1 公金の運用について 2 行動変容について 3 その他
副議長(島田教明君)藤生宰君。 〔藤生宰君登壇〕(拍手) 藤生宰君 自由民主党会派の藤生です。通告に従い一般質問させていただきますが、その前に一言申し上げます。 昨年十月末に開催された、やまぐち高校生県議会を傍聴しまして、大変印象に残った言葉がありました。それは、提案という言葉です。提案というのは、自身の頭の中をさらけ出すことであり、とても勇気が要ることと思います。 高校生県議会の会議録を調べてみますと、開会から閉会までの間、質問と答弁の中で、実に三十六回もの提案という言葉が使われており、大変活気のある議会を感じることができました。 改めて、議会は一人一人の議員が何を考えているのか発信するためにも大変重要な場であると再認識いたしましたので、高校生に負けずに提案重視の質問をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 最初に、公金の運用についてお尋ねいたします。 これまで、同僚議員から河川改修や学校トイレの改修について質問を聞いてきました。私も一議員として、地元からの同様の陳情を受けて県にも相談するのですが、財源がなく、国からお金を引っ張ってこないと厳しい、それには、有識者会議を設置して審議することが必要で、すごく時間がかかる、といったお返事を頂きます。 前提が、国からお金を引っ張ってくる、あるいは地方税収の増加。しかし、今や物価高騰などで企業も国民も苦しく、増税という時代でもないと思っています。 以前の私の一般質問でも、ふるさと納税やガバメントクラウドファンディングについてお聞きしましたが、根底にあるのは国や県民に依存しない方法で、県自ら財源調達する努力をもっとすべきではないだろうかということです。 そこで本日は、県が持っているお金、公金の運用についてお尋ねします。 政府は、おととしから資産運用立国を打ち出し、成長と分配の好循環により、我が国経済の成長と国民の資産所得の増加につなげようとしています。 このため、例えば、NISAやiDeCoを拡充し、各種優遇をつけながら投資環境を整備することで、個人の資産形成を後押ししています。 もともと日本人は貯金を好み、高齢者を中心にたんす預金も多く、資産を投資に回す割合が低いことが特徴とされます。 円は、安全資産とされる一方で金利は低いため、昨今、食料品やガソリンなどの物価上昇を肌身で感じているように、物価高騰、インフレが進む中では、円を保有したままだと実質的な購買力は目減りすることになります。 今、百円で購入できているものが、十年後には二百円になっていることも十分に考えられ、ただ円を持っておくことは、実質的な購買力が目減りするリスクがあることを認識しなければなりません。 大事なのは、購買力の維持向上であり、個人に投資を促す、すなわち国民の資産を円による預金から分散させていく政策は、国民を貧しくさせないための政策として評価しています。 そこで一つ、論点として考えたいのは、個人に貯蓄から投資へという行動変容を促す中、巨額の資金を扱う行政は、手元の資金を遊ばせていないだろうかということです。 公的な資金──公金を投資に回していいのか、という考えをされる方もいらっしゃるかもしれませんが、我々の年金を運用している世界最大の年金基金であるGPIFは、国内株式、国内債券、海外株式、海外債券を四分の一ずつの割合で保有してリスク分散しながら、実質的な運用利回りは二○○一年度以降二○二三年度まで年平均四・二四%と高い成果を上げています。 では、自治体はどうでしょうか。自治体が管理・運用する公金としては、大きくは歳計現金と基金があります。 それぞれ地方自治法の規定があり、歳計現金については第二百三十五条の四において「最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない」、基金については、第二百四十一条において「確実かつ効率的に運用しなければならない」とされています。 また、これに基づいた国からの通知として、昭和三十三年の自治省事務次官通知では、出納長等が行う保管の形式のうち最も適当と認められるのは確実な金融機関に対する預金の方法によることである、と発出されています。 しかし、昭和四十年には、国債が発行されるようになり、今や様々な債券、運用商品がある中で、預金のみでは、最も確実かつ有利な保管ということを満たせなくなっています。 また、国からの通知通達は、二○○○年の地方分権改革により、法的拘束力のない技術的助言と位置づけられ、自治体は法令の自主解釈権を獲得しました。 なお、先ほど御紹介したGPIFも、GPIF法第二十一条によって、運用は「安全かつ効率的に行われなければならない」とあり、地方自治法と同様の要請がなされていますが、先ほど申し上げたように、国内・海外の債券・株式による運用を行っています。 私は、各自治体における地方自治法の自主解釈によって資産運用の手法にかなり差が出てきているのではないかと感じています。 参考資料一に示しておりますが、全都道府県の公金運用について調査したところ、二十三の都府県が歳計現金や基金の運用実績をホームページ上で公開しており、公金の管理運用についての説明責任を積極的に果たされています。 また、近年は、効率的な運用の観点から、利回りの高い債券の比率を高める傾向にあり、令和五年度の基金の運用利回りについて見ると、大阪府は一・○二%、神奈川県は○・五八%、岩手県、群馬県は○・四%台など、高い利回りを達成しています。 一方で、山口県については、情報公開されていなかったので、あらかじめ集計をお願いしましたところ、歳計現金・基金ともに運用利回りは○・○○二%であり、全て預金及び預金同様の利率である歳計現金への繰替えで運用されているとのことでした。 私は、村岡県政の大きな成果の一つは、財政の健全化であると思っています。 総務省が公開する財政状況資料集を見ましても、経常収支比率、実質公債費比率、将来負担比率などは改善傾向で、財政力が同等の都道府県グループの中では財政は健全な状態にあります。 また、先ほど来取り上げている基金については、同じく財政状況資料集における記載を見ると、財源調整用基金の残高について、災害等への備えのため必要な目安としている百億円以上確保とあり、いざというときの備えもできました。 特定目的基金などと合わせた三十基金の合計残高は、令和五年度末時点で約八百八十億円になりました。 ただ、繰り返しになりますが、国が資産運用立国と打ち出し、国民に投資を促す中、自治体の公金についても、円預金によって積み立てるような確実性ばかり重視して、効率性を軽視することがあってはならず、インフレがこれから進むと思われる中、将来の購買力を目減りさせない公金運用を求めたいと思います。 そこで三点ほど提案したいと思います。 一点目は、基金の一括運用です。 基金の一括運用の反対が基金の個別運用、すなわち基金ごとに通帳を作って管理する方法で、現在、山口県でも取られている方法です。 管理しやすいメリットがある一方で、基金にはそれぞれの目的があるからと保守的な運用になりやすいとされています。 これに対し、基金の一括運用は、複数の基金を一体的に管理することで、不測の基金の取崩しに対しても、基金の間で融通でき、全体で見れば債券などにより長期的に運用可能な基金の割合を高めることで効率的な運用ができます。 さらに、国東市等で事例がありますが、公営企業等も連結で考えて、関連団体の資金と一緒に運用することなどにより、資金を搾り出した上でまとめて運用していくことも有効です。 二つ目の提案が、各基金の取崩しスケジュールの明確化です。 基金額の多くの割合を占める特定目的基金は、そもそも目的があって計画的に積み立てているはずですが、終了時期が未定であったり、定量的な目標がなかったりで、一議員としても適切に扱われているのか審査が難しく、透明性の確保も求められます。 そういった背景の中で、基金の取崩しスケジュールについても、いつ何円取り崩すという計画は決まっておらず、その年々の予算編成次第で決まるところがあると伺っており、都合のいい財布とも取れるわけです。 この取崩しスケジュールが、おおよそでも明確になれば、どの期間にどれだけの余裕資金があるのか洗い出され、長期の利回りのよい金融商品による運用も組み込むことができるはずです。 最後の提案が、公金運用の人材育成と組織改革です。 そうはいっても、運用には専門性が必須です。少なくとも基金だけで八百八十億円規模なので、運用のプロを招聘しても費用対効果は十分に見込むことができるでしょうし、プロの下で専門人材の育成を進めていくことができます。 専門性を培った人材は、人事異動についても長いサイクルで考えていく必要があります。また、基金を一元的に運用することのできる組織への改革も併せて必要になると考えます。 以上、るる申し上げました提案についての御見解、そして、山口県のこれからの公金の運用方針についてお尋ねいたします。 次に、行動変容についてお尋ねします。 県は、これまでにも様々な行動変容施策を実施されています。 例えば、昨年十月から導入された、家族でやま学の日は、公立学校に通う子供が、平日に欠席扱いにならずに、学校の外で家族と学ぶ機会をもっと増やそうという取組であり、教育の原点は家庭であることを見つめ直すためにも意義深い取組と思います。 同じく、行動変容という点では、山口県は男性県職員の育休取得率について、二週間以上の取得を二○二五年までに一○○%にするという目標を掲げられています。 これらのあるべき姿を目指した行動変容施策は、ぜひ波及していってほしいと思いますが、休む人員をサポートできる体制のある行政や大企業であればともかく、多くの方が従事する中小企業からすると、深刻な人手不足の中でまねできないという声も漏れ聞こえ、波及させたい施策が県民との距離をかえって広げてしまうこともあると思うわけです。 そこで、より直接に県民に喜んでいただける行動変容施策も必要ではないかと考え、三つの項目で提案と質問をいたします。 まず、公務員による地域貢献活動についてです。 地域の方々から、公務員にもっと地域活動に参加してほしいとのお声を聞きます。もちろん私としては、自治会やPTA活動等で大いに活躍されている公務員の方は存じておりますが、とりわけ人口減少・高齢化で、担い手が大きく不足している本県においては、期待の声とも受け止めています。 現在、山口県には、ボランティア休暇という特別休暇制度がありますが、休暇取得に際して認められる活動分野が、被災地域における支援活動と障害、負傷、疾病がある者の支援に限られています。 ボランティア休暇の取得実績は、令和五年度は美祢の豪雨災害復旧のため十六件あるのですが、令和元年度から令和四年度にかけての取得実績はゼロ件となっており、日常的なボランティア活動には全く使われておらず、制度自体の使いづらさに要因があるのではないかと思われます。 自治会やNPOなど、地域に貢献する活動を特別休暇の対象とすることについては、国と地方の間でやり取りがされており、昨年十二月、総務省より出された通知では、地方自治体は国家公務員における特別休暇の考え方を踏まえて、その必要性等を判断するとともに、条例を定めるなど住民の理解を得るよう求めています。 つまり、国家公務員にない休暇であっても、地域活動の担い手不足が深刻化する本県の実情を踏まえれば、条例により地域貢献活動を事由とする特別休暇は創設できると理解しています。 実際、同じく地域の担い手不足が深刻と思われる鳥取県では、この通知が出される以前の令和五年十月に地域活動に従事するためのふるさと応援休暇を、ボランティア休暇とは別に創設されており、創設から令和五年度末まで半年間のふるさと応援休暇取得実績は、三十三件とのことでした。 そして、地域貢献活動は、受け入れる地域側のメリットだけでなく、人材育成、自己実現に向けた働き方改革という点でもメリットがあります。 公務員の方からは、このまま公務員として仕事を続けることでいいのだろうか、もっとほかのことをやったほうが地域のために役立てるのではないだろうかとのお声もあり、自己実現の機会を創出していくことも重要です。 総務官僚出身者が立ち上げられた一般財団法人地域活性化センターは、地域に飛び出す公務員を提唱されており、仕事だけでなく、地域活動にも積極的に参加する公務員のネットワークをつくっておられ、活動事例では、地域活動だけでなく、公務で培ったスキルを生かした活動も紹介されています。 仕事の経験やノウハウを生かしたボランティア活動のことをプロボノ活動といい、ある大手企業では数百人を擁するプロボノ倶楽部があったり、青森県庁ではプロボノ部があったりして、仕事外での地域貢献活動に取り組まれています。 私も何度かプロボノ活動に参加したことがあります。通常であれば一緒に仕事をすることのない他業種・他地域の方、また職級についても、新人から管理職まで様々な方とフラットな関係で、共通の課題に一緒に取り組むことで、人脈形成はもちろんのこと、プロジェクトの進め方など新たなノウハウを学んだり、自身のスキルを見つめ直すことができたりと、外の世界に触れることで成長やモチベーションアップにつながったと実感しております。 少し話はそれますが、同じく公務員である学校の先生が、生徒にどう見られているかという点で印象に残ったことがありました。 先日、今年度で五回目となる県の事業「やまぐち若者MY PROJECT」。高校生たちが、自分の身近にある課題を主体的に発見し、課題解決に向けたプロジェクトの実践を通して学ぶというもので、その発表会を傍聴しに行きました。 その中で、不登校をテーマにした発表を聞きました。高校生が、大人たちから聞いた、かつての学校と自分たちが感じている今の学校を対比したのですが、かつての学校は、生活態度にはとても厳しかったけれども、勉強の出来不出来については寛容であった。一方で、今の学校は、同質性の高い集団が形成されていて、学校にいると疲れる、ということが語られました。 不登校対策として、多様性のある学校にしていくことが必要だとした上で、そのためには、学校の先生がもっと社会との接点を持つ、という提案項目があり、先生の人生に新しい風を入れてほしいという発言には、会場から拍手が起こっていました。 私は、この発表を聞いて、子供たちの感じている学校は、今の閉塞的な社会の縮図のように感じるとともに、先生には職場の外での活動を通じて得た多様な経験・考え方を学校に吹き込んでほしいという期待も感じました。 高校生が学校の先生に提案したように、県職員をはじめとした公務員の皆様にも、地域に飛び出して、仕事で培った経験やノウハウを生かしていただきたい。そして、地域活動を通じて得たスキルや人脈、現場の声をまた仕事に生かしていただけたらと思いますが、それには制度面での後押しも期待したいところです。 そこで提案いたします。地域貢献活動休暇の導入、あるいはボランティア休暇取得に際して認められる活動の範囲を拡大していただくとともに、育休の取得推進でも掲げられたような目標値を定め、働き方改革と地域貢献の両面に働きかけてはいかがかと思いますが、県の考えを伺います。 次に、渋滞対策についてです。 ここ山口市は、県庁、市役所、国の出先機関など行政機能が集中し、公務員のまちと言われます。人口に占める公務員の割合が多いだけでなく、経済的にも産業付加価値額のトップは公務であり、公務員の行動によって、大きくまちが変わるポテンシャルを秘めています。 そんな山口市ですが、御承知のとおり、朝夕は国道九号を中心に渋滞が常態化しています。渋滞は、一人一人の時間を奪うため、これを解消すれば、経済も住民の幸福度も高めていくことができるはずです。 私は、県がリーダーシップを示して行動変容していくことで、渋滞に対しても成果を出し、県政への信頼を高めていくことができると考えます。 一つ事例を紹介します。年明けに、台湾の世界的半導体メーカーであるTSMCが進出した熊本県菊陽町の工業団地を訪ねました。 圧倒される規模の工場で、県外の我々からすると、その経済波及効果は羨ましいところですが、渋滞への影響が深刻化しています。 熊本都市圏の自動車平均速度は、三大都市圏を除けば全国の政令市でワースト一位、また、渋滞箇所数についても全国の政令市でワースト一位となっていることから、昨年六月、熊本県は渋滞解消推進本部を設置し、県と市、民間で協力して、ハードとソフトの両面で渋滞対策を展開しています。 このうち、ソフト対策としての時差出勤及び在宅勤務は、注目に値します。 山口県でも同様の制度を、働き方改革という内向きの文脈で設けていますが、熊本県は渋滞対策として活用しています。 実際、昨年九月には、主要渋滞箇所の交通量等をKPIとした実証試験を行っておられ、熊本県と市の職員、さらに地元金融機関にも呼びかけて、約四千六百人が時差出勤及び在宅勤務に取り組み、県庁付近の主な交差点で、交通量が約一○%減少する効果を得たということです。 なお、熊本県職員におかれては、自動車通勤台数千二百二十二台のうち約六割に当たる七百十一台分ほど時差出勤等に協力されたとのことです。 今後は、実証結果を踏まえて、オール熊本で一万人規模に拡大するための実施企業の宣言や認定制度も考えておられます。 成果を検証しながら、施策の強度を強めていく取組は、科学的根拠に基づいた政策立案EBPMとしても評価できますし、市民生活のため県自ら行動変容していく姿勢は、県政を身近に感じさせます。 熊本県の場合は、危機感からの行動と言えるかもしれませんが、県庁所在地で行政機能が集中するここ山口市においても、同様に効果を生み得る施策ではないかと思います。 参考資料二に、本県における時差出勤及び在宅勤務の近年の取得実績を示していますが、在宅勤務の利用人数はコロナ前に徐々に戻りつつありますし、時差出勤については、所定勤務時間から三十分の範囲内でずらして勤務する人が多いので、制度の利用者数を増やすとともに、より大胆に時間をずらすよう誘導することも有効と考えられます。 そこで提案と質問です。時差出勤や在宅勤務を、職員の働き方改革という内向きの施策としてだけ捉えるのではなく、渋滞対策という一般県民にも効果がある施策と捉え直し、その成果を数字で示していくことで、県民のために行動する県庁と思っていただき、県政への理解を一層促進することにもつながると思いますが、御見解を伺います。 最後に、デジタルの活用について伺います。 購買促進や健康管理などのアプリが日常生活に溶け込み、今やデジタルによって人の行動を変えようとする取組は、官民問わず当たり前となっています。 実際、多くの自治体において、行動変容を促すためにスマホ向けのアプリを開発しています。 ただ、都道府県のみならず、市町村含めて同じようなアプリを開発していることについては、過当競争、過剰投資が起こっていること、また、できる自治体とそうでない自治体の間で格差が広がっていくことも懸念されています。 また、一つの自治体の中においても、部署の縦割りによってアプリが乱発することもよくあり、利用者にとってはあれもこれもダウンロードしなくてはならず、財布の中のポイントカードのように管理しきれなくなってしまいます。 山口県においても、現在三つのアプリがあり、二○二五年一月末時点の利用者数とともに確認しますと、エコな行動を知って学んで実践することでポイントがたまる、ぶちエコアプリは、リリースから約三年でユーザー数七千人弱。地産地消に協力するお店への来店や購入に応じてポイントがたまる、ぶちうまアプリは、リリースから約三年でユーザー数は三万九千人弱。ウオーキングやボランティアでポイントがたまる、やまぐち健幸アプリは、リリースから約六年でダウンロード数は約七万五千件弱となっています。 アプリの利用者数は、それだけ行動変容を訴えかけられる発信先があるという意味で、影響力を示す重要な指標です。 そのため、アプリを開発して終わりではなく、リリース後の利用者数の伸びを意識しなければならず、それにはユーザー目線に立ったマーケットイン発想での利用者拡大策が必要と考えます。 そこで二つの提案をいたします。 まず、アプリの集約、ワンストップ化です。 先ほど申し上げた県の三つのアプリは、それぞれポイントをためることのできるアプリですが、独立のアプリで共通のポイントではなく、ポイント同士の交換もできません。利用者目線に立てば、山口県のアプリは一つがよく、アプリの中でジャンルが分かれていることが望ましいと考えます。 複数のミニアプリが入ったアプリのことをスーパーアプリといいますが、佐賀市公式スーパーアプリでは、市役所機能をアプリ内に集約する発想で、施設予約、デジタル図書館カード、マイナンバーと連携したデジタル市民証、学校出欠連絡、災害防災、観光など複数のアプリが集約されたワンストップアプリとなっています。 そして、ワンストップ化に向けて力を発揮していただきたいのが、二○二一年に発足した本県のデジタル推進局です。 デジタルは、組織に横串を通す優れた手段でもあるため、ポイントの共通化や交換機能の充備など、利用者目線に立った全体最適化を目指していただきたいです。 さらには、県だけではなく、県内市町との連携も図っていただき、共通のツールとして標準化していくことができれば、自治体間での過当競争、過剰投資、デジタル格差拡大を抑制することができると思います。 二つ目の提案が、適時に経済的インセンティブを付与することです。 昨年の六月に一般質問でも取り上げました愛媛県西条市のLOVE SAIJOポイントは、コロナ禍においてプレミアムつき食事券を同ポイントで配布することにより、開始二年で西条市の人口の三から四割に利用されるようになりました。 LOVE SAIJOポイントは、SDGsに貢献する活動に参加することでも付与される仕組みとなっており、コロナ禍でユーザー数を増やしたことで、より有効な行動変容ツールとなっています。 また、先ほど御紹介した佐賀市公式スーパーアプリについても、リリースから一年半ほどとなる令和七年一月末時点のダウンロード数は、佐賀市人口の三割弱となる約六万四千件に達していますが、物価高騰対策としての地域振興券やタクシーの電子チケットを、アプリ経由で申込みできるようにすることで、利用者獲得につなげられています。 なお、スーパーアプリ内で表示できるマイナンバーと連携したデジタル市民証を取得された方が、これらの経済的インセンティブのあるチケットを申し込むことができるようになっておりまして、二重申込みなどの不正を防ぐとともに、今後マイナンバーを有効活用していくための土台づくりをされていることも注目に値します。 今申し上げた事例のように、コロナや物価高など、外部環境の急激な変化はこれからも想定されます。 そうした変化を適時に捉え、集約化されたアプリを通じて、分野に応じたインセンティブを付与することができれば、アプリ総体としてのユーザー数を効率的に増加させることができ、行動変容をより有効に促す基盤づくりになると思うわけです。 以上、二つの提案を踏まえていただき、本県アプリについて、今後、ユーザー数の増加と行動変容を促すより有効なデジタルツールとするため、全体最適の視点に立った集約化とインセンティブの付与に、今後どのように取り組まれるのかお尋ねいたしまして、私の一般質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 副議長(島田教明君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)藤生議員の御質問のうち、私からは行動変容についてのお尋ねの中で、公務員による地域貢献活動についてのお尋ねにお答えします。 職員が担当する業務にとどまらず、ボランティア等の形で現場に出ていくことは、地域の活性化や課題解決に資するとともに、地域の課題や実情を体験、実感できる貴重な機会であり、自己啓発や能力開発の観点からも有意義なものと考えています。 このため私は、これまで災害ボランティアや県庁中山間応援隊などの活動を通じ、職員の現場での実践を促進してきたところであり、新たに策定する山口県人材育成・確保基本方針でも人材育成の取組の一つに掲げ、引き続き積極的に推進していく考えです。 そして、このような地域での活動のうち、特に公に対する貢献性が高いものについては、国及び他の公共団体の職員との均衡の観点を踏まえた上で特別休暇の対象としており、現在本県では、いわゆるボランティア休暇を定め、その取得対象については、国と同様の取扱いとしているところです。 こうした中、自治会やNPOなどの地域活動について、お示しの鳥取県のように、新たな特別休暇を創設した事例のほか、他県でもボランティア休暇の取得事由に追加するなどの動きが進んでいます。 本県におきましても、人口減少に伴う地域社会の担い手の減少をはじめ、学校部活動の地域移行など、地域活動をめぐる状況は変化をしており、今後、他県の動向等を踏まえ、特別休暇制度を見直すことについて検討を進めていきたいと考えています。 また、御提案のありました目標値の設定につきましては、もとよりこうした活動は職員の自主性を尊重して進めるべきと認識をしていますが、この点につきましても今後の検討の中で、併せて考えてまいります。 私は、職員の人材育成と地域の活性化に向けて、意欲のある職員が、積極的に地域貢献活動に関わっていくことができるよう、しっかりと支援してまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 副議長(島田教明君)佐藤総務部長。 〔総務部長 佐藤茂宗君登壇〕 総務部長(佐藤茂宗君)行動変容についてのお尋ねのうち、渋滞対策についてお答えします。 本県では、県庁働き方改革の下で、多様な働き方を可能とする職場環境づくりに向け、時差出勤や在宅勤務制度を導入するとともに、昨年度から、デジタルを最大限活用して業務の効率化と新たな働き方を実現する、やまぐちワークスタイルシフトに取り組んでいるところです。 また、今後策定する人材育成・確保基本方針においても、働き方に関する各種制度の見直しなど、ワーク・ライフ・バランスを実現する職場環境づくりを加速させることとしています。 お示しの熊本県の事例は、社会課題の解決に向け、官民一体となった取組の一環として行われているものと理解していますが、一方で、これらの制度は、職員一人一人が自らのワーク・ライフ・バランスを実現するために活用することが基本であると考えています。 したがって、現時点では、渋滞対策としての組織的な活用や、成果を数字で示すことまでは考えていませんが、県としては、全ての職員がそれぞれの事情や目的に応じて、多様で柔軟な働き方を選択できるよう、引き続き、時差出勤等の制度の適切な運用及び必要に応じた見直しをはじめ、職場環境の整備にしっかりと取り組んでまいります。 副議長(島田教明君)永富総合企画部長。 〔総合企画部長 永富直樹君登壇〕 総合企画部長(永富直樹君)行動変容に関するお尋ねのうち、デジタルの活用についてお答えします。 施策の効果的な推進に当たっては、住民の理解と参加を得ることが重要であり、様々な分野のスマホ向けアプリが、その促進手法として活用されています。 本県においても、環境や健康などの分野で、ポイント付与機能も持つスマホ向けアプリを提供し、県民の行動変容につながる情報提供やイベントへの参加促進などを行っています。 こうした中、まず、複数のアプリを集約したスーパーアプリの御提案については、一つのアプリのダウンロードで、複数のサービスの利用が可能となることや、画面デザインなどが統一化されて使い勝手がよくなるなど、利便性の向上につながると考えます。 さらに、アプリ集約化は、ポイントの共通化や交換などが利用者のメリットになるとともに、行政にとっても、複数の分野で横断的に活用できるデータを把握し、それを新たなサービスの構築などへ生かすこともできると考えています。 その一方で、スーパーアプリについては、開発や運用コストが大きく膨らむ可能性が高く、多くのアプリの組み込みは、利用者が望まないサービスの提供や、各サービスへのアクセスが煩雑化するなどの課題もあると認識しています。 経済的インセンティブ付与の御提案については、お示しのように、アプリの利用促進や利用者確保などの効果があると考えますが、その費用負担を特に行政が行う場合には、費用に見合う成果が得られるか、十分な検討が必要です。 いずれにしても、頂いた二つの御提案については、様々な観点からの検討が必要と考えておりますが、そうした中、御提案の趣旨にも通じる、全国規模での新たな動きも出ているところです。 まず、様々なサービスの間で、データの連携と共有を行うデータ連携基盤の構築について、今後、都道府県が中心となって進めることが求められています。 さらに、市町と連携した共通ツールによる標準化に関しても、国・地方デジタル共通基盤の整備の取組の中で、都道府県の共同調達による横展開の推進が、テーマの一つとなっているところです。 県としては、こうした状況も踏まえ、アプリの統合やデータ連携の方法などについては、将来を見据えながら、しっかりと検討を行う必要があると考えていることから、今後、先行する他の都道府県の状況など広く情報収集を行いながら、御提案いただいた内容も含め、総合的な検討を進めていきたいと考えています。 副議長(島田教明君)岡本会計管理局長。 〔会計管理局長 岡本章生君登壇〕 会計管理局長(岡本章生君)公金の運用についての数点のお尋ねにお答えします。 地方公共団体が扱う公金については、行財政運営の持続性及び安定性を図るため、資金の安全性を第一とした効率的な管理・運用が重要です。 このため、県では、庁内関係課で構成する山口県公金管理・運用対策会議を設置し、公金保護及び運用に係る基本方針に基づき、基金運用など、公金の一元的な管理・運用を行っているところです。 まず、三つの御提案に対する県の見解のうち、基金の一括運用と基金の取崩しスケジュールの明確化についてです。 基金の一括運用は、資金集約によるスケールメリットを生かした効率的な運用を可能とするものであり、また、各基金の取崩しスケジュールの明確化についても、余裕資金の流動性の把握が可能となるなど、ともに効果的な基金の運用手法であると認識しております。 一方で、本県の基金の中には、災害対応等に備えた基金や、政策課題に機動的に対応するため、各年度の予算編成において取崩し額を決定する基金もあり、運用が可能な期間にばらつきがあるところです。 今後、こうした状況を踏まえ、基金を運用可能な期間ごとに整理した上で、他の自治体の取組も参考にしながら、調査研究を進めてまいります。 次に、三点目の公金運用の人材育成と組織改革についてです。 お示しのとおり、債券による運用は、高度な専門性が求められることから、金融の専門家による研修会の開催等、人材育成の取組を強化するとともに、公金管理・運用対策会議における専門部会の設置等、必要に応じた見直しを検討します。 次に、県のこれからの公金の運用方針についてです。 公金の運用については、中途売却による元本割れリスクが懸念されることなどから、国債等債券による運用は行わず、安全性の確保を第一に、県の借入金と相殺可能な定期性預金による運用を行っているところです。 一方、ここ数年の景気回復等に伴う賃金上昇や物価高騰等により、国債等の利回りは上昇基調にあり、債券による運用の有利性は高まりつつあります。 このため、今後、債券による効率的な運用について、専門的な知見を高めるとともに、債券による公金運用の可能性等についての検討を進めてまいります。 県としては、将来の資金需要を的確に把握し、金融経済情勢等を慎重に見極めながら、引き続き、安全で効率的な公金の管理・運用に努めてまいります。 副議長(島田教明君)本日の一般質問及び提出議案に対する質疑は、これをもって終了いたします。 ───◆─・──◆──── 副議長(島田教明君)以上をもって、本日の日程は全部終了いたしました。 本日は、これをもって散会いたします。 午後二時三十五分散会