1 防災減災対策について 2 行政DXの取組推進について 3 切れ目のない伴走型子育て支援の更なる推進について 4 性の多様性を認め合う社会の実現について 5 中小企業支援について 6 定時制・通信制高校の充実について
議長(柳居俊学君)上岡康彦君。 〔上岡康彦君登壇〕(拍手) 上岡康彦君 皆様、おはようございます。公明党の上岡康彦でございます。公明党山口県議団を代表して質問をさせていただきます。 質問に入る前に一言申し上げます。 本年一月一日、能登半島を襲った大地震によって亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 山口県としても、今後ますます激甚化し、明日起こるとも限らない自然災害に備え、これまでの知見を生かしながら、防災・減災、国土強靱化を着実に進め、切れ目のない、一人に寄り添った、ハード・ソフト両面にわたる被災者支援を推し進めてまいりますことをお誓いし、通告に従い、質問に移らせていただきます。 まず、防災・減災対策についてお尋ねします。 本年元日の夕刻に発生した能登半島地震は、最大震度七、震度の規模を示すマグニチュードは七・六を記録しました。阪神・淡路大震災や熊本地震のマグニチュードは七・三ですから、それよりも大きな規模の地震であったということになります。 大規模火災が発生した輪島市では、有名な輪島朝市が開かれる一帯は焼け野原と一変しました。私も視察に伺ったことがあり、輪島塗の伝統工芸品をお土産に購入しようと立ち寄った店舗などが跡形もなく燃え尽きている映像を見ると、深い悲しみが込み上げてまいります。 被害が甚大だった輪島市では、専門家の調査により、能登半島の地盤が隆起し陸域が広がったために、およそ四・四平方キロメートルも面積が拡大し、輪島市の海岸線は最大で二百四十メートルほど海側に向かって広がっていることも判明しました。 さらに、防潮堤や海沿いの岩礁がおよそ四メートル隆起したことも明らかになりましたが、四メートルもの隆起はめったにないことで、数千年に一回の現象だと指摘されているとおり、その地震規模の大きさが想像できます。 石川県の発表によれば、二月二十二日現在で、能登半島を中心に七万五千棟を超える住宅被害が確認されており、二百四十名を超える死者が確認されております。 また、地震の発生直後には、県内約十一万戸で断水が確認され、現在も能登地方を中心におよそ二万戸を大きく上回る家屋で断水が続いているようであります。いまだ停電が続く地域もあり、地震から約二か月が過ぎた今でも、まだまだ不自由な生活を余儀なくされています。 山口県に目を向けますと、山口県地域防災計画の震災対策編には、本県に被害をもたらす最も切迫性の高い地震として、今後三十年以内に七〇から八〇%の確率で発生するとされている南海トラフ地震と、同じく四〇%程度の確率で発生するとされている安芸灘~伊予灘の地震を挙げています。 そのほかにも、今後いつどこで大地震が起こるか分からないことから、山口県地域防災計画では、県内で確認されている主な活断層のうち、大竹断層、菊川断層帯、大原湖断層と本県に大きな被害を及ぼす可能性のある中央構造線断層帯について被害想定を行っているとあります。 また、山口県地域防災計画の資料編を開いて、本県及び周辺における近年の地震記録を振り返ってみると、気象庁資料が整っている一九二六年一月以降、本県周辺の被害地震については、島根県東部や周防灘において繰り返し発生しているようであります。加えて九州地方では、特に伊予灘、豊後水道及び国東半島にかけて、深さ百二十キロ程度までの地震活動が活発であり、被害を伴う地震が発生する可能性を指摘しています。 さらに、山口県付近の主な地震は、九州に比べると少ない現況にはあるものの、一九九七年六月二十五日には、県中部を震央とするマグニチュード六・六の地震が発生し、また二〇〇一年三月二十四日には、安芸灘を震央とするマグニチュード六・七の地震が発生するなど、本県における地震被害が少ないことを保障するものではないと注意を促しております。 しかも、山口県とその周辺の主な地震という記録では、マグニチュード五以上の地震が過去六十八件報告されておりますが、二〇〇〇年以降だけでも周辺地域で九件の地震が記録されています。決して油断ならない数字だと思っています。 今回の能登半島地震の教訓の一つに、新旧の耐震基準問題がクローズアップされています。建物被害について、比較的古い木造の建物で甚大な被害が見られた一方、建築年代の新しい建物は被害が比較的軽い傾向が見られました。耐震化率を上げることで家屋の崩壊を免れ、亡くならずに済む命も増えるのではないでしょうか。 また最近は、被災者の多様なニーズに応えることも求められています。そのため、災害急性期に、機動性を持って医療活動を実施するDMATや、避難所での要配慮者に対する福祉的支援を行うDWAT(災害派遣福祉チーム)、こうしたチームの調整を担う保健所等を支援するDHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)との連携を図ることにより、要配慮者への対応や災害関連死を防ごうという体制づくりが注目されています。 そこでお尋ねいたします。令和六年度予算では、本県の災害対応力をさらに強化するため、能登半島地震の課題を踏まえたハード・ソフト両面にわたる対策の見直しや、県民の防災意識の高揚を図るための施策を掲げられております。具体的な課題の検証や被害想定の見直しを、いかに県民の安心・安全につなげようとされているのか、お伺いをいたします。 次に、行政DXの取組推進についてお尋ねします。 県は、昨年九月十五日から十月二十七日にかけて、行政DX・新たな価値を創出する働き方改革の取組として、職員からのアイデア募集を全職員対象に実施されましたが、結果として六百四十八件の応募があったとのことであります。 それを受け村岡知事は、本年一月二十四日、若手職員の代表八名とDX推進による業務の効率化について意見交換をされたところであります。 既に実現可能なものから着手、実現しているということですが、応募・提案された意見の何と約六割がDX推進に伴って改善可能なペーパーレス化やオンライン化、あるいはキャッシュレス化などの業務プロセス・事務の見直し、職場環境の改善などであり、非常に意欲的だなと感心しております。 また、BYODや庁内副業制度という新たな価値観も芽吹き始めており、ようやく山口県も本格的なデジタルガバメントへと一歩踏み出した感じがいたします。 私は、昨年九月議会で、生成AIの利活用とガイドラインの策定について質問いたしましたが、十一月にはガイドラインも策定され、徐々に生成AIの利活用による業務の効率化・高度化も進んでいると思います。 少子高齢化に伴い、今後はますます労働人口の減少や行政サービスを受ける高齢者が増加する中、限られた職員で業務を遂行せねばなりません。したがって、AIやRPAといった行政DXの推進は、その限られた労働力で効率よく行政サービスを提供するため、避けては通れない道であることは、改めて説明するまでもないと思います。 なおかつ、これまでのアナログ作業が単にデジタル機器を使用した作業に置き換わっただけということに終わらせないためにも、もっとDX人材を育成し、もっと人材を確保しなければなりません。 今の山口県庁は、ようやく点と点がつながったフェーズであり、これからがデジタル空間での広がりを構築していく新たなフェーズへ突入する時期だと思います。もうすぐ机の上に書類の山では時代遅れになってしまいます。書類は全てクラウド上の電子キャビネットに格納され、アクセス権限さえあれば、どこにいてもスマホ一台でアクセスできて仕事ができる、そんな県庁に生まれ変わるのも、決してそう遠い将来ではないと確信しています。 その際、個人的には、世界遺産を目指す岩国錦帯橋、萩の松下村塾、カルスト台地の秋吉台や秋芳洞などの観光名所をメタバースで村岡知事のアバターが案内してくれるというVRを見たいと思っております。 そこでお尋ねいたします。ペーパーレスや生成AIの利活用による業務の効率化は徐々に進んでおりますが、行政DXの推進を一層加速させるためにどのように取り組まれるのか、お伺いをいたします。 次に、切れ目のない伴走型子育て支援のさらなる推進についてお尋ねいたします。 公明党山口県議団は、令和六年度の政策要望として、LGBTへの理解及びパートナーシップ宣誓制度の導入や男性育児休業の取得率向上、そして国と連動した物価高騰対策の強化など、新規・重点項目とした二十三項目を含む合計百六項目を取りまとめ、今年一月十一日に村岡知事に要望させていただいたところであります。各般にわたる要望を新年度予算では随所に反映をしていただきましたこと、知事には改めて感謝を申し上げます。 とりわけ、重点項目として掲げておりました、切れ目のない伴走型子育て支援のさらなる推進については、一、働きながら子育てしやすい環境整備、二、子育てに係る経済的負担の軽減、三、保育の質と量の確保、四、心理的負担を軽減する相談体制の充実等、不妊治療支援の充実及び不育症への支援強化の四つの項目別に各施策を展開していただけるように要望させていただいておりました。 結果、新規の予算措置として、こどもまんなか保育体制強化事業五億七千百万円、保育の担い手全力サポート事業一億三千四百万円、未来につなぐやまぐち共育て応援事業一億八千六百万円、やまぐち子育て応援第二子以降保育料無償化事業四億五千万円、しあわせ運ぶ妊活応援事業二億三百万円などなど、知事の子育て支援に対する本気度がうかがえる令和六年度予算となっていると思います。公明党として全面的に応援をさせていただきます。 さらに、男性育児休業取得率の向上に向けては、やまぐち″とも×いく″応援企業、すなわち、ともに、もっと、いくじに、くわわっていく企業を応援する制度を新たに創設するとされ、十九の市町の首長と、やまぐち″とも×いく″共同アピールを発表されました。私は非常に斬新な取組だと評価しております。 県内で大きなうねりとなればいいなと期待もしておりますが、実は、一月末の山口県社会保険労務士会との政策懇談会の折、男性育児休業における課題についてお話を伺うことができました。 事業所規模が大きいほど男性の育休取得率が高く、中小企業では人員に余裕がないとか、属人的な業務が多いため代替要員が確保できないとして、男性の育休取得が進まない現状を話されておりました。 また、依然として育休は女性のものであるという意識は根強く、男性の育休取得に否定的な考え方を持っている事業主や従業員も多いとも伺いました。 そんな山口県の現実を証明する数字が、二〇二一年の総務省の調査結果であります。本県の現状として、六歳未満の子供を持つ夫の育児時間は一日たった四十一分で全国四十六位。地方公務員、首長部局での一か月を超える男性育児休業取得率は二・三%で、何と全国最下位であります。ここから全国トップレベルまで引き上げるのは相当な力仕事だと思います。 そこでお尋ねいたします。多くの若い世代が共働きを希望する今の社会にあって、女性は働きながら妻であり母でありと、一人で何役もこなさなければなりませんし、また男性が育児休業をまだまだ取得しにくい環境にあるのも間違いありません。 しかし、こうした環境を打破し、男性がもっと家事・育児に関わる時間が積極的に共有できる企業環境の改善や、男性の育休取得が当たり前の社会にならなければなりません。仕事と家事・育児の両立可能な育児先進県と言われるような山口県を実現するために、県としては、どのように切れ目なく伴走型子育て支援に取り組まれるのか、お伺いをいたします。 次に、性の多様性を認め合う社会の実現についてお伺いします。 本年一月二十三日、定例記者会見の折、村岡知事は、同性パートナーシップ制度について導入する方向で検討する旨を発表され、その後二月二十六日、LGBTなど性的マイノリティーのカップルを公的に認めるパートナーシップ宣誓制度について、九月施行を目指す方針を示されました。 昨年六月十六日、LGBT理解増進法が成立以降、性の多様性を尊重する法の趣旨を受け止め、各自治体ではパートナーシップ宣誓制度の導入が広がっています。私が伺った数字で言えば、全国には三百二十八自治体で五千百組を超えるカップルがいらっしゃるとのことです。 ちなみに、LGBTの割合に関する調査では、おおむね全人口に対して八%前後の割合で存在しているとされるケースが多いようですが、左利き人口の割合とほぼ同程度とよく言われています。つまり三十人から三十五人程度のクラスや職場であれば、二人から三人がLGBT、性的マイノリティーの当事者がいると思われます。 しかしながら、性的マイノリティーは、まだまだ偏見や不当な差別につらい思いを強いられています。 例えば、本人の了解を得ずに性的指向や性自認などの秘密を暴露される、いわゆるアウティングです。アウティングとはソジハラ、またはソギハラと呼ばれるハラスメントの一つであり、決して許されない行為であります。ソジハラ・ソギハラとは性的指向・性自認を理由にしたいじめ、無視、暴力、差別的な言動や嘲笑、不当な異動や解雇、入学拒否や転校強制などを指します。 また、制度的にも同性カップルが配偶者・家族として認めてもらえないとの理由で、病院でパートナーへの面会を断られたり、公営住宅への入居資格が得られないなど、生きづらさと闘いながら生活しています。 関係団体とのヒアリングの内容を要約すると、一、郷土山口で働ける、希望の持てる山口県を、二、福利厚生・行政サービスが公平に利用できる山口県を、三、環境改善は、企業だけでなく教育機関や子供向けの資料作りも大切だとの要望や御指摘を頂いたところであります。 本県においても昨年の六月議会で、性的少数者の理解増進に向けた取組についてとの我が党の石丸議員の代表質問において、村岡知事は、関係課で構成するワーキンググループを設置し、パートナーシップ宣誓制度を導入するかどうかを含め検討すると答弁されました。 あわせて、これまで実施してきた普及啓発の取組を充実させるとともに、LGBT等の方々への配慮などをまとめた事業所向けの対応ハンドブックの作成や、事業主として県職員に対する研修の充実や相談窓口の設置など環境整備についても答弁で触れられました。それを踏まえ、ワーキンググループでは様々な検討が重ねられたことと思います。 そこでお尋ねいたします。LGBT等の方々の生きづらさの軽減並びに安心して暮らせる環境の整備に向けては、パートナーシップ宣誓制度の導入をはじめ、自治体による性の多様性の理解増進に向けた施策の推進が必要だと考えますが、今後、県では、どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、中小企業支援についてお尋ねいたします。 去る二月二十二日、東京株式市場で日経平均株価が三十四年二か月ぶりに史上最高値を更新し、報道各社も大きく取り上げ、翌日の新聞も株価最高値という大きな見出しでにぎわいました。 一時三万九千百五十六円の高値をつけ、バブル期の記録を更新し、終値でも三万九千九十八円で最高値をつけました。日経平均株価は、本日三月四日午前中の取引から一時史上初の四万円を超えるなど最高値を更新しています。バブル崩壊後、日本経済は長くデフレから抜け出せず、経済不振に陥っておりましたので、地方に暮らす我々も失われた三十年を脱する起点にしたいとの思いは大きく膨らみます。 しかし、このたび日経平均株価を上昇させた要因としては、円安が自動車産業をはじめ輸出関連企業には業績を後押ししたことと、インバウンド増加で潤う企業の追い風になっていること、そして業績好調で今後もまだ成長が期待される半導体関連銘柄を中心に、国内のみならず海外の投資家からも買い注文が殺到したことが主な要因とされています。 要するに円安と半導体の二つが株価を押し上げているのであり、今の株価の数字と実体経済との乖離を指摘する声もあります。すぐさま株価の回復がそのまま実体経済の回復だと勘違いしてはならないと思っております。 山口県の経済状況を見ると、緩やかに回復しているとする日銀下関支店の二月県内金融経済情勢の発表もありますが、私の実感としては少し違います。企業から伺う話としては、燃料や原材料の物価高の影響をなかなか価格転嫁できずに困っている、あるいは何とか仕入れや原材料費等の高騰分を価格転嫁できても、従業員の賃上げまでは手が届かないといった悲痛な叫びを伺っています。 長引く新型コロナの影響や物価高騰、深刻な人手不足など、中小企業を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にあり、まさにDX推進による生産性向上や企業収益の改善を進めながら、物価上昇を上回る賃上げを実現するために着実な中小企業対策が求められております。 新年度予算編成においては、中小企業向けのDX・デジタル化推進事業のほか、経営力再構築伴走支援プラットフォーム形成事業として、支援機関や金融機関が一体となって、経営の実情に応じた支援を展開する事業など、新規事業を含め事業メニューや予算を拡大するなどして、本県経済の支え手である中小企業への支援策がたくさん盛り込まれております。 そこでお尋ねいたします。中小企業や小規模事業者にとっては、厳しい経営環境を乗り越え、DXといった体質改善を図りながら新たな挑戦に取り組み、価格転嫁に加えて、生産性向上や賃上げを促進していくことが重要でありますが、県としてはこうした中小企業に対して、どのような支援を展開されるのかお伺いをいたします。 次に、定時制・通信制高校の充実についてお伺いいたします。 高等学校における定時制課程・通信制課程は、戦後、就業等のために全日制高校に進学できない勤労青少年に対して高校教育を受ける機会を広く提供するものとして制度化され、高校教育の普及と教育の機会均等の理念を実現する上で、大きな役割を果たしてきました。 しかしながら、社会経済の変化に伴い、近年では、働きながら学ぶ勤労青少年の数は大幅に減少しています。 国の調査によると、昭和五十七年には定時制高校に通う生徒のうち六八・四%が正社員として就労していましたが、平成二十八年度には、契約社員や派遣社員、自営業で働く者を加えても、僅か三%にまで減少しています。 定時制・通信制高校で学ぶ生徒については、就労する生徒が減少する一方、スポーツや音楽、芸能活動などの得意分野の時間を確保しつつ学業を行う者や、枠にとらわれず自らのスタイルに合ったやり方で大学等の進学を目指す者、そして人間関係の悩み等の理由で中学校までの不登校経験者など自立に困難を抱える者など、様々な入学動機や学習歴を持つ者が多くなっており、制度発足当初とは大きく異なった状況にあります。 こうした中、県教委においては、多様な学びのニーズに応える柔軟な教育システムを持つ新たな学校として、令和四年四月に午前・午後・夜間の三部制の定時制課程プラス通信制課程を併せ持つ山口松風館高校を開校しました。様々な背景や目的を持った生徒たちが入学し、それぞれの目標に向かって喜々として勉学等に取り組んでいると承知しています。 保護者からの問合せも多く、山口松風館高校のようなカリキュラムの学校が増えてほしいとか、多部制とはいえ通学にはいささか時間がかかるため、県東部や西部にも拡充してほしいとの声も伺っております。また、最近では入学希望者が増えたため、志願倍率も上がってしまい、定員増を望む声もよく耳にいたします。 生徒の多様化が進む中にあって、様々な学習スタイルを可能とする定時制課程や通信制課程は、従来からの勤労青少年のための教育機関としての役割を超え、多様な学びのニーズへの重要な受皿としての役割を一層増してきていると感じております。 そこでお尋ねいたします。社会経済状況の変化に伴い、多様なニーズへの受皿としての役割がますます重要となっている現在、定時制・通信制高校の一層の充実を図っていかねばならないと考えますが、今後どのような方針で取り組まれるのか、県教委の御所見をお伺いいたしまして、代表質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)上岡議員の代表質問にお答えします。 まず、防災・減災対策についてです。 元日に発生した能登半島地震では、交通網の寸断、水道・電気などライフラインの甚大な損傷、高齢化の進んだ地域社会への直撃など、厳しい状況が重なり、今なお、多くの被災者の方々が不自由な避難生活を送っておられます。 本県及び周辺地域においても、お示しの南海トラフや活断層を震源とする地震が懸念されており、私は、このような大規模災害はいつどこでも起こり得るものであり、事前の備えをしっかりと進めていくことが重要であると改めて強く認識したところです。 このため、来年度予算において、能登半島地震の発生を踏まえ、県民の生命を守り、被害を最小限に抑えるために必要な予算を確保し、さらなる防災・減災対策の強化を図ることとしています。 まず、ハード対策として、地震発生時に救助・救援活動を支える緊急輸送道路の防災対策を前倒しして実施するほか、緊急時の交通・物流等の多重性・代替性の確保に資する山陰道等の整備を促進してまいります。 また、建物の耐震化については、国や市町と連携し、木造住宅の無料耐震診断や耐震改修などに対する補助を行うとともに、様々な広報媒体を活用して、こうした取組に関する普及啓発を強化し、耐震化率の向上に取り組んでいくこととしています。 次に、ソフト対策として、新たに防災対策に係る啓発動画の作成や地震、津波等の災害を疑似体験できるVR機器の整備を行い、これらを積極的に活用することで県民の防災意識の高揚を図ります。 また、被災者、とりわけ高齢者や障害者等の要配慮者の多様なニーズに応えることができるよう、DWATが行う福祉支援活動等の調整を担う災害福祉支援センターを設置します。 加えて、来月、有識者による地震・津波防災対策検討委員会を設置し、今後見込まれる国や被災県などによる検証結果等を分析するとともに、南海トラフ巨大地震をはじめ、日本海や内陸の活断層による地震の被害想定についても計画的に見直すこととしています。 本委員会の検討結果を踏まえ、本県の防災・減災対策の見直しや一層の充実を図り、防災会議等を通じて市町や関係機関等と認識を共有化するなど、相互の連携を強化し、見直し後の対策を可能なものから速やかに実行していきます。 あわせて、県民の皆様に、見直し後の防災・減災対策を正しく理解していただけるよう、その内容を周知する防災シンポジウムを開催するほか、見直しを反映した住民避難訓練を実施するなど、県民の安心・安全につなげていきます。 私は、市町との緊密な連携の下、能登半島地震の課題等をしっかりと踏まえながら、本県の災害対応力の強化に必要な防災・減災対策をハード・ソフト両面から進め、引き続き、県民の安心・安全の確保に全力で取り組んでまいります。 次に、行政DXの取組推進についてのお尋ねにお答えします。 人口減少、とりわけ生産年齢人口の減少が進む中、限られた人員により、県民の多様化するニーズに応え、複雑化する行政課題に的確に対応していくためには、デジタルを最大限活用していかなければなりません。 私は、こうした考えの下、デジタルで業務の効率化・高度化を図るとともに、業務の進め方や働き方をデジタルを前提に徹底的に見直すこととし、これを行政DX・新たな価値を創出する働き方改革として、積極的に推進しています。 この改革の成果を上げるためには、まず何よりも、職員の意識改革と主体的な取組が重要となることから、その契機となるよう、職員に業務改革に係る提案を募集し、さらに、将来の県政を担うデジタル世代の若手職員から、私が直接提案を聴く意見交換会も開催したところです。 これに応え、職員からは、ペーパーレス化やデジタルツールを活用した情報共有等、六百件を超える多岐にわたる提案が寄せられ、若手職員からは、庁内副業制度の導入といった意欲的な提案や、在宅勤務の環境整備等のワーク・ライフ・バランス向上に資する提案などを受けました。 既に、提案に基づき、ペーパーレスによる協議等を開始しており、今後も、若手職員からの提案をはじめ、改革につながる提案については、速やかに実現できるよう検討を行っていきます。 また、行政DXの推進に当たっては、最新のデジタル技術を積極的かつ効果的に取り入れていくことも重要です。 このため、生成AIについて「Y─BASE」のクラウドシステムを活用した県独自の安全性の高い環境の下で本格導入するとともに、定型業務を自動化するRPAの利用拡大や、職員が業務アプリの開発を行えるクラウドサービスの実証などの取組を進め、これを業務の高度化や県民サービスの向上へとつなげていきます。 お示しのあったVRについては、アバター技術による遠隔操作に様々な可能性があると考えており、行政分野での導入に係る情報収集等を行っていきます。 さらに、DX推進の基盤となる人材育成に向けては、デジタルの最先端企業で、働き方改革のトップランナーでもある、日本マイクロソフト社と締結した連携協定を生かし、デジタルツールの活用リーダーの養成などを進めていきます。 加えて、こうしたデジタルを活用した変革は、多くの分野の共通課題となっている人手不足への有効な対応策となることから、県が率先して取組を進め、これをやまぐちワークスタイルシフトとして、県内市町や企業等へ波及させていきたいと考えています。 私は、人口減少社会にあっても、質の高いサービスを持続的に提供し、新たな価値を創造できるよう、デジタルにより県の業務や職員の働き方を大胆に変革する行政DXの取組を、今後も積極的に推進してまいります。 次に、切れ目のない伴走型子育て支援のさらなる推進についてのお尋ねにお答えします。 少子化の進行は、社会経済の根幹を揺るがしかねない喫緊かつ最大の課題であり、この流れを変えるためには、国の動きに呼応するとともに、本県独自のこれまでにない思い切った施策にスピード感を持って取り組んでいくことが極めて重要です。 このため、私は、来年度予算において、少子化対策の抜本強化を掲げ、安心して子供を産み育てることができる社会環境づくりや仕事と家事・育児の両立を可能とする共育て社会の実現に向けた取組を進めていくこととしています。 まず、安心して子供を産み育てることができる社会環境づくりについては、当事者である若者や子育て世代の声をしっかりと受け止め、経済的な負担の軽減や子育て環境の整備に取り組んでまいります。 具体的には、三歳未満児の保育料について、所得制限を設けずに、第二子以降の保育料の無償化を実現し、子育てをする女性が働きやすく、家事・育児との両立にも資する環境づくりを進めてまいります。 また、三歳未満児クラスについて、国の基準を上回る保育士の配置に対する補助制度を新設するとともに、県外の保育士養成施設の学生を対象とした修学資金の貸付制度を創設し、保育の担い手確保に取り組みます。 さらに、不妊治療については、生殖補助医療に係る自己負担分と先進医療に係る経費を助成する、全国でもトップ水準となる支援制度を創設します。 次に、仕事と家事・育児の両立可能な共育て社会の実現に向けては、夫の育児時間が全国四十六位にある状況等も踏まえ、男性の積極的な家事・育児への参画を促進する必要があります。 私は、夫婦の共働き・共育てを定着させるための第一歩が男性育休の取得促進であると考えています。 このため、まずは県庁が率先して男性職員の長期育休取得率を全国トップレベルに引き上げることとし、令和七年度までに二週間以上の取得率一〇〇%等を目標に掲げ、職場の支援と意識の醸成の二つを柱に、職場における取組を強化したところです。 こうした取組を県内市町や民間企業に広げていくため、先月開催したシンポジウムにおいて、県と市町が一丸となって取り組むことを共同でアピールするとともに、育休取得を推奨する企業の登録制度を新たにスタートさせました。 今後、経営者等の意識改革を図るため、企業等への働きかけを強力に展開するとともに、男性育休の取得実績に応じ、最大約百八十万円を支給する奨励金制度等により、共育てしやすい職場環境づくりを推進する企業を、しっかりと支援してまいります。 私は、今後とも市町や企業等と連携し、安心して子供を産み育てることができる環境づくりや、男性育休が当たり前となり、男女が共に家事・育児を担う共育て社会の実現に向けて、切れ目のない伴走型子育て支援のさらなる推進に、全力で取り組んでまいります。 次に、性の多様性を認め合う社会の実現についてのお尋ねにお答えします。 私は、LGBT等の性的マイノリティーの方々に対する偏見や差別はあってはならず、多様性が認められ、それぞれの生き方が尊重される必要があるとの認識の下、性の多様性の理解増進に向けた普及啓発に取り組んでいるところです。 こうした中、県では、LGBT理解増進法の施行を受けて設置した庁内ワーキンググループにおいて、県民の理解増進に向けた施策の検討を行うとともに、当事者の方々からは、日常生活の様々な場面で生きづらさを感じておられることなどをお聴きしました。 私は、こうした生きづらさを軽減し、誰もが安心して暮らせる環境づくりを進めることが重要と考え、当事者の方々の思いにしっかりと応えるため、本県に、パートナーシップ宣誓制度を導入することとしました。 導入に向けては、当事者が使いやすく、県民に分かりやすい制度となるよう、先週、学識経験者や当事者団体、関係団体、市町で構成する調整会議を開催し、対象者の要件や手続の方法などについて、御意見をお聴きしたところです。 今後、頂いた意見や本議会での議論を踏まえ、四月までに実施要綱を制定し、九月を目途に施行したいと考えています。 施行に当たっては、同性のカップルが事実婚のカップルと同等のサービスを受けることが可能となるよう、公営住宅の入居資格をはじめとする行政サービスや、病院等での家族としての面会、さらには生命保険の受け取りなどの民間サービスについて、協力事業者の募集を行ってまいります。 また、啓発セミナーのオンデマンド配信や、市民講座への講師派遣など、市町と連携した丁寧な周知広報を行い、県民の制度への理解を促進してまいります。 さらに、既に導入済みの他の自治体と連携することにより、サービスが相互に使えるよう調整したいと考えています。 こうしたパートナーシップ宣誓制度の取組に加え、当事者の方々の不安や悩みにしっかり対応できるよう、専門家による定期的な法律相談や、悩みを共有できるカフェ型相談会、県・市町の相談員への研修など、相談体制を充実させることとしています。 また、職場でのアウティングなどハラスメントの防止に向けて、LGBT等の方々への配慮などをまとめた事業所向けハンドブックを作成し、広く普及することとしています。 私は、今後とも、市町や関係団体等と緊密に連携しながら、性の多様性を認め合う社会の実現に向けて、積極的に取り組んでまいります。 次に、中小企業支援についてのお尋ねにお答えします。 人の流れや交流が活発化し、県内の社会経済活動も改善しつつある一方で、物価高騰や人手不足など中小企業を取り巻く経営環境は厳しい状況にあります。 私は、本県産業力の源泉である中小企業が、社会経済情勢の変化にも対応しながら、持続的に成長していくためには、生産性の向上等による経営基盤の強化に向けて、企業の経営課題に応じた的確な支援が極めて重要と考えています。 まず、生産性の向上に向けては、デジタル技術の活用による業務改善や既存ビジネスの変革等を図るDXの推進が不可欠です。 このため、本県のDX推進拠点である「Y─BASE」において、データ分析やアプリ開発を行える「Y─Cloud」を活用したDXコンサル等を実施し、デジタル技術の導入に係る具体的な課題の解決を図っています。 また、デジタル実装を後押しするため、デジタルツールの導入から先駆的な情報処理システムを活用した取組に至るまで、デジタル化の段階に応じた設備導入補助やリスキリング支援等を行っており、引き続き、基盤整備と人材育成の両面から、中小企業のDXの取組を支援してまいります。 さらに、物流二〇二四年問題への対応が急務であり、価格転嫁が十分に進んでいない運送事業者に対して、デジタル技術を活用した業務効率化に資する設備等の導入補助制度を創設し、物流DXの取組を促進します。 こうした生産性向上の取組により、深刻化する人手不足の解消につなげていくとともに、安定的な人材の確保・定着に向けて、賃金の引上げを促進していく必要があります。 このため、若者の県内定着や還流が促進されるよう、新たに初任給や若年層の賃金引上げを実施する県内中小企業等に対し、最大百万円の奨励金を支給することとしています。 また、中小企業によるDXや賃上げ等の取組が積極的に進められるよう、県制度融資において、経営者保証の解除を経営者自らが選択可能とするとともに、その際に生じる保証料の上乗せ分を軽減する特別資金を創設し、中小企業の思い切った事業展開を後押しします。 こうした支援策に加え、複雑化・専門化する経営課題に対して、支援機関や金融機関が一丸となって支援を行うためのプラットフォームを新たに形成し、経営と金融の一体型支援により、中小企業の経営基盤の強化を図ってまいります。 私は、関係支援機関と緊密に連携し、本県経済の重要な担い手である中小企業が、社会変革をチャンスと捉え、新たな取組に積極果敢に挑戦することができるよう、中小企業支援に全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)定時制・通信制高校の充実についてのお尋ねにお答えします。 社会が急激に変化し、生徒の興味・関心や学ぶ意欲・目的意識等も多様化する中、高校の定時制・通信制課程においては、従来からの働きながら学びたい生徒に加え、不登校や中途退学を経験した生徒、自分のペースで学びたい生徒など、様々な入学動機や学習歴を持つ生徒が増えており、その役割は一層重要になっていると考えています。 このため、県教委では、昼間部と夜間部を持つ二部制定時制課程として、県東部の岩国商業高校東分校に加え、平成三十一年四月には、県西部に下関双葉高校を開校することで、生徒の多様な学びのニーズに対応してきました。 こうした中、定時制・通信制教育のさらなる充実を図るため、令和四年四月に、三部制定時制課程と通信制課程を併せ持つ、山口松風館高校を県央部に開校し、柔軟な教育システムを備える多部制定時制高校を、県内にバランスよく配置したところです。 山口松風館高校では、定時制課程において、学習する時間帯を午前部、午後部、夜間部のいずれかから選択できるようにするとともに、他の部の授業を追加履修することにより、三年間での卒業を可能とするなど、これまで以上に、生徒の生活スタイル等に対応できる教育を展開しているところです。 また、社会情勢が変化しても、自立して社会を生き抜くことができる人材を育成するため、立地環境も生かして、近隣の大学や専門学校、山口市の産業交流拠点施設にある、山口しごとセンター等と連携しながら、生徒の社会的・職業的な自立に向けたキャリア教育を推進しています。 さらに、通信制課程においては、生徒が自分の興味・関心や大学進学等の進路希望に応じて、学習する科目を選択できるようにするとともに、登校して教員から直接指導を受けるスクーリングを県内五会場で行うなど、きめ細かな学習指導や、生徒の状況を踏まえた教育相談にも取り組んでいます。 こうした定時制・通信制教育に対しては、お示しのように、期待がますます高まっていることから、引き続き、定時制課程と通信制課程との連携や、系統的なキャリア教育、ICTを活用した学習支援などを一層充実することで、生徒一人一人の実情に応じた教育を推進してまいります。 また、生徒の多様な生活スタイルや学習ニーズに応える教育のさらなる充実を図ることができるよう、これまでの成果や課題を踏まえながら、多部制定時制高校の在り方等について検討を進めます。 県教委といたしましては、今後とも、社会の変化に対応しながら定時制・通信制教育の充実を図ることにより、チャレンジする若者が、それぞれの目標を実現できるようしっかり支援してまいります。 ───◆─・──◆──── 議長(柳居俊学君)この際、暫時休憩をいたします。再開は、午後一時の予定でございます。 午前十一時四十八分休憩