1 山口県ふるさと産業振興条例について 2 デジタル地域通貨について 3 国富を流出させない脱炭素政策について 4 解体工事の入札制度について 5 その他
───◆─・──◆──── 午後一時開議 副議長(島田教明君)休憩前に引き続き会議を開きます。 ───◆─・──◆──── 日程第一 一般質問 日程第二 議案第一号から第八号まで 副議長(島田教明君)日程第一、一般質問を行い、日程第二、議案第一号から第八号までを議題とし、質疑の議事を継続いたします。 藤生宰君。 〔藤生宰君登壇〕(拍手) 藤生宰君 こんにちは。自由民主党会派の藤生です。通告に従いまして、一般質問を始めますが、本日は全て経済循環の観点で質問いたします。 私は、地域経済循環、言い換えれば地産地消を進めていくことが、昨今の円安、物価高等に対する最も着実な対策と考えておりますことから、質問を始めさせていただきます。 まず、背景です。今、日本は、歴史的な円安水準が続いており、国民生活を苦しくする物価高の要因にもなっています。 この円安は、日米の金利差だけでは説明がつかない状況で、平たく言えば、日本の国力が相対的に弱くなっているから。原因としては、日本が外国の物やサービスに依存を進め過ぎた結果、日本の富、国富が海外に流出しやすい経済構造になっているからと考えます。 例えば、大手製造業は、安価な労働力や材料を求めて海外移転、海外調達を進めてきました。その結果、今、円安下で輸出産業は稼ぎ時ではありますが、下請企業はかつてほど受注機会に恵まれず、円安の恩恵を受けにくくなっています。 大手製造業は、海外で得た利益の半分は外貨のまま海外で再投資しており、円に替えて国内に利益を還流する傾向は弱くなっています。 また、グーグル、アマゾンなどの海外の巨大IT企業が提供するサービスへの依存が強まり、デジタル関連の国際収支、いわゆるデジタル赤字は年々膨らみ、二○二三年で五・五兆円となりました。 DXは、あちこちでもてはやされていますが、これを進めるほどデジタル赤字は拡大するという皮肉な状況です。 円安で、海外からの旅行客は増え、旅行収支は最大規模の黒字になっていますが、デジタル赤字がそれを打ち消しています。 製造業の海外進出やデジタルの海外依存が進み、大手から中小企業への利潤の浸透、いわゆるトリクルダウンが起こりにくくなっており、国内全従業者の約七割が働いている中小企業は、大手のような賃上げについていけない状況です。日本という国単位で産業が空洞化し、国富が流出しやすくなった経済構造となり、円安をはね返す力も衰えています。 なぜ、県議会の場でこうした話をしたかというと、空洞化は地方から起こっているからです。すなわち、地方は都市部の物・サービスを利用し、都市部の大企業は海外に依存する。私は、これを富の流出の階層と捉えており、人口移動もこれに追従するものと考えます。 経済循環には、漏れバケツ理論というのがあります。地域の中、あるいは外から稼いだお金を、地域というバケツから漏れないように効率よく地域の隅々まで行き渡る産業構造にすると、地域住民の所得や地域の持続性を高めていくというもので、安いからとバケツの外にお金を出すことを常態化させると、地域は徐々に弱っていきます。 ふるさと納税を例に出します。本県含め多くの自治体でECサイトを利用していますが、寄附額の平均一○%が手数料として都市部のECプラットフォーマーに流れており、手数料ビジネスともやゆされています。 私は、そうした問題意識もあり、昨年九月議会では、県・県内市町共通の独自ECサイトを御提案したところです。 そして、ここに来てアマゾンが三・八%の格安手数料で、ふるさと納税プラットフォームに参入すると報道されており、手数料安さに多くの自治体がアマゾンを利用することを懸念しております。結果できるのは、地方から都市、そして、最終的には海外への富の流出構造です。 昨年は、山口県内への進出を決めた企業による設備投資額が一千二百億円を超え、過去最高となりました。大変喜ばしく、これまでの企業誘致の御尽力のたまものと思います。 各自治体の予算規模も過去最大と、あちらこちらで聞きます。しかし、幾らメディアに出る金額規模が大きくなっても、そのお金が地域の中を巡らなければ、恩恵があるのはトップ企業ばかりで、中小企業の成長や県民所得の向上にもつながりにくいため、空洞化対策、地産地消を進めていくことが重要なわけです。 そして、私がこのようなことを言うまでもなく、いち早く本県産業の空洞化を見据えて制定されたのが、山口県ふるさと産業振興条例でありまして、この条例に込められた思いが達成されているのだろうかという観点で最初の質問に入ります。 山口県ふるさと産業振興条例は、本県二例目の議員提案条例であり、平成二十年に公布されました。 条例には、前文が設けられており、経済のグローバル化、国民の価値観の多様化、少子高齢化の進行等によって地域間の競争が激化することで、地域の活力への影響が懸念されていると問題意識を提起した上で、第一条の「目的」に、「地産地消の推進」をうたわれています。 本条例で定義する地産地消とは、他県の条例で一般的である農林畜水産物に限定せず、工業製品、伝統工芸品など、製造・加工物品、さらにはサービスも含む、あらゆる分野における県産品を対象としております。 今、実際に起こっている事態を踏まえれば、当時の諸先輩議員をはじめとした関係各位の先見性と行動力に心から敬意を表するところです。 さて、この条例の公布から十五年が経過しました。県のこれまでの総合計画にも地産地消に関わる目標、例えば、ぶちうま産直市場の販売額や地産地消推進拠点の新規設置数といったミクロな指標を設けて、おおむね計画どおりに達成していると自己評価されているところですが、地産地消は真の意味で進んだと言えるのでしょうか。 参考資料に、県内で発生する需要がどれだけ県外に依存しているか、その依存度の推移を示しております。 データ元となる産業連関表は、公開まで非常に時間のかかる統計であるため、現時点では村岡県政始まってすぐの平成二十七年までしかお示しできておりませんが、県外依存度は平成二年を底に高まっています。 産業別では、本県全体の需要の半分を占める製造業はもちろん、農業においても県外依存は進んでいます。 都道府県別に見ると、平成二十七年は全国で四番目、五割弱の県外依存度となっており、かつ依存度の進み方も大きく、マクロに見れば地産地消は進まなかったと評価できます。 そしてもし、平成二十七年以前の政策を踏襲していれば、現在も改善していないことが懸念されるわけです。 私が申し上げたいのは、広域行政体である県の役割は、各種施策を事業の内側だけでなく、県内全域に波及させることであるので、総合計画で目標にされているような、地産地消推進拠点の新規設置数といったミクロな目標だけでなく、マクロな目標も定め、それらがどう連動しているか検証し、連動していなければ政策を組み直す俯瞰的視点を備えた政策評価・立案サイクルづくりに力を入れていただきたいということです。 私は、昨年度の決算特別委員会においても、本県総合計画の政策評価について、おおむね計画どおりとする県の自己評価と県政世論調査における県民による評価が乖離していることを指摘いたしました。これはマクロに効果が出ていないことの表れだと思います。 そこでお尋ねします。先人がつくり上げた山口県ふるさと産業振興条例、これを単なる理念にとどめず、成果に残していくことが我々の責務であり、山口県のみならず円安、物価高に苦しむ日本を立て直す重要な政策と考えますが、県は条例の目的である「地産地消の推進」について、何をマクロの目標指標として捉えていかれるのか、政策のPDCAの在り方を踏まえながらお答えいただきたいと思います。 次に、地域経済循環の具体的手段としてのデジタル地域通貨についてお尋ねします。 地域商品券のような地域通貨は、地域内で目的どおりに消費していただくための手段であり、デジタル地域通貨としての導入が各地で進んでいます。 昨年九月議会の牛見議員の一般質問では、デジタル地域通貨の概要、事例を踏まえて、県のスタンスを問われ、答弁では、都道府県単位での導入事例はないことや、県内市町では本格流通に至っていない、優良事例などの情報収集に努めるとの御認識を示されました。 そのことを受けて、まず私からも情報提供させていただきます。 実際にヒアリングに行きましたが、愛媛県西条市では「LOVE SAIJOポイント」というデジタル通貨を運用されています。 ユーザー数は、開始二年で市人口約十一万人の三から四割に達し、本格流通しています。どのように広く浸透させたのかというと、経済的インセンティブです。 コロナ禍以降、全国の自治体でプレミアムつき食事券が発行されました。西条市は、先を読みプレミアムつき食事券を「LOVE SAIJOポイント」として販売することで、爆発的にユーザー数を増やしました。 ユーザー数がこれだけ増えれば、必然的に利用可能店舗も増え、今後、需要喚起策を実行する場合には、効果的・効率的に地域内に波及させることができるでしょう。 また、私が最近注目しているのが、ふるさと納税返礼品としてのデジタル地域通貨です。 地域外の方が、寄附と引換えに取得する地域通貨なので、近隣の自治体や旅行客の誘客、消費拡大が見込まれます。 ふるさと納税による税流出が深刻な東京都ですが、渋谷区では「ハチペイ」というデジタル地域通貨を返礼品として設けました。 こうした仕組みができると、お得にお買物するため、都内の方は居住区の近隣の区の地域通貨をふるさと納税返礼品として取得するということが当たり前になり、ある意味で大都市圏の中で寄附、消費する循環構造が出来上がるので、都市部はふるさと納税による税流出を急速に取り返していくのだろうなと推察しております。 地方も負けてはいません。デジタル地域通貨のはしりである高山市・飛騨市の「さるぼぼコイン」は、ふるさと納税返礼品にラインナップされました。 旅先で電子あるいは紙媒体でクーポンを受け取る現地決済型のふるさと納税返礼品も今や多くの自治体が参入しており、誘客や現地での消費拡大に取り組まれています。 デジタル地域通貨とふるさと納税は、セットで地方にとっての重要なマーケティングツールになっていきます。 私が、戦略的に重要と考えるのは、デジタル地域通貨を利用できるお店をいかに早く、多く、そして、多様に開拓できているかということです。品ぞろえが、デジタル地域通貨間の競争力の源泉になります。もちろん地産地消に積極的なお店という視点を欠いてはなりません。 一方、お店側は、日常的にデジタル地域通貨利用者がいないとメリットはありませんので、地道な開拓努力だけでなく、先ほど御紹介した西条市のように域内ユーザーを増やす機会を的確に捉え実践していくことも重要です。 本県においては、県産品を積極活用する、やまぐち食彩店の認証に取り組まれており、ホームページや、ぶちうま!アプリを活用した広報、需要拡大に取り組まれています。 それによって地産地消や地域経済活性化が、どの程度促進されたのかは分かりにくいのですが、見方を変えれば、デジタル地域通貨導入の下準備はできていると言えます。 「都道府県単位でのデジタル地域通貨の導入事例はない」という答弁もありましたが、大阪府では実証が始まっています。島根・鳥取両県でも、山陰合同銀行が、デジタル地域通貨の基盤づくりを開始し、山陰で共通に利用できるポイントと各市町など地域限定ポイントを一つのアプリ内で利用できる重層的な仕組みを目指されています。 各市町で基盤づくりを行うと、過当競争、過剰投資、また自治体間のデジタル格差が広がっていくため、広域行政を担う県には、こうした取組を期待しているところです。 私は、デジタルな地域経済循環圏を早く緻密に構築しておくことが、地産地消の有効な推進の手段であるだけでなく、ふるさと納税、さらにはインバウンドのような外からのお金の取り込みに重要なツールとなり、先行者利益の大きい領域であると考えます。 デジタル地域通貨の検討状況について、ふるさと納税返礼品としての導入可能性と併せて県のお考えを伺います。 次に、国富を流出させない脱炭素政策についてお尋ねします。 日本は、化石燃料に依存しており、エネルギーの海外依存度は約九○%、エネルギー安全保障や脱炭素の面で課題山積ですが、化石燃料の購入により巨額の国富を流出させていることにも目を向けなければなりません。 二○二三年度の貿易収支は、五兆八千八百十二億円の赤字で、三年連続の赤字となりました。政府は、二○二二年一月からガソリン補助制度を開始し、その予算は、合計で六・四兆円に達したとされます。 ガソリン補助制度により、日本国民はG7加盟国の中で最も安いガソリン価格を享受し、短期的には国民生活は支えられていますが、脱炭素には逆行する制度であり、また、経済循環の観点から見れば税金を原資とする巨額の公的資金を海外へ流出させている政策には、中長期的なデメリットが大きいことも認識しなければなりません。 近年の脱炭素政策についても、国富流出という点で懸念しております。 火力発電所などで生じた二酸化炭素を回収し、地下一千メートル以上深くに貯留するCCSの実用化に向けては、事業環境を整備するための法律が国会で可決されたところです。 二酸化炭素の貯留適地としては、枯渇した油田・ガス田が有望とされ、日本においても調査が進められていますが、基本的にはそうした適地に乏しく、日本に貯留する場合には多額の投資が必要で、大半は海外の貯留適地へ船舶で輸送することが軸に据えられているものと認識しています。 ガソリン補助制度にしても、CCSにしてもつくづく思いますのは、政策による国富の流出です。米国や中国のような資源国は、結局のところ脱炭素に移行せず、安価な化石燃料を国内供給し続けることで優位に産業競争しようとするのではないかとの報道もあります。 環境にいいことをしようとする理念は大変すばらしいのですが、日本がリーダーシップを取れていない国際的枠組みの中で不利なゲームをさせられているようにも見え、日本だけがとりわけ真摯に対応し、自国産業を不利にさせては元も子もありません。 化石資源に乏しく、再生可能エネルギー適地も少なく、また、二酸化炭素を貯留できるCCS適地にも乏しい日本が、他国同様の戦略を取れば、国富の流出、産業競争力の低下につながるため、地政学的特性を踏まえた日本ならではの戦略を取らねばなりません。 私は、資源に乏しい島国日本に最も適した方法は、資源循環によるエネルギー自給率向上と考えます。 国内には、廃棄プラスチックを独自技術によりリサイクルして、水素・アンモニアを生産販売している企業や、回収した二酸化炭素の有効利用、CCUの研究開発に挑戦している企業も多くあります。 最低限自給するベースラインを持つこと、自立可能性を見せることが、輸入する際にも他国に対する交渉力になります。 生産する自給エネルギーについては、地域特性によって異なるものと思います。 本県においては、二酸化炭素を排出しないクリーンな次世代燃料である水素・アンモニアに着目し、コンビナート企業と連携して研究開発やサプライチェーン構築に熱心に取り組まれていると承知しています。 国のグリーン成長戦略によると、水素・アンモニアの二○三○年時点の導入量目標は三百万トンを目指しています。 しかし、導入量目標三百万トンのうち、輸入と国産の内訳については、国の計画にも県の計画にも触れられていません。 アンモニアについては、ナイロン、アクリルなどの繊維原料、食料生産に必須の肥料、火力発電所の運転に不可欠な排ガスの無害化剤など、衣食住に不可欠な素材であり、国内で年間百万トン強の需要の約八割を国産で賄っています。 このアンモニアの生産拠点は、国内に四か所あり、うち一つは本県内なのですが、生産の撤退を表明されました。 国は、再生可能エネルギー豊富な海外で製造したグリーン水素・アンモニアの大量・安定・安価な輸入・貯蔵等の実現に向けて動き出しており、本県も連動して、カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けて供給基地化への取組を進めています。 国内生産撤退の理由は様々あるでしょうが、大量・安価なアンモニア輸入サプライチェーン構築が前面に出た政策動向を鑑みれば、企業経営の立場からは、アンモニア市場に活路を見いだすことは難しく、撤退と判断しても無理はありません。 アンモニア輸入についても、実現見通しは不透明です。仮に、国内全ての石炭火力発電所で、アンモニアの二○%混焼を実施する場合、世界全体のアンモニア貿易量に匹敵する年間約二千万トン必要とされます。 衣食住に不可欠なアンモニアを日本優先で調達するには、相当な交渉力が必要でしょう。有利に交渉するためにも、自給目標を打ち立てるべきであり、輸入も国産も混在の総量ではなく、国産、県産の目標値を提示する必要があると申し上げるわけです。一緒に前へ進む意思を数字で出さないと、企業も安心した投資行動を取れません。 日本は、歴史的に化石燃料価格に振り回されてきたわけですが、脱炭素政策は進め方によっては化石燃料輸入による国富流出を削減し、資源も経済も一緒に循環させていけるチャンスです。 特に、山口県は、水素・アンモニアでもともとポテンシャルがある地域です。横並び、様子見ではなく、国を引っ張っていくような生産目標を定めていかれることを期待しますが、県の御所見を伺います。 最後に、解体工事の入札制度についてお伺いします。 地域の建設業は、地域経済の担い手であるだけでなく、地域の守り手としての重要な役割を果たしています。 能登半島地震の災害復旧においては、地元の建設業の皆様が、いち早く土砂を撤去し、寸断された道路を啓開されることで、遠方からの支援物資、支援ボランティアが現地に入ることができています。 帝国データバンクによると、建設業の二○二三年の倒産件数は二○二二年比三八・八%増となりました。倒産の急増で、工事の停滞や先送り、復旧工事の入札不調などへの影響が生じています。 国内の建設投資の実に三割が公共部門であることから、公共工事によって建設業者に適正な利益を確保させ、人材を育て、技術や価格で競争力をつけていただくことは、地域経済並びに地域防災のために重要です。 ダンピング、いわゆる不当に安く受注する行為は、工事の手抜き、下請業者へのしわ寄せ、過当な出血競争等の原因になります。このダンピングへの対策として、公共工事の入札では、最低制限価格制度または低入札価格調査制度が設けられています。 最低制限価格制度とは、粗悪な工事を防ぐために、あらかじめ最低制限価格を設ける制度で、最低制限価格を下回る入札は失格となります。 低入札価格調査制度とは、最低価格で入札した者の価格が、発注者であらかじめ設定した調査基準価格未満であった場合、行政が事前に調査を行い、履行可能と判断すれば契約を締結する制度です。 現在、山口県発注の解体工事では、低入札価格調査制度のみ採用されていますが、解体工事に関わる複数の事業者から、一般工事には最低制限価格があるのに、解体工事にのみ最低制限価格がないのは不公平、解体工事ではダンピングとも言える低入札が常態化しているといった御意見を頂き、独自に調査を行いました。 一つは、全都道府県における解体工事の入札制度がどのようになっているか、もう一つは、参考資料にお示ししていますが、公共の解体工事入札に最低制限価格を設けるべきか否か、また、その理由を問うアンケートです。 調査範囲は、私のリソースの制約上、公共の解体工事を請け負う資格のある山口市内の全事業者としました。 まず、各都道府県の状況ですが、発注金額にもよりますが、四十七都道府県中三十九都道府県が何らかの形で最低制限価格を設けています。低入札価格調査制度のみは山口県含めて八県でした。 次に、山口市内の事業者へのアンケートでは、宛先不明を除く百三十四社中八十六社の回答を得まして、うち二十六社が元請、または下請として公共の解体工事に関わっていました。 このうち約八○%の二十一社が、最低制限価格を設けるべきと回答しており、理由として、元請が下請に委託する場合、一次、二次、三次下請へ受委託を無責任に繰り返すことで、末端業者による不法労働や不法投棄の温床になる、最終処分場に持ち込まずに自社に廃棄物をためているケースを聞く、ダンピングを防止するとともに、適切な利益を確保して、解体工事の技術を持続させるためなどが挙げられました。 一方、最低制限価格を設けないほうがいいと回答した事業者の理由を見ると、最終処分場を持っている事業者が有利だからという回答もあるのですが、当の最終処分場を持っている事業者から、最終処分場の初期投資、そこで使う重機等の維持管理費用を考えると、昨今の解体工事で入札されているような低価格では入札に参加できないと言われており、最終処分場を持っている事業者と持っていない事業者の間で認識のそごがありました。 現在の本県の低入札価格調査制度の運用についても指摘します。 山口県低入札価格調査実施要領という運用マニュアルがございまして、調査基準価格未満で低入札した事業者は、工事費の内訳、労務者の確保計画、下請予定業者の状況などを提出します。事業者としては、これに対応するのが面倒なので、調査基準価格未満にならないように入札する力が働く、これがダンピング対策になるわけです。 ただし、解体工事においては、取扱いが異なるところが多くありまして、一般の工事では調査される下請事業者の見積り、工期を記載する必要がなかったり、直接経費、管理費の条件がなかったりと調査内容が緩くなっています。 現に、過去五年では、本県の低入札価格調査対象となる土木工事全体では、およそ三割が調査基準価格未満の入札となっていますが、解体工事だけで見ると約九割が調査基準価格未満の入札となっています。 さらに、低入札になった場合に、実際に調査に応じた割合については、解体以外の工事では三割未満であるのに対し、解体工事では九割超が調査を受け入れていることが分かります。 この数字から言えることは、一般工事に対し、解体工事の調査は緩いために、ダンピング的な入札がしやすくなっているということです。 一般工事と解体工事で異なる運用をしていることについて疑問に思いましたので、国土交通省の入札制度企画指導室にも照会したところ、工事の種類によって運用を変えるのは国としても望んでいないとのことでした。 低入札価格調査制度のみでの運用というのは、行政コストだけから見れば効率的かもしれません。しかし、本県の建設業の価格競争力は弱いと聞きます。工事現場近くのビジネスホテルには、県外ナンバーの車が多く駐車されており、県外の事業者が二次、三次下請で入っているという話も聞きます。 価格競争になればなるほど、本県の公共投資が下請を通じて県外に流れていく可能性があるのです。 近年、基礎自治体を中心にあちこちで入札制度改革がなされていて参考になります。 例えば、過度な低入札を防ぐ目的で、各社が実際に入札した金額から最低制限価格を求める、変動型最低制限価格制度は、実勢価格を反映できると広がりを見せています。 そこでお伺いいたします。本県が発注する解体工事が一般工事と異なる制度運用をしていることについてどのようにお考えか、また地域経済、地域防災に重要な役割を果たす建設産業を持続可能にしていくため、入札制度改革にどのように取り組まれるのかお尋ねいたしまして、私の地域経済循環に関する一連の一般質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(島田教明君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)藤生議員の御質問のうち、私からは、国富を流出させない脱炭素政策についてのお尋ねにお答えします。 脱炭素の世界的な潮流が加速する中、電力部門や産業部門ではCO2の排出の少ない燃料への転換を進めていくことが必要不可欠であり、国においては、水素社会推進法の制定など制度の整備が進められています。 とりわけ、本県経済を支えるコンビナートは、大規模な自家発電を有し、石炭による安価で安定的な電力と熱の利用により、国際競争力を確保してきたところであり、これに代わる低炭素燃料の利用と供給網の構築は、喫緊の課題となっています。 私は、関係企業と危機感を共有し、各社の果敢な挑戦をしっかりと後押しをできるよう、コンビナート低炭素化構想を策定し、私自ら議長を務める山口県コンビナート連携会議の開催等を通じて、産学公金が緊密に連携した取組を進めてまいりました。 こうした中、本県コンビナートでは、低炭素燃料であるアンモニアのサプライチェーン構築に向けた検討や、セメントキルンでの混焼実証が進められており、県としても国事業の採択や規制緩和など、様々な機会を通じて国に要望するとともに、県独自の補助制度による支援を行ってきたところです。 一方、低炭素な水素やアンモニアを大規模に製造するには、化石燃料を原料とする既存の技術では、製造過程で発生するCO2を貯留する場所が必要であり、また将来に向けても製造に必要な大量かつ安定的な量の再生可能エネルギーと、これを活用できる水素製造技術の開発が必要です。 こうした状況やコスト面での優位性から、コンビナート企業各社は、現在のところ輸入を想定したアンモニアサプライチェーンの構築等を進めているところです。 お示しのエネルギー自給率の向上は、経済安全保障等の観点から大変重要なテーマですが、低炭素なアンモニア等の国内・県内での大規模製造に向けては、さらなる研究開発等が必要であり、数値目標の設定に関しては、今後の状況に応じて検討したいと考えています。 一方、県では、これまで本県の産業特性を踏まえたイノベーションの創出に向け、県内企業が行う再生可能エネルギー由来の水素ステーションや、水素を生み出すアルカリ水電解装置などの研究開発を支援してきました。 また、今年度からは、国の事業を活用した、県内における小規模な水素の製造・輸送等の低コスト化に向けた新たな調査・研究にも参加をしているところです。 私は、今後とも、国の施策の方向性を的確に捉え、こうした県内企業の意欲的な取組を後押しをしながら、脱炭素という困難な課題を乗り越え、本県産業の持続的な成長につながるよう全力で取り組んでまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(島田教明君)高林産業労働部長。 〔産業労働部長 高林謙行君登壇〕 産業労働部長(高林謙行君)山口県ふるさと産業振興条例についてのお尋ねにお答えします。 本県経済の持続的な発展に向けては、地産地消の推進を図り、地域経済を活性化することが重要です。 このため、山口県ふるさと産業振興条例の制定を契機に設置した、山口県ふるさと産業振興推進協議会の下、関係課で構成した七つの部会を通じ、条例の基本理念である「事業者の育成」と「県産品の需要拡大」を二つの柱にして取組を進めてきました。 推進に当たっては、地産地消の取組が多面的かつ広範に及ぶことを踏まえ、所管部局において、様々な情報収集や現状分析を行い、やまぐち未来維新プランなどの計画に取組内容や目標指標等を定めているところです。 これまでの取組により、中小企業の海外展開成約件数や六次産業化・農商工連携による新規取引件数など、目標を上回る進捗となっていることに加え、政策入札制度の積極的な活用等により、公共調達での県内に本店を有する事業者の受注率が約九割となるなど着実な成果が出ています。 また、取組結果については、各部会や部局の政策評価等を通じて検証を行い、課題の抽出を図った上で、必要に応じて内容や目標指標等の見直しを行うなど、PDCAサイクルによる進行管理の仕組みを取り入れています。 取組内容の検証に当たっては、お示しの産業連関表をはじめとした各種統計データの活用が重要であると認識しており、各分野を所管する部局ごとに定めた目標指標のほか、統計データ等の俯瞰的視点も踏まえながら成果を検証し、その結果を取組の充実につなげてまいります。 県としては、今後とも事業者や県民のニーズに沿って、地産地消の取組を進めることにより、ふるさと産業の振興を図ってまいります。 副議長(島田教明君)永富総合企画部長。 〔総合企画部長 永富直樹君登壇〕 総合企画部長(永富直樹君)デジタル地域通貨についてのお尋ねにお答えします。 人口減少が進む中、地域の持続可能性を高めていくためには、地域内における経済循環の割合を高めるとともに、域外の消費需要を取り込むことが重要です。 このため、県では、やまぐち食彩店や、ぶちうま!アプリ等による地産地消の促進、魅力ある地域資源を生かした観光需要の呼び込み、また、地域の特産品等を活用したふるさと納税の推進など、地域経済の好循環につながる取組を様々な形で進めています。 お尋ねのデジタル地域通貨については、地域経済の活性化に寄与するとともに、購買データの活用が、新商品の開発などにつながることも期待でき、消費需要の取り込みに有効なツールとなり得る可能性があると考えています。 その一方で、国内でのキャッシュレス決済の割合は、既に四割に達し、その大半を大手の決済アプリが担い、激しい競争の中、新たなサービスが続々と追加されています。 デジタル地域通貨は、そうしたアプリとも競合するため、利用者の獲得は容易ではなく、セキュリティーの確保も含め、システムの安定運用が必要なことや、事業継続のための収益の確保など、様々な課題があると認識しています。 また、ふるさと納税での活用に関しては、国の地場産品基準により、地域内で使用できる店舗が限定されることや、市町との競合を避ける観点から、県としては、飲食店等を返礼品の対象とする運用は行っていないところです。 こうしたことから、県として、現時点で直ちにデジタル地域通貨の導入や、ふるさと納税の返礼品としての活用を進めることは難しいと考えていますが、引き続きお示しのあった大阪府の取組など情報収集を行ってまいります。 加えて、今後、各都道府県に対して、官民でデータを共有・活用して様々なサービスを提供する、データ連携基盤の検討が求められており、そうした中で、サービスを連携させる仕組みの検討等も必要となってくることから、御提言の内容の可能性なども含め検討していきたいと考えています。 副議長(島田教明君)大江土木建築部長。 〔土木建築部長 大江真弘君登壇〕 土木建築部長(大江真弘君)解体工事の入札制度についてのお尋ねにお答えします。 本県の建設産業は、就業者数の減少や高齢化の進行などの課題に直面しており、近い将来、社会資本の整備・維持管理や災害対応等に支障を来すおそれがあることから、持続可能な建設産業を構築することが重要です。 このため、県では、これまでも就労環境の改善や適正な競争環境の整備を図るため、入札契約制度におけるダンピング対策などに取り組んできています。 具体的には、低入札価格調査制度を平成十三年に、最低制限価格制度を平成二十四年に導入したところであり、また、その基準となる価格を随時引き上げるとともに、低入札価格調査の内容を厳格化するなど、適切にダンピング対策を行ってきました。 お尋ねの解体工事については、これまで、処分場の自社保有など各社が持つ条件の違いにより、一定の利潤を確保できる価格が異なることなどを考慮し、当面、最低制限価格制度の導入を見送り、低入札価格調査制度については、一部の調査を実施しないなど、一般工事と異なる運用をしています。 こうした中、公共工事の品質確保の促進に関する法律などが改正され、受注者の責務として適正な価格での下請契約の締結や、従事者の就労環境の改善に努めることが明記されたことなどから、落札率などの応札状況を継続的に注視してきました。 その結果、解体工事における落札率が低い状態が続いており、受注者の責務を果たすことができない可能性が認められたことから、低入札価格調査制度や最低制限価格制度の見直しに向け、具体的な制度の内容について、一昨年から検討作業を進めているところです。 県としては、地域の守り手である建設産業が将来にわたって、その社会的役割を担っていけるよう、今後とも入札契約制度の不断の見直しに取り組んでまいります。