委員長報告
───◆─・──◆──── 日程第三 産業脱炭素化推進に関すること 議長(柳居俊学君)日程第三、産業脱炭素化推進に関することについて、審査の経過並びに結果に関し、委員長の報告を求めます。 産業脱炭素化推進特別委員長 河野亨君。 〔産業脱炭素化推進特別委員長 河野亨君登壇〕(拍手) 産業脱炭素化推進特別委員長(河野亨君)産業脱炭素化推進特別委員会を代表いたしまして、本委員会における審査の経過並びに結果について御報告を申し上げます。 カーボンニュートラルが世界的な潮流となる中、本県議会では、令和三年度に脱炭素社会における産業発展方策調査特別委員会を設置し、国や県に対して、脱炭素化を進める上での政策の在り方について提言等を実施しました。 これを受け、県では、やまぐち産業脱炭素化戦略を策定し、戦略に基づく、官民連携による取組を開始しています。 一方で、カーボンニュートラルを取り巻く環境の変化は激しく、こうした変化がもたらす本県産業への影響や課題を把握し、機を逃すことなく柔軟に対応することが必要です。 このため、昨年七月に設置された本委員会では、前回の特別委員会の活動を引き継ぎながら、一年半にわたり、新たに生じた課題や対応方策について調査研究活動を進め、このたび、本県産業の脱炭素化を一層推し進めるための重点的事項について、六つの柱から成る政策提言を取りまとめました。 提言の第一の柱は、コンビナート等におけるCO2排出削減・利活用に向けた取組の加速化であります。 本県産業が、脱炭素と経済成長を両立させるためには、コンビナートが脱炭素エネルギーの供給拠点としての機能を確立し、全県にわたる脱炭素エネルギーの供給体制を構築することが重要です。 同時に、脱炭素に貢献する技術開発に向けた企業の取組を強力に後押ししていくことも重要です。 このため、周南コンビナート企業によるアンモニアサプライチェーンの構築、さらには燃料転換やCO2利活用などの技術開発等への支援を強化するとともに、拡大するバイオマス燃料の荷揚げ等に対応できる港湾インフラの整備や用地確保等、カーボンニュートラルポート形成の加速化を図っていく必要があります。 また、規制緩和について、国による柔軟な対応を求めることも必要です。 第二の柱は、自動車関連産業における脱炭素化に向けた取組の加速化です。 防府市に工場を置くマツダ株式会社において、自社工場のカーボンニュートラル化や、電気自動車の本格導入が計画される中、関連企業を含め、裾野の広い本県自動車関連産業の成長と雇用の安定を図るためには、県や国による強力な後押しが重要です。 具体的には、車載用蓄電池をはじめ、脱炭素の鍵となる蓄電池の国内製造基盤の拡充支援や、電動車の普及支援、地域関連企業の電動化技術の育成支援が必要と考えます。 また、工場等における脱炭素電源の導入拡大や、リサイクルの高度化など、自動車のライフサイクル全体の脱炭素化の取組を支援していくことも必要であります。 第三の柱は、エネルギーの脱炭素化と安定供給体制実現に向けた取組の加速化です。 国民生活や事業活動の基盤となるエネルギーの安定供給と環境適合の両立を図っていくことは極めて重要です。 具体的には、再生可能エネルギーについて、発電事業者から企業が直接電力を買い受けるモデルや、やまぐちぶちエコでんきの利用拡大、水力発電の供給力向上、次世代型の再生可能エネルギーの実装に向けた支援など、その普及拡大を図っていく必要があります。 一方で、当面の安定的な電源確保として、国において、CO2排出削減策を講じた既設火力発電の活用に向けた道筋を明確にした上で、石炭火力の脱炭素化を進めるための技術開発や大規模投資への支援を強化することが必要です。 また、SAFと言われる持続可能な航空燃料について、その原料収集の仕組みづくりやリサイクル技術開発の支援なども必要と考えます。 第四の柱は、地域企業の脱炭素化への取組の加速化です。 グローバル企業を中心に脱炭素化の取組が進む中、地域企業はサプライチェーンから脱炭素化への取組を要請されるなどの対応を迫られています。 また、地域企業が脱炭素に早期に取り組むことで、企業価値向上による競争力の強化やコスト削減など、様々なメリットを享受する可能性も有しています。 このため、経済団体、金融機関等との連携による普及啓発の強化や、脱炭素に貢献する技術開発や実装の加速化、また、半導体や蓄電池産業のさらなる集積に向けた取組の強化を図っていくことが必要であります。 第五の柱は、農林水産分野における温室効果ガス排出削減及び吸収源拡大に向けた取組の加速化です。 家畜生産により排出されるメタンガス等は、農林水産分野で排出される温室効果ガスの約三割を占めるなど、削減対策は急務であります。 他方、農林水産業は、森林や藻場・干潟など、CO2吸収源、脱炭素エネルギー源を生み出す役割も期待される産業であり、その振興は、本県のカーボンニュートラル達成に向けても重要な取組です。 このため、家畜由来の温室効果ガスの排出削減効果のある飼料の開発や普及等の促進を図っていくとともに、CO2の吸収源として、森林資源の活用を促進する取組や、ブルーカーボンの拡大に向けた取組を一層推進することが必要です。 最後は、物流分野等における取組の促進です。 移動や輸送手段の確保は、我々の生活や事業活動において必要不可欠である一方、運輸部門から発生するCO2排出量は、我が国全体の約二割を占めており、輸送等に係る脱炭素化の取組は喫緊の課題となっています。 また、ドライバー不足が懸念される状況も重なり、持続可能な物流の実現に向けた対応は急務です。 このため、デジタル技術を活用した共同輸配送や、パレット等の規格の統一、物流拠点の整備や統合など、物流の効率化・標準化への取組支援が必要です。 また、トラックなどの輸送用機械の電動化や、大型車向けの水素ステーションの整備促進なども必要と考えます。 以上が、本委員会の審査の経過及び結果の概要であります。 村岡知事さんをはじめ、執行部におかれましては、本報告書の趣旨を十分にお酌み取りいただき、カーボンニュートラルを契機とした、県内産業のさらなる発展に向け、積極的に対応されるようお願いをいたします。 最後に、関係者の皆様方の格別な御理解、御協力により、調査や取りまとめを行うことができましたことに、委員長として改めてお礼を申し上げます。 本委員会の報告といたします。(拍手)