって大きな負担となっています。 こうした状況を克服し、県経済の回復を確かなものにするためには、事業者を取り巻く課題に対応した施策を強力に展開し、地域経済の好循環につなげることが必要と考えています。 このため、私は、資源・原材料価格の上昇や賃上げの状況等を踏まえながら、企業の経営基盤の強化や人材の確保・育成に積極的かつ機動的に取り組んでまいります。 まず、経営基盤の強化に向けては、デジタル技術を活用した既存ビジネスの変革等により生産性向上を図ることが重要であることから、これまで「Y─BASE」での約二百件のDXコンサルやシステム導入等の補助を実施してきたところです。 その結果、データに基づく最適な生産計画の策定や、スマホを活用した無店舗型レンタルサービスの実施等、百二十七件の課題を解決しており、今後も的確な支援により横展開を図りながら、DX導入企業の拡大に努めてまいります。 また、景気回復に伴い企業の投資意欲が高まっていることから、DXやGX等の成長分野を対象とした新たな支援制度を創設し、企業の新事業展開の取組を強力に支援します。 さらに、物価高騰の影響が大きい中小企業を対象として、省エネや生産性の向上に資する設備導入補助を行うとともに、補正予算において、LPガスと特別高圧電力を利用する企業等に対して負担軽減策を講じてまいります。 加えて、電気料金の削減に向けた中小企業の蓄電池導入を支援する補助制度を創設するとともに、肥料や飼料の価格高騰の影響を受けている農業者や畜産業者を支援するなど、事業者の経営安定を図ります。 次に、人材の確保・育成に向けては、産業人材課を新設し、体制の強化を図り、新たに県外からのキャリア人材の採用に向けた企業の主体的な取組を支援するとともに、産業振興財団等と連携したリスキリング支援を実施し、持続的成長を担う産業人材の育成を促進します。 また、全国に比べて低い女性の就業率を高めるため、今月設立した、県内企業や大学等で構成する女性デジタル人材育成コンソーシアムを推進母体として、デジタルスキルの習得から就業支援までを一体的に行ってまいります。 さらに、補正予算において、賃上げと柔軟な働き方を同時に導入する中小企業に対して、最大百万円の奨励金を支給する制度を創設し、魅力ある職場環境の整備を促進することで、人材の確保につなげてまいります。 私は、賃上げや人手不足、資材・原材料の高騰など、事業者が直面する様々な課題に対応した支援策を総合的に実施することにより、県経済の好循環が実現できるよう全力で取り組んでまいります。 次に、持続的成長を目指した産業戦略の推進についてのお尋ねにお答えします。 私は、県経済の持続的な成長を実現するためには、地域の活力源である強い産業力をつくることが極めて重要であると考えています。 このため、これまでも産業戦略本部の下で、高度技術や産業集積を生かした産業戦略を積極的に推進してきたところであり、港湾や幹線道路網などの産業インフラの整備や、企業誘致も順調に推移するなど、目に見える成果も上がっているところです。 こうした中、脱炭素化等の急速な社会変革に対応し、産業戦略のさらなる推進を図るため、本年四月、産業労働部を設置し、脱炭素化に向けたエネルギー転換や新事業の創出、新たな成長分野の産業集積等の取組を積極的に展開することとしています。 まず、脱炭素化に向けては、拡充した産業脱炭素化推進室を中心に、昨年度策定した、やまぐち産業脱炭素化戦略に基づく施策を強力に進めてまいります。 特に、本県経済の屋台骨であるコンビナート企業において、各地域での連携した取組が進むよう、県独自の補助制度による支援を行うとともに、大規模で先進的な国補助事業の獲得にもつなげていきたいと考えています。 また、幅広い分野での脱炭素化を進めていくため、電動化等に対応した自動車関連産業の新事業展開の促進や、中小企業がサプライチェーンから求められる脱炭素経営への転換に向けた各種支援などにも取り組んでまいります。 さらに、新たな成長分野の産業集積に向けては、DX、GXの進展に伴い市場拡大が見込まれる半導体や蓄電池等の分野をターゲットとして、最大補助額五十億円となる強力な支援制度を創設し、積極的な誘致活動を展開しています。 とりわけ、半導体、蓄電池分野はコンビナート企業や高度技術を有する県内企業との親和性が高いことから、関連企業や支援機関から構成する協議会を設置し、産学公が一体となって、新規立地や取引拡大等に取り組みたいと考えています。 また、成長分野の産業振興を進める上では、専門人材の確保・育成が重要となることから、首都圏等のプロフェッショナル人材の活用を促進するとともに、大学と連携したビッグデータ分析の事例研究などを通じて、DX・GX人材の育成に取り組んでいきます。 こうした急激な環境変化や新たな時代のニーズに対応し、産学公連携の下、本県の戦略的な取組を強力に加速するため、年度末で終期を迎える産業イノベーション戦略を改定し、プロジェクトの拡充等により取組を強化してまいります。 私は、今後とも、県議会の御意見もお聞きしながら、産業戦略本部を中心として、県経済がコロナ禍から回復し、脱炭素化にもしっかり対応することで、さらに持続的成長を実現できるよう、産業戦略の推進に全力で取り組んでまいります。 次に、戦略的な海外展開の推進についてのお尋ねにお答えします。 社会経済活動がコロナ禍前に戻りつつあり、全世界で交流・物流が大きく動き出している中、私は、この機を逃すことなく、成長著しい海外市場との交流拡大により海外の活力を取り込み、本県経済の活性化を図ることが極めて重要と考えています。 このため、本年四月、海外展開の取組を総括的にマネジメントする海外展開推進室を新設し、東アジアやASEAN地域等をターゲットに、全庁を挙げた取組を積極的に進めているところです。 具体的には、海外でのセールス活動を本格的に再開することとし、本年度の第一弾として、来月、県議会と共に台湾を訪問します。 台湾では、台南市との観光・物産分野等の交流に関する覚書を締結するほか、同市において、私自ら、本県の強みである豊かな自然や文化、歴史、多彩な食などの魅力的な観光資源を広くPRすることとしています。 また、半導体関連企業が集積する新竹市を訪問するとともに、台北市では、オードリー・タンデジタル担当大臣とお会いし、デジタル改革の新たな展開等に向けた意見交換を行ってまいります。 次に、シンガポールでは、昨年設置したサポートデスクの活用促進を図るとともに、さらに取組が進むよう県人会の協力の下、やまぐち海外展開応援団を結成し、県内企業の海外展開を強力に支援します。 また、ベトナムでは、先日来県されたビンズン省との連携をさらに深め、人や物の交流を加速するとともに、キエンザン省において進めている水産インフラ輸出に向け、現地での実証事業や展示会への出展など、販路拡大に取り組んでまいります。 さらに、農林水産物等の輸出拡大に向け、新たに設置したやまぐちの農林水産物等輸出推進会議において、生産、加工、流通などの多様な事業者による連携体を構築し、大ロット化や多品目化を進めるなど、戦略的な取組を推進します。 インバウンドについても、都市部からの外国人観光客を確実に取り込むため、本県の自然を生かした魅力ある体験等の動画配信や、インフルエンサーを招聘した視察ツアーの実施など、効果的な情報発信に取り組んでいきます。 また、今月中旬には、台湾など重点五市場の観光プロモーターと連携し、現地の旅行会社を招いて観光地等の視察や商談会を実施したところであり、引き続き、本県への旅行商品造成を一層促進していきます。 さらに、本県と台湾やベトナム等を直接結ぶ国際チャーター便の早期就航に向けた取組を着実に進めてまいります。 私は、今後とも、県議会とも緊密に連携し、旺盛な海外需要を本県に取り込み、経済の活性化につながるよう、戦略的な海外展開の推進に積極果敢に取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 人口減少や少子高齢化、グローバル化などの進行が加速度を増し、先行きが不透明で未来の予測が困難となっている中、これからの時代を力強く生き抜くことができる子供たちを育成するため、教育の果たす役割は極めて重要です。 また、コロナ禍の影響や、生成AIの出現に象徴されるデジタル化の進展などに伴う新たな課題にも、的確に対応していくことが教育には求められています。 このため、現在、県教委では、先日閣議決定された国の計画を参酌しながら、今後五年間の本県教育の指針となる新たな山口県教育振興基本計画の策定を鋭意進めているところです。 まず、次期計画の教育目標については、本県教育のよき伝統である先見性や進取の気質などを大切に受け継ぎながら、前計画の目標である、未来を拓くたくましい「やまぐちっ子」の育成を継承し、高い志を持ち、多様な人々と協働しながら、主体的に力強く、未来を切り開いていく子供たちを育成していくことといたしました。 また、社会の変化や多様な教育ニーズ等に対応するため、施策の柱に、新たな時代を創造する人材を育む教育の推進や、誰一人取り残されることのない教育の推進を新たに追加するなど、教育目標の実現に向けて、施策体系を大きく見直したところです。 さらに、これらの柱に沿って推進する施策についても、デジタル技術や教育データを効果的に活用して、子供たちの学び方や教職員の働き方を改革する教育DXや、部活動の地域連携・地域移行に向けた部活動改革の推進、本県の喫緊の課題である教員確保等を追加するなど、直面する教育課題にも的確に対応することとしています。 加えて、本県が全国に誇るコミュニティ・スクールとICT環境、この二つの強みを、各施策を展開する上での重要な視点として位置づけ、積極的に活用することで、施策の効果を最大限に高めてまいります。 また、計画を実効性あるものとするためには、本県教育への期待や、学校現場で求められていることを広くお聞きし、計画策定に生かしていくことが重要です。 このため、外部有識者や教育関係者の皆様から御意見を伺うとともに、今回初めて子供たちにアンケート調査を実施し、多くの意見を頂きました。こうした皆様の思いもしっかり受け止め、計画に反映させるよう努めたところです。 県教委といたしましては、今後、県議会をはじめ、県民の皆様、市町教委や学校現場等の御意見も伺いながら、本県教育をめぐる諸課題に対応した実効性ある計画を策定し、新たな計画の下、次代を担う子供たちの育成に全力で取り組んでまいります。