1 食料自給率向上に向けた取り組みについて 2 県内産エネルギーの自給率向上の取り組みについて 3 山口県のデジタル赤字対策について
議長(柳居俊学君)牛見航君。 〔牛見航君登壇〕(拍手) 牛見航君 会派、自由民主党の牛見航でございます。自民党会派に入りまして、初めての一般質問となります。この間、様々な皆様にお支えいただきましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。通告に従いまして一般質問させていただきます。どうぞ最後までよろしくお願いいたします。 本日は、これからの日本のために重要だと考える県内需要の最大化について、それをテーマに、食料自給率向上に向けた取組、県内産エネルギーの自給率向上の取組、山口県のデジタル赤字対策、以上、三点について伺います。 まず初めに、この数年、世界は激動と分断の時代に突入しています。 武漢発の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、サプライチェーンは寸断され、物流・人流が止まり、世界経済は大きく混乱いたしました。 さらに、ロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギーと穀物市場を不安定化させ、原材料、肥料、燃料、食品の価格が世界的に高騰しています。 この混乱に加え、円安の進行や原材料の国際価格の高止まりが重なり、我が国では光熱費、ガソリン代、食料品、建材など、あらゆる生活基盤に関わる物価が上昇しています。その影響は都市部だけではなく、地方に暮らす私たちの生活や中小事業者の経営にも、静かに、しかし確実に打撃を与えているのが現状であります。 中東情勢では、イスラエルとハマスの衝突が泥沼化し、ホルムズ海峡の封鎖リスクも現実味を帯びてきています。 台湾海峡では、中国が軍事的圧力を強め、台湾有事は日本有事とも言われる状況の中で、沖縄、南西諸島は最前線となっています。 ロシアによるウクライナ侵攻は長期化し、エネルギー市場の不安定化と供給制限を引き起こし続けています。また、ロシアは、我が国固有の領土である、北方領土への実効支配を強め、外交的対話の窓口すら閉ざされたままの状況です。 北朝鮮は、ミサイル発射を繰り返し、日本の排他的経済水域(EEZ)内にまで着弾させるという挑発行為を繰り返しています。 韓国との間でも、徴用工判決や輸出管理問題に加え、竹島の不法占拠が続いており、経済安全保障の枠組みすら揺らぐ不安定な関係が続いています。 そして、中国は、尖閣諸島周辺への領海侵入や公船の常駐化を続け、台湾海峡の緊張を背景に、我が国の主権や海洋権益に対しても現実的な圧力を加えています。 もはや、世界は戦後例を見ないほどに不安定化し、その地政学リスクは全て日本の周辺で現実のものとなっています。円安が進み、燃料も食料も外国に依存する我が国の今の仕組みが、いかに危ういか。これは決して外交の話ではなく、私たちの暮らしに直結する生活の話です。 国際環境は戦後例がないほどに不安定化している。外需依存から内需回帰へ。この発想の転換を、本気でやらなければなりません。それは、我々地方の力で実行していかなければならない。私はこの山口県がその先頭に立ち、地方を変えていく先頭に立っていかなければならない、そのように考えております。 まず、日本の立ち位置を地政学の観点から見てみます。言うまでもなく、日本は周囲を海に囲まれた島国であり、他国の侵攻を受けにくい一方で、孤立性が高く、輸送路(シーレーン)を封鎖されれば物資供給が断たれます。 日本は、既に物価・エネルギーの高騰は深刻なものになっているのにもかかわらず、懸念されている台湾有事は既に現実味を増しており、東シナ海、南西諸島は最前線と化すおそれがあり、そうなればシーレーンの封鎖は決して非現実的なものではなく、実際に起こり得る脅威であり、物価・エネルギー高騰で済めばまだいいものの、物資が日本に届けられないという可能性すらあるわけです。 我が国の食料自給率はカロリーベースで僅か三八%、エネルギー自給率は二○二二年の最新データで約一二・六%と、先進国の中でも極端に低い水準になっております。 他国の都合で電気代、ガス代、ガソリン、食料品の値段が上がる。それが自前で食料、エネルギーを持たない国の現実であり、今こそ日本は食料、エネルギーの自立に本気で挑むべきです。 そこで、まず、三つの論点のうち、食料自給率向上に向けた取組について伺います。 大東亜戦争以前の我が国の食料自給率は、おおむね八○から九○%でありました。米、野菜、魚介類を中心とした国内生産で国民の食を賄っていました。現在、高騰により我々は国民が苦しんでおります主食の米については余る年も多く、米の価格調整、買上げ制度が行われていたほどでございます。地域ごとの気候・風土に応じた漬物や干物、みそなどの郷土食・保存食文化が発達しておりました。 しかし、日本は大東亜戦争の敗戦後、日本の弱体化を目的としてGHQは様々な政策を打ち立てていくわけですが、一九四六年、戦後の日本における民主化の一環として、大地主制の解体と小作人への土地分配を目的とした、農地改革を断行いたしました。 地主から農地を買収し、小作人へと実質的に低価格で売却する、この農地改革は、当時、農地の公平化・封建制の打破という大義を持つ政策であり、多くの農家の自営化を実現いたしました。 しかし、結果として、日本の農業構造は小規模自営農家が中心となり、大規模化、機械化、効率化といった近代的農業への移行が進みにくい体制が定着していきます。これは、その後の国際競争力の低下や農業の担い手不足といった課題の土台となりました。 一方、戦後の占領期には、アメリカの民間援助によって小麦粉や脱脂粉乳などがララ物資として大量に供給され、学校給食などを通じて食文化の欧米化が急速に進行いたしました。パンや乳製品、肉類の普及は当時の栄養不足を補う効果があった一方、和食・米中心の食生活の後退、食料のアメリカ依存構造の定着にもつながったと言えます。 その後、一九六○年代後半には米の過剰生産が深刻となり、農家経済の安定化と需給バランスの是正を目的として、一九七○年に減反政策が導入されました。作付を減らした農家に補助金を交付するこの制度は、当初の目的を果たしたものの、結果として国産の主食作物である米の生産が縮小し、代わりに小麦や飼料穀物の輸入が拡大する流れを生み出しました。世界的に見ても、自国の主食となる農作物の生産抑制を制度化した例は非常に珍しく、その構造が長期的には日本の食料自給率の低下、その事態につながっています。 私は今こそ、これまでの政策を一旦冷静に振り返り、食料安全保障の視点から、新たな農業への転換が必要な時代に入っていると考えます。時代の要請に応じて農政は変化してまいりました。今こそ、再び時代に応じた転換の覚悟が求められているのではないでしょうか。そこで、食料自給率向上に向けた県の取組について伺います。 本県を取り巻く状況を見れば、耕作放棄地の拡大や後継者不足が進行し、山口県の食料自給率はカロリーベースで三二%と、全国平均である三八%と比べて低い水準にあります。私はこの状況を逆にチャンスと捉え、農の再建を内需強化の柱と位置づけるべきだと考えています。 国の食料自給率を向上させるためには、本県において、農業生産基盤の強化や新規就農者の育成が必要でありますが、県は今後どのように取り組んでいくのか、御所見を伺います。 続きまして、県内産エネルギーの自給率向上の取組について伺います。 食料同様に、エネルギーにおいても、我が国は国産資源による独自路線を歩んでいました。 大東亜戦争以前のエネルギーの大黒柱は、筑豊、釧路、夕張、常磐などの国内炭田で採掘される石炭であり、電力発電、鉄道、軍需産業までほぼ全てが石炭に依存しており、国産エネルギーで国内産業が回っていました。 また、昭和初期には水力発電が急成長し、山間部にダムや水力施設が多く建設され、地形を生かした自然エネルギーの活用も始まってまいりました。石油に関しては確かに輸入依存でありましたが、その使用に関しては、軍艦、戦車、航空機、工場の機械化、兵器製造、潤滑油に使用するために必要であり、殊、戦前の日本の民間生活での消費は少なかったと言われています。 しかしながら、戦後GHQの方針により、安価な海外石油依存へシフトすることになり、一九五○年代からアメリカからの石油輸入が加速し、日本の石炭産業は急速に衰退。エネルギー安全保障よりも経済効率が優先されてまいりました。結果、現在の日本は、エネルギーの約八八%を輸入に依存、石油やLNG、石炭など、主要な化石燃料を海外から輸入しています。 近年のガソリンや電気代などのエネルギー高騰は、ロシアによるウクライナ侵攻、またエネルギーをドル建てで輸入している事情もあり異常な高騰を見せ、我々国民に大きな打撃を与えています。 現在の日本のエネルギー自給率は、約一○%から一二%台、日本は資源のない国とされておりますが、地熱、中小水力、水素などの国内の再エネルギーや未使用エネルギーを生かし切れていない構造的な問題が根本にあると考えます。 そうした歴史的な経緯を踏まえ、改めて山口県内に目を向けますと、化学工場や製油所など、副生水素が日常的に発生している事業所が多数存在しています。 これらは本来、主目的の製造過程で副産物として発生するものであり、県内の苛性ソーダ生産量から試算した未利用水素量の推計は、一年当たり約千五百万ノルマル立方メートルであり、本県は、他県に比べ圧倒的に副生水素の供給ポテンシャルが高く、純度も非常に高いという強みを持っています。視点を変えれば、県内に眠るエネルギー資源と言えるわけです。 この副生水素を適切に回収、精製、活用し、エネルギーとして利用する仕組みを山口県内で確立することは、エネルギーの地産地消そのものであります。 私は、大規模な国家プロジェクトに頼るだけではなく、山口県内で生まれたエネルギーを山口県民の生活や産業に使うという、自立的で持続可能な地域エネルギーモデルを築くべきだと考えています。 例えば、自動車産業を抱える山口県で地元企業と連携した、水素自動車の普及や、県内の公共交通機関・公用車への導入も現実的な選択肢となります。 なお、私の地元防府市でも、世界的な自動車メーカーであるマツダが、水素エネルギーに係る権威である国際水素エネルギー協会より、水素ロータリーエンジンに関する取組で、IAHEサー・ウィリアム・グローブ賞を授与されたこともございます。 このような需要面の動きに合わせて、現在、県内一か所しかない水素ステーションの整備や水素サプライチェーンの構築など、供給面の環境整備を計画的に進めることは、将来的な県内雇用の創出・産業集積にもつながるはずです。 県では、従前から水素先進県の実現に向けて取り組んでこられ、特に近年では、やまぐち産業脱炭素化戦略の施策の柱に位置づけ、水素利用の拡大に向けた基盤づくりや新たな技術開発の促進による産業振興、先進的な水素利活用モデルの展開による地域づくりなどを積極的に進めてこられました。 私は、山口県の強みである副生水素という実利的な資源を生かし、県内で生まれたエネルギーを県内でしっかりと利活用しながら、エネルギー自給率を高めていくとの強い決意の下、諸施策を一層強力に推進していただきたいと考えています。 そこでお伺いいたします。純度が高く、大量に供給される副生水素は、本県が誇るエネルギー資源であるとの認識の下、さらなる利活用が図られるよう、その需要創出と供給基盤の整備に一層積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、県の御所見をお伺いいたします。 最後に、三つ目の論点であります、山口県のデジタル赤字対策について伺います。 二○二○年からの新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、テレワークの普及や新しい生活様式に対応するための企業の業務効率化などが進んだ結果、デジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXは十年早く進んだとも言われています。 当時、防府市議会のデジタル推進調査特別委員会の委員長でありました私は、DXとはデジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をよりよいものへと変革することであり、デジタル技術の導入それ自体が目的になってはいけないと、強い信念を持ってDXの推進に努めてまいりました。 このDX推進により業務の効率化や住民サービスの向上、産業の活性化など社会の様々な場面において成果が上がる一方、我が国のDXを支える技術基盤となるデジタルインフラ、その中でも特にオンライン決済やSNSなど幅広いサービスを提供するクラウドサービス、グーグルなどの外資系クラウドに依存しています。 このような中、先月、二○二四年度の日本のデジタル赤字が七兆円に迫り十年間で三倍以上に膨れ上がったとの報道がなされました。 このデジタル赤字の発生には、外資系動画サービスの利用料や外資系クラウドが提供するSNSなどへの企業広告費、クラウドサービスへの利用料などが大きく影響されているとされています。海外への富の流出がますます拡大することで、日本の産業構造や生活基盤が海外に大きく依存し、国際的な競争力が失われつつあるのではないかと大変危惧しており、本県においても県民や企業、行政が利用するデジタルサービスにおいても、県外や国外の事業者に依存している構造があるのではないかと危惧している次第です。 本来であれば、地域のデジタル経済は地域内で循環すべきであり、県内のIT企業や金融機関、地元の通信インフラと連携しながら、県産のデジタル基盤を整備することが、持続可能な経済運営の観点からも求められるのではないでしょうか。 このようなデータを踏まえて、山口県における海外に流出しているデジタル赤字を算出してみますと、年間約七百四十八億円となり、山口県の一般会計当初予算の約一○%になります。 その内訳は、決済サービス手数料・アプリ課金が約三百八億円、クラウド・ITインフラが約百六十五億円、ネット広告が約二百七十五億円となります。 また、デジタル赤字に関連してクレジットカードや電子マネー、QRコード決済などを含むキャッシュレス決済についても述べてみたいと思います。 日本におけるキャッシュレス決済比率は世界主要国と比べてまだ低いものの、二○二四年時点で約四三%となっており、今後も堅調に上昇していくものと見込まれています。 本県における決済サービス利用時の決済手数料を一定の条件下でシミュレーションしてみました。 山口県の総世帯数を約六十万世帯、一世帯当たりの年間支出を約三百万円と仮定しますと、県全体の年間消費支出は約一・八兆円になります。そこに全国平均のキャッシュレス比率四三%を適用すれば、キャッシュレス決済による支出額は約七千七百四十億円に上るという推計が出るわけです。 一般的に決済手数料は二、三%程度とされており、仮に二・五%とすれば、年間で約百九十四億円の手数料が発生している計算になります。 この金額が全て県内の事業者にとどまればいいのですが、実際には外資系の決済プラットフォームや国際ブランドを通じたものが多く、仮にその半分程度が地域外に流出しているとすれば、最大で約九十五億円が毎年県外、そして国外へ流れている可能性があるということになります。 そして驚くべきことに、この七兆円規模の日本のデジタル赤字の報道ですが、その内訳を見てみますと、この金額には何とキャッシュレス決済に伴う手数料の流出分は含まれていないという事実が明らかになりました。 つまり、動画配信サービスや外資系クラウド、SNS広告などによって形成された赤字とは別枠で、我々が日常的に使うキャッシュレス決済においても、毎年莫大なお金が静かに、確実に県外、国外へと流れているわけであります。 実際に、山口県内におけるキャッシュレス決済の年間手数料は約百九十四億円と推計されており、そのうち最大で約九十五億円が毎年、地域外へ流出している可能性があります。全国規模での決済手数料流出を単純に見積もった場合、これだけでさらに数千億円規模のもう一つの赤字が存在していると言えるわけです。 このまま何の対策も講じなければ、デジタル基盤の外資依存と、地元で稼いだお金が地元に残らないという現象は加速の一途をたどります。もはやこれは利便性や効率性だけの問題ではございません。地域経済の健全性、そして経済安全保障そのものに関わる重大な問題だと、私は強く認識しています。 利用者にとっては便利なクラウドサービスやキャッシュレスサービスですが、このように地元で使ったお金が地元に残らないという現象が起きていることに、私たちはもっと危機感を持ち、地元を守り、未来の地域を自立させる経済安全保障の一環として、対応を検討するべきではないでしょうか。 その一つの方策として、例えば、地元の金融機関や商工団体、自治体が連携し、地元加盟店のみで使用可能なQR決済サービスや地域ポイント制度などを導入することも考えられます。決済手数料だけでなく、利用データも地域内にとどめ、地域内での資金の循環や地域の消費動向の分析に基づく、地元経済政策の立案・実現も可能です。決済の地産地消は、地域の持続可能性を高めます。単なるデジタル政策ではありません。 また、デジタル地域通貨を組み合わせれば、このデジタル赤字の減少も含め、この課題解決の可能性はさらに高まるのではないでしょうか。 そこでお尋ねいたします。デジタル赤字を減少させるためにも、地域の自立に向けた県産キャッシュレス決済プラットフォームの整備や、デジタル地域通貨の導入を検討すべきと考えますが、現在の県の御所見をお伺いいたします。 ここまでデジタル赤字対策について消費者目線でお話ししてきましたが、事業者の視点の観点から、もう一言申し添えておきたいと思います。 今、地元の商店や飲食店、小売業者はかつてない苦境に直面しています。 物価の高騰は、仕入価格も光熱費も上がる中で価格転嫁が難しく、利益を圧迫しています。消費税は、利益が出ていなくても納税義務が発生する逆進性により、体力のない事業者ほど重くのしかかります。 そして決済手数料の負担は、キャッシュレス決済が進むほど売上げの数%が手数料として差し引かれ、中小零細企業が稼いだお金が、県外や国外に流れていく仕組みが定着しています。 人口が増え続け、お金を地域で循環させることで大きく成長してきた我が国は、少子人口減少と食料・エネルギー自給率の衰退、そして県外、国外への資産の流出により、戦後最も大きな危機を迎えていると言っても過言ではございません。 今、私たちが直面している課題は、単なる経済問題ではない。それは、この国をどう守り、どう次の世代に引き継ぐのかという本質的な問いであります。 食を守る。エネルギーをつくる。お金を地域で回す。これは決して夢物語ではなく、地方から現実に変えていけるテーマであります。 私は、山口県からこの国を変えるという信念を持って、これからも臨んでまいります。 地域の力は、国の力になる。草の根の声こそが、未来を切り開く力になる。 今求められているのは、決して大きなことではなく、地に足をつけて、小さな現場の声に耳を傾け、そこから改革の糸口を見いだしていくこと。 強く美しい日本を取り戻す。それができるのは地方、その先頭に山口県が立つこと。そのことを強く願いまして、私の一般質問を閉じます。 御清聴いただきましてありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)牛見議員の御質問のうち、私からは、県内産エネルギーの自給率向上の取組についてのお尋ねにお答えします。 国が策定した水素基本戦略において、燃焼時にCO2を排出しない水素は、カーボンニュートラルに向けた鍵となるエネルギーとされており、お示しのとおり、県内の化学工場等から高純度かつ大量の副生水素が生成されることは、本県の大きな強みです。 私は、エネルギーの安定供給確保と経済成長、脱炭素の同時実現を目指すGXを推進する観点から、水素エネルギーの利活用に向けた取組を、需要と供給の両面から強化していくことが重要であると考えています。 このため、まず、水素需要の創出に向けては、水素関連製品・技術の開発を促進する必要があることから、県独自の補助制度による部材開発等への支援や、産業技術センターによる技術支援を行うとともに、関連産業への新規参入を促すための企業マッチング等を実施しているところです。 これまでの取組により、水素ボイラー給湯器や無漏えい水素圧縮機など、来るべき水素社会を見据えた優れた製品が生み出されており、今後、さらに多様な用途での製品開発が進むよう、低密度かつ微細な水素の特徴を踏まえた素材加工技術等の磨き上げや、企業間の技術連携等を促進してまいります。 また、燃料電池自動車の普及を図るため、市町と連携し、購入費を補助しているところであり、その利用促進に取り組むとともに、県民向けイベントにおいて水素の環境価値を分かりやすく伝えるパネルを展示するなど、水素の利活用に関する普及啓発を強化してまいります。 次に、供給基盤の整備に向けては、国の事業を活用し、県内企業が産業技術センターと協働して、既存のインフラや製品・技術を組み合わせながら、低コストで水素を製造・輸送・消費するサプライチェーンを構築するための調査研究に取り組んでいます。 具体的には、コンビナート企業が敷設した配管を有効利用した副生水素の供給のほか、再エネ由来の水素ステーション等による県内各地での水素の製造、LPガスの配送便を活用したトラック輸送など、様々な検討を進めているところです。 今後、当調査研究を積極的に支援するとともに、供給基盤の整備に向けた県内企業の幅広い参画や意欲ある取組を促進することにより、水素エネルギーの地産地消に向けたサプライチェーンの構築につなげてまいります。 私は、水素先進県の実現を目指し、県内企業や関係機関等と緊密に連携しながら、需要と供給の両面から、さらなる水素エネルギーの利活用の推進に全力で取り組んでまいります。 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。 議長(柳居俊学君)岡本農林水産部長。 〔農林水産部長 岡本章生君登壇〕 農林水産部長(岡本章生君)食料自給率向上に向けた取組についてのお尋ねにお答えします。 食料を安定的に供給していくためには、農業の生産基盤の強化による生産性の向上や、新規就農者等担い手の確保・育成を進め、持続可能な生産供給体制を確立することが重要です。 このため、県では、食料安定供給の確保に向け、生産性と持続性を両立した、強い農業の育成に取り組んできたところです。 一方、本県の農業従事者の減少や高齢化は、全国を上回るペースで進行するなど、本県の農業を取り巻く環境は厳しさを増すとともに、昨今の急激な米価の高騰等により、食料安全保障に対する県民の関心は高まっています。 こうした中、国においては、新たな基本計画において、農業の構造転換を集中的に推進するとともに、骨太の方針においても、農林水産業の構造転換による成長産業化及び食料安全保障の確保を実現するとしています。 このため、県としては、食料自給率の向上に向け、生産基盤の強化による生産性の向上や、新規就農者等担い手の確保・育成に係る取組を一層強化することとしています。 具体的には、まず、生産性の向上に向け、農地の大区画化をはじめ、遠隔操作や自動走行が可能なスマート農機の導入など、農業の生産基盤の強化を図ります。 また、気候変動の影響が増大する状況にあっても、高品質な農作物を安定的に供給できるよう、高温に強い品種の導入など、収量の安定確保や品質向上対策の強化に取り組みます。 次に、担い手の確保・育成に向け、市町が策定した地域計画において、農地の受皿となる集落営農法人等の再編を支援するとともに、農地の集積・集約化を進め、新規就業者の雇用が可能となる経営体の育成・強化を推進します。 また、これまでの対策に加え、今年度から、遊休資産となり、使われなくなった中古の農業用機械等を有効活用するためのマッチングシステムを創設するなど、日本一の支援策により、担い手の確保を推進します。 加えて、主食である米については、昨年度からの生産拡大の取組により、作付面積の拡大が見込まれているところであり、今後は、JAと連携した技術指導を徹底し、米のさらなる増産を図ります。 県としては、今後とも市町や関係団体と連携しながら、生産性と持続性を両立した強い農業の育成を進め、食料の安定供給の確保に積極的に取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)池田総合企画部長。 〔総合企画部長 池田博之君登壇〕 総合企画部長(池田博之君)山口県のデジタル赤字対策についてのお尋ねにお答えします。 地域内における経済循環を強化していくことは、地域住民の所得の向上や雇用の創出が図られ、地域経済の自立性を高めるとともに、地域の持続可能性の向上に寄与するものと考えています。 また、お示しのデジタル地域通貨や、その基盤となる地域キャッシュレス決済プラットフォームの構築は、域内に資金をとどめることでデジタル赤字の抑制にもつながるとともに、住民の消費行動等のデータを、新商品開発やまちづくり等の施策立案に生かせるなどの効果が期待できます。 一方で、これまでの取組事例を見ると、こうしたデジタル地域通貨の導入や地域キャッシュレス決済プラットフォームの構築に当たっては、様々な課題があります。 デジタル地域通貨については、電子決済の大部分を占めている外資や大手の決済アプリとの競合が避けられず、また、様々なサービスが次々と誕生し、それによって既存サービスが淘汰されていくなど、取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。 導入に際しては、こうした課題への対応が必要となり、その環境の中で利用者を獲得し、事業継続のための収益を安定的に確保していかなければなりません。 また、独自のキャッシュレス決済プラットフォームについては、その開発や運用、セキュリティー対策、加盟店の導入に際し必要となるシステム改修等の費用負担などについて検討していく必要があります。 こうした中、多数のデータ保有者から提供されたデータを集積し、必要な加工を行った上で、他の主体に再提供する、データ連携プラットフォーム機能の必要性・重要性が増大しているとして、先般、国において、その整備に向け、検討に着手する方針が示されました。 今後、検討が具体的に進んでいく中で、御提案いただいた内容も含め、新たなデータ連携プラットフォームを活用した様々な取組が可能になるものと考えています。 県としては、国による検討状況や他の自治体の取組などについて、引き続き、情報収集に努め、対応を検討してまいります。 ───◆─・──◆──── 議長(柳居俊学君)この際、暫時休憩をいたします。再開は、午後一時の予定でございます。 午前十一時三十七分休憩