1 令和6年度当初予算について 2 少子化トレンドの反転に向けた施策の推進について 3 地域経済の成長と賃金上昇の好循環の実現について 4 産業脱炭素化に対応した基盤整備の推進について 5 観光交流の拡大について 6 防災・減災、国土強靭化の推進について 7 教育行政について
───◆─・──◆──── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第八十三号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第八十三号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 畑原勇太君。 〔畑原勇太君登壇〕(拍手) 畑原勇太君 おはようございます。自由民主党の畑原勇太です。 令和六年二月定例会に当たり、自由民主党会派を代表して、県政の諸課題について、知事及び教育長に質問いたします。 質問に先立ち、一言申し上げます。 元日に発生した、石川県能登地方を震源とする最大震度七の巨大地震により甚大な被害が発生し、二百四十一名の方が亡くなられ、現在も一万人を超える方が厳しい環境の中での避難生活を余儀なくされています。まずもって、お亡くなりになられた方、御遺族に対しまして、謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災されました方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 また本県からも、警察や、医療・福祉チームをはじめ、県・市町職員の皆さんが現地入りし、懸命に支援活動を行っておられますことに、改めて深く感謝と敬意を表する次第です。 政府においては、発災直後から、自衛隊の派遣による捜索活動や生活物資の供給、人的支援などを行うとともに、早急に復旧・復興支援パッケージを策定し、一千五百億円を超える予備費使用を決定するなど、迅速な対応を行っているところです。 何よりも、被災地の方々の生活再建、そして一日も早い復旧・復興のため、与野党は垣根を越え、国全体が一丸となって取り組んでいかねばなりません。 現在、国会においては、新年度予算案の審議が進められているところですが、今、求められていることは、これを一日も早く成立させ、能登半島地震の復旧・復興を加速し、同時に、三十年ぶりにデフレからの完全脱却に向けた兆候が見え始めている日本経済の本格的再生を果たしていくことであり、そのための議論をしっかりと前に進めていくことです。 私ども自由民主党会派としましても、目の前にある多くの課題に真正面から向き合い、国民・県民の暮らしとなりわい、そして我が国の平和と安全を守り抜くため、いま一度、政治は国民のものとの原点に立ち返り、真摯に政策を実現していくことに全力を傾けてまいる所存です。そのことにより、県民の皆様から寄せられた大きな負託に、責任を持って応えてまいる決意と覚悟を改めて申し上げ、通告に従い質問いたします。 初めに、令和六年度当初予算についてお尋ねします。 さきに公表された、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、本県の人口は二○五○年には三一%減の約九十三万人まで減少し、さらに高齢化率は四〇%を超えると推計されています。 また、一時和らいでいた東京圏への転入超過は、再びコロナ前の水準まで戻りつつあり、少子高齢化、人口減少は本県の大きな課題となっています。 こうした県政に立ちはだかる様々な困難を克服するため、県ではやまぐち未来維新プランに沿った施策を展開されているところであり、来年度はその取組が、県民の実感を伴った成果として結実していくことが求められます。 こうした中、自由民主党山口県連では、市町や友好団体から頂いた八百件を超える要望を五十六項目の超重点要望事項として取りまとめ、一月初旬、村岡知事に要望いたしました。 このたび提出された当初予算案は、我が党の要望も踏まえた、少子化対策をはじめとした人口減少に対する取組の強化、産業脱炭素化やデジタル実装の加速、観光交流の拡大など、未来維新プランに基づく本県の未来に向けた投資が、しっかりと盛り込まれています。 加えて、能登半島地震も踏まえた防災・減災、国土強靱化の推進や、目下の課題である物価高や人手不足対策など、厳しい財政状況の中にあっても、私どもの要望に対し可能な限りの措置をしていただいたところであり、我が会派としても、このたびの予算の効果が最大限に発現されるよう、力を尽くしていく所存です。 また同時に、こうした取組を持続的に推進するには、将来にわたる健全な行財政基盤が不可欠です。コロナ禍への対応のため一時凍結してきた行財政構造改革ですが、コロナを乗り越え大きく変化した社会経済の情勢を踏まえ、今後の行財政運営について、どのような見通しを持って進めていくのかを明示していく必要があります。 知事におかれては、未来維新プランに描く新たな県づくりの具現化と、持続的な行財政基盤の確立、その双方の達成に向けて、手腕を遺憾なく発揮していただきたいのです。 そこでお尋ねします。来年度当初予算は、人口減少の克服と本県の成長に向けた「三つの維新」の進化を柱に編成されていますが、この予算に込めた知事の思いと、来年度の取組を進めるに当たっての決意について、まず伺います。あわせて、県政運営の基盤である行財政の改革を、今後どう推進されるのか、御所見を伺います。 次に、少子化トレンドの反転に向けた施策の推進についてお尋ねします。 昨年、全国で生まれた子供の数は、前年比約五%減の七十五万八千人となる見通しで、十年前の約七割にまで落ち込みました。 また、本県においても、子育てしやすい環境づくりに積極的に取り組んでいるものの、令和四年度の合計特殊出生率は一・四七と、ライフスタイルや社会構造の変化を背景にした少子化トレンドには、歯止めをかけることができずにいます。 少子化対策は待ったなしの瀬戸際にあり、このため我が会派は、県がこれまで様々に実施してきた施策効果やボトルネックの整理を行い、対策の抜本強化を図る必要性を強く訴えてきました。 加えて、当初予算に向けた我が党の超重点要望の中でも、少子化対策を大きな柱として、保育の負担軽減や保育士の確保、不妊治療への支援など、子育て世代や妊娠を希望する方に寄り添った独自支援制度の構築を、知事に要望したところです。 当初予算案においては、こうした要望を踏まえた県独自の新たな支援制度を構築され、子供・子育て関連予算が大幅に増額されたところであり、施策効果が若者や子育て世代に行き渡り、出産・子育ての支えとして実効性を発揮することを、我が会派としても強く望むところです。 また、国においては、昨年末に閣議決定したこども未来戦略により、児童手当の抜本的拡充、高等教育費の負担軽減、七十五年ぶりとなる保育士配置基準の改善など、前例のない規模での施策強化が図られることとなっています。こうした取組により、国と地方の施策を両輪として、社会全体で子育て世代を支援するという、力強いメッセージを発していかなければなりません。 県が目標とする希望出生率一・七、さらには人口規模を維持する出生率二・〇七の実現は、極めて高いハードルであり、知事におかれては、来年度を反転攻勢をかける第一歩として、新たな支援策を着実に届け、本県で安心して子供を産み育てたいと思える県づくりに向けて、施策を総動員した取組を進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。少子化トレンドの反転に向けて、このたびの予算における支援強化策を軸に、今後どのように取り組まれるのか、御所見を伺います。 次に、地域経済の成長と賃金上昇の好循環の実現についてお尋ねします。 先日、内閣府が発表したGDP速報値では、日本はドイツに抜かれ世界四位に後退しました。失われた三十年とも言われる長期経済停滞の結果であり、今、何としてもデフレからの完全脱却を果たし、経済を成長軌道に乗せていくという強い決意と、官民が一体となった取組が求められます。 岸田内閣においては、経済の再生を最大の使命として掲げ、賃上げや設備投資、研究開発を強力に働きかけてこられました。また、価格転嫁の推進など、下請企業の取引改善に向けた積極的な取組も進められています。これにより、昨年は三十年ぶりとなる大幅な水準の賃上げや、過去最大の民間投資、先般、史上最高値を更新した株価の上昇、五十兆円のデフレギャップ解消が実現してきました。 昨年末には総合経済対策を打ち出されるとともに、新年度予算においても、賃上げと人に重点を置き、国内投資の喚起にも注力することで、持続的成長につなげていくとされており、経済・社会の歴史的転換点という変化の流れを確実につかみ取るべく、全力での取組が続けられています。 また、県内経済においても、生産活動は持ち直し、将来に向けた設備投資計画も前向きな動きが見られる状況にあるなど、回復基調が継続しています。 繰り返し申し上げてまいりましたが、本県においてもこの動向を大きなチャンスと捉え、民間の前向きな取組を力強く後押ししていかなければなりません。 このたびの当初予算には、物価高を乗り越えるための追加支援策や、本県の産業力強化に向けた様々な課題に対応するための施策が計上されています。国の動きとも的確に連携し、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力の強化や、経済再生の大きな課題である人手不足の解消などに、着実につなげていくことが必要であると考えます。 また、市場が拡大する半導体・蓄電池分野など、本県産業の強みを生かせる成長分野への投資や、産業脱炭素化への対応、戦略的な海外展開などは、企業のスピード感に的確に対応した取組が求められます。 県におかれては、経済状況の変化やニーズをしっかりと把握し、実効性のある施策を展開することで、産業の持続的な成長へとつなげていただきたいのです。 そこでお尋ねします。成長型経済に移行する兆しが見え始めている中、本県の地域経済における成長と賃金上昇の好循環の実現にどう取り組まれるのか、御所見を伺います。 次に、産業脱炭素化に対応した基盤整備の推進についてお尋ねします。 カーボンニュートラルの実現が世界的な潮流となっている中、本県産業界においては、競争力を維持・発展しつつ、生産活動に伴うCO2排出量を抑制するという難題に対し、様々な挑戦に踏み出されています。 国内初のアンモニアサプライチェーンの構築に向けた取組を進めている周南コンビナートでは、二〇三〇年までに年間百万トン超のアンモニア供給体制を確立するという目標を掲げ、パイプラインなどの供給インフラ整備について、調査・検討が進められています。 また、宇部・山陽小野田地域のコンビナートでは、県の補助制度を活用したアンモニア混焼の実証事業が、今年度からスタートしたところであり、加えて先般、西部石油においては、製油所跡地を活用し、カーボンフリーのエネルギー供給拠点化を目指す構想が発表されたところでもあります。 脱炭素化という、本県産業構造にとって極めて厳しい局面の中でも、環境の変化に対応し、新たな投資や事業転換に踏み出される活力こそが、本県が誇る産業力の底力であり、こうした取組をしっかりと支え、後押ししていくことが、産業競争力の強化には不可欠です。 こうした中、県においては、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や、水素・アンモニアなどの受入れ環境の整備を図るカーボンニュートラルポートの形成を推進されています。 現在、徳山下松港において、港湾脱炭素化推進計画の策定が進んでいるところであり、この計画により、コンビナートを核とする企業群の競争力がいかに強化されていくかは、本県が産業脱炭素化を進めていく上での試金石ともなるものです。 また、国においては、低炭素燃料である水素やアンモニアの国内供給網整備を支援する法案を準備し、今国会での成立を期しています。こうした国の動向を本県の産業力強化に生かしていくためにも、県と産業界とが緊密に連携し、カーボンニュートラルポート形成という新たな取組を、全県的に進めていかなくてはなりません。 そこでお尋ねします。産業脱炭素化の基盤となるカーボンニュートラルポートの形成について、今後どのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。 次に、観光交流の拡大についてお尋ねします。 年明け早々、アメリカのニューヨークタイムズ紙の中で、山口市が世界で行くべき五十二か所の三番目に取り上げられるという、うれしいニュースがありました。外国人記者の視点から、地方のコンパクトさと素朴さの中に息づく伝統文化に、観光資源としての価値を見いだされており、山口市だけでなく本県の観光全体としても、今後の大きな可能性に期待が高まっています。 国内外の観光需要は、昨年コロナ禍が明け、着実に回復してきました。とりわけインバウンド需要は力強く、訪日旅行客数はコロナ禍前の八割まで回復するとともに、国が観光立国推進基本計画で打ち立てた消費額五兆円の目標を早々に突破しました。都市部では外国人をターゲットにした高級ホテル建設ラッシュが進むなど、今後もインバウンド市場は、継続的な成長が予想されています。 一方で、この観光需要が三大都市圏などに偏在することで、こうした地域では、いわゆるオーバーツーリズムや人手不足という課題に悩まされており、国においては、さらに増加が見込まれる外国人旅行客について、今後は、東京や京都といった主要拠点から、地方へと分散させるための戦略的誘客の強化を打ち出しているところです。 全国津々浦々に、インフラや治安が都市部と遜色のない水準で整っている我が国は、どこでも訪れることができるという安心感があり、地方におけるインバウンド需要への期待は一層高まりますが、反面、ニーズを的確に捉え、訴求力のある取組を打ち出すことができなければ、明暗がはっきりと分かれる結果となりかねません。 本県のインバウンド消費額は、コロナ禍前の令和元年で五十六億円と、残念ながらこの需要を十分に生かし切れていない現状にありますが、観光客であふれかえる大型観光地から地方へという流れを本県にも引き寄せ、観光関連産業の稼ぐ力に、確実に結びつけていかなければなりません。 外国人観光客が多く訪れる国内主要拠点での積極的なプロモーションや、ニーズに応える情報発信、受入れ環境整備や景観美化の一層の充実。また、欧米系を中心に多数のインバウンド観光客が押し寄せている隣県の観光スポットへのアプローチなども欠かすことはできません。 県においては、今のこの流れを逃すことなく、あらゆる手だてを講じて、新たな需要獲得と、県内全体への周遊に、確実に結びつけていただきたいのです。 そこでお尋ねします。今後も成長が期待されるインバウンド市場から、需要を着実に取り込み、裾野の広い観光関連産業を活性化するため、観光交流の拡大にどのように取り組まれるのか、御所見を伺います。 次に、防災・減災、国土強靱化の推進についてお尋ねします。 多くの方が新年をふるさとで過ごそうという中を直撃した、このたびの能登半島地震に、改めて災害の無情さと自然の脅威を思い知らされます。最大震度七という規模に加え、津波や相次ぐ余震、町を襲った火災などにより、生活を支える社会インフラが麻痺し、断水がいまだに継続するなど、厳しい避難生活が二か月以上も続いています。また、半島に向かう主要幹線道路が寸断されたことは、自衛隊の初動対応や、その後の復旧支援にも大きな影響を与えています。 阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの大災害を経験し、その都度、地震大国としての対策を強化してきた我が国ですが、このたびの地震により改めて、ハード・ソフト両面から、多くの課題が浮き彫りになっているところです。 県においては、昨年の豪雨災害を踏まえ、河床掘削などの河川改修の加速を図るとともに、山口県国土強靱化地域計画に基づき、国の五か年加速化予算をフル活用し、道路ネットワークの機能強化、インフラの老朽化対策などに取り組んでおられます。また、被災時の逃げ遅れゼロを目指し、市町と連携した地域防災力強化など、災害に強い県づくりに取り組んでこられました。 こうした取組は、災害の未然防止や被害の軽減に、着実に効果を発揮していますが、冒頭申し上げたとおり、能登半島地震は、道路、水道などの老朽化や、建造物の耐震性など、築き上げてきた社会基盤の脆弱性を顕在化させたところであり、このたびの災害で明らかになった新たな課題を踏まえ、本県においても改めて、防災・減災、国土強靱化に向けた社会インフラ整備を強化し、スピードを上げて取組を進めていかなければなりません。 また、地域防災計画における被害想定は適切であるか、あるいは県内外への広域避難や子供だけの集団避難など、従来想定していない避難体制の必要性、ドローンなどのデジタル機器による孤立集落への支援といった新たな手法の活用なども、この災害が示している教訓であり、本県のさらなる防災力向上に生かしていかなければなりません。 そこでお尋ねします。能登半島地震を踏まえ、災害に強い安心・安全な県づくりに向けた、防災・減災、国土強靱化の推進に、今後どのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。 最後に、教育行政についてお尋ねします。 技術革新が加速度を増し、人口減少がいや応なく進む中にあって、将来を担う子供たち一人一人の力を高める教育の充実は、本県の未来に向けた投資であり、今を生きる我々の責務でもあります。 我が自由民主党におきましても、人づくりは国づくりとの考えの下、子供たちの学力向上や、地域教育力の強化、教育ICTをはじめとした教育環境整備の実現に力を尽くしてまいりました。 本県においては、これまでやまぐち学習支援プログラムを活用した学習や、全国に先駆けてコミュニティ・スクールを核としたやまぐち型地域連携教育を推進されるなど、幅広い教育活動の充実を図ってこられたところです。 また、コロナ禍を契機に整備した一人一台端末が、日常的な学習手段として使用されるようになり、個々の児童生徒の関心や理解度に対応した、より質の高い授業の実現にも取り組んでおられます。 県教委が進める地域連携と教育DXという二つの方向性により、本県の将来を担う子供たちが積極的に学び、郷土や社会をよくしていこうという力を身につけていくことを、我が会派としても期待しているところです。 一方で、その基礎力を養う義務教育の現場においては、急速に進展する生成AIへの対応も含めた教育ICTの一層の活用や、プログラミングなど時代の要請に応じた教育活動への対応、学校の働き方改革や部活動の地域移行など、対応すべき課題が山積しています。 また、全国的な教員不足の中にあっても、本県にきめ細かな教育の基盤である三十五人学級化については、次年度以降の確実な実施が求められます。 学校における学びの在り方そのものが、時代の変化への対応を迫られており、こうした中で、県教委においては、子供たちがこれからの時代に求められている資質や能力を確実に身につけ、可能性を最大限に引き出す教育を具体化していかなければなりません。 現在、国においては、義務教育の今後の在り方についての議論が進められているところであり、県教委におかれては、こうした動きも見定め、子供たちの生きる力の基礎を養う義務教育の方向性をしっかりと県民に示しながら、本県教育の充実を図っていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。主体的に学び未来を切り開く子供の育成に向け、その基礎力を涵養する義務教育の充実に今後どう取り組まれるのか、教育長の御所見を伺い、自由民主党会派を代表しての質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)畑原議員の代表質問にお答えします。 まず、令和六年度当初予算についてのお尋ねです。 人口減少は、本県の活力を損ない、経済活動や地域社会等に深刻な影響を及ぼす県政の最重要課題であることから、私は、これまでも自然減と社会減の両面への対策を講じてまいりました。 この結果、合計特殊出生率は全国でも高い水準で推移し、移住者数も五年間で倍増するなど一定の成果が現れています。 一方、出生数は令和三年以降八千人を下回り、その減少ペースも加速するなど少子化の流れは止まらず、また、コロナ禍を経て、女性を中心とする若者の県外流出が再び増加に転じ、さらなる出生数の減少を危惧する厳しい状況下に、私は、これまで以上に強い危機感を持っています。 このため、来年度予算では、何としてもこの人口減少に歯止めをかけるという強い思いの下、若者や子育て世代のニーズにしっかりと応えた、大胆かつ効果的な施策を構築しました。 具体的には、第二子以降の保育料無償化など、全国でも先進的な少子化対策をはじめ、若者の県内定着・還流の促進に向け、県内企業の前向きな取組を後押しする社会減対策など、これまでよりも、さらに踏み込んだ対策を実施していきます。 加えて、大規模地震などの自然災害から、県民の生命を守るための防災・減災対策や、物価高や賃上げへの対応など、現下の社会経済情勢への変化に対応した取組も着実に推進していきます。 私は、本予算を通じ、人口減少という難題に真正面から立ち向かい、これを必ず克服していくという強い決意を持って、取組を強力に進めてまいります。 こうした取組を推進しつつ、デジタル化や脱炭素化などの急速な社会変革に柔軟に対応し、多様化・複雑化する行政課題の克服に向けて積極果敢に挑戦していくためには、その取組を将来にわたって支えることができる行財政基盤を一層強化することが不可欠です。 これまでの改革の取組により、硬直化した財政構造の転換が着実に進み、改革前の危機的な財政状況からは脱することができたものの、長引く物価高騰等により、本県行財政の先行きは不透明な状況が続いています。 このため、今後は財政の健全性の維持・向上を図りながら、様々な行政課題に的確かつ機動的に対応できるよう、新たな行財政改革に取り組むこととし、行政DXの推進をはじめ、市町や民間等との連携による業務の効率化や生産性の向上など、具体的な取組等の検討を速やかに進めていきます。 私は、若者や女性をはじめ、県民誰もが幸せを実感できる、安心で希望と活力に満ちた山口県の実現に向け、三つの維新のさらなる進化とともに、その取組を支える行財政基盤の一層の強化を目指し、全力で取り組んでまいります。 次に、少子化トレンドの反転に向けた施策の推進についてのお尋ねにお答えします。 少子化の進行は、社会経済の根幹を揺るがしかねない喫緊かつ最大の課題であり、私は、将来にわたって持続可能で活力ある山口県を実現していくため、これまで以上に強い危機感を持って、少子化トレンドの反転に向け、果敢に挑戦していく必要があると考えています。 こうした中、国においては、昨年策定したこども未来戦略に基づき、今後三年間で少子化対策の取組を集中的に実施することとしています。 本県においても、国の戦略に呼応するとともに、当事者である若者や子育て世代の声を真摯に受け止め、県議会の少子化・人材育成確保対策特別委員会から頂いた提言も踏まえ、少子化対策を強力に進めていかなければなりません。 このため、来年度予算において、少子化対策の抜本強化を掲げ、国のこども・子育て支援加速化プランに基づく支援の強化に取り組むとともに、本県独自のこれまでにない思い切った施策に取り組んでいくこととしています。 具体的には、三歳未満児の保育料について、県が実施するものとしては全国トップ水準の制度として、所得制限を設けずに、第二子以降の保育料の無償化を実現することにより、子育てに係る経済的負担の軽減等を図り、二人以上の子供を育てやすい環境の整備を強力に進めてまいります。 また、三歳未満児クラスについて、国の基準を上回る保育士の配置に対する補助制度を新設することにより、さらに手厚い人員配置を促進し、より安心して子供を預けられる体制整備を図ってまいります。 これらの施策を進めていく上で重要となる保育の担い手の確保に向けては、潜在保育士の再就職支援などに引き続き取り組むとともに、県内保育士養成施設の学生を対象としたこれまでの修学資金貸付制度に、新たに県外養成施設の学生を対象に加え、人材確保の取組を強化してまいります。 さらに、子供を産み育てたいと希望する方への支援として、生殖補助医療に係る自己負担分と先進医療に係る経費を助成する、全国でもトップ水準となる支援制度を創設し、不妊治療における経済的負担の軽減に取り組みます。 こうした県の取組を効果的に展開していくため、市町や関係団体と連携し、施策の狙いや内容を若者や子育て世代に確実に届け、しっかりと活用していただくとともに、山口県には安心して結婚、妊娠・出産、子育てできる環境があることを、広く県内外に情報発信してまいります。 私は、少子化という困難な課題に真正面から立ち向かい、何としてもこれに歯止めをかけるという強い決意で、若者や子育て世代に寄り添った少子化対策を推進し、少子化トレンドの反転に向け、全力で取り組んでまいります。 次に、地域経済の成長と賃金上昇の好循環の実現についてのお尋ねにお答えします。 企業の人手不足が深刻化し、物価高騰が継続する中、国においてはデフレ完全脱却に向けた総合経済対策が進められており、日経平均株価の最高値更新をはじめ、大幅な賃金水準の上昇など、成長型経済へ移行する兆しが見え始めています。 本県においても、企業誘致における設備投資額が過去最高となるなどの成果が出てきており、こうした流れを確実なものとするためには、企業の前向きな取組を強力に後押しし、地域経済の成長と賃金上昇の好循環を実現していくことが重要です。 このため、私は、来年度予算において、本県経済を牽引する産業力の強化と人への投資に重点的に取り組むこととしています。 まず、デジタル技術を活用した生産性の向上を図るため、「Y─BASE」におけるDXコンサルや、デジタル化の段階に応じたシステム導入の補助等により、県内企業におけるDX推進の取組をきめ細かく支援します。 また、世界的な市場拡大が見込まれる半導体・蓄電池産業の県内への集積を促進するため、昨年設立した産学公による協議会を基盤として、最大一億円の補助制度の創設による研究開発・事業化の促進をはじめ、販路拡大、人材育成・確保などの取組を積極的に展開してまいります。 さらに、先月行われた本県産業支援機関と台湾関係団体との半導体分野の覚書締結を契機とした日台双方での商談会の開催や、成長著しいベトナムへの経済交流訪問団の派遣など、戦略的な海外展開を進め、海外の旺盛な需要を取り込みます。 また、喫緊の課題である脱炭素化に向けては、CO2排出削減や次世代燃料・素材の供給基地化に向けたコンビナート企業による先進的な連携事業をはじめ、県内企業の取組を引き続き強力に支援します。 こうした取組に加え、賃金上昇の好循環につなげていくためには、人への投資が不可欠であることから、女性デジタル人材をはじめとするリスキリング支援など、集中的に産業人材の育成に取り組みます。 さらに、新たに初任給や若年層の賃金引上げを実施する中小企業等に対し、最大百万円の奨励金を支給するとともに、奨学金返還支援制度を創設する企業への支援にも取り組むことにより、人材の確保にもつなげてまいります。 私は、国の経済対策にも呼応しながら、産業力の強化に向けた対策を積極的かつ機動的に講じ、地域経済の成長と賃金上昇の好循環の実現に向けて全力で取り組んでまいります。 次に、産業脱炭素化に対応した基盤整備の推進についてのお尋ねにお答えします。 本県の経済を牽引するコンビナート企業は、多くのCO2を排出する石炭火力を主要なエネルギー源としており、脱炭素化への対応と、国際競争力の維持・強化の両立という、極めて大きな課題に直面しています。 このため、私は、脱炭素化の取組を促進していくための総合的な戦略として、やまぐち産業脱炭素化戦略を策定し、県内の産業を支える港湾について、カーボンニュートラルポートの形成を進めることとしています。 とりわけ、全国有数のコンビナートを抱える徳山下松港については、国際バルク戦略港湾施策により、当面のベースエネルギーである石炭に加え、取扱量が急増しているバイオマスについても対応できるよう、整備を進めているところです。 また、アンモニア等次世代エネルギーの供給拠点化に向けて、港湾脱炭素化推進計画を策定することとし、燃料転換に伴い生じる課題等を踏まえ、背後企業や物流業者等と議論を重ねてきたところであり、年度内に計画を取りまとめ、公表することとしています。 この計画には、CO2の削減目標や、脱炭素化に資する事業、将来構想等を掲げ、関係者全体で計画内容の実現に向け取り組んでいくこととしています。 今後は、関連技術の進展等も踏まえ、短期的には低炭素型荷役機械の導入、中長期的には、次世代エネルギーの受入れ施設やCCUS関連用地の整備など、企業の国際競争力の強化に資する港湾機能の高度化を図っていく考えです。 また、お示しのとおり、宇部・山陽小野田地域の企業では脱炭素化への機運が高まっていることから、宇部港及び小野田港の計画策定に今年度着手するとともに、その他の主要港湾についても、順次、計画を策定することとしています。 私は、官民連携の下、国の施策の方向性を的確に捉え、脱炭素社会においても、本県産業が国際競争を勝ち抜けるよう、今後とも、カーボンニュートラルポートの形成に積極的に取り組んでまいります。 次に、観光交流の拡大についてのお尋ねにお答えします。 新たな人の流れと活力を創出する観光交流の拡大は、宿泊や飲食など裾野の広い観光関連産業の活性化につながる重要な取組であり、とりわけ、今後の大きな成長が期待されるインバウンド需要を着実に本県に取り込んでいくことが必要です。 このため、観光キャッチフレーズ「おいでませ ふくの国、山口」の下、本県の強みである豊かな自然や歴史、多彩な食などの観光資源を最大限に活用しながら、幸福感あふれる山口の旅を強力にアピールし、誘客拡大に向けた取組を進めているところです。 こうした中、ニューヨークタイムズの記事を契機に、本県への注目が一躍高まっており、私は、この絶好の機会を逃すことなく、戦略的なプロモーションや受入れ環境の整備を一層強化し、新たなインバウンド需要の獲得と、県内全体への周遊につなげていくこととしています。 まず、戦略的なプロモーションについては、欧米豪市場に影響力のある海外メディアを招いた視察ツアーを実施し、本県の魅力ある観光コンテンツを広く発信するとともに、北米市場に向けてターゲティング広告を展開するなど、さらなる認知度向上を図っていきます。 また、訪日旅行中に訪れる可能性の高い羽田空港や東京駅など首都圏等の主要交通拠点において、外国人向けのポスターの掲示やデジタルサイネージ等による効果的な情報発信を行っていきます。 次に、受入れ環境の整備については、外国人観光客が快適に周遊できるよう、新たに、県内外の交通拠点と主要観光地を結ぶ、多言語に対応した観光周遊バスを運行することにより、二次交通の充実を図り、県外からの誘客や県内周遊を促進します。 具体的には、山口市を起点とし角島大橋や秋吉台、萩城下町などを巡る二つの県内ルートに加え、隣県の観光スポットへのアプローチとして、多くの外国人観光客が訪れている宮島を起点に錦帯橋や柳井の白壁の町並みを巡る観光周遊バスの運行を行います。 さらに、JR西日本や市町と連携し、新幹線や電車等が乗り放題となる周遊パスと、体験やグルメなど魅力ある観光コンテンツを組み合わせた広域旅行商品を海外の旅行予約サイトに掲載し、観光消費の拡大につなげていきます。 私は、海外からの需要が高まっているこの絶好の機会を生かし、今後とも、市町や観光事業者等と緊密に連携しながら、戦略的なプロモーションや受入れ環境の整備を進め、本県観光関連産業の活性化に向けて、観光交流の拡大に全力で取り組んでまいります。 次に、防災・減災、国土強靱化の推進についてのお尋ねにお答えします。 全国的にも自然災害が頻発化・激甚化している中、私は、県民誰もが、安心して暮らし続けられる社会基盤を築くことが極めて重要と考えています。 このため、未来維新プランに、災害に強い県づくり推進プロジェクトを掲げ、ハード・ソフトの両面から防災・減災対策の強化に取り組んでいます。 こうした中、能登半島地震が発生したことから、私は、昨年の豪雨による被害の状況等も踏まえ、来年度予算において、さらなる災害対応力の強化を図ることとしたところです。 具体的には、まず、ハード対策として、地震発生時に救助・救援活動を支える緊急輸送道路の橋梁の耐震化やのり面対策を前倒しするとともに、交通・物流等の多重性・代替性を確保する山陰道等の整備を促進してまいります。 また、昨年の豪雨で被災した箇所の早期復旧はもとより、大規模な浸水被害が発生した厚狭川において、再度災害を防止するための河川改修を重点的に実施してまいります。 さらに、AIを活用した点検診断システムの対象を、小規模橋梁からトンネル等、他の施設にも拡大するなど、社会インフラの老朽化対策を一層充実させていく考えです。 次に、ソフト対策として、来月、有識者による地震・津波防災対策検討委員会を設置し、このたびの地震で指摘されている避難所運営等の様々な課題やお示しのような教訓などについて、詳細な検証を行います。 また、南海トラフ巨大地震を皮切りに、日本海や内陸の活断層による地震の被害想定について見直すこととしており、こうした検証や見直しを踏まえ、本県防災力の向上に必要な対策を講じてまいります。 加えて、県民の防災意識を高めるため、シンポジウムの開催など防災に関する普及啓発を一層推進するとともに、県域における災害福祉支援活動の調整役を担う災害福祉支援センターを設置し、災害発生時の福祉支援体制を強化します。 私は、県民の暮らしの安心・安全はあらゆることの基本であるとの認識の下、能登半島地震を踏まえ、災害に強い県づくりに向けて、市町や関係機関等と緊密に連携し、ハード・ソフト両面から、防災・減災、国土強靱化の推進にスピード感を持って全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 想定を上回る速度で社会が変化し、複雑で予測困難な時代を迎える中、これからの社会を展望する上で、教育の果たす役割は、ますます重要になってきています。 とりわけ、義務教育においては、子供たち一人一人の能力を伸ばしつつ、社会で自立的に生きる基礎を培うことや、国家及び社会の形成者として必要な基本的資質を養うことが求められています。 このような中、昨年十月に策定した山口県教育振興基本計画では、未来を拓くたくましい「やまぐちっ子」の育成を教育目標として掲げ、ICT環境とコミュニティ・スクールの連携・協働体制を積極的に活用しながら、高い志を持ち、多様な人々と協働し、主体的に未来を切り開いていくとともに、郷土に誇りと愛着を持ち、グローバルな視点で社会に参画することのできる子供たちを育成していくこととしています。 特に、来年度からは、全国に先駆けて、一人一台タブレット端末を導入した本県の特色を生かし、新たに授業や家庭学習における生成AIの有効活用を促すことにより、子供たちが自ら課題を解決する活動を支援し、主体的に学習に向かう態度を養うよう取組を進めます。 また、コミュニティ・スクールを核とし、地域協育ネットの仕組みを生かしながら、子供たちが様々な人々と本音で語り合ったり、大人と一緒に社会的活動を企画・運営したりする場を積極的に設け、学ぶことの意義や目的を実感させるとともに、地域の担い手としての自覚を高めます。 さらに、現在、臨時的に見送っている中学校二・三年生における三十五人学級化を、来年度は元に戻し、子供の実態に応じたきめ細かな指導に努めてまいります。 県教委といたしましては、誰一人取り残されることなく、子供たちが自分の強みを生かしながら、将来の夢や目標の実現に向けて学び続けることができるよう、義務教育のさらなる充実に全力で取り組んでまいります。