討論
議長(柳居俊学君)橋本尚理君。 〔橋本尚理君登壇〕(拍手) 橋本尚理君 自由民主党新生会の橋本尚理でございます。 明治維新を成し遂げた長州の先人志士たちは、長州藩のことだけを考えるのではなく、我が国全体の将来を考え、命をかけて行動し、見事、明治維新を果たされました。 私は、その志士たちの血を受け継ぐ山口県民の一人として、山口県のことだけを考えるのではなく、我が国全体の将来を考え、これまでも政治活動を続けてまいりました。 二十年前の空母艦載機部隊の岩国移駐の際も、我が国の安全保障を考えるならば、決してウエルカムではないが、受入れもやむを得ないと、この議場で一人、訴え続けました。 そこで、今回の意見書案第一号 岩国基地における空母艦載機の着陸訓練に関する意見書に反対する立場で討論をさせていただきます。 この着陸訓練に関しましては、さきの一般質問でも取り上げ、硫黄島での訓練ができないのであれば、馬毛島の訓練施設が完成するまでは、岩国基地での訓練も致し方ないと述べさせていただきました。 岩国市は、艦載機部隊の受入れの条件として、岩国基地で空母艦載機の着陸訓練は実施しないとされておりましたので、岩国市長が遺憾の意を表明されたことには、一定の理解を示します。 ただ、条件の一つに挙げられた最も大きな理由が、二十五年前に岩国基地で実施された着陸訓練が、激しい騒音を昼夜問わずまき散らし、基地周辺住民に激しい騒音被害を与えたからであります。 私も体験しましたが、それはすさまじい騒音でした。今回も相当な覚悟を持って身構えておりましたが、結果は、予想をはるかに超える静けさでした。近隣住民の方々も、通常訓練でもっとうるさい日がよくあるよ、このぐらいなら日常生活に問題ないねと言われていますし、近隣の幼稚園にお聞きしましたら、園児も通常どおり昼寝をしましたよとのことで、騒音に関しては、通常訓練と変わりがなかったというのが事実であります。 数字だけでは分かりません。実際に経験をされた基地周辺住民の体験をお聞きください。このことは、多くの市民に取材をされたマスコミの皆さんや、日常的に基地を監視されている政党の皆さんに聞かれてもはっきりすることであります。 よって、この意見書にあります、「FCLPのような、激しい騒音をもたらし、住民生活に多大な影響を与える訓練」という記述は、基地周辺住民の受けた印象とは大きく乖離しており、基地周辺住民になお一層の負担を強いてはいないのであります。 二十五年前と違って、通常訓練と変わらなかった理由は、一般質問でも述べましたが、滑走路の一キロ沖合移設、防音サッシの高性能化、それに米軍の特別な配慮にあったと思われます。 夜間着陸訓練はうるさかったと言われる方もおられますが、夜に騒音を聞くために家の外に出ればうるさいかもしれませんが、防音工事がなされた住居におれば、今回最も騒音の大きかった尾津地区に住む私も、「あ、飛行機が飛んでいる」と感じただけで、テレビの音量を上げる必要もなく、電話も通常どおりかけることができたのであります。 ただ、夜間も仕事をされている事業所も基地周辺には多くあります。そこで、以前より国に要望しております、防音工事の対象を事業所に拡大してほしい、と意見書に記述してあれば、多くの周辺住民の賛同を得られたのではないかと思っております。 また、米軍の特別の配慮とは、私が推測しますに、県や市の度々の要請に対し、米軍も騒音被害を最小限にするためにしてくれたものであろうという配慮であります。 通常であれば、多くの艦載機を連続して離発着させるのですが、騒音被害を軽減するために、数機ずつに分かれて行っておりました。よって、時間が予定以上にかかり、通告終了時間を超えてしまったのではないでしょうか。 さらに、通常FCLPは土日祝日も実施されますが、今回、土日祝日は実施しないとされました。それは土日に、一般質問で紹介しました、中高生を対象とした日米交流事業SEEDprojectが、基地内外での実施が予定されており、祝日に実施されたのは、騒音の小さなプロペラ機の訓練でありました。 さらに、訓練を一日短縮してくれたのであります。米軍は、私たち基地周辺住民に特別な配慮をしてくれたのではないでしょうか。私は、そう推測いたします。 在日米軍は、私たちの国日本を、中国、ロシア、北朝鮮からの脅威から守るために、母国から遠く離れた我が国に駐留し、厳しい訓練をしてくれているのであります。このことをしっかりと理解していただき、私たち基地周辺住民のように協力していただきたいと願うのであります。 次に、もう一点、私はこの意見書に賛成できない理由があります。 知事の答弁で、外交・防衛政策は国の専管事項であり、県として見解を述べる立場にないとよく言われております。まさに、国の安全なくして平和はありません。平和なくして国民の安全な生活も繁栄もあり得ません。 ただ、私たちの国日本は軍隊を持っておりません。世界でもまれな、自分の国を自分で守ることができない国なのであります。日米安保の下に、在日米軍にその主力を委ね、それに自衛隊が協力して、初めて我が国日本の独立と平和が保たれているのであります。 政府は、このことを十分に理解しております。ですから、このたびの県や市の中止要望に対し、防衛大臣が、今後とも皆様の理解と協力を賜りたいと回答されております。 提出議員も含め、私も政権与党の所属議員であります。私たちこそ、まずは我が国の安全保障について、真剣に勉強し、議論し、それを理解し、協力しなければならないのではないでしょうか。 そのような議論もせずに、岩国基地においてFCLPを実施されることのないよう米軍に求めるという意見書を国に提出することに同意はできません。 我が国の独立と平和を真剣に願う山口県議会であるなら、日本を守るために、なぜFCLPが必要なのか、岩国基地でなぜ実施しなければならないのか、周辺住民が理解できるように、国に十分な説明を求める、との意見書であるべきだと私は思います。 我が国の安全保障にとって最も強力な在日米軍は、横須賀を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンであります。ただ、艦載機のいない空母は、ただの大きな鉄くずであります。空母の最大の武器は艦載機であり、そのパイロットにとって最も重要で不可欠な訓練がFCLPなのであります。 艦載機は、洋上では点にしか見えない空母の甲板に、出力を上げ、限られた一地点に着艦しなければなりません。そして、艦載機のフックを甲板に張られたワイヤにかけ、停止させられるのです。もしワイヤにかからなければ、そのまま離艦しなければ海に墜落してしまいます。また、着艦時に操縦を一つ間違えれば、空母に衝突し、空母もろとも大事故になってしまうのであります。 このように艦載機のパイロットは、非常に高度な操縦技術が必要であり、空母が横須賀港に停泊している間は、陸上での着陸訓練しかできないのであります。 FCLPは、パイロットや空母の運用にとって最も重要な、不可欠な訓練なのであります。この訓練を行うことにより、日米安保体制の実効性を上げ、強化して、私たちの国日本を守ってくれているのであります。 この訓練は、これまでは岩国基地や厚木基地、横田基地を予備基地と指定しながらも、硫黄島で実施してきました。しかし、このたびは硫黄島の火山の噴火により、燃料供給施設等に被害が出て、一時滑走路には二十センチ以上の火山灰が積もったと言われております。そのため、訓練が実施不可能となり、そこで岩国基地での実施となったわけであります。 空母は、今後も横須賀港に入港すると、メンテナンスのために約半年間停泊することがあります。その間は、陸上基地でのFCLPが何度か必要になります。また、今回のように短期間の停泊でも、出航前にはFCLPの実施が義務づけられております。 その際、硫黄島の噴火が収まっていなければ、再度、岩国基地での実施が十分に予想されます。 そのような中で、岩国で実施することは認めないと言うのであれば、滑走路が市街地に向いている厚木基地で実施しろと言うのですか。東京の横田基地で実施しろと言うのですか。もし両基地で実施されれば、今回の岩国基地での騒音よりもはるかに大きな爆音を、はるかに多くの人々に聞かせ、岩国の何倍もの負担を周辺住民にかけてしまうことになるのは明々白々であります。 それとも、FCLPは日本国内ではやらせないと言うのですか。そうなれば、我が国の安全保障体制は崩壊をしてしまいます。 国は、二年後を目途に、馬毛島に常設離発着訓練基地を建設しております。意見書にも、馬毛島の離発着訓練施設の早期完成を要請する、と書き込むべきだと私は思います。 私は、今回の意見書が、反対することにより、新たな地域振興策を勝ち取るための手段として提出されるものではないと信じておりますが、以上、論じさせていただきましたように、我が国の安全保障を、最も重要な政治課題として、様々な勉強をし、それに沿った活動をし、我が国の安全保障を理解し、協力してきた私としては、この意見書に賛成することは到底できないということを申し上げ、私の討論を終わります。 議長(柳居俊学君)これをもって討論を終結をいたします。