1 農山村の諸課題と今後について 2 JR美祢線の復旧と厚狭川の河川改修について 3 日本版DBSについて 4 その他
───◆─・──◆──── 日程第一 一般質問 日程第二 議案第一号から第八号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、一般質問を行い、日程第二、議案第一号から第八号までを議題とし、質疑に入ります。 一般質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 中本喜弘君。 〔中本喜弘君登壇〕(拍手) 中本喜弘君 皆さん、おはようございます。政友会の中本喜弘です。通告に従い一般質問をさせていただきます。 まず、農山村の諸課題と今後についての質問です。 私が暮らす美祢市秋芳町の北部地域は、山々に囲まれ、二級河川厚東川源流の山間地です。この時期には蛍が乱舞する美しい里山と自負しております。 しかし、地域の現状は大変厳しく、子供の姿はほとんど見ることなく、高齢者世帯が中心の限界集落に向かっていると言わざるを得ません。 この状況は私の地域だけでなく、中山間地域全体にも言えることです。本県全体の約七割を占める中山間地域のうち、全域が中山間地域となるのは八市町、一部が中山間地域となるのは十市町です。 人口比で全人口の約二四%、耕地面積の約六四%、森林面積の約七五%を占めており、県全体の約四分の一の人口で広い地域を支えていることになります。 令和五年版山口県中山間地域づくり白書の冒頭で、村岡知事は、中山間地域は県土の保全や水源の涵養、県民の触れ合いの場の提供など、多面的で公益的な機能を有するとともに、美しい景観や伝統的な文化が今日まで受け継がれているかけがえのない地域ですと述べておられます。 このため、山口県中山間地域振興条例に基づき、令和五年三月に改定した山口県中山間地域づくりビジョンに沿って、人口減少下にあっても活力を維持・創出し続ける中山間地域の実現を目指し、課題解決に向け多様な施策を推進していることは承知をしております。 私が住んでいる山間部に視点を当てると、自立した地域として持続させるためには、農業・林業など一次産業をどのように自立・発展させ、経済的基盤を再構築するかが最も重要であると考えます。 国は、一九九九年に、新たに食料・農業・農村基本法を制定し、今国会で二十五年ぶりに一部改正する法案が可決成立しました。 法律の基本理念に、食料安全保障の確保が加えられ、農産物や農業資材の安定的な輸入、農業法人の経営基盤の強化、スマート技術を活用した生産性の向上が盛り込まれ、農政の再構築が始まると報道されています。 中山間地域の課題解決と持続は、地域だけの問題ではなく、日本全体の国土保全、食料安全保障、防衛を含めた美しい国日本の未来に関わる重要な課題です。 国の動向や本県での中山間地域づくり、活性化に向けた施策の推進には本気度が感じられ、期待が膨らみます。今回の質問に向けて、国、県の施策について調査しましたが、施策関係の資料のボリュームは膨大で、全てを消化するのは困難でした。 そこで、中山間地域の地元美祢市で農業や林業に積極的に関わるJA、森林組合、農事組合法人、認定農業者、民間企業など関係者にヒアリングを行い、現場の生の声を聞いてまいりました。 さて、約半世紀前、私の子供時代、昭和五十年代頃には、本県も五十六市町村あり、農業は個人農家が担い、世帯主は平日、役場や企業で働き、早朝、夕方、休日に圃場を耕していました。 多世代同居のじいちゃん、ばあちゃん、母ちゃんが担い手となる三ちゃん農業が主体で、稲作が中心でした。 当時の農業は、個人の農家に補助が行われていましたが、大人たちの会話からは、農業機械や資材で結局働いた給料の持ち出しだという話が漏れ聞こえ、中山間地域では、兼業農家でも大変で、さらに言えば農業だけで生活するのは難しいことだと感じておりました。 その後、農業の機械化や圃場整備も進み、規模拡大が行われました。 しかし、平成の市町村合併の頃には、稲作中心の米農家は減少し、若い世代は市外や県外に流出、中山間地域の過疎化がさらに進行しました。 集約化、規模拡大のため、集落ごとの法人化、認定農業者、農事組合法人、農業生産法人、民間企業など法人化が進み、農業の担い手が変化しました。また、新規就農者を増やすための施策や再圃場整備、スマート農業が推進されています。 圃場の集約や大型機械の導入が進む中山間地域の農業も変わってきていますが、担い手の年齢層はほとんどが七十歳代前後の年金受給者が中心で、若い人は少数です。これでは、農業が集約化、組織化されたとはいえ、兼業農家が主体であった時代とほぼ変化がなく、農業専業での自立はまだまだと言わざるを得ませんし、中山間地域の将来に懸念が生じます。 先日、美祢市伊佐地域の堀越地区で、地域活性化や地域承継を目指して立ち上げられたNPO法人堀越涼南会の発足式に出席しました。地域住民の思いを一つにし、地域おこし隊のよしもと住みます芸人も仲間として受け入れ、彼らも理事として参画し、農産品の開発や六次産業の創出に向けて大きな一歩を踏み出しました。 地域の人々が真摯に議論を重ね、十年以上任意団体として活動してきた経緯があります。中山間地域のこうした取組へのサポートは重要で、美祢市行政もしっかり支援しています。 堀越涼南会の地域おこし隊三人が中心のアイデアで、美祢秋吉台ジオサイトの大岩郷の大きな岩を地産のコンニャクで見立て、地域のシイタケ、タマネギなどを使った大岩ゴロゴロカレーを開発し、レトルトカレーとして発売を始めました。 中山間地域の生き残りをかけた闘いには、自立と受容が必須です。コロナ禍以降、地方に目を向け、豊かな自然環境で移住を考える人や農業への関心を持つ若い人が増えています。 新規就農者への支援の充実が欠かせませんが、地縁も血縁もなく農地も持たない場合、山口県を選択して新規に農業に従事するためには受皿となる法人の経済的自立が前提となります。 JAの方に聞くと、新規就農希望者が単純に自然豊かな中山間地域や農業に憧れだけで来ても継続は難しく、自己資金を持っていないと独立は困難とのことでした。 こうした状況では、新規就農者の受入先となる各法人の経営がしっかりしていなければ、受入れも困難であると思います。各法人、特に中山間地域の法人の経営状況を県はどのように把握されているのか、お伺いをいたします。 耕作面積がそれぞれ違う法人の代表者にお聞きしたところ、いずれも新規就農を受け入れて農地を承継することは今の状態では難しいという答えでした。 人・農地プランの作成・実行から、現在は市町村が主体となり、農業委員会、農地バンク、JA、土地改良区など関係機関が連携し、農業経営基盤強化促進法に基づき、期間十年の農地の地域計画を今年度中に策定することになっています。 県は、各市町の計画策定の進捗管理を行うこととされています。しかし、その基となる各法人の方々も、十年という期間を見越しての計画策定に頭を抱えているのが現状です。進捗状況についてお尋ねをします。 また、水田活用の直接支払交付金の交付対象水田の厳格化に伴い、いわゆる五年水張りルールが令和四年から適用されました。水稲作付ができない場合、五年に一度は一か月以上の湛水管理、かつ転作作物の連作障害による収量低下が発生していないことを確認する必要があります。これが確認されない場合、令和九年から交付対象外となり、二度と交付が受けられなくなる厳しいルールです。 このルールは、農業者にとっては大きな負担です。特に認定農業者や個人農家など人手の少ない農家にはさらに厳しいものです。 水路が整った優良な水田では対応可能ですが、そうでない水田では耕作を諦めることにつながり、中山間地域の耕作放棄地がさらに増える要因となるのではないかと懸念しています。県のお考えと対応策についてお聞かせください。 農業経営の集約化や規模拡大、スマート農業による生産コストの削減により、収益の拡大を図ることには賛成です。しかし、こうした施策の方向性になじまない農地や中山間地域が全国にも多く存在するのではないかと考えます。改めて、本県の耕地面積、農業産出額、生産農業所得の近年からの推移をお聞かせください。 また、都道府県ランキングでは、どの辺りで推移しているのかも併せてお尋ねします。 JAなど関係者も県消県産をPRしていますが、県の食料自給率の推移についてもお聞かせください。 民間企業で農業に参入している方々にも話をお聞きしました。話の中で、生産支援も重要ですが、出口戦略への支援も不可欠とのことでした。作っても売り先が確保されていなければ、農業でも商工業でも経営は成り立ちません。 六次産業化は新たな消費を生むための重要な戦略ですが、自然相手の農業では生産が不確定な要素が多く、加工して商品化によって、それがヒット商品になるものはごく少数と言えます。 地元美祢市は水稲が盛んな地域で、山口県農業試験場の品種改良から生まれた、晴るるが作られています。また、裸麦の産地としても県内有数ですが、みその需要減少により、生産調整の中で小麦への転換が始まっています。 消費拡大のため、裸麦を使ったビール、シフォンケーキ、クッキー、巻きずしなどを山口農業高校の生徒さんなどの協力を得て商品開発をしています。地元生産者や道の駅、直売所などが美祢農林水産事務所、JAなどのバックアップを受けて取り組んでいます。私も成果発表会や裸麦の祭典に参加しました。 こうした取組は大切ですが、新たな商品化や生産体制の構築、流通・販売に結びつけるまでには大変な時間と労力、コストがかかります。不断の努力が必要で、すぐに成果が出るわけではありません。 別の視点で考えると、現在の消費ニーズを市場調査し、需要が見込まれる産品を生産し、年間均一に出荷できる体制を整えることが重要ではないでしょうか。 例えばニンニクやトマトをペースト状に加工し、冷凍する一次加工所を設けることでリスクを減らし、長期保存が可能になり、収穫期以外でも年間を通して販売できます。小規模な中山間地域でも事業形態として成り立ち、県消県産の向上にも寄与します。 大規模市場で勝ち抜く作物を選定し、大規模産地形成で大手スーパーなどに山口県産品を並べることも重要ですが、隙間の需要を狙い、それぞれの農地環境に適した野菜類などを露地・ハウス兼用で栽培し、多品種少量生産で販売に結びつけること、直売所がない地域では直売所の設置を支援するなど、地域内での消費や経済循環、また地域外の人流をつくっていくことで、中山間地域の活性化や農業の自立につながるのではないかと考えますが、県のお考えをお聞かせください。 新鮮、おいしい、安心と消費ニーズに合致した生産供給は、必ず消費者に支持されます。生産性の向上だけでなく、品種改良や適地品種の選定、品質管理とその向上など、消費ニーズに沿った経営戦略を持つことで、中山間地域の経済的自立につながり、新しい農業者や次世代に承継できる中山間地域が増えると考えます。 主食米に関しても、売れているお米はたくさんあります。昨今の気候変動や高温障害にも耐え、消費者に選ばれる山口県産米を作ることも大事です。 特A米に選ばれる常連産地のお米は、北海道、新潟、山形、島根、福岡、熊本などであり、山口県のスーパーにも当たり前のように並んでいます。 山口県でも令和三年産のきぬむすめが特Aを取りましたが、常連とは言えません。中国地方のほか四県は連続して特A米を産出しています。 品種改良や適地品種の選定は、選ばれる産地形成のために最も重要です。農林業の知と技の拠点として整備された県農林総合技術センターを中心に、こうした取組が期待されます。県の取組についてお聞かせください。 中山間地域への人流をつくるために特産品や伝統文化を生かした観光農業やアグリツーリズムの推進も、中山間地域の活性化に寄与します。 地元の特産品を使った体験型の観光プログラムを企画し、都市部から観光客を呼び込むことで、地域経済の活性化と農業の持続可能性を高めることができます。 観光農業の成功例としては、地元の農産物を使った料理教室や収穫体験、農家民宿などが挙げられます。 こうした取組を進めるためには、地域の農家や企業、行政が一体となって協力し、魅力ある観光プログラムを開発・運営していくことが重要です。 さらに、地域住民の意識改革も重要です。中山間地域の農業を支えるためには、地域住民が農業の重要性を理解し、積極的に支援する姿勢が求められます。例えば、地域イベントや学校教育を通じて、農業の現状や課題、未来に向けたビジョンを共有し、地域全体で農業を支える意識を高めることが必要です。 地域住民が一体となって農業を支えることで、持続可能な地域社会を築くことができます。特に若い世代に対して農業の魅力を伝え、将来の担い手としての関心を持たせることが重要です。 学校教育においても、農業体験や地域の農業者との交流を通じて、農業の大切さを学ぶ機会を提供することが求められます。 このように中山間地域の農業振興には、多面的なアプローチが必要です。地域の特性を生かしながら、経済的な自立を目指し、環境保全と農業の持続可能性を両立させるための施策を進めていくことが重要です。 また、地域住民や企業、行政が一体となって取り組むことで、豊かな自然と文化を次世代に継承し、持続可能な地域社会を実現することができます。 中山間地域の農業振興について、県の具体的な取組やお考えを改めてお聞かせください。よろしくお願いいたします。 次に、林業についてです。まだまだ勉強不足ですが、地籍調査についてお尋ねします。 以前は中山間地域では、農閑期の冬場は山の手入れに力を入れていました。その後、現金収入を得るために近場の建設業などの冬場の働き手となっていきました。 今の世代では、国産木材価格の低迷とともに、山林を大切な財産としてきた先人の思いが希薄になってきています。 また、木材が燃料となっていた時代は里山が機能しており、鳥獣とのすみ分けがきっちりしていたため、鳥獣被害も少なかったように思います。現在は山地に隣接する圃場が徐々に耕作放棄地になってきており、山の手入れも少なく、年々作物被害が増え、鹿柵の設置など農業コストの増大にもつながっています。 そうした中、平成十七年四月から、やまぐち森林づくり県民税が創設され、手入れが行き届かず荒廃が深刻化する森林を健全な姿で次世代へ引き継ぐため、森林整備の取組がスタートしました。 国も森林経営の促進に目を向け、令和元年度から森林環境譲与税を導入、また今年度から森林環境税の徴収を始めました。 県では、この県民税などを活用し、竹の繁茂対策や林業事業体の育成、新規就業者の確保などに取り組んでおられますが、これまでの成果やこれからの取組など少し詳しくお聞かせください。 美祢市内にも若い林家が数名頑張ってくれていますが、森林組合と合わせても年間の施業能力は限定的です。 森林組合で話をお聞きすると、大きな課題として、山林の地籍調査がなかなか進まないとの話題が出ました。境界がはっきりしない場合は、補助事業で整備することも難しいようです。 持ち山に頻繁に入っていた世代がいるところは、それでも何とかなりますが、世代が変われば植林後五十年以上たち樹木の成長もあって、景色は一変し、ますます境界が分からなくなります。 現在では、航空写真やドローンなどを利用して現地に行かなくても山の状況を把握することが可能ですし、他所にいる地権者ともオンラインで協議が可能です。 遅れれば遅れるほど地権者同士が世代交代していき、ますます境の把握が難しくなっていきます。この問題を解決するため、中立な公的機関が境界の仲介や裁定をし、地籍調査を今のうちに進めていくことができないかとの提案を受けました。県内の地籍調査の状況と今後の取組についてお聞かせください。 樹苗農家からも、伐採期を迎えた人工林の整備を進め、新たに花粉が少なく成長の早いなど品種改良した苗木を植栽していく、森林循環の取組が必要であると提案も受けています。 民有林が多い本県では大変重要な取組と考えますが、山林の境界がはっきりしないために森林整備が進んでいない現状もあることを踏まえ、森林整備の取組と今後についてお聞かせください。 次に、昨年六月三十日からの豪雨によって全線不通となり、代行バスが運行して、はや一年が経過しようとしているJR美祢線の復旧と厚狭川の河川改修についてです。 発災直後から迅速に現場視察やJR西日本への申入れをしていただいた、村岡知事や地元国会議員の先生方の行動には勇気を頂きました。 また、村岡知事は、再度災害となった厚狭川の抜本的な改修にも言及していただきました。河川沿線の住民からも安堵の声が届いています。 それから時間が経過し、JR西日本からは、同様に被災し不通となっていたJR山陰線の区間については復旧する旨の報道がありました。しかし、美祢線については言及がありませんでした。 この五月三十日の報道によると、JR西日本中国統括本部の広岡広島支社長より、JR美祢線はJR単独での復旧は非常に難しい。仮に復旧しても当社単独での持続的な運行は困難との見解が、五月二十九日のJR美祢線利用促進協議会で示されました。 また、美祢線の持続可能性や利便性の向上について議論する新たな部会を協議会に設置する提案があったと報じられました。 早期復旧を願う沿線住民など市民の方々から、心配の声が私の事務所にも届きました。 この協議会では、検討した利用促進策全てを実施することにより、輸送密度が現行の三倍になるとの報告がなされましたが、それでも大量輸送の鉄道の特性を生かせる目安である輸送密度二千人には届かず、試算によっては再構築協議会の対象基準である千人も下回るとの指摘があり、JR側は部会を設置し、より便利で持続可能な交通体系の検討や調査・実証実験を行い、地域にふさわしい公共交通の早期実現を目指すように発言しています。 本県側からは、鉄道での復旧に地域の負担が求められる場合、まず復旧費用の規模を示す必要があると発言し、JR側は、鉄道の復旧には相当な費用を要し、現段階では正確に算出するのは困難、新たな部会の中で前提条件を整理して提示したいとの答えであり、七月中を目途に部会設置について臨時総会を開催することで合意したとの結末でした。 それから、六月十一日の村岡知事の記者会見では、JR美祢線について、鉄道の被災をきっかけに路線の在り方の議論と混ぜこぜにするのは本来の在り方ではないと指摘され、ネットワークとして適切なのか強い疑念を持っていると述べられています。 厚狭川の河川改修について、二月定例議会の土木建築委員会での私の質問に対し、既に河川改修の計画は昨年九月以降、JR側に示しているとの答弁でした。 計画の中身について、私は説明を受けていませんが、県側からJR西日本に対し、線路に関係する箇所の改修計画は詳細に説明を行っているとのことでした。 再度災害防止や減災に向けての河川改修計画とJR美祢線の復旧は当初セットで進行するものと思っていましたが、昨今の状況を見るとJR側の復旧方針は見えず、方針決定まで多くの時間を要するように感じます。 そうした場合の河川改修の進捗はどのようになっていくのでしょうか。県民の日々の暮らしの安全・安心を確保するためにも、一日たりとも無駄にしてはならないと思います。 また、公共交通の在り方についても、高齢化、人口減少が進む中山間地域に住む県民においては重要課題です。JR美祢線の復旧と厚狭川の河川改修について、県のお考えと今後の対応についてお伺いをいたします。 最後に、日本版DBSについての質問です。 イギリスでのディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス──前歴開示・前歴者就業制限機構を参考に、子供に接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する日本版DBS創設法案が今国会に提出され、六月十九日に可決成立しました。 この法案では、雇用主の学校や保育所などに職員の照会を義務づけ、性犯罪歴のある人の就労を事実上制限することになります。 性犯罪歴の確認期間は、拘禁刑では刑の終了から二十年、罰金刑は十年などと定めています。対象は、特定性犯罪として、刑法犯のほか、痴漢や盗撮など自治体の条例違反も含まれています。しかし、ストーカー規制法違反や下着窃盗などは含まれていません。 子供が性犯罪や性暴力に巻き込まれる事案が数多く発生している中、この法案の成立によって、弱い立場の子供たちが学びや成長の身近な環境で性犯罪や性暴力に巻き込まれるのを未然に防ぐ防波堤になります。また、厳格な対応は犯罪の減少にもつながり、子供たちの人権や健全な成長を守ることになると考えます。 その反面、憲法第二十二条には、職業選択の自由、営業の自由の保障が定められており、そのことに抵触する懸念や高度なプライバシー情報のため、漏えいによる該当者の社会生活に重大な影響を及ぼす懸念などが指摘されています。 そのためか、民間の学習塾、認可外保育所、放課後児童クラブなどは任意の認定制度の対象であり、フリーランスの家庭教師など個人事業主は対象外となっています。 そうした状況から、参議院内閣委員会では、確認期間や特定性犯罪の範囲を延長・拡大するよう附帯決議を可決しています。この法案の成立を受け、この制度に対する知事のお考えをお示しください。 中山間地域の健全な承継と子供たちがつくる輝かしい山口県と日本の未来を信じ、今を生きる者の一人としてさらに精進していくことを誓い、私の一般質問を終わります。 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)中本議員の御質問のうち、私からは、中山間地域の農業振興についてのお尋ねにお答えします。 本県の約七割を占める中山間地域の維持・発展には、主要産業である農業の振興が極めて重要な課題であることから、担い手支援日本一の取組をはじめ、中核経営体の育成や生産性を向上させる農業基盤の整備などを行ってきたところです。 その結果、毎年百人を超える新規就業者を確保するとともに、中山間地域においては、集落営農法人に雇用された若者が、その法人の代表者となり経営を継承する事例も生まれています。 こうした成果を踏まえ、私は、新規就業者の確保・育成をはじめ、県産農産物の需要拡大や、生産や地域を支える供給体制と基盤整備の強化を図り、中山間地域の振興にもつながる強い農業の育成を一層進めることとしています。 具体的には、経営の規模拡大や多角化に取り組む集落営農法人等を育成するとともに、新規就業者の安定的な確保・定着や企業等の新規参入を促進し、中山間地域にも人を呼び込み、多様な担い手の確保・育成を図ります。 また、需要拡大に向けては、関係団体と連携した児童生徒を対象とする田植え体験を通じた都市農村交流や、牛乳を使った料理コンクールの開催など、食育活動や消費者理解の促進により、県産農産物や豊かな自然の魅力を積極的に発信します。 さらに、供給体制の強化に向けては、病気に強い米の品種の導入による化学農薬の削減や、地元で製造された堆肥を有効活用するなど、環境負荷低減による持続性の高い農業を推進します。 加えて、地域や生産を支える基盤整備に向けては、条件不利地の多い中山間地域の特性に応じた区画整理や、集落ぐるみによる有害鳥獣の侵入防止柵の設置など、きめ細かな取組を推進します。 私は、市町や関係団体等と緊密に連携しながら、生産性と持続性を両立させ、地域の特性を生かした多様な担い手が活躍できる中山間地域の農業振興に積極的に取り組んでまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 議長(柳居俊学君)大田農林水産部長。 〔農林水産部長 大田淳夫君登壇〕 農林水産部長(大田淳夫君)農山村の諸課題と今後についての数点のお尋ねにお答えします。 まず、中山間地域にある法人の経営状況についてです。 中山間地域の特性を生かし、経営の安定化を図っている法人がある一方で、構成員の高齢化が進み、経営の維持が困難となる法人においては、複数の法人が連携する集落営農法人連合体の形成に向けた動きが始まっていると認識しています。 次に、地域計画の進捗状況については、各市町に対し四か月ごとに調査を実施しているところであり、昨年度末時点では、作成に着手している地区が九割近くになっています。 次に、水田活用の直接支払交付金の交付対象水田の厳格化についてですが、この交付金は、水田率の高い本県農業の振興に重要なものであることから、県としては、国に対し、令和四年から継続して要件の緩和等について要望を行っているところです。 次に、本県の耕地面積、農業産出額、生産農業所得の近年からの推移、都道府県ランキングの推移についてまとめてお答えします。 耕地面積は、令和五年が四万三千二百ヘクタールで三十二位、平成三十年が四万七千二百ヘクタールで三十一位、農業産出額は、令和四年が六百六十五億円で三十九位、平成二十九年が六百七十六億円で三十九位、生産農業所得は、令和四年が二百四十七億円で三十七位、平成二十九年が三百二億円で三十二位となっています。 次に、県の食料自給率については、カロリーベースで平成二十八年度は三二%、令和三年度は三一%となっています。 次に、中山間地域の活性化や農業の自立についてです。 県としては、中山間地域に適した園芸品目の導入等を支援するとともに、関係団体と連携し、JA直売所等の地産地消推進拠点の一層の拡大や利用促進により、地域内での消費拡大や経済循環等を図ることが重要と考えています。 次に、品種改良や最適品種の選定についてです。 県では、農林業の知と技の拠点を核に、気候変動等に対応できる新たな品種の開発や選定、品種特性に応じた高品質・安定栽培技術の開発等に取り組んでいきます。 次に、森林づくり県民税などを活用した取組についてです。 農山村における過疎化・高齢化が進む中、里山等における森林機能の低下が懸念されることから、これまで、県では、竹の繁茂対策や林業事業体の育成、新規就業者の確保に取り組んできました。 まず、竹の繁茂対策については、森林づくり県民税を活用し、約一千八百ヘクタールの伐採を進め、森林機能の回復に加え、里山の環境改善等を図っています。 また、林業事業体の育成については、国の事業等を活用し、建設業など異業種からの参入支援や林業機械による生産性向上に向けた研修の実施等を通じ、森林整備の担い手を育成してきました。 さらに、県内高校生を対象とした就業体験会や、首都圏等で就業相談会を開催するなど、新規就業者の確保にも努めてきました。 今後とも、引き続き、竹の繁茂対策等の森林整備を進めるとともに、今年度、県内六か所に設置した林業担い手確保・育成支援センターを活用した担い手の確保や、林業事業体の計画的な育成に取り組んでまいります。 次に、森林整備の取組と今後についてです。 森林資源を循環利用していくためには、高齢化した人工林を適切に更新することが重要であることから、県では、主伐から植栽までの一貫作業化や通年植栽が可能な苗木の活用など、低コスト再造林技術の導入と定着に取り組んでいます。 また、苗木の植栽については、お示しの花粉が少なく成長が早い特性を備え、下刈りなどの回数削減や主伐までの期間短縮も期待されるエリートツリーの供給を通じて、効率的な森林整備を進めてまいります。 こうした取組を行う上で、境界の明確化はさらなる森林整備の推進につながることから、市町や林業事業体に対して、改めてその必要性について周知を図るとともに、樹種や地形等の森林資源データを活用した境界案の作成等を支援していきます。 県としては、今後とも、関係団体等と連携しながら、切って、使って、植えて、育てる森林資源の循環利用の取組を積極的に進めてまいります。 議長(柳居俊学君)永富総合企画部長。 〔総合企画部長 永富直樹君登壇〕 総合企画部長(永富直樹君)地籍調査についてのお尋ねにお答えします。 地籍調査は、土地取引の円滑化や災害復旧の迅速化、まちづくりの円滑な実施等に資するとともに、森林保全の観点からも重要な取組であり、その着実な実施が求められています。 本県では、既に三市六町が地籍調査を完了し、美祢市を含む十市が調査を実施中であり、令和四年度末時点の進捗率は六三%を超え、全国平均の五二%を上回っています。 お示しの山林の地籍調査は、所有者の高齢化や山林の荒廃等に伴い、現地に入って行う従来の方法での実施が困難になってきています。また、急峻な場所での現地立会や測量作業は大きな負担であり、事故のリスクも懸念されます。 こうした中、国においては、地籍調査の迅速かつ効率的な実施を図るため、現地調査によらない図面等での調査や、ドローンなどを活用したレーザー測量や空中写真による調査など、新たな調査方法の導入も進められています。 さらに、こうした調査等も活用し、地籍調査の実施主体である市町が、所有者の同意を得て法務局へ申請することで、筆界の特定をすることも可能となっています。 県としては、これらの新たな調査手法や手続の周知を図るため、現在、調査を実施している市に対して情報提供を行うとともに、国の協力も得て研修会も開催しており、今後もこうしたことを通じて、地籍調査が着実に進むよう取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)道免観光スポーツ文化部長。 〔観光スポーツ文化部長 道免憲司君登壇〕 観光スポーツ文化部長(道免憲司君)JR美祢線の復旧と厚狭川の河川改修についてのお尋ねのうち、JR美祢線の復旧についてお答えします。 美祢線は、通勤や通学など沿線住民の日常生活や観光振興などに重要な役割を果たしていることから、県では、被災直後から沿線自治体と連携して、JRに対し、重ねて早期復旧を要請するとともに、復旧後を見据えた利用促進策の検討などに取り組んできたところです。 こうした中、先月の美祢線利用促進協議会総会において、JRから、JR単独での復旧や復旧後の持続的な運行は困難との考えが示されるとともに、美祢線の持続可能性等に関する議論を行う新たな部会の設置の提案があり、復旧費などは部会の中で提示する意向も示されました。 県では、鉄道が被災した場合には、鉄道事業者による速やかな復旧が原則であると考えていますが、被災から間もなく一年となる中、地域住民等が不便な移動を余儀なくされている状況は、早期に解消する必要があります。 このため、復旧に向けた議論を前に進める観点から、地元の現状や沿線自治体の意向も踏まえながら、JRから提案があった部会の設置を含め、今後の対応を検討してまいります。 また、復旧までの間、引き続き、代行バスの着実な運行と利便性のさらなる改善をJRに対して働きかけていくこととしています。 県としては、美祢線の一日も早い復旧に向けて、今後とも沿線自治体と連携し、地域住民が安心して暮らせるよう取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)大江土木建築部長。 〔土木建築部長 大江真弘君登壇〕 土木建築部長(大江真弘君)JR美祢線の復旧と厚狭川の河川改修についてのお尋ねのうち、厚狭川の河川改修についてお答えします。 県では、厚狭川について、平成二十二年七月豪雨災害を踏まえ、下流の山陽小野田市側から河川改修を実施してきたところです。 こうした中、令和五年梅雨前線豪雨により、上流の美祢市側では、住宅や農地への大規模な浸水や鉄道橋梁の流失など甚大な被害が発生しました。 このため、再度災害を防止する観点から、川幅の拡幅や堤防の整備などの抜本的な河川改修を実施することとしたところであり、現在、詳細な設計を進めるとともに、河床掘削の工事にも着手しています。 また、河川改修を計画的に進めていくため、必要な予算の確保について国に要望を行っているところであり、今後とも、国の五か年加速化対策の予算等も活用しながら事業を推進していく考えです。 県としては、再度災害を防止し、県民の安心・安全を確保するため、厚狭川の抜本的な河川改修を着実に進めてまいります。 議長(柳居俊学君)國吉健康福祉部長。 〔健康福祉部長 國吉宏和君登壇〕 健康福祉部長(國吉宏和君)日本版DBSについてのお尋ねにお答えします。 子供に対する性犯罪・性暴力は、子供の性的知識の未熟さやその立場の弱さに乗じて行われ、被害に遭った子供の心身に生涯にわたり有害な影響を及ぼす極めて悪質な行為であって、決してあってはならないものと考えています。 こうした中、子供が教育、保育等の場で従事者による性犯罪・性暴力の被害に遭うことがないよう、未然に防止するための仕組みとして、いわゆる日本版DBS法が、先般、国会において全会一致で可決成立したところです。 確認期間の延長や特定性犯罪の範囲の拡大等に係る附帯決議について、今後、国において検討が進められますが、まずは、子供たちを性被害から守る観点から、仕組みが構築されたことは意義のあるものと考えています。 県としては、今後、国において策定されるガイドライン等に沿って適切に対応してまいります。