1 若者と共につくる県政の取組について 2 AI技術を活用した取組や人材育成について 3 中小企業の収益基盤の強化について 4 公共交通機関の維持・活性化について 5 伝統産業の継承について 6 ネット上のデマ・犯罪対策について
議長(柳居俊学君)猶野克君。 〔猶野克君登壇〕(拍手) 猶野克君 おはようございます。公明党の猶野克でございます。 質問に先立ち、一言申し上げます。 これからの日本の将来を担い、今を生きる子供や若者は、私たち中高年が過ごした時代と異なるリスク環境の中にあります。 少子高齢化や人口減少問題、社会保障費の増大、地方の衰退・過疎化による医療、交通、教育サービス、インフラ基盤の低下、ジェンダー平等と多様性の課題など、我が国の高度経済成長期には、想像や実感もなかった諸課題に直面しています。 世界に目を向けると、国際的課題は大きく三つあると言われています。一つは核兵器、もう一つは感染症、そして気候変動であります。こうした課題は、日本一国だけの努力ではどうにもならず、世界が協力しなければ解決し得ない課題であります。 しかし、アメリカやヨーロッパ諸国など各国で分断が進み、イスラエルやロシア、インドやパキスタン、タイ、カンボジアなど、それぞれが対立し、核兵器使用の脅威が高まっています。 日本も例外ではなく、さきの参議院選挙を振り返っても、国籍や人種で区別して、日本人だけが大事だという風潮も多く見られました。もちろん海外から人が来て、日本の安全・安心が脅かされることは断じてあってはなりません。 そのためにルールをつくり、ルールを守らなければ厳正に対処する仕組みづくりが重要でありますが、外国人全てを一くくりにする考え方は、乱暴で行き過ぎています。 一方、製造業や介護、その他多くの企業・団体の人手不足は深刻であります。外国人と日本人が共生できる社会をいかにつくっていくか。政治が人種や国籍で分断を促してはならない。対立をあおるような言動、政治は厳に慎まなければならないと考えます。 対立ではなく協調へ、分断ではなく人との絆づくりを、終戦から八十年を迎えた私たちの日本、平和への誓いを新たに、私たちの活動と対話の力が山口県から日本、そして世界を動かす大きなうねりとなることを決意しまして、質問に入らせていただきます。 初めに、若者と共につくる県政の取組についてお尋ねします。 日本の若者が抱える悩み、不安の中で、金銭的不安、将来的不安、仕事・就職に対する不安が上位を占めています。特に近年、注目される悩みや不安は、子供を持ちたくないと考える若者が半数以上いるとされ、日本社会の未来に希望を感じないと回答した十八から二十九歳のZ世代は、実に約七○%に達し、若者の社会構造への不安感、将来への喪失感の解消は、政治が取り組むべき重要テーマだと感じています。 果たして私たち大人は、若者の声をキャッチし、必要な手を差し伸べられているのでしょうか。それを自治体の立場に置き換えた場合、若者支援施策やチャレンジ応援制度が時代にマッチしているのか、自治体から若者に届けたい情報と若者が求める情報は、ミスマッチが生じていないのか等を常に考えていく必要があるのではないでしょうか。 今、若者が、情報収集目的でSNSを活用する割合は、約九割を超えますが、自治体の公式に発信している情報を受け取った経験のある若者は、全体の僅か五・一%にとどまるという調査データもあり、極めて低い状況であります。 さらに、若者の九割超が、国・行政に自分の声が届いていないと回答したデータもある一方で、積極的な参加意識を持つ若者は二割前後にとどまるものの、政治や行政に関心のある層は、約半数に上り、若者が関与する機会が整えば、参加率向上の可能性があることを示しています。 裏を返せば、そこに伸び代があり、若者へ情報を届けるコンテンツ戦略や意見交換などの接点をつくり、協働で政策を生み出す取組をつくることも重要であります。 本県でも、若者の県民活動促進事業や観光力パワーアップ事業など、若者と地域や団体が連携した事業を展開されておりますが、全国の都道府県の事例を見ると、若者政策会議や参画条例・推進計画をつくり、県の政策形成に高校生や大学生等を巻き込む仕組みを強力に制度化しているところも増えてきました。高校生・大学生インターンを県庁で受け入れ、政策提案を体験させるなど、若者の声を積極的に取り入れ、双方向の輪が広がっています。 情報発信の在り方についても、若者に関心が高いバーチャルキャラクターの活用やVチューバー専門職員の配置、若者と行政の情報交換ツールなど、新しい技術と発想も取り入れ、若者が真に取り入れたい情報の在り方をさらに促進する必要があると考えます。 本年、山口県議会でも、若者・女性に選ばれる地域社会づくり特別委員会が立ち上がりましたが、私たち議員の立場でも、本県が持つポテンシャルを最大限に生かしながら、若者の視点を政策形成に反映する制度的な枠組みをしっかりと模索していきたいと考えています。 そこでお尋ねします。社会構造への不安感、将来に喪失感を持つ若者が増えつつある昨今、若者がさらに活躍し、暮らしやすく、住み続けていくことができる本県にしていくために、次代の社会を担う若者と共に、県政をどのように進めていかれるのか、御所見を伺います。 次に、AI技術を活用した取組や人材育成についてお尋ねします。 急速なAIの技術進歩により、今やAIは、産業分野から医療、行政、防災、教育、研究開発など幅広く活用され、私たちの生活には欠かせない存在となっています。 また、高齢化や人口減少に伴う産業の衰退は、地方都市の抱える大きな問題の一つとなっていますが、その解決策としてAIの活用が注目を集め始めています。 DXの推進により、業務の効率化や生産性の向上を図り、産業の振興を目指すものであります。 全国自治体のAI活用事例を見ますと、岐阜県では、県内企業の生産性向上や新商品・新サービスの創出等の実現を目的として設立されたDX推進コンソーシアムで、急速に進化するAI技術の最新動向や、企業での活用事例を分かりやすく解説し、その仕組みと可能性を正しく理解して、より効率的にAIを活用することを目的としたセミナーを開催されました。 お隣の広島県では、データを活用して地域課題を解決できる人材を育成する取組、ひろしまQuestを開始しました。人材育成を行いながら、人材と地域課題、企業とのマッチングを図り、課題解決までを一貫して行っています。 そのほか、住民サービスや職員の内部業務にも活用が始まり、公共土木施設の老朽化対策や固定資産税の家屋評価、AI通訳による多言語通訳に対応するサービスを提供するなど、AIを積極的に活用する自治体が増えています。 さらに、AIは単なるツールにとどまらず、岡山県の事例では、地元出身の人気声優の声で観光ガイドをする、学習した音声AIのキャラクターを作ったり、子宮頸がんの予防や普及啓発の発信をする、キャラクター「ももね」を制作したりするなど、自治体が工夫を凝らして、オリジナルのキャラクターを生み出し、魅力発信にも高い効果が生まれています。 本県では、これまで村岡知事を先頭に、「Y─BASE」を核として、高度な業務に対応する生成AI機能の情報提供やセミナー・研修を開催され、これからのAI活用を担っていく人材育成にも積極的に取り組まれております。 しかし、本県では、デジタル領域における知識やスキルを持つ人材が少なく、全国的にも都市部に集中している傾向にあり、依然、民間事業者でのAI活用が思うように進んでいないのが現状であります。 また、活用したくても、AIで何ができるのか、どのような効果が得られるのか等の情報も不足しており、活用に向けては、多くの課題があると考えられます。 また、民間企業に限らず、県民誰もがAIを知り、触れる機会をつくることで、AIの活用が進んでいくのではないでしょうか。 そこでお尋ねします。業務の効率化や地域課題の解決、産業の振興に向けて、より積極的にAIを活用するとともに、その活用を担う人材を育てていくために、県としてどのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。 次に、中小企業の収益基盤の強化についてお尋ねします。 先日、山口地方最低賃金審議会が山口労働局長に対し、令和七年度最低賃金について答申を行いました。最低賃金を現在の九百七十九円から六十四円引き上げ、時間額千四十三円とするもので、今後所定の手続を経て、早くて来月十六日には効力が発生する見通しであります。仮に答申どおりとなった場合、現行方式での引上げ額は過去最大、時給は初めて千円を超えることとなります。 長引く物価高、エネルギー価格の高騰等を克服し、県民生活の安定を図るためには、物価上昇を上回る賃上げが不可欠であり、最低賃金の大幅な引上げは、本県全体の賃上げを促す上で大きな意義があります。また、非正規雇用の賃金水準の上昇にもつながることから、正規と非正規の格差を縮小する効果も期待されます。 一方で、物価高に苦しんでいるのは、中小企業も同じであります。年々増額していく最低賃金に中小企業や小規模事業者の負担感は増しています。さらに、現下の人手不足に対応するための防衛的賃上げも余儀なくされており、大変苦しい経営状況の中で、何とか踏ん張って賃上げに努力しているというのが現状であります。 こうしたことから、私どもは、このたびの最低賃金の引上げを大いに歓迎するものの、中小企業に対する過大な負担とならないか危惧しているところであり、最低賃金の引上げと賃金上昇に耐え得る収益基盤の構築は、セットで行われるべきであると考えています。 私たち公明党は、我が国の雇用の七割を占める中小企業の賃上げが持続的となる環境づくりこそが大事であるとの考え方の下、一昨年に、中小企業等の賃上げ応援トータルプランを策定し、それに基づく取組を推進してまいりました。 また、さきの通常国会で約二十年ぶりに成立した改正下請法(中小受託取引適正化法)は、我が党の強い主張により、下請という言葉が法律から消え、コストや人件費の上昇を価格に反映させ、発注者側に受注者側の中小企業との価格交渉を義務づけるなど、価格転嫁しやすい環境も整ったところであります。 物価高等を克服し、家計が実感できる所得向上を実現するためには、持続的・構造的な賃上げが重要であり、そのためには適正な価格転嫁の実現や取引環境の改善、賃上げの原資確保に向けた生産性向上や稼ぐ力に対する支援、資金繰り支援の強化、そして、制度の拡充だけではなく、中小企業を手助けし、その背中を後押しする伴走支援も重要と考えます。 そこでお尋ねします。最低賃金の引上げを契機に、その流れをより確かなものとするため、国や商工関係団体と緊密に連携しながら、中小企業の一層の収益基盤の強化に取り組んでいただきたいと考えますが、県は今後どのように取り組まれるのか、御所見を伺います。 次に、公共交通機関の維持・活性化についてお尋ねします。 先月六日からの低気圧と前線の大雨により、本県を含む各地で被害が報告されました。九州では八日に鹿児島県霧島市に、五段階の警戒レベルのうち最も高い大雨の特別警報が出され、その後も十一日、熊本県内に特別警報が発表されるなど、各地で記録的な大雨となって被害が相次ぎました。お亡くなりになられた方への御冥福とともに、一日も早い復旧・復興を御祈念申し上げます。 本県の災害で思い起こされるのは、記録的な大雨で被害を受け、一昨年から運転取りやめが続いているJR美祢線であります。県議会としても、JR美祢線の早期復旧を求めてまいりましたが、復旧方針を決める県と沿線自治体による協議が行われ、鉄道での復旧は断念し、BRT(バス高速輸送システム)へ転換することで合意したとの報道がありました。 鉄道が復旧しないのは、非常に残念でありますが、復旧までの時間が長期になれば、その間、住民の利便性が奪われるため、やむを得ない判断だと存じます。県におかれましては、BRTの完成に向け、引き続き、速やかな関係機関との調整をお願いいたします。 若者の車離れや高齢者による免許返納など、昨今の少子高齢化を考えれば、県民の足となる公共交通機関の維持・活性化は不可欠な課題であると考えます。 私の地元である宇部市でも、公共交通機関の一翼を担うタクシー会社が経営不振のため、倒産となりました。バス事業者の経営も決して楽な状況ではなく、人口減少に伴って、今残る事業者も楽観視できる状況ではありません。さらには、鉄道利用者も減少していくことになれば、民間事業者だけで、今後の公共交通機関の維持・存続は、困難になるのは明らかであります。 先月、地元宇部市で公共ライドシェア実証事業が始まりました。場所は、宇部市の北部地域となる小野地区ですが、地域に住む方がドライバーとなり、自家用車で運ぶ、助け合いの移動手段となります。小野地区は、御承知のとおり、宇部市の中で中山間地域として、公共交通機関が少なく、高校生などの通学や買物、通勤手段が大きな課題となっていました。こうしたライドシェアの助け合いの取組がうまくいけば、実用化され、地域の課題解決につながっていきます。 加えて、最近では、高速バスを利用して、長距離を移動する利用者も増えてきました。高速バスは、昔に比べ、車内設備も充実しており、座り心地はもちろんのこと、長時間快適に過ごすための設備が充実した車両も増え、地方間の移動需要を中心に利用が増加しています。 しかし、本県では、都市型バスターミナルのような高速バス利用者のための待合室がなく、観光や帰省目的が多い高速バス利用者にとって、利便性が低い状況となっています。 暑い季節や寒い季節、天候の悪い日は、荷物の大きい旅行者にとっては、環境が整っておらず、鉄道、タクシー、バスを集約できる交通結節点となる公共交通機関一体型のターミナル整備は重要であると考えます。それらハブ拠点があれば、二次交通網としての利便性も高まり、活性化が図られるのではないでしょうか。 そこでお尋ねします。深刻な人口減少に伴い、利用者が減少する中、公共交通機関の維持・存続が、今後ますます厳しくなることが予想されます。 しかし、公共交通機関は、県民の生活になくてはならず、さらに観光需要や都市の魅力を高め、若者に住み選ばれる都市にしていくためには、公共交通機関の活性化は不可欠であります。 今後、県として、公共交通機関の維持・活性化にどのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。 次に、伝統産業の継承についてお尋ねします。 山口県には、歴史や風土に根差した、大切な伝統産業があります。 特に萩焼、大内塗、赤間硯の三つの伝統工芸品は、経済産業大臣指定の伝統的工芸品として広く全国に知られ、山口県の文化や歴史を象徴し、多くの県民からも愛されています。 そのほか、奈良時代から続く徳地和紙や萩ガラス、江戸時代、防府天満宮の参拝客向けに広まったとされる染色品、食品・醸造でいえば、下関のフグ加工、岩国寿司、山口の酒造り、しょうゆ・みそ醸造なども古くからの発酵食品文化として人々に愛され、受け継がれてきました。 しかし、こうした伝統産業やものづくりは、受け継ぐ人がいて初めて続いていく産業であり、伝える人と受け継ぐ人がつながって続いていくものであります。言わば、人の歴史そのものであり、山口県の生きた文化であると言えます。 こうした本県にとって大切な歴史と文化が少しずつ失われようとしています。 萩市見島に伝わる大だこ、鬼揚子は、初子が生まれた家で、その子の無病息災を願って作られ、正月に揚げられる伝統的な風習であります。畳六から八畳ほどの大きさで、鬼の面が描かれているのが特徴ですが、それを制作できる方もほとんどいなくなりました。島に生まれる子供が少なくなったため、大だこを制作する目的も機会もなくなってきたからであります。 また、山口県では、刀剣の鍔である、長州鍔が伝統産業としてありました。江戸時代には多くの鍔工がいたとされ、当時は日本最大級の鍔工集団を形成し、日本有数の鍔の産地であったとされます。 刀剣の部品である鍔は、鉄を素材としており、鍛冶技術が用いられ、様々な装飾や文様が施されています。この高い技術と美しいデザインから、日本刀の装飾品としてだけではなく、美術品としても高く評価されていますが、県民にはこうした歴史や存在自体もほとんど知られていません。 こうした大切な山口県の文化を残し、守り、末永く承継していく必要があるのではないでしょうか。 そのためには、SNS等、インターネットを通じて、本県の伝統的工芸品などを幅広く知ってもらうための積極的なPRや情報提供、さらには、後継者育成や販路拡大、観光との連動など様々な承継支援策を講じていく必要があると考えます。 そこでお尋ねします。山口県の歴史や文化を象徴する貴重な伝統工芸品を広く紹介し、伝え守っていくために、どのように取り組んでいかれるのか、県の御所見を伺います。 最後に、ネット上のデマ・犯罪対策についてお尋ねします。 二○一六年のアメリカ大統領選などを契機とし、新型コロナウイルス感染症、ウクライナ侵攻に関するものを含め、ネット上のフェイクニュースや偽情報が問題となっています。NHKの世論調査では、ネットで見た誤った情報を信じた経験があるかどうか、あると答えた人が四五%に上りました。 ネット上のデマには、災害時に、ダムが決壊したとか、猛毒ガスが発生したなどの偽情報や、特定の人物・事件・事故を結びつける投稿、健康や医療の根拠のない情報、社会不安をあおる情報など、種類は様々であります。発信者の悪意があるなしにかかわらず、偽情報や誤情報によって、金銭的損失や個人の名誉毀損、企業の売上げと信用損失、精神的ダメージを受ける方、さらには、社会的なパニックを起こす事案まで発生します。 近年、SNSやAIを活用した情報操作によって、他国が関与して、国内の世論を操作する動きも出てきております。 例えば、第一期トランプ政権が誕生したアメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱の際の国民投票においても、ロシアによる情報工作やSNSを利用したプロパガンダにより、国内の対立や分断が起こりました。 最近では、昨年のルーマニア大統領選挙で、一回目投票の結果を憲法審が無効にし、選挙の全過程がやり直しとなったのは、記憶に新しいところであります。 これは遠い国に限った話ではなく、日本でも同様のことが起こっています。ロシアのプロパガンダ系の記事を安易に日本のメディアが証拠もなく引用し、国内にデマ情報が拡散する事例が相次いでいます。アメリカが日本の七三一部隊をやろうとしているとか、ウクライナがナチス化しているなどの報道は、まさに典型的なデマ情報であります。 また、ボットファームがAIを使って、いいねを大量に押し、SNS上のお勧め情報に上がり、拡散する手法もデジタル影響工作であり、ネット世論操作として多く利用されております。 現在では、手軽に誰でも、ネット上に情報を配信・受信することが可能な時代となり、発信する側の人に対しては、相手が不利益を被らない、良識的な内容や真実の情報を流すなどの一定の情報モラル教育やルールづくりが必要ですが、そうしたルールの制限や利用者のリテラシー向上は非常に難しく、特に悪意を持って発信する者には、その情報が正しいものかを受信する側が真偽を適切に判断(ファクトチェック)していかなければなりません。 最近では、実在していない人物の画像や音声を作り出すことだけではなく、特定の個人そっくりの画像や音声を生成することなども可能で、もはや人間では見分けがつかないレベルに技術が進化しています。 こうした悪意のある情報に対し、フェイク情報を検知する最前線では、生成AIがフェイクを見抜き、他人へのなりすましや証拠の捏造などの犯罪に利用されかねない情報を未然に検知する開発が進められています。 総務省でも、生成AIに起因する偽・誤情報をはじめとした、ネット上の偽・誤情報の流通・拡散に対応するため、対策技術の開発・実証事業の公募を昨年度よりスタートさせました。 ネット上の偽情報や誤情報は、各種犯罪にも密接につながる関係性があり、個人の不利益や企業・事業者などの団体の活動など全てに悪影響が及ぶため、国や民間だけではなく、私たち県や警察も連携し、対処能力の向上や体制の強化を目指していく必要があると考えます。 そこでお尋ねします。生成AIの進化が著しい昨今、ネット上には生成AIを利用したフェイク画像や誤情報があふれています。県や警察として、いかに偽情報や誤情報を対策し、各種犯罪等から県民を守るのか、県及び警察本部長の御所見を伺います。 結びに、私が尊敬申し上げ、これまで県勢発展に大変御尽力された方の御病気が判明しましたが、完治を強く御祈念申し上げるとともに、お帰りを心待ちにしております。 以上で、代表質問を終わります。 御清聴、大変にありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)猶野議員の代表質問にお答えします。 まず、若者と共につくる県政の取組についてのお尋ねです。 若年層を中心とする県外への転出等により、人口減少が深刻化する中にあって、将来にわたり、持続可能で活力ある山口県を実現していくためには、私は、本県の未来を担う若者に寄り添った取組を、様々な観点から展開することが重要であると考えています。 そのためには、若者の意識や価値観を丁寧に把握し、そのニーズに応える施策を実行していく必要があります。 このため、県議会からの御提案も踏まえ、若者の考えを深く掘り下げて聴取するアンケートを実施するとともに、昨年度からは、県の施策の認知度や実感度を捉える調査に取り組んでいます。 その結果も受けて、結婚の希望をかなえるための出会いの場の拡大や、子育てに係る保育料等の経済的負担の軽減、共働き・共育ての実現に向けた男性の育児休業の取得促進などに取り組んでおり、引き続き、若者の声を施策の充実強化に生かしていくこととしています。 また、県の施策への若者の参画にも力を入れています。 大学生や高校生が事業の企画や運営に参加し、県内就職の促進に向けた企業紹介イベント等の開催や、県民活動の裾野の拡大を図る体験会等の実施、観光事業者等と連携した観光地域づくりなど、関心が高く継続したつながりも期待できる若者と協働した取組を進めているところです。 このように、県政について、若者が自らの意見を持ち、参画することにつなげていくためには、本県に関する情報を的確に若者に伝えることが重要です。 このため、若者が情報収集に使う割合の高いインスタグラムなどのソーシャルメディアを中心とする戦略的な情報発信を展開することとし、新たに配置した専門アドバイザーからの助言や提案を踏まえ、SNSでの発信がこれまで以上に若者に響く、訴求力のあるものとなるよう取り組んでいます。 とりわけ、若者が好むショート動画の継続的な配信により、就職や子育て支援などの県の取組等を分かりやすく紹介していきます。 また、県が制作した様々な動画をワンストップで視聴できるポータルサイト「山口県チャンネル」について、興味のある動画が容易に見つけられるよう、検索機能を拡充するなどリニューアルを行ったところであり、本県の情報を若者に効果的に発信していきます。 私は、若者の県政への参画を促進する取組のさらなる拡充を図るとともに、求める情報をタイムリーに届けることができる効果的な情報発信に努め、本県で若者が活躍し、住み続けていただけるよう、今後も積極的に取り組んでまいります。 次に、AI技術を活用した取組や人材育成についてのお尋ねにお答えします。 人口減少が急速に進む中、生成AI等の技術革新は、業務の効率化や生産性向上のみならず、新たなサービスや価値を生み出す原動力となるものであり、私は、その積極的な利活用が、本県の地域課題の解決や産業振興にも大きく寄与すると考えています。 こうした考えの下、県ではこれまで、生成AIの活用促進に向け、フロントランナーを起用したセミナー等の開催による機運醸成を行ってきたほか、「Y─BASE」において導入の伴走支援などの取組を進めてきました。 その結果、プログラミングの効率化を通じたシステム内製化など効果的な事例が生まれてきており、今後も、このような好事例の横展開や新たなユースケースの創出等に努めていくこととしています。 その一方で、取組を進めるに当たっては、お示しのとおり、デジタル人材や最新技術の情報などの都市部への集中が大きな課題となっています。 こうしたことを踏まえ、私は、生成AIを活用した業務改革や新サービス創出等の取組が、県内で一層促進されるよう、「Y─BASE」を核として、AIリテラシーの向上と技術活用を担う人材の育成・確保の取組をさらに強化してまいります。 AIリテラシーの向上に向けては、先日、先進技術を持つスタートアップ企業等による講演会や、技術展示・個別相談会を開催し、二百五十名を超える方に参加いただいたところであり、今後も、最新技術等の積極的な情報発信を行っていきます。 また、これまで実施してきた生成AIアカウントの無償貸出しの取組に加え、今年度から、「Y─BASE」にAIの専門人材を配置しており、この体制の下で、企業等の取組の伴走支援を強化し、有用な事例の創出につなげていきます。 人材育成においては、デジタル技術の活用に不可欠なデザイン思考や、効果的なデータ利活用について学ぶ講座に加え、AIを活用した企画立案スキルを習得する実践研修を行うなど、取組を充実させてまいります。 さらに、人材確保に向けては、県内大学に相次いで新設された情報系学部の卒業生が、今後続々と輩出されることから、デジタル職種に特化した学生向け企業紹介イベント等の実施により、県内就職を促進するとともに、受皿となるデジタル関連企業の誘致も強化していきます。 私は、人口減少が進む中にあっても、県民の暮らしをより豊かで便利にしていけるよう、引き続き、AI技術の活用促進による地域課題の解決や産業振興を図るとともに、それを支える人材育成に積極的に取り組んでまいります。 次に、中小企業の収益基盤の強化についてのお尋ねにお答えします。 物価高等が長期化する中、県民生活の安定・向上を図るためには、家計が実感できる所得向上が不可欠であり、その実現に向けては、地域の雇用を支える中小企業が賃上げに耐え得るよう、収益基盤を強化し持続的に成長していくことが重要です。 このため、私は、企業間の適正な価格転嫁や取引環境の改善を促進するとともに、生産性の向上等により、賃上げしやすい環境づくりを強力に進めてまいります。 まず、適正な価格転嫁や取引環境の改善に向けては、今月、経済団体に対し、これまでの価格転嫁等に加え、お示しの改正下請法の周知について要請を行ったほか、産業振興財団の下請かけこみ寺による相談対応や、取引条件の改善に向けた講習等に取り組んでいきます。 また、企業間の望ましい取引慣行の遵守に向けた、国のパートナーシップ構築宣言の普及促進や、私も参加した、やまぐち政労使会議での共同宣言を踏まえ、オール山口による持続的な賃上げに向けた取組を進めてまいります。 次に、こうした賃上げを実現していくためには、中小企業がDX等により生産性を向上し、稼ぐ力を強化していくことが不可欠です。 このため、専門家によるきめ細かな経営課題診断をはじめ、「Y─BASE」におけるDXコンサルや、産業振興財団のDXコーディネーターによる伴走支援のほか、企業のデジタル化の段階に応じた設備導入支援、DX人材の育成に向けたセミナーや研修受講補助による支援なども行っていきます。 また、産業技術センターにおける新たな製品やサービス等の開発に対する支援や、産業振興財団による展示会出展や商談会による販路開拓支援を通じて、技術・経営の両面から稼ぐ力の源となる新たなビジネスの創出・拡大を支援し、中小企業の持続的な成長を促進してまいります。 さらに、資金面においても、当面の賃上げの実現や、生産性向上に資する設備導入に対し、県制度融資の、賃金引上げ・価格転嫁支援資金により、しっかりとサポートします。 私は、適正な価格転嫁や生産性の向上等により、中小企業が収益基盤の強化を図り、物価高等を乗り越え、持続的・構造的な賃上げが実現できるよう、国や関係支援機関と緊密に連携し、必要な支援に全力で取り組んでまいります。 次に、公共交通機関の維持・活性化についてのお尋ねにお答えします。 バスやタクシー、鉄道などの公共交通機関は、高校生等の通学や買物、通勤手段など県民の日常生活はもとより、地域の経済活動や観光振興においても、重要な役割を果たしています。 しかしながら、人口減少や少子高齢化が進む中、利用者の減少などに起因するバス路線の廃止やタクシー事業者の廃業等、公共交通機関を取り巻く環境は極めて厳しく、その維持・活性化は、喫緊の課題であると認識しています。 このため、私は、地域の実情を把握し、公共交通施策の中心的な役割を担う市町や、交通事業者との連携の下、地域公共交通の維持と活性化の両面から、様々な取組を積極的に推進しています。 具体的には、複数市町にまたがる幹線バス路線への運行支援や、原油価格の高騰等の影響により大きな負担となっている燃料費に対する補助などを行っているところです。 また、地域住民等の利便性向上に大きな効果があるキャッシュレス決済の導入を進めるとともに、市町等と連携して、AIデマンド交通など、デジタル技術を活用した新たなモビリティーサービスの実装に向けた支援にも取り組んでいます。 さらに、今後、市町等を対象に、宇部市小野地区における公共ライドシェアなど、地域課題の解決を図る新たな取組に関するセミナーを開催し、各地域の実情に応じた形で横展開を図ることとしています。 こうした中、お示しのJR美祢線については、復旧までの期間や利便性等を踏まえ、BRTによる復旧を目指すことで沿線三市と合意したところであり、今後、美祢線が担ってきた交通機能を維持・活性化できるよう、BRTの早期完成に向け、関係機関との調整を進めてまいります。 お尋ねのありました交通結節点となるターミナル整備については、県民生活はもとより、観光需要の創出や都市の魅力を高める効果的な手法の一つですが、駅前開発などのまちづくりの機会を捉えた上で、交通機関の利用状況や交通事業者のニーズ等を十分に勘案しながら検討する必要があると考えています。 このため、将来的なターミナル整備の検討に資するよう、まずは、市町の地域公共交通会議等の場を活用し、利便性の向上やニーズの創出につながるスムーズな乗り継ぎや待合環境の整備などを働きかけていきます。 私は、今後とも、市町や交通事業者等と連携しながら、県民生活や観光振興に不可欠な公共交通機関の維持・活性化に、全力で取り組んでまいります。 次に、伝統産業の継承についてのお尋ねにお答えします。 本県には、伝統工芸品として全国に知られる萩焼や大内塗、赤間硯をはじめ、萩ガラスや酒造りなど、地域の歴史や風土の中で生まれ育った伝統産業が脈々と息づいており、その継承は、地域の活性化を図る上で大変重要です。 このため、私は、伝統産業の持続的発展に向け、お示しの認知度の低さや後継者不足などの課題に対応した様々な承継支援策に積極的に取り組むこととしています。 具体的には、まず、伝統産業の魅力を伝え、認知度を高める情報発信として、七月にリニューアルした物産ECサイトや、公式観光サイトなどインターネットを通じたPRを行っており、商品の紹介にとどまらず、歴史や作り手の制作にかける思いなど、さらに深掘りした情報を発信しています。 また、おいでませ山口館での展示販売や、伝統的工芸品全国大会への出展支援を行うほか、新たにクルーズ船のスイートルームに萩焼を展示するなど、伝統産業の魅力を直接体感いただける機会の提供にも取り組んでまいります。 次に、伝統産業の継承に欠かせない後継者育成に向けては、地元市が行う地域おこし協力隊を活用した人材確保の取組を支援するとともに、地域の文化財の魅力を伝える講座を開催するなど、新たな担い手の確保につなげていきます。 さらに、後継者育成や産地振興の中心的役割を担う伝統工芸士の増加に向けた働きかけを行うとともに、県芸術文化振興奨励賞等の表彰により、次世代を担う職人の意欲の向上に取り組んでいるところです。 また、伝統産業の持続にはしっかりとした経営基盤も必要となることから、販路拡大に向けて、県物産協会による相談支援や首都圏バイヤーとのマッチング、百貨店での展示会等への出展支援など、事業者に寄り添った支援を行っています。 こうした取組に加え、山口DCの機会を捉え、萩焼や赤間硯、金魚ちょうちん等の制作体験を観光素材に組み入れるとともに、新たに、観光シンボルマーク「ふくだるま」を模した大内人形に絵付けをする大内塗制作体験コンテンツを加えるなど、観光との連動も強力に進めることとしています。 私は、今後とも、市町や関係団体等と緊密に連携しながら、本県の歴史や文化を象徴する伝統産業をしっかりと守り、次世代へ引き継ぐ取組を積極的に推進してまいります。 次に、ネット上のデマ・犯罪対策についてのお尋ねにお答えします。 情報通信技術の急速な発達に伴い、SNSは、あらゆる年代の方々が利用するコミュニケーションツールとなり、災害時における情報発信や、情報収集・分析の手段として積極的に活用することを国が推奨するなど、その有用性は高く評価されています。 一方で、SNSは、短時間で爆発的に情報を拡散する特性を持ち、一たび誤った情報が発信されると、そのマイナスの影響が飛躍的に増大する可能性があるなど、使い方次第では、社会にとって大きなリスクともなり得ます。 とりわけ、近年は、生成AIで、悪意あるフェイク画像や誤情報が容易に作成できるようになり、選挙実施時や災害時に、デジタル空間で、選挙の公正を害する偽情報や人命に関わる誤情報が大量に飛び交う事態が頻発しており、対策が急務となっています。 このため、私は、国のデジタル社会構想会議に全国知事会を代表して出席し、国に対し、SNS事業者等との連携によるファクトチェック用ツールの開発や犯罪行為への法的対処、リテラシー教育の拡充など、安心してSNS等を利用できる環境の構築に取り組むことを求めました。 その結果、今年度のデジタル社会の実現に向けた重点計画には、偽・誤情報対策として、発信された情報の信頼性を確保する技術の開発・実証や利用者のリテラシー向上、プラットフォーム事業者に権利侵害情報等の迅速な削除対応を促すことなど、様々な対策が盛り込まれています。 お示しのように、国においては、既にインターネット上のコンテンツの真偽判別を支援する技術や改ざん検知、偽・誤情報の拡散防止などの技術の開発・実証が始まっています。 県においても、県民一人一人が情報を正しく見極めるリテラシーを高めていけるよう、警察、教育機関等と連携した啓発活動や情報モラル教育を進めるとともに、国の対策等を踏まえ、発信者の真正性を証明する技術の導入可能性などについても検討してまいります。 私は、引き続き、県警察などと適切に連携し、生成AIが作成した偽・誤情報の拡散防止など、デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた取組を進め、安心・安全なデジタル社会の実現を図ってまいります。 議長(柳居俊学君)熊坂警察本部長。 〔警察本部長 熊坂隆君登壇〕 警察本部長(熊坂隆君)ネット上の偽情報や誤情報に関する県警察における対策についてお答えいたします。 議員御指摘のとおり、最近では生成AIを利用して、人間では見分けがつかない画像や音声を作り出すことが可能になっており、SNS上で実在する著名人や架空の人物に成り済ますSNS型投資・ロマンス詐欺の被害は、本年八月末現在で三億円を超え、深刻な状況であるほか、銀行や警察をかたる偽サイトなど、フィッシングやうそ電話詐欺等の犯行手段としても悪用されています。 また、災害時における偽情報は、県民の不安をあおるとともに、不要な現場派遣により、本来必要な人命救助に後れを取るなど、災害警備活動に支障を来すこととなります。 これら偽情報等から県民を守るため、県警察では、最新の手口や対策をSNSやメール、ホームページを活用した情報発信のほか、各種講習などによって県民に広報しているところであります。 また、国外サーバーが利用され、実在する企業を装った偽サイト等に対しては、被害の拡大を迅速に防止するため、警察庁を通じて、情報セキュリティー関連事業者に情報提供し、ユーザーのコンピューター画面上に警告表示を行うなど、閲覧防止措置を講じております。 さらに、サイバー空間の浄化を図るため、警察のみならず、サイバー防犯ボランティアとも連携して、サイバーパトロールを実施しております。 一方、災害時における対策として、昨年十二月、AI等により、SNSに投稿された情報の真偽を確認し、正しい情報のみが通知されるAI防災・危機管理システムを導入しており、自然災害をはじめ各種事件・事故等、幅広い警察活動に活用しているところであります。 今後、生成AIが悪用され、各種犯罪の手口が一層巧妙化することが予想されるため、引き続き、最新の手口をタイムリーに県民に周知してまいります。 加えて、対処能力強化を図るため、サイバーテクニカルアドバイザーによる有識者講演の受講やサイバーコンテストの開催、専門的知識や技術を有する民間事業者への派遣を行うとともに、犯罪情勢に的確に対処するための資機材等の整備にも努めてまいります。 なお、各種犯罪捜査に当たりましては、他人のなりすまし等の可能性を念頭に置き、客観的証拠と対照して矛盾点がないか検討の上、適切に対処しているところでございます。 ───◆─・──◆──── 議長(柳居俊学君)この際、暫時休憩をいたします。再開は、午後一時の予定でございます。 午前十一時四十四分休憩