討論
────────────────────── 討 論 議長(柳居俊学君)これより討論に入ります。 討論の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 河合喜代さん。 〔河合喜代さん登壇〕(拍手) 河合喜代さん 日本共産党を代表して討論を行います。 本議会に付託された八十一議案のうち、議案第一号、十五号、十七号、二十二号、五十五号、五十六号、六十六号、七十九号、八十一号及び八十三号の十議案に反対し、残り七十一議案に賛成します。 議案第一号、二〇二四年度一般会計予算案についてです。 本予算案は、長年続く実質賃金の減少と年金削減、そして四十一年ぶりの物価上昇という非常事態から、県民の暮らしをどう守るかが問われました。 全国消費者物価指数は二〇二〇年を一〇〇として、一月は一〇六・九、前年同月比二・二%の上昇です。光熱水費はマイナスになったものの、それ以外の費目は全てプラス。食料品は五・七%も上昇し、買物のたびに物価高を実感させられています。 先日来、大手企業は次々と賃上げを発表していますが、地方の主役は中小零細企業です。県が、賃上げした企業への支援を昨年から実施していることは評価しますが、非正規労働者の正規雇用化への支援や、私も提案したケア労働者の賃金の底上げなど抜本的な取組が求められます。 経済活性化の決め手は県民の購買力向上です。しかしながら、予算案には、その視点が欠けており、物価高騰とインボイスに苦しむ中小零細企業向けの対策は、相変わらず融資が中心です。 その一方、誘致企業向けには、企業立地促進補助金上限の五十億円までの引上げ、産業団地の整備、減税や雇用奨励金などの優遇策がちりばめられるなど不公平感が否めません。 学校や福祉施設の食材費や燃料の高騰分への支援は必要な対策ですが、物価高騰などで可処分所得が減る一方の家計を直接温める施策は、ほとんど見られず、県民の将来不安は増すばかりです。 そんな中でも、少子化の危機感からとはいえ、子育て支援での前進は県民の声に応えたものであり、評価します。しかし、その規模は、残念ながら、第二子以降の保育料の無料化四・五億円、保育士の独自加配支援五・七億円、資格取得のための就学支援一・三億円、不妊治療への助成二億円など、約十四・七億円にとどまっています。 これまでも子育て支援で頑張ってきた市町は、子供医療費助成制度の拡充に取り組み、その経費負担は約三十六億円規模に達しています。また、子ども食堂が増え続ける中、学校給食の無償化に踏み出す市町も増えていますが、その経費も市町負担です。本会議でも提案しましたが、子供医療費助成や給食費の無償化など子育て支援に資する施策に必要な経費について、県が半額負担する制度を創設すべきです。 また、県が市町に示した国民健康保険の一人当たり標準保険料は八・八%増と、過去最大の上げ幅です。新年度は国民健康保険財政安定化基金の財政調整事業分の九億円から一・三億円を拠出して、一定水準以上の値上げとなる十市町の保険料上昇が抑制されますが、国保料値上げを抑えるため、この仕組みを最大限活用するよう、改めて提言します。 本予算案の投資的経費は九百三十二億円と、今年度より四十六億円増えています。大半は道路や橋梁、港湾、河川の維持管理、防災対策など必要な事業ですが、一方で、下関北九州道路や木屋川ダムかさ上げ事業に加え、山口きらら博記念公園交流拠点化事業として、中国地方最大級のフラワーガーデンや大型複合遊具等の整備に十二億三千万円、二〇五〇年の森整備に向けた基本設計も盛り込まれ、過大投資につながらないか危惧されます。 しかも、その手法も疑問です。山口きらら博記念公園交流拠点化事業や、これから本格化する県農業試験場の跡地利用の事業には、サウンディング型市場調査が導入されました。民間活力の導入が目的とのことですが、調査は民間企業に丸投げで、山口きらら博記念公園交流拠点化事業で五千万円、農業試験場の跡地利用の事業で三千九百万円もの費用が投じられました。この手法は、民間企業に投資・事業参入を促し、企業の利益につながることを目的とするものです。 地方自治体の本旨は、住民福祉の増進です。この原点に返って、住民の福祉に資する土地利用の在り方を住民主人公で考えることが、ひいては故郷への愛着と誇りを育てることになると考えます。 次に、本予算案は、元日に起こった能登半島地震。被災者救済と防災への願いも、県民から託された予算でした。 地域防災計画の見直しに当たっては、まずジェンダー視点での人員配置が不可欠であることを改めて求めます。災害時に必要な備蓄は市町、それで不足する場合は民間事業所との協定を含む県、それでも不足するときは近隣県からの支援という役割分担は理解できますが、南海トラフなど巨大地震を想定した備えを徹底することが求められます。 被災者生活再建支援制度については、被災者の状況を見ると、国の支援制度では生活再建には程遠いことが分かっています。国が拡充するまでの間だけでも県の制度を拡充する必要がありますが、そうした姿勢はありません。 こうした理由をもって、当初予算案に反対をいたします。 議案第六十六号、今年度一般会計補正予算案についてです。 歳入は当初予算から一割減り、歳出では総務費の百四十八億円以外は全て減額補正です。介護職員の処遇改善補助や災害復旧費の最終整理などもありますが、財政調整基金に百二十五億円余りを積み立てます。金額にだけ目を向ければ、民生費や教育費を使って、子供医療費助成制度や教職員の多忙化改善などの施策に使えていたものであり、容認できません。 議案第十五号及び七十九号は、産業団地整備事業特別会計に係るものです。新年度予算案には、光市に新たに産業団地を整備するための経費二億八千万円を計上しています。雇用の場の創出を名目とされますが、企業誘致のために団地を開発し、固定資産税を減税し、雇用奨励金を払い、雇用を生み出しても正規雇用で働く地元の労働者がどれだけ増えたのでしょうか。派遣という短期雇用形態が当たり前となり、少し高い賃金をと思えば、派遣という不安定雇用に就くしかなく、将来設計は描けず、結婚したくてもできない若者を大量に生んできたのではないでしょうか。 一方で、長年地元で会社を経営し自営業を営む人たちには、雇用をしてもほとんど支援はなく、消費税やインボイスの導入で利益を奪われ続け、地域経済の衰退が続いて事業や商売が成り立たない、後継者がいないという社会をつくってしまいました。 私たちは、県内で長年事業を営み、雇用をつくってきている地元企業、事業者こそ経済政策の主役にすべきと主張してまいりました。経済政策の在り方を根本から問い直すことが求められています。いま一度、従来型の経済政策の是非を検証することを求め、反対をいたします。 議案第十七号及び八十一号は、二四年度工業用水道事業会計予算案と同工業用水道事業会計の二三年度補正予算案です。 工業用水道事業は、過大投資で大きな損失を生じさせた苦い過去を教訓にして、適切な需要見込みを前提とした経営が求められています。今議会では、改めてこの問題について、県の姿勢とこの間の取組をただしましたが、何ら前進が見られませんでした。 二〇一三年当時、先行水源を抱える十三県がどのような取組をしているか、調査を求めましたが、必要に応じて情報収集するにとどまり、国に対し、治水への振替とともに、先行水源への財政措置についての状況を尋ねましたが、一向に前進が見られませんでした。県民に過大な負担を負わせてしまったという反省とともに、同じ過ちを繰り返さないことが県政に求められています。 関連して、議案第五十五号、工業用水道条例の一部を改正する条例案は、佐波川、厚東川、厚狭川の工業用水道の料金改定に伴い、料金の変更を行うための提案です。 工業用水道事業で過大な見込みで開発したものの、負の遺産が県財政の負担となっているさなか、企業には負担軽減では県民は納得できません。しかも、山口県の工業用水道料金は全国平均の二分の一の料金で、安価を売りにしています。その一部の料率をさらに引き下げることは容認できません。 議案第二十二号は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の一部を改正する条例で、いわゆるマイナンバー法の改正による条例改正です。そもそも我が党は、国民背番号制につながるマイナンバー法に反対する立場から、今回の条例改正には反対をいたします。 議案第五十六号は、学校職員定数の一部を改正する条例です。 新年度の教職員数は、全ての校種で増員となりませんでした。今年度、中学二年、三年で三十五人学級が三十八人学級に後退し、学校現場は大変な負担を抱えましたが、現場からの悲鳴、県民の強い要望で、新年度は三十五人学級に戻りました。 しかし、全体の教員数は、特別支援学校では三十四人増ですが、小・中・高校では計八十三人の先生を減らす提案です。県教委自ら、教員の勤務実態は依然として厳しい状況にあると言われながら、教員定数の削減は容認できません。 教育現場の苛酷さが教員を希望する若者を減らしています。直近の国の調査では、いじめの認知件数が微減する一方で、暴力行為の発生件数、不登校児童生徒数は増えています。一人一人の児童生徒の学びと人格の完成を保障する教育の実現に必要なのは、何をおいても、人、人、人です。よって、本議案には反対いたします。 議案第八十三号は、二〇二三年度の建設事業に要する経費に関し、市町が負担すべき金額を変更することについてです。毎回指摘していますけれども、国事業への県負担を撤回するよう国に求めながら、自ら市町に計三十三億円もの負担金を求めるのは矛盾しています。 次に、請願についてです。 請願第一号は、自民党派閥の政治資金パーティー収入をめぐる裏金事件の真相解明と政治資金規正法の強化を求める意見書の採択を求めるものです。 皆さん、御承知のとおり、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件では、検察が認定したパーティー収入の不記載額は、三つの派閥で約九億七千万円にも上り、会計責任者ら三人が起訴されたほか、国会議員では一人が逮捕、二人が起訴されるなど、重大な刑事事件となりました。 どの世論調査でも真相解明と政治資金規正法の抜本的な強化を求める世論は八割から九割を占めています。自民党の皆さんは、国会における議論や法改正をはじめとした見直しの動向を注視すべきと採択に反対されていますが、こんなときこそ、同請願の採択に賛成し、自ら襟を正す姿勢を県民に示すべきであり、不採択とする委員長報告に反対いたします。 請願第二号、三号、四号及び五号は、いずれも中国電力が上関町に計画している使用済核燃料中間貯蔵施設の建設に反対することを求めるものです。 東日本大震災がもたらした福島第一原発事故から十三年を迎えた今、本年元日に発生した能登半島地震は、改めて自然災害の甚大さと、予知することの困難さを示しました。また、地震を起因とした原発事故が起きた場合には、住民が避難することが極めて難しくなるという事実も見せつけました。自然災害は止められなくとも、原子力事故が起きることは絶対に回避しなければなりません。 中国電力が、関西電力と共同で計画している上関町への使用済核燃料中間貯蔵施設建設は、施設の安全性に限界があることや、南海トラフ地震の発生が確実視されている状況を無視していると言わざるを得ません。 同施設の建設に反対する声は高まっています。地元の四団体が呼びかけた、中国電力と関西電力に宛てた中間貯蔵施設建設中止を求める署名は、中国電力宛てに二十七万五千筆、関西電力宛てに二十六万筆を超える賛同が寄せられています。 よって、上関町への使用済核燃料中間貯蔵施設の建設に反対する本請願は採択されるべきです。 請願第六号は、学校の業務量に見合った教職員配置と長時間労働を抑制するため教員に残業代を支給可能とする給特法の改正を求めるものです。 教職員の長時間労働と学校への教員未配置問題は、学校現場にも深刻な影響をもたらしています。 同僚議員が本会議でも指摘しましたが、県教委は時間外在校等時間を月四十五時間、年三百六十時間を超える教員の割合をゼロ%に近づける目標を掲げていますが、二二年度、年三百六十時間を超えた教員の割合は、小学校六五%、中学校七六%、県立学校四五%です。 こうした現状から、教員を志望する学生の減少、離職する教員の増加、代替教員の充足困難という状況が生まれ、さらなる多忙化が進むという悪循環に陥っています。 それだけに教員がゆとりを持って教育活動に専念するためには、必要な教員を正規雇用で確保すると同時に、教員の長時間過密労働を解消するための定数の在り方の見直しや適正な勤務時間管理と長時間労働を抑制するために残業代を支給可能とする給特法の改正が求められています。 よって、定数法及び給特法の改正を求める本請願は採択されるべきものです。 請願の紹介議員の一人として、以上六本の請願を不採択にするという委員長報告に多くの議員が反対されることを心から訴えて、討論といたします。 最後に、今年度末をもって本会議に出席されている参与員のうち、総務部長はじめ多くの県職員の方々が退職されます。 この間、意見の違う点も多々ありましたけれども、お互い県民福祉の向上を目指す、この立場では共通していたものと信じています。大変お世話になりました。 職員の皆さんには、全体の奉仕者として職務に尽力、全うしていただきました。心身ともにゆっくりと休まれ、新しい分野でまた御活躍されますよう祈念いたします。本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。 以上で、日本共産党県議団を代表しての討論といたします。(拍手)