1 令和7年度当初予算について 2 防災・減災対策の推進について 3 賃金・所得の持続的な増加に向けた力強い産業の実現について 4 産業・交流基盤の整備について 5 交流人口の拡大に向けた観光振興について 6 教育行政について
───◆─・──◆──── 日程第一 代表質問 日程第二 議案第一号から第七十五号まで 議長(柳居俊学君)日程第一、代表質問を行い、日程第二、議案第一号から第七十五号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 畑原勇太君。 〔畑原勇太君登壇〕(拍手) 畑原勇太君 皆様、おはようございます。自由民主党の畑原勇太です。 令和七年二月定例会に当たり、自由民主党会派を代表して、県政の諸課題について、知事及び教育長に質問いたします。 質問に先立ち一言申し上げます。 本年二月七日、岩国市内の国道上において、降りしきる雪の影響により交通事故が多発する中、懸命に対応していた若手警察官が大型貨物車に衝突され、貴い命が奪われました。心から哀悼の意を表するとともに、御家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。 今我が国は、人口減少の加速化が止まらず、少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少が進んでいます。また、昨年の能登半島地震をはじめ、相次いで発生する豪雨などの自然災害、厳しさを増す安全保障環境、長く低迷してきた経済に、長引く物価高騰など、様々な困難な課題を抱えています。 一方で、日経平均株価が史上最高値を更新し、賃上げ率が過去最高を更新するなど、三十年ぶりにデフレからの脱却に向けた兆候が見えており、この明るい兆しを絶やすことなく、経済の好循環につなげ、誰もが安心して暮らせる豊かな社会を実現していかなければなりません。 このためには、現在、国会において審議が行われている新年度予算案を一日も早く成立させることが求められています。 我々自由民主党会派は、人口減少や長引く物価高騰、人手不足をはじめとした県民の皆様が直面している課題や声をしっかりと受け止め、確実に県政に届けるとともに、本県が着実に成長していくため、将来に向けた未来志向の議論を行ってまいる所存であります。 今年は、戦後八十年に当たる年であります。これまでの歩みを振り返り、これからの新しい山口県を考え、県民の皆様と共につくり上げていく節目の年にしてまいりたいと思います。 我が自由民主党会派は、これまで培ってきた実績と実現力、本県の未来に対する思いを掲げ、県民の皆様の信頼と期待に全力で応える決意であることを改めて申し上げ、通告に従い質問いたします。 初めに、令和七年度当初予算についてお尋ねします。 総務省が公表した二○二四年の人口移動報告では、東京圏への転入超過が約十三万六千人となり、一時和らいだ東京一極集中の水準がコロナ前に戻りつつある実態が明らかになりました。 就職・進学を契機とした若者、女性の流出が再加速し、地方の少子化や労働力不足を助長する、極めて深刻な状況です。 とりわけ本県では、こうした人口流出が顕著であり、人手不足が社会経済の持続的な発展を阻害するとの声が、様々な業界から我々に届いています。その背景には、福岡や関西圏など、東京圏以外へも流出拡大が続くという新たな課題も見え始めています。 この厳しい現状を打破するには、これまで以上に強い危機感を持って、かねてから我が会派が申し上げてきた、若者や女性に寄り添い、選ばれる県づくりを進めることが何より重要であります。 本年一月初旬、自由民主党山口県連では、市町や友好団体から頂いた七百件を超える要望を五十八項目の超重点要望事項として取りまとめ、村岡知事に要望いたしました。 このたびの当初予算案には、我が党の要望も踏まえた、人口減少に対する取組や地域医療、介護提供体制の充実強化、産業脱炭素化やデジタル実装の加速、観光交流の拡大などに向けた取組がしっかりと盛り込まれております。 加えて、能登半島地震の課題を踏まえた防災・減災対策や、物価高対策をはじめ、国の政策を踏まえた取組など、直面する課題に対しても、限られた財源の中で、私どもの要望に対し可能な限りの措置をしていただいたところです。 このたびの予算で新たに構築された施策について、市町や関係団体と一体となって取組を進め、その成果を目に見える形で発現させることが重要です。 また、次々立ちはだかる行政課題に対応しながら、県政発展に向けた様々な取組を持続していくためには、将来にわたる健全な行財政基盤の構築が不可欠となります。 県政推進の土台となる行財政運営については、先例にとらわれない柔軟な発想や、時代に即した新たな視点も取り入れながら、今後の見通しを示していくことが求められます。 知事におかれましては、人口減少が厳しさを増す中でも、未来維新プランに沿った取組を着実に進めるとともに、より一層強固な行財政基盤の確立にも注力され、確かな実感をその成果として県民の皆さんに届けていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。来年度当初予算について、この予算に込めた知事の思いと、今後の取組を進めるに当たっての決意について、まずお伺いします。 あわせて、県政運営の基盤である行財政の改革を今後どう推進されるのか、御所見をお伺いします。 次に、防災・減災対策の推進についてお尋ねします。 昨年は、元日に発生した能登半島地震の痛ましい被害を目の当たりにし、八月には初めて南海トラフ地震臨時情報が発表され、一週間にわたって様々な社会経済活動に影響が生じるなど、我が国全体が突如発生する地震の恐ろしさと対策の重要性を身をもって体感した一年となりました。 本年一月には、政府の地震調査研究推進本部において、南海トラフ巨大地震が向こう三十年以内に発生する確率を八○%程度に引き上げました。 地震が少ないとされる本県においても、過去に発生した南海トラフ地震では大きな被害を受けており、今後、高い確率で発生する巨大地震への警戒を一層強め、新たな備えや対策を講じていく必要性が高まっています。 また、気候変動に伴い、線状降水帯や大型台風による風水害は、毎年のように全国各地で発生しており、本県においても令和五年梅雨前線豪雨、平成三十年西日本豪雨では、貴い人命が失われるなど甚大な被害が生じています。 こうした激甚化・頻発化する自然災害から県民の生命・財産を守り抜くためには、最新の知見も生かしながら、スピード感を持って的確に防災・減災対策を推進していかなくてはなりません。 我が会派は、常に自然災害に対する危機感を持ち、これまでも様々な機会を通じて対策の充実を訴え、執行部と共に様々な議論を深めてまいりました。 知事におかれても、昨年四月に地震・津波防災対策検討委員会を設置され、能登半島地震での課題検証を行い、その内容を今後の防災・減災対策に生かすべく、体制・物流・避難の分野ごとに検討を進めてこられたところです。 この中で大規模災害時における被災自治体の受援体制の整備、交通インフラの被災による孤立集落の発生や物流網の寸断、想定を超える多数の避難者の発生など、数々の課題について対応策を検討してこられたものと理解しています。 こうした検討を経て、このたびの当初予算案に、広域避難体制の整備や避難所の環境改善、耐震化の推進に加え、災害医療の充実や中小企業の防災対策への支援制度の創設など、様々な視点からの対策が盛り込まれたことは大いに評価できるところであり、今後は、これらの対策を着実に実施し、防災・減災対策を強化していくことが必要です。 知事には、力強いリーダーシップを発揮していただき、国や市町とも連携しながら、県の防災体制の強化、備蓄物資の充実や搬送体制の構築、避難所の環境改善や広域避難体制の充実強化など、幅広い取組を迅速かつ着実に進め、県民に安心・安全をしっかりと届けていただきたいと思うのであります。 そこでお尋ねします。能登半島地震の課題検証を踏まえ、そこから得た教訓を生かし、本県のさらなる防災・減災対策の推進に今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いします。 次に、賃金・所得の持続的な増加に向けた力強い産業の実現についてお尋ねします。 昨年、我が国経済は、六百兆円を超える名目GDP、百兆円を超える設備投資を記録し、さらには一九九一年以来、実に三十三年ぶりとなる高水準の賃上げを果たしました。 まさに今、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点を迎えています。 一方で、長引く物価高や人手不足などの厳しさを増す経済情勢を受け、我が会派には、県内の多くの企業や団体から切実な声が寄せられています。 物価高やエネルギーコストの上昇による負担は、企業に重くのしかかり、特に、中小企業においては、労務費や原材料費等の価格転嫁が追いついていない状況にあります。 また、深刻な人手不足が、企業の積極的な経済活動を妨げ、既存事業の運営にも影響を及ぼすなど、賃上げに向けた原資の確保が困難な状況が続いています。 こうした中においても、本県では、一昨年、三・七九%、昨年、五・六○%と連続して過去最高水準の賃上げを実現しており、この流れを途切れさせることなく、構造的・持続的なものとしていかなければなりません。 そのためには、まず、県内企業の稼ぐ力を引き出し、増強することが必要であります。 物価高で、いまだ回復の途上にある県内消費を刺激し、中小企業の需要の底上げを図るとともに、未来に向けた成長産業の育成や企業誘致、旺盛な海外需要を取り込む戦略的な海外展開、本県経済を力強く牽引するカーボンニュートラルコンビナートの形成など、本県の産業競争力を強化し、成長と分配の好循環を実現する施策が求められます。 また、現在整備が進められている東部地域産業振興センターは、新事業の創出やDXの推進、充実した産業支援機能等により、企業のさらなる成長を促す施設になると大いに期待しているところであり、私は東部地域の議員の一人として、その着実な整備を強くお願いするものであります。 そして、そうした企業の活動を支える大前提となるのは、やはり、人であります。若者の県内就職促進対策の一層の充実強化に加え、企業の賃上げや生産性向上、働きやすい魅力的な職場環境づくりを支援するなど、本県産業の今を支え、そして、未来を担う方々が、これからも山口県で働き続けたい、あるいは国内外から山口県で働いてみたいと感じていただけるよう、人への投資を強力に推進していただきたいのです。 我が会派では、これまで一貫して厳しい荒波に負けることのない力強い産業の実現を求めてまいりました。今こそ、賃上げの暖かい風が中小企業をはじめ県内津々浦々に届くよう、本県の産業労働政策を戦略的に展開し、力強い産業を実現していただきたいと考えますが、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いします。 次に、産業・交流基盤の整備についてお尋ねします。 県政における目下の最重要課題である人口減少を克服するためには、本県の活力の源となる産業力を大きく伸ばし、魅力ある雇用の場を創出していくと同時に、県内外との人や物の交流を拡大し、地域の活性化を図っていくことが重要であると考えます。 本県産業が、社会経済のグローバル化が進む中で厳しい国際競争にさらされ、また、自動車交通への依存度が高い本県の現状を踏まえると、物流基盤の強化を図っていくことが何よりも肝要であり、港湾の機能強化や幹線道路網の整備など、産業・交流基盤の整備が必要不可欠であります。 このため県では、やまぐち未来維新プランや、やまぐち産業イノベーション戦略に基づき、産業・交流基盤の整備に積極的に取り組んでこられました。 まず、港湾の機能強化については、石炭やバイオマスの一括大量輸送により輸送コストの一層の削減に資する国際バルク戦略港湾施策の早期実現に向け、ハード・ソフト両面での取組を推進されてきました。 ハード面では、徳山下松港において、国内最大級の大水深公共桟橋が完成間近となり、ソフト面においても、港湾運営会社を核とした共同輸送の実績が着実に積み重ねられてきております。 今後は、企業の国際競争力強化に資する国際バルク戦略港湾施策の取組を計画的に進めていくことに加え、喫緊の課題である、県内産業の脱炭素化に向け、その取組を後押しするカーボンニュートラルポートの形成の取組を加速化していかなくてはなりません。 また、幹線道路網の整備では、迅速かつ円滑な物流等の実現や、県内各地や県外との交流を促進するため、山陰道をはじめとする高規格道路や、国道二号、百八十八号などの主要幹線道路について、県と県議会が一体となって事業促進に努力してきた結果、県内全域にわたり多くの事業が展開されています。 しかしながら、高速交通体系の根幹をなす山陰道では、四割を超える未着手区間が残っており、また、都市部の慢性的な渋滞や自然災害による通行規制などの課題も解消されていないことから、幹線道路網の整備は道半ばとなっています。 今後は、事業化された区間の早期完成はもちろん、未着手区間についても早期事業化に向けた動きを一層加速化することで、物流等の円滑化や県内外との交流拡大に資する幹線道路網の整備を強力に進めていただきたいと思うのです。 そこでお尋ねします。本県の活力の源となる産業力を大きく伸ばし、また、県内外の交流のさらなる拡大を図るため、最も基礎的な基盤となる港湾や幹線道路網などの産業・交流基盤の整備に、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いします。 次に、交流人口の拡大に向けた観光振興についてお尋ねします。 二○二四年は、記録的なインバウンド需要拡大の後押しを受け、三大都市圏を中心としたオーバーツーリズムが社会問題化するほど、旅行業界はこれまでになく活況を呈した一年となりました。 そうした中、ニューヨークタイムズ紙への掲載で、本県が一躍脚光を浴び、観光業界の期待は高まりましたが、とりわけインバウンドの観光客数に思い描いていたほどの伸びは見られず、県内隅々までその恩恵が行き届いているとまでは言えません。 我が自由民主党は、観光関連産業の発展を成し遂げるべく、観光振興を牽引していただきたいと、これまで繰り返し申し上げてきましたが、今般の当初予算案には、従来の施策をさらに深化させ、戦略的に観光振興を推し進める施策が盛り込まれており、今こそ観光立県という地位をつかみ取っていただきたいと切に願っています。 また、こうした取組によって、観光資源を磨き上げ、地域の活性化を実現するような、目に見える成果を生み出すことを期待しています。 とりわけ新年度のプレキャンペーンを皮切りに、向こう三年間にわたる山口デスティネーションキャンペーンが、ついに本格始動いたします。 そこで、県として、観光関連産業の活性化やブランディングに直結するプロモーションを打ち出す中で、観光客のニーズを酌み取り、明確なビジョンの下、相乗的に施策を展開していかなければなりません。 あわせて、目前に迫る万博では、三千万人近くが来場し、そのうちの約三百五十万人は海外からの来場者と見込まれることから、インバウンド客を引き込む力を高め、海外市場のトレンドをつかんだ戦略性のある取組が求められます。 こうした取組の必要性が高まる中、本県の観光資源に目を向けると、私の地元岩国市では、世界に誇る名勝錦帯橋の世界遺産登録という長年の悲願達成に向けた機運が高まっており、昨年十一月には、村岡知事や岩国市と共に、柳居議長をはじめ私も同行し、文部科学省と文化庁を訪問し、要望活動を行うなど、県、地元、県議会が一体となって取り組んでいます。 引き続き世界遺産登録の実現を目指していく所存ですが、錦帯橋をはじめ、県内には誘客の目玉となる趣ある美しい文化財が数多く存在しており、本県固有の歴史が後世に紡いできた文化資源の数々を、誘客のコンテンツとして確立させ、地域が一体となった観光地域づくりに結びつけていただくことを大いに期待しています。 このほか、美祢市においては、秋吉台のユネスコ世界ジオパーク認定に向けた取組が進められておりますが、文化資源にとどまらず、こうした各地域が持つポテンシャルを最大限に高め、生かしながら、観光力をさらに高い次元に引き上げる実効性ある施策を、集中的かつ戦略的に展開することにより、本県観光関連産業を飛躍的に発展させていただきたいのです。 そこでお尋ねします。国内外からの誘客拡大を着実に果たし、県内全域への周遊につなげ、観光関連産業の持続的な発展を図るため、交流人口の拡大に向けた観光振興にどう取り組まれるのか、御所見をお伺いします。 最後に、教育行政についてお尋ねします。 深刻さを増す少子高齢化や国際紛争などの地政学的な緊張の高まり、気候変動に伴う自然災害の激甚化といった様々な変化が相まって、社会や経済の先行きに対する不確実性がこれまでになく高まっています。 そうした変化が激しく、将来の予測が困難な時代の中で、子供たちには、学校教育を通じて、自信を持って自分の人生を切り開き、よりよい社会をつくり出していくために、必要となる力を育んでいくことが期待されています。 このため、国においては、新時代の学びを支えるツールとなるデジタル技術を活用し、子供の力を最大限引き出す学びを実現するため、一人一台端末といったデジタル学習基盤の整備などの教育DXを進めてきたところです。 令和六年度全国学力・学習状況調査では、ICT機器を、ほぼ毎日、または、週三回以上活用する学校は、小学校、中学校ともに九割を超えているとされています。 また、発表、表現する場面でICTを活用している学校は、それ以外の学校に比べて各教科の正答率が高いという結果や、ICT機器の活用が有効と感じている児童生徒ほど、挑戦心や自己有用感、多幸感が高いと感じるなど、ICT活用の効果を示す結果も出てきています。 このように、学校教育におけるICTの活用は、これまで教師の創意工夫によって取り組まれてきた授業等での学びを、子供たち一人一人にきめ細かく、それぞれの個性に合った形で届けるとともに、子供たちも直接つながり、お互いに学びを深め合える可能性を秘めています。 このような学校教育の基盤的なツールであるデジタル技術の効果的な活用については、子供たちが興味や関心に応じて個々人のよさを伸ばし、課題を克服していける力を確実に身につけるためにも、さらに進めていく必要があります。 今後は、一人一台端末のより自由で積極的な活用や、そうした活用にも耐え得るネットワーク基盤の強化、生成AIなど最新のデジタル技術を活用した授業や家庭学習のさらなる充実など、時代の変化や国の動きを先取りした、新たな時代にふさわしいデジタルが支える学校教育を推進していくことが重要となります。 また、全国に先駆けて整備した一人一台端末が耐用期限を迎える中、県教委では県立高校等における調達を保護者負担とする方針を示されましたが、学習者の主体的で協働的な学びを支える重要なインフラである端末の更新が円滑に進むよう、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。 そこでお尋ねします。今後もデジタル技術が進展し、社会の様々な分野において、さらなる普及や活用が見込まれる中、目指すべき次世代の学校教育を見据えた上で、より豊かな学びを実現する教育DXのさらなる推進に今後どのように取り組まれるのか、教育長の御所見をお伺いし、自由民主党会派を代表しての質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)畑原議員の代表質問にお答えします。 まず、令和七年度当初予算についてのお尋ねです。 本県の最重要課題である人口減少は、若者、女性を中心とした県外への転出超過がさらに拡大するなど、加速度的に進行しており、これに歯止めをかけることが喫緊の課題です。 特に、お示しの人手不足は、本県の産業だけでなく、保育、介護、公共交通などの社会基盤を担う分野においても深刻な問題であり、県として最大限の対策を講じていかなければなりません。 私は、こうした強い危機感の下、来年度予算は、社会減・人手不足対策を最優先課題とし、県議会からの御提言も踏まえ、従来にない手厚い施策を構築したところであり、これにより未来維新プランを着実に推進し、県民の皆様に安心と豊かさの実感をしっかりと届けていく考えです。 具体的には、まず、若者の県内就職・定着に向け、本県からの転出超過が最も多い福岡県に、移住や仕事の相談支援拠点を新たに設置し、若い世代の還流などを一層促進します。 また、新規卒業者に加え、いわゆる第二新卒者も対象に、県内企業へ訪問する際の交通費を実質的に全額支援するとともに、若者の県内定住を応援する住宅取得支援制度を新たに創設するなど、若者の県内就職・定着を強力に後押しします。 さらに、多様な人材の確保・育成に向け、支援策を大きく拡充することとし、女性の就業環境改善やデジタル人材の県内就職促進、外国人材の確保・定着について、取組を強化するとともに、介護、医療、保育、公共交通など、各分野の実情に応じた人材確保の取組を重点的に支援します。 これらの社会減・人手不足対策に加え、少子化対策についても一層充実を図るほか、将来に希望を持って暮らし続けられる地域社会をつくるため、成長のエンジンとなる産業力をさらに強化するとともに、防災・減災対策に重点的な予算措置を行い、県民の安心・安全をしっかりと確保いたします。 加えて、足元の物価高に対しては、県民生活や事業活動への影響に鑑み、国の経済対策も活用し、引き続ききめ細かな支援を講じてまいります。 また同時に、急速な社会変革への対応や、多様化・複雑化する行政課題の克服に積極果敢に挑戦していくためには、行財政基盤の一層の強化が不可欠であることから、このたび新たな行財政改革推進方針の最終案を取りまとめました。 新たな改革では、財政健全化を主目的とした従来の取組から転換し、県が有する人的・物的・財政資源など限りある資源を質的に充実させることにより、組織的なレジリエンスを高めていくこととしています。 こうした考えの下、取組の着実な推進に向けた数値目標を設定したところであり、今後、この方針の下で、将来にわたって必要な行政サービスを持続的・安定的に提供できるよう全庁を挙げて取組を推進していきます。 私は、何としても人口減少を克服し、安心と豊かさの実感を県民の皆様に届けていくという強い決意を持って、市町や関係団体と一体となって来年度の施策を推進するとともに、県政の課題に迅速かつ柔軟に対応できる行財政基盤の一層の強化に、全力で取り組んでまいります。 次に、防災・減災対策の推進についてのお尋ねにお答えします。 全国各地で自然災害が頻発化・激甚化し、今後、南海トラフ巨大地震の発生も懸念される中、県民の生命と財産を災害から守るためには、過去の災害の教訓や最新の知見を踏まえ、本県の防災・減災対策を一層強化していくことが重要です。 私は、大規模災害への備えに万全を期すため、事前防災の徹底や避難所環境の抜本的改善等に早急に取り組むこととし、国が新たに創設した交付金制度を最大限活用して、来年度、予算を大幅に増額し、防災・減災対策を重点的に推進してまいります。 具体的には、今年度設置した地震・津波防災対策検討委員会において、能登半島地震での課題検証を踏まえ、体制、物流、避難等の分野ごとに取りまとめた、今後取り組むべき対策を速やかに実行に移すこととしています。 まず、体制については、通信インフラ被災時に自治体の情報収集等に支障が生じないよう、全市町に配備可能な衛星インターネット機器を導入し、災害時の通信環境確保を図るほか、県外から人的支援を円滑に受け入れるための受援体制の見直し等を行い、災害対応力の強化を図ってまいります。 次に、物流については、交通網の寸断等による孤立集落の発生を想定し、新たにドローンによる緊急物資の輸送体制を構築するため、モバイル通信を活用した目視外飛行の実証を行い、支援物資を迅速かつ確実に輸送できる体制の整備に取り組みます。 さらに、避難については、大きな課題である災害関連死の防止に向け、県においても簡易トイレや大型炊き出し器、簡易ベッド等の資機材を幅広く確保し、市町が保有する資機材と一体的に活用することにより、避難所の環境改善に取り組むとともに、避難所運営に係る指針の見直し等を行います。 加えて、大規模災害発生時に、市町を越えた避難の受皿となる広域避難所の円滑な運営が図られるよう、各地の避難所の開設・運営状況や避難者情報の管理を一元的に行う全市町共通の被災者生活再建支援システムの改修などを行うこととしています。 このほか、住宅の低コストな耐震改修工法の技術者育成、災害派遣精神医療チームDPATの養成等による災害医療体制の充実、中小企業の緊急事態に備えた対策等を支援する資金の創設など、幅広い分野で防災・減災対策を一層強化してまいります。 私は、県民の暮らしの安心・安全はあらゆることの基本であるとの認識の下、いつどこでも起こり得る大規模災害への危機意識を一層強め、市町や関係機関と緊密に連携し、県の総力を挙げて、防災・減災対策の充実強化に全力で取り組んでまいります。 次に、賃金・所得の持続的な増加に向けた力強い産業の実現についてのお尋ねにお答えします。 我が国経済は、物価高や人手不足の中にあっても、積極的な設備投資や高水準の賃上げなど、成長と分配の好循環が動き始め、成長型経済への移行の分岐点を迎えています。 本県においても、企業誘致の設備投資額が二年連続で過去最高となるなどの成果が現れており、この流れを確かなものにするためには、企業の前向きな取組を後押しし、賃金・所得の持続的な増加に向けた力強い産業を実現していくことが重要です。 このため、私は、来年度予算において、本県経済の成長のエンジンとなる産業力の強化や、その源泉となる産業人材の確保・育成に重点的に取り組むこととしています。 まず、半導体・蓄電池関連等の成長分野の産業集積に向け、本県の優れた立地環境や優遇制度を生かした積極的な誘致活動の展開とともに、県内大学で新設が相次ぐ情報系学部等の学生の受皿となるデジタル関連企業の誘致を進めます。 また、市場拡大が見込まれるヘルスケア関連産業の育成のため、製品・サービスに対する信頼性や、市場での優位性の確保を目指す実証事業を支援することにより、付加価値の高い製品等の開発や県内企業の参入促進を図ります。 さらに、ASEAN等の旺盛な海外需要を取り込むため、市場ニーズに即した製品へのブラッシュアップに対する支援や、テストマーケティングから継続的な取引関係の構築まで、企業の取組をシームレスに支援する補助制度の創設により、海外ビジネスの戦略的な取組を推進します。 また、お示しの東部地域産業振興センターについては、創業支援をはじめ、最新のデジタル技術導入や新事業開発など、中小企業のさらなる成長に向けた支援機能が発揮されるよう、着実に整備を進めてまいります。 次に、産業人材の確保・育成に向けては、新たに福岡県と広島県にキャリアコンサルタントを配置し、県外進学者への就職支援体制の強化を図るほか、新卒・第二新卒の就職・転職活動への交通費支援など、若者と企業のつながりの創出や、若者の県内就職を強力に支援します。 また、県内企業の外国人材の確保・定着の促進のため、産官学金からなる協議会を設置し、送り出し側のベトナムやインドネシアとの関係強化を図り、現地にサポートデスクを設けるなど、人材のマッチング支援を行います。 こうした取組に加え、賃上げ等に向けた企業活動を後押しできるよう、初任給や若年層の賃金引上げのための奨励金支給や、商工会議所等が実施するイベント開催支援など物価高対策にも取り組みます。 私は、本県の産業競争力強化に向けた施策を戦略的に講じ、賃金と所得の持続的な増加に向けた力強い産業の実現に全力で取り組んでまいります。 次に、産業・交流基盤の整備についてのお尋ねにお答えします。 本県の最重要課題である人口減少を克服するためには、お示しのように、産業力を伸ばし、雇用の場を創出していくとともに、人や物の交流を拡大し、地域の活性化を図っていくことが極めて重要です。 このため、私は、やまぐち未来維新プランに、強みを伸ばす産業基盤の整備や広域的な交通インフラの整備を掲げ、港湾や幹線道路網の整備に積極的に取り組んでいるところです。 港湾については、県内企業の国際競争力強化を図るため、国際バルク戦略港湾施策により、石炭やバイオマスに対応した施設の整備を行うなど、機能強化を進めています。 まず、徳山下松港下松地区において、来年度早期の大型船舶の初入港を皮切りに、大水深桟橋の運用を開始するとともに、徳山地区、新南陽地区の岸壁等の整備を着実に進めてまいります。 また、港湾運営会社による効率的な埠頭運営や、企業間連携による共同輸送のさらなる促進などの取組を行っていくこととしています。 さらに、港湾脱炭素化推進計画に基づき、次世代エネルギーの供給拠点化に向けた検討を行うとともに、宇部港及び小野田港においても計画策定を進めるなど、企業の脱炭素化に資する港湾機能の高度化等の取組を加速してまいります。 次に、幹線道路網については、物流等の円滑化や拠点間の交流・連携の強化を図るため、計画的に整備を進めているところです。 まず、山陰道について、事業中五区間の整備促進と残る区間の早期事業化を、あらゆる機会を通じ国に要望するなど、引き続き、全線の早期整備に向けた取組を精力的に行ってまいります。 また、その他の幹線道路のうち、事業中区間について、国道二号富海拡幅の来年度早期の完成や、国道百八十八号藤生長野バイパスなどの整備促進に向け、国や地元市町等と緊密に連携し、取り組んでいくこととしています。 こうした中、地元の皆様の御協力の下、岩国市錦町で県が整備してきた国道四百三十四号須川バイパスが、今月、全線開通の運びとなりました。 さらに、未着手区間について、下関北九州道路や国道二号長府トンネル付近などの事業化に向けた検討、手続を着実に進めるとともに、早期実現に向け、関係機関が一丸となって要望活動などを積極的に展開していく考えです。 とりわけ、大雨や大雪、事故による通行規制など、喫緊の課題を有する国道九号阿東─宮野間については、先日、柳居議長や期成同盟会の皆様と共に、来年度の新規事業化を強く国に求めたところです。 私は、本県の強みや潜在力を生かした産業力の強化や交流の拡大に向け、引き続き、議会の皆様方のお力添えを頂きながら、その基盤となる港湾の機能強化や幹線道路網の整備に全力で取り組んでまいります。 次に、交流人口の拡大に向けた観光振興についてのお尋ねにお答えします。 大都市圏に集中するインバウンドをはじめ、国内外の観光需要を本県に確実に取り込むことは、観光関連産業の持続的な発展による地域の活性化を図る上で、極めて重要です。 こうした中、お示しのように、本県におけるインバウンドの取り込みや県内全域への波及は、いまだ道半ばの課題と認識しており、山口DCをはじめ、一連の好機をしっかりと捉えた集中的な施策展開により、本県の認知度や魅力度を飛躍的に高めていかなければなりません。 このため、本県が世界に誇る観光資源を最大限活用し、その価値を高めながら、私自らが先頭に立って、国内外からの誘客拡大に向けた戦略的なプロモーションや魅力ある観光地域づくりに取り組むこととしています。 まず、戦略的なプロモーションについては、山口DCを見据えた誘客促進に向け、「万福の旅 おいでませ ふくの国、山口」の下、地元市町や観光事業者等と一体となって、幸福感あふれる山口の旅のブランドを確立してまいります。 具体的には、県内各地の絶景や温泉など、訴求力の高い観光素材を大都市圏等で発信するとともに、急増する個人旅行者に向けた宿泊プランの販売支援や、古地図、地酒など地域が誇る観光資源を生かした周遊キャンペーンを実施していきます。 加えて、万博開催を契機としたインバウンド誘客対策の強化に向け、会場ブースや大阪駅等で本県観光の魅力を広く発信していくほか、海外の旅行予約サイト等と連携しながら、各海外市場のトレンドをつかんだ取組を展開してまいります。 また、魅力ある観光地域づくりについては、世界遺産登録を目指す錦帯橋や、世界の注目を集めた国宝瑠璃光寺五重塔を核として、地域が一体となった文化ツーリズムを推進し、本県観光の目玉となる観光コンテンツの創出を図ることとしています。 また、ユネスコ世界ジオパークを目指す秋吉台をはじめ、県内各地におけるアウトドアコンテンツの開発、磨き上げを支援するとともに、新たな御当地グルメのブランド化を進めるなど、今後の本県誘客の基盤を確立していきます。 さらに、県内周遊の促進により、県下全域の活性化を図るため、公共交通機関と観光コンテンツを組み合わせたデジタルパスを新たに造成するほか、宿泊者の移動手段としてレンタカー利用を促進するキャンペーンに取り組みます。 私は、今後とも、市町や関係団体等と緊密に連携しながら、観光関連産業の持続的な発展による地域の活性化を図るため、交流人口の拡大に向けた観光振興に全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 デジタル技術の革新等により、社会の在り方が大きく変わる中、その変化に対応し、未来を切り開いていく子供たちを育成するためには、デジタルを効果的に取り入れながら、学校教育を充実させることが重要です。 このため、県教委では、令和二年度に一人一台端末等のICT環境を整備し、コロナ禍における学びの保障や教育活動の充実を図る、やまぐちスマートスクール構想を推進してきたところです。 こうした中、現在の生成AIに象徴されるデジタル技術の急速な進展等に的確に対応するため、このたび、やまぐちスマートスクール構想二・〇としてアップデートし、教育DXの推進に向けて積極的に取り組んでいくこととしました。 新たな構想では、あらゆる教育活動の土台となる一人一台端末などのデジタル学習基盤の強化と、さらなる活用促進による個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実など、デジタルで子供たちの可能性を広げる取組を総合的・計画的に進めることとしています。 具体的には、構想のスタートとなる来年度において、まずは、より自由で積極的な端末活用の基盤づくりとして、児童生徒がストレスなくネットワークに接続できるよう県立学校の通信環境の高速化を図ってまいります。 また、来年度、県立高校六校に新設する文理探究科において、AI等を活用した文理横断的で探究的な学習の高度化を図り、その取組や成果を広く県内に波及させることで、新たな価値を創造する人材を育成していきます。 さらに、今年度モデル校に導入した生成AI・学習アシスタントアプリについては、計画的に家庭学習に取り組む生徒の割合が増加するなど、一定の成果が認められたことから、来年度、全ての公立中学校に導入することとしています。 また、更新時期を迎える県立高校等の端末については、日常的に使う文房具と同様に、生徒が自分のものとして学校や家庭で制限なく使いこなし、より個人の学びや関心に沿って活用できるよう、購入に係る費用の補助や手続の簡素化などの負担軽減策を講じた上で、令和八年度入学生から、順次、保護者負担に移行することとしました。 今後は、生徒一人一人が将来の進路に向けて、専門性の高い学習に取り組むとともに、社会と連携・協働して学びを広げていくことができるよう、端末を活用した教育活動の充実に努めてまいります。 県教委といたしましては、子供たちが新たな時代で活躍するための力を身につけることができるよう、デジタルの力でリアルな学びを支える教育を実現する、教育DXのさらなる推進に全力で取り組んでまいります。