1 東京一極集中の是正に向けた対応について 2 持続的な経済成長を実現する強靭な産業の構築について 3 持続可能で強い農業の育成について 4 防災・減災、国土強靱化の推進について 5 教育行政について 6 警察行政について
───◆─・──◆──── 日程第二 代表質問 日程第三 議案第一号から第九号まで 議長(柳居俊学君)日程第二、代表質問を行い、日程第三、議案第一号から第九号までを議題とし、質疑に入ります。 代表質問及び質疑の通告がありますので、それぞれの持ち時間の範囲内において、順次発言を許します。 守田宗治君。 〔守田宗治君登壇〕(拍手) 守田宗治君 皆さん、おはようございます。自由民主党の守田宗治であります。 令和七年六月定例会に当たり、自由民主党会派を代表して、県政の諸課題について、知事及び教育長並びに警察本部長に質問いたします。 質問に先立ち一言申し上げます。 先日、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする大阪・関西万博を視察しました。国内外からたくさんの方々が参加され、大変なにぎわいを見せており、山口県も出展され、県内各市町の魅力を発信されたところであります。この万博を本県の活性化にしっかりとつなげていただくことを大いに期待し、万博の成功を祈念させていただきます。 さて、我が国は、長引く物価高、加速する人口減少、少子化、激甚化する自然災害、緊迫する国際情勢、安全保障への対応など、国内外で困難な課題が山積しています。 本県においても、人口減少は、加速度的に厳しさを増しており、とりわけ少子化や若者、女性の県外流出などに伴い、あらゆる分野において深刻な人手・人材不足を生じています。 国民の生活を守り、地域の活力を創出するため、一つ一つの課題にしっかりと向き合い、答えを出していくことが重要であります。 歴史的な時代の転換点にあって、様々な難関に立ち向かい、我が国の明るい未来図を描き、私たちの子や孫の世代に引き継いでいくことが政治に課せられた使命であり、我が自由民主党は、政権を担う責任政党として、国民の皆様から真の信頼が得られる政権運営に全力を尽くし、日本が置かれた現実に向き合いながら、国民の皆様のための確かな政策を着実かつ迅速に遂行していかなければなりません。 七月三日公示、二十日投開票予定の第二十七回参議院議員選挙が目前に迫ってまいりました。昨年の衆議院議員選挙では、全国的に我が党への厳しい判断が示されました。この結果をしっかりと受け止め、改めて国民の皆様の信頼と共感を得られるよう、初心に立ち返り、これまで積み上げてきた政権運営の確かな実績と、これからの明るい未来を描き、つくり上げていく力強い取組と決意をしっかりと訴え、国民・県民の皆様から強力な支持を得られるよう、全力で戦い抜く決意であることを申し上げ、通告に従い質問いたします。 初めに、東京一極集中の是正に向けた対応についてお尋ねします。 本年四月に総務省が公表した二〇二四年十月一日時点の人口推計によれば、我が国の人口は前年から五十五万人減と、十四年連続のマイナスとなりました。 都道府県別では、東京都と埼玉県の二都県で人口が増加した一方、その他の四十五道府県で減少しており、地方から東京圏への人の流れは拡大し、東京一極集中の進行がより深刻化しています。 本県においても、依然として続く少子高齢化に伴う自然減に加え、若者や女性を中心とした東京圏などの大都市圏への転出超過による社会減がいずれも全国上位で推移した結果、人口減少率が中国五県でも最も高く、加速する人口減少に、非常に強い危機感を禁じ得ません。 東京一極集中は、地方の人口減少による消費活動の停滞や、労働力の減少による産業・経済へのマイナスの影響、地域社会の活力の低下、住民活動の衰退など、県民一人一人の生活に深刻な影響を及ぼすことにつながるだけでなく、イノベーションの促進に必要な多様性の確保、大規模災害時の大学、企業、政府機関等のリスク分散や超過密により悪化する生活環境の改善などの観点からも、必ず是正しなければならない問題であります。 若者や女性が地方から流出する背景には、進学や就職がきっかけになることが多いと考えられており、加えて現代の若者が収入などの経済面や進学・就職・結婚などを通じた人生設計に将来不安を強く抱いている中、トランプ政権の政策などによる世界情勢や経済の不確実性も高まっています。 こうした中、国においては、昨年十二月に首相を本部長とする新しい地方経済・生活環境創生本部において、地方創生二・〇の「基本的な考え方」をまとめ、人や企業の地方分散などの五本の柱に沿った政策体系を検討し、先日、今後十年間で集中的に取り組む基本構想が取りまとめられたところであり、この構想の下、新たな人の流れを創出するとともに、東京一極集中を是正し、多極分散型の多様な経済社会の構築に向けた取組が進められることとなります。 知事も積極的に地域に出られ、様々な地域課題の把握に努められるとともに、当事者である若い世代や女性の声に耳を傾けられながら、東京一極集中の是正に向けた取組を充実強化されておられます。地方だけで解決できる問題ではなく、我が国の構造的課題であるため、これまで以上に国と地方が一丸となってこの課題に取り組んでいく必要が高まっており、新たな視点を持って地方独自の思い切った施策を今後も打っていくことが不可欠であると思うのであります。 そこでお尋ねします。東京一極集中の是正に向けて、県は今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、持続的な経済成長を実現する強靱な産業の構築についてお尋ねします。 全世界に衝撃を与えた米国の関税措置により、自動車、鉄鋼など国内の主要な輸出産業や地域経済、さらには国民生活全体への悪影響が懸念されています。 そこで、我が自民党は、国民の暮らしに責任を持つ政党として、政府に対し、産業と雇用、国民生活を守り抜くための提言を行いました。それを踏まえ政府は、現在、米国関税措置を受けた緊急対応パッケージに基づき、中小企業の資金繰り支援をはじめとした必要な支援に万全を期しているところであります。 現時点で米国関税措置の影響は限定的とされていますが、世界経済の不確実性は高まり、先行きに対する県内企業の不安は広がりつつあります。また、足元での円安等を背景とした物価や資材・エネルギー価格の高騰、深刻な人手不足など、課題が山積しています。 本県には、マツダの自動車生産工場や関連中小企業など、ものづくり産業が多数立地しており、今後米国の関税措置を含めたコスト増の影響が大いに懸念されます。さらに、有効求人倍率は約一・七倍の高水準で推移し、依然として厳しい人手不足が続いています。 一方で、本県の企業誘致による設備投資額は二年連続で一千億円を超えて過去最高を更新し、輸出額も三年連続で増加、二〇二三年は二兆五千六百五十六億円と、過去最高を記録しました。また、今年の春闘でも、賃上げ率は過去最高水準を記録した昨年に迫ろうという勢いであり、賃上げと投資の好循環による持続的な経済成長に向けて明るい兆しが見えています。 投資拡大や賃上げ、それによる需要拡大が確かなものとなりつつある今こそ、米国関税措置をはじめとした諸課題に対応し、物価高、人手不足の下でも、逆境に粘り強く立ち向かい、困難をはねのける強靱な産業を構築しなければなりません。 そのためにも、ものづくり産業が県経済の礎であるとの認識の下、米国関税措置への備えや影響の把握・分析に努めるとともに、必要とあらば、物価高対策も含め、ちゅうちょなく国に呼応した対応を取る強い覚悟が必要です。さらに、それら守りの施策に加え、海外への事業拡大の支援やインバウンド需要の獲得、農林水産物の輸出拡大など海外から稼ぐ力の強化や、瀬戸内のコンビナート企業群における産業脱炭素化による国際競争力の確保、半導体など、今後成長が期待される高付加価値分野の育成・集積など、攻めの施策に果敢に取り組んでいただきたいと思います。また、人手不足の対応として、若者の県内就職促進や賃上げ環境の整備なども着実な対応が求められます。 そこでお尋ねします。米国の関税措置や物価高、人手不足など、経済成長を阻む高い壁が立ちはだかる中、それを乗り越え、持続的な経済成長を実現する強靱な産業の構築に向けて、県は、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、持続可能で強い農業の育成についてお尋ねします。 今年四月、中長期の農政の指針となる食料・農業・農村基本計画が閣議決定され、平時からの食料安全保障を実現する観点から、農地の確保や生産性の向上等による食料自給力の確保や、輸出拡大による海外から稼ぐ力の強化などにより、今後五年間で農業の構造転換を集中的に推し進めることとされました。 この基本計画の重要性を認識する上で記憶に新しい出来事としては、昨今の米の供給不足や米価格の上昇により、国民生活に多大な影響が出ていることが挙げられます。 国も政府備蓄米の放出によって流通を円滑にし、価格上昇を落ち着かせるなど様々な対策に取り組んでいますが、依然、米価格は前年同時期と比べ高水準にあり、家計に影響を及ぼし、国民の米離れにもつながりかねない深刻な状況であります。 その一方で、食料の安定的な生産のためには、農家の方々が意欲を持って農業に従事できるよう、農業経営の収益力を高め、所得の確保・向上を図るなどの持続性を持った生産体制を構築することも大変重要です。 本件に関しては、現下最大の課題の一つであることから、我が県の北村経夫参議院議員が参議院予算委員会において、農家が継続的に営農できる米価格の安定化や、我が国の食料安全保障を念頭に置いた新たな米政策の検討の必要性について言及されるなど、国において米の安定供給に向けた農業政策が早急に議論されています。 このように食料の安定供給の確保は、国民の健康な生活のために不可欠であり、良質な食料を合理的な価格で提供できるようにすることは国の重要な責務であるため、国に対して、農業基盤の強化や生産性向上の推進に加え、食料を持続的に供給できる適正な価格形成に向けた取組を求めるとともに、県は、地域の特性に応じた生産体制の維持・強化を行い、食料の安定供給を支えていく必要があります。 これまで県においては、日本一の担い手支援策による新規就農者の確保・定着をはじめ、生産性の向上に向けた担い手への農地集積や基盤整備、スマート農業の推進による経営力強化など、安定した食料生産体制の確立に向けて着実に取り組んでこられました。 しかしながら、農業従事者の高齢化や人手不足の深刻化により、食料の安定供給に向けた担い手の確保や農地の保全がますます困難となる中、本県農産物の生産供給体制を維持・発展させていくためには、取組のさらなる充実強化が必要ではないでしょうか。 そこでお尋ねします。米をはじめとした食料の安定的な生産・供給が課題となる中、将来にわたって持続可能で強い農業の育成に向けて、県は今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、防災・減災、国土強靱化の推進についてお尋ねします。 近年、全国各地で自然災害が激甚化、頻発化しております。昨年は、石川県能登地方において、震度七の大地震や豪雨災害が発生し、多くの貴い命や貴重な財産が失われました。さらには、南海トラフ地震臨時情報の発表や、南海トラフ地震の発生確率の引上げなど、大地震への警戒感も高まっています。御多分に漏れず、本県でも水害を中心に甚大な被害が相次いでおり、自然災害への備えや対策の重要性がますます増しております。 また、今年一月には、埼玉県八潮市において、下水道管の老朽化に起因した大規模な道路陥没が発生し、転落したトラックの運転手の方の貴い命が失われるとともに、節水やインターネット回線の断線などにより、周辺住民の生活や地域経済に大きな影響が及ぶこととなりました。こうした事故は、改めて、高度経済成長期以降に集中的に築き上げてきた我が国のインフラの予防保全や維持管理の重要性を浮き彫りにしていると言えるのではないでしょうか。 こうした状況の下、国は、現在進めている、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策に続く計画として、今月、これまでの国土強靱化施策の取組状況の評価を踏まえた上で、国土強靱化基本法に基づく第一次国土強靱化実施中期計画を策定し、取組のさらなる加速化・深化を図ることとしております。 この実施中期計画では、現在の五か年加速化対策を大きく上回る事業規模を確保し、今後の資材価格・人件費高騰等の影響も加味するとともに、現在の経済情勢等を踏まえ、速やかに必要な措置を講ずることとするなど、災害に屈しない強靱な国土づくりを進める、国の強い決意を表すものとなっています。 県におかれましても、これまで、五か年加速化対策などの国の対策予算もフルに活用しながら、道路ネットワークの機能強化や、河床掘削等の河川改修、各種インフラの老朽化対策といったハード対策や、土砂災害警戒区域等の指定・周知など、ソフト対策に積極的に取り組んでこられたところであります。 こうした取組は、災害の未然防止や被害軽減に着実に効果を発揮しているものと考えますが、冒頭申し上げたとおり、近年の自然災害の激甚化、頻発化や、インフラの老朽化といった非常に深刻な課題がある中で、その取組に終わりはなく、このたびの国の実施中期計画の策定といった新たな動きも踏まえ、これまでの取組をさらに迅速かつ着実に進めていく必要があると思うのであります。 そこでお尋ねします。県民の生命・財産を守り、安心で希望と活力に満ちた山口県を実現するため、今般の国の動きも踏まえながら、インフラ整備等による防災・減災、国土強靱化の推進に、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。 次に、教育行政についてお尋ねします。 高等学校は義務教育機関ではないものの、今日では中学校を卒業したほぼ全ての生徒が進学する教育機関となっており、多様な入学動機や進路希望、学習経験など様々な背景を持つ生徒が在籍し、高等学校の実態も多様化しております。 さらに、産業構造や社会システムが非連続的とも言えるほどに急激に変化するとともに、少子化の進行に伴う生徒数の大幅な減少によって、高等学校としての教育的機能の維持が困難となっている地域、学校が生じるなど、社会経済のありようを踏まえた高等学校の在り方の検討が急務となっています。 一方で、高等学校は初等中等教育段階最後の教育機関として、高等教育機関や実社会との接続機能を果たすとともに、生徒一人一人の個性や実情に応じて多様な可能性を伸ばしながら、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育むことを後押しすることが求められております。 このように高等学校教育を取り巻く状況が変化する中、国においては、高校授業料無償化に向け、就学支援金の所得制限を事実上撤廃するとともに、公立高校入試の併願制の導入も検討されています。受検生にとって高校の選択肢が広がる一方で、特に、高校授業料無償化は、その先行自治体の現状から、公立高校離れにつながるとの懸念の声もありますが、これらの取組を契機に、公立・私立が、それぞれ切磋琢磨しながら、これからの学校教育をよりよく変化させ、教育の質の向上につなげていくことが期待されております。 本県においても、二〇二二年度から二〇三一年度までの期間を対象とする第三期県立高校将来構想に基づき、スクール・ミッションの設定やスクール・ポリシーの策定とともに、特色のある学科の創設や中高一貫教育の推進など、県立高校の特色化・魅力化を進める取組を推進しているところであります。 急激な人口減少に直面する本県において、地域や産業の将来を支える人材を育成する県立高校の役割はますます重要となっていることから、今後は、現代の多様な諸課題に対応していく資質・能力を育成していくために、教科等横断的な学びや実践的な学びをさらに推進していくとともに、今後の生徒数の減少や将来の県立高校のあるべき姿を踏まえた再編整備に取り組んでいただくなど、生徒に行きたいと思われる学校づくり、特色化・魅力化を一層進めていただきたいと思うのであります。 そこでお尋ねします。少子化の進行に伴う生徒数の大幅な減少が見込まれる一方で、生徒一人一人の個性の多様化等が進む中、県立高校において、生徒の多様な実情や学習ニーズに応える柔軟で質の高い学びの実現や、生徒に選ばれる学校づくり、特色化・魅力化をどのように進め、高校教育の充実に取り組んでいかれるのか、教育長の御所見をお伺いいたします。 最後に、警察行政についてお尋ねいたします。 最近の治安情勢に目を向けてみますと、全国では、いまだにSNS型投資・ロマンス詐欺や、警察官をかたる不審電話に端を発するうそ電話詐欺が相次いで発生するなど、その犯罪形態は日々変化し、複雑化・巧妙化の一途をたどっており、これら詐欺事件の県内における被害総額は、本年に入ってから既に四億円に迫るなど、深刻な状況が続いております。 また、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウによる犯罪も、全国的に依然として多発傾向にあり、犯罪に対する不安感の高まりを感じています。 県警察におかれては、こうした様々な犯罪行為を撲滅すべく、日々のパトロールの強化に加えて、防犯カメラの設置拡充や解析技術の向上、県民の安心・安全の確保のため、全力で取り組まれておられますが、治安維持に対する警察の県民に寄り添った取組への期待は一層高まっています。 さらに、交通情勢についても、外国人ドライバーによる交通事故が増加するなど、在留外国人や訪日観光客の増加による、新たな課題が浮上しています。 日本で運転を行う外国人ドライバーも着実に増加する中、社会における交通安全の確保と、外国人に対する公平な運転環境の整備は、今後の重要課題であると言えます。 我が自由民主党では、こうした事態を受け、外国免許切替え制度の検証や運用見直しを政府に提言し、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けて取り組んでいるところであります。 我が党のこのような動きを踏まえ、警察庁は、外国で取得した運転免許証を日本の免許に切り替える、いわゆる外免切替え制度について、審査を強化する方針を表明しました。日本で暮らす外国人が増える中、速やかに制度の改善につなげていただきたいと思うのであります。 他方、県警察では、運転免許のデジタル化等に対応するため、県内四か所目となる即日交付施設を開所するなど、県民ニーズに応じた対策を講じておられますが、こうした政府の動きとも軌を一にして、関係機関・団体とも緊密に連携を図りながら、交通安全対策をより一層充実させることで、悲惨な交通事故の減少につなげていただきたいのであります。 そこでお尋ねします。社会情勢が複雑に変容していく中、県民一人一人に寄り添った安心・安全な社会を実現していくため、警察としてどのように取り組んでいくのか、警察本部長の御所見をお伺いし、自由民主党を代表しての質問を終わります。 御清聴ありがとうございました。(拍手) 議長(柳居俊学君)村岡知事。 〔知事 村岡嗣政君登壇〕 知事(村岡嗣政君)守田議員の代表質問にお答えします。 まず、東京一極集中の是正に向けた対応についてのお尋ねです。 東京圏の人口の転入超過は、コロナ禍で一旦縮小したものの、再び拡大に転じており、本県においても、若者を中心に、東京圏など大都市への人口の流出が続き、転出超過が拡大しています。 東京一極集中は、本県のみならず、地方にとって最大の課題である人口減少の大きな要因であり、地方の生産年齢人口の減少とこれに伴う人手不足を深刻化させ、企業活動のほか、公共交通、物流、医療、介護など、日常生活の基盤を担う分野にも影響を生じさせています。 とりわけ産業においては、我が国の成長を支える製造業や、半導体関連等の成長分野の多くの企業が地方に立地しており、今後の国の発展にも大きな影響を及ぼすものと考えています。 我が国の構造的課題である東京一極集中に、私は、強い危機感を抱いており、これまでも、三つの政府関係機関の県内移転や、東京二十三区内の大学の定員抑制措置の実現等に取り組むとともに、様々な機会を捉え、一極集中の是正を国に求めてきたところです。 こうした中、国において、地方創生を進める上で、今後十年間、集中的に取り組むべき指針、地方創生二・〇基本構想の政策の柱の一つとして、人や企業の地方分散が示され、今後、政策の具体化が図られることとなります。 この機を捉え、先日の政府要望では、企業の地方分散を促す税制対策や、地方の産業特性等を踏まえた投資の促進、ふるさと回帰に向けた取組の推進など、国のリーダーシップの下に、東京一極集中の是正に向けて実効性ある施策の構築に取り組むよう、強く要請したところです。 一方で、地方において、東京圏からの人の流れを創出・拡大するとともに、若者の地元定着を促進する取組を進めていくことも極めて重要であると考えています。 このため、県では、魅力ある雇用の場の創出に向けて、半導体、蓄電池等の成長企業やデジタル関連企業、サテライトオフィスのさらなる誘致などに取り組んでいきます。 また、移住の促進に向けて、SNS等を活用した戦略的な情報発信や、本県独自の移住支援金など、移住希望者へのきめ細かな支援に取り組むほか、若者の県内定着を図るため、住宅取得支援などの取組も進めていきます。 その上で、本県の転出超過が拡大している現状にあっては、国の地方創生二・〇の取組と呼応し、本県の地方創生の取組のレベルをさらに引き上げなければならないと考えており、これまで以上に若者に寄り添い、その希望をかなえるため、施策を充実強化してまいります。 私は、我が国の構造的課題である東京一極集中の是正に向けて、国に対し、必要な要請を重ねていくとともに、本県人口の社会減の拡大の流れを断ち切るため、実効性ある施策の推進に全力で取り組んでまいります。 次に、持続的な経済成長を実現する強靱な産業の構築についてのお尋ねにお答えします。 本県の産業力強化に向けては、企業誘致での設備投資額が二年連続で過去最高となるなど、取組の成果が着実に現れています。 一方で、長引く物価高や人手不足に加え、米国の関税措置により、自動車産業など本県の強みであるものづくり産業や、近年、輸出が伸びている農林水産業など、幅広い分野への影響が懸念されます。 このため、私は、持続的な経済成長を実現する強靱な産業の構築が重要と考え、関税や物価高への対応に加え、本県経済のエンジンとなる産業力の強化や、源泉となる産業人材の確保・育成に重点的に取り組むこととしています。 まず、関税については、直ちに庁内連絡会議を立ち上げ、県内への影響やニーズの把握等に努め、県や支援機関等による特別相談窓口での相談対応や県制度融資による支援を行うほか、先日、県議会と共に、国に、地域経済の維持や影響最小化のための支援等を要望したところです。 また、国の関税対策に呼応し、エネルギーの価格上昇の影響を受ける中小企業者等に対し、特別高圧の電気料金高騰分等を支援するなど、今回の補正予算に所要の経費を計上したところであり、引き続き、国や関係機関等と連携しながら、対応に万全を期してまいります。 次に、産業力の強化について、まず、本県産業の屋台骨であるコンビナートの脱炭素化に向け、全国に先駆けた次世代燃料への転換やサプライチェーン構築に向けた取組等が加速するよう、経済的支援の確保や規制緩和の提案等、新たな国の制度も活用しながら、企業の挑戦を後押しします。 また、半導体等の成長分野の育成・集積について、本県の優れた立地環境や優遇制度に加え、台新銀行との連携協定など、台湾との協力関係も活用した誘致活動の展開や、企業や大学等の先進的な研究開発への支援と県内での事業化の推進など、本県の高いポテンシャルを生かした取組を進めます。 さらに、海外への売り込みについては、県内企業によるASEAN等をターゲットとした戦略的な事業拡大への支援、農林水産物等の輸出やインバウンドの拡大等により、海外の活力をしっかり取り込んでいきます。 加えて、産業力強化の源泉となる産業人材の確保・育成については、若者の県内就職・定着が進むよう、本県への移住や就業等を一体的に支援する相談拠点を福岡に新設するなど、県内企業の情報発信や就職支援体制を一層強化していきます。 また、初任給や若年層の賃金について、四%以上の引上げを実施した中小企業等に対し奨励金を支給するなど、賃上げを契機とした企業の魅力向上や人材確保・定着に向けた取組を強力に後押ししていきます。 私は、国の経済対策にもしっかりと呼応しながら、本県の産業競争力強化に向けた施策を着実に、積極的に講じ、持続的な経済成長を実現する強靱な産業の構築に全力で取り組んでまいります。 次に、持続可能で強い農業の育成についてのお尋ねにお答えします。 県民の安心・安全で豊かな暮らしを実現する上において、主食である米をはじめとした食料の安定供給は極めて重要です。 このため、私は、農業の担い手の確保・育成の取組を強化するとともに、食料の安定供給の確保に向け、生産性と持続性を両立した強い農業の育成に取り組んでまいりました。 一方で、我が国のカロリーベースの食料自給率は、令和五年度で三八%と、近年低い水準で推移しており、食料安全保障の確保が懸念されます。 このため、国は、新たな基本計画において、農業の構造転換を集中的に推進するとともに、先般、閣議決定された、骨太の方針においても、農林水産業の構造転換による成長産業化及び食料安全保障の確保を実現するとしています。 また、価格高騰が続く主食用米については、本年三月から、政府備蓄米の放出を段階的に行っており、今月五日には関係閣僚会議を設置し、価格高騰原因の検証を基に、価格安定化や生産力向上等に係る対策の検討が始まっています。 こうした中、県では、去る六月十二日の政府要望において、県議会と共に農林水産省を訪問し、食料の安全保障の実現に係る要望を行ったところです。 今後は、国の動向等を踏まえつつ、食料の安定供給の確保に向けて、これまでの取組のさらなる充実強化を進めてまいります。 具体的には、まず、持続可能で強固な食料供給基盤を構築するため、市町が策定した地域計画において、農地の受皿となる集落営農法人等の再編を支援するとともに、他業種からの企業参入を促進し、農地の集積・集約化による力強い担い手の育成を進めます。 加えて、新規就業者の確保・定着に向け、これまでの研修費の助成等の支援策に併せて、ウェブサイトを通じた、パイプハウス等の遊休資産のマッチングによる初期投資の軽減を図るなど、日本一の担い手支援策を強化します。 また、農業経営の収益力を高めるため、水田の大区画化や、スマート農機の導入支援等による生産性の向上を一層進めるとともに、県産麦等の品質向上や、本県オリジナル品種であるユリのプチシリーズ等のブランド力の強化を図るなど、生産者の所得向上につなげます。 さらに、主食である米については、全国に先駆けて、昨年度から生産拡大の取組を推進した結果、令和七年産米については、約三百ヘクタールの作付拡大が見込まれているところであり、今後、JAと連携して徹底的な技術対策を行うことで大幅な増産を図ります。 私は、食料の安定的な生産と供給に向け、市町や関係団体と連携し、これまでの取組を一層強化することにより、将来にわたって持続可能で、強い農業の育成に全力で取り組んでまいります。 次に、防災・減災、国土強靱化の推進についてのお尋ねにお答えします。 近年、自然災害が激甚化・頻発化し、また、インフラの老朽化が急速に進む中、私は、県民誰もが、安心して暮らし続けられる山口県の基盤を築くことが極めて重要であると考えています。 このため、やまぐち未来維新プランにおいて、災害に強い県づくり推進プロジェクトを掲げ、国の五か年加速化対策の予算も積極的に活用しながら、防災・減災、国土強靱化の推進に取り組んでいるところです。 こうした取組は、お示しのとおり、災害の未然防止や被害の軽減に着実な効果を発揮していますが、気候変動に起因する集中豪雨や、切迫する南海トラフ地震などによる大規模自然災害等から、県民の生命・財産を守るためには、今後も切れ目なく取組を進める必要があります。 そのため、国土強靱化基本法に基づく実施中期計画について、現行の五か年加速化対策を上回る事業規模とすることなどを、政府要望や全国知事会等、あらゆる機会を通じて国に訴えてきました。 こうした中、令和八年度からの五年を期間とする第一次国土強靱化実施中期計画が、先日、閣議決定され、事業規模は、おおむね二十兆円強程度を目途とし、今後の資材価格・人件費高騰等の影響については予算編成過程で適切に反映するとされたところです。 また、この実施中期計画においては、能登半島地震や八潮市の道路陥没事故などの教訓を踏まえつつ、国土強靱化施策のさらなる加速化・深化を図ることとされました。 私は、こうした国の方針を受けて、防災・減災、国土強靱化のより一層の推進に向け、ハード・ソフト両面から、取組を強化してまいります。 具体的には、まず、ハード対策として、ミッシングリンクの解消に向けた山陰道の整備、緊急輸送道路の橋梁の耐震化や、近年、甚大な被害が発生した厚狭川の河川改修などを重点的に推進します。 また、橋梁や下水道施設等の既存インフラの老朽化対策については、AIなどのデジタル技術を活用した予防保全型の維持管理への一層の転換を図るなど、より効果的・効率的に進めるとともに、引き続き、市町の取組を積極的に支援します。 次に、ソフト対策として、全ての県管理河川を対象とした洪水浸水想定区域や、高精度地形情報を活用した土砂災害警戒区域等の指定を進めるなど、市町と連携し、住民の避難行動に資する災害リスク情報の充実を図ってまいります。 さらに、こうした取組を切れ目なく着実に進めるため、必要な予算の確保について、先日も政府要望を行ったところであり、引き続き、あらゆる機会を通じて国に訴えていきます。 私は、県民の暮らしの安心・安全はあらゆることの基本であるとの認識の下、災害に強い県づくりに向けて、インフラ整備等による防災・減災、国土強靱化の推進に全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)繁吉教育長。 〔教育長 繁吉健志君登壇〕 教育長(繁吉健志君)教育行政についてのお尋ねにお答えします。 少子化が加速し、産業構造や社会システムが大きく変化する中、お示しのように、高校には、生徒一人一人の多様な可能性を伸ばしながら、持続可能な社会の創り手を育成することが求められており、将来の県立高校のあるべき姿を踏まえ、高校教育の一層の充実を図ることが重要であると考えています。 このため、県教委では、第三期県立高校将来構想において、目指すべき県立高校像を、主体的に未来を切り開いていく人材や、地域・社会に貢献しようとする人材を育成するとともに、人とのつながりや支え合いを大切にする心を育むことができる学校とし、この方向性に沿って、特色ある学校づくりと学校・学科の再編整備を推進しているところです。 具体的には、特色ある学校づくりとして、今年四月に文理探究科を六校に設置し、大学や地元企業と連携して、地域課題等の解決に向けた教科等横断的な学びなどの充実を図るとともに、グローバル化する社会で活躍できる力の育成に向けて海外との交流を推進するなど、教育活動の質の向上に取り組んでいます。 また、魅力ある教育環境を提供できるよう、施設の老朽化や再編整備に対応し、必要な施設・設備の充実に努めるとともに、快適な学習環境の実現に向けて、学習系ネットワークの高速化などによる教育のDX化も推進しているところです。 こうした中、本県の中学校卒業者数は、今年三月の約一万一千人から、十五年後には約六千六百人にまで減少する見込みであり、高校教育の質の確保・向上を図り、特色ある教育活動を展開していくためには、将来を見据えた県立高校の再編整備をさらに進めていくことが必要です。 このため、今年度中には、令和九年度からの県立高校再編整備後期実施計画を策定できるよう、現在、全県的な視点に立って検討を進めており、できる限り早く、素案を取りまとめたいと考えています。 この計画の策定に向けては、例えば、生徒のニーズや本県の産業構造などを踏まえ、現代のものづくりに対応できるよう、先進的な技術や、高度な専門性を身につけることができる高校の設置などについて検討を進めているところです。 さらに、学校の特色化・魅力化を進めるため、大学等への進学や県内企業への就職など、多様な進路選択に柔軟に対応できる新しい普通科や、社会全体のDX化などに対応した情報に関する学科の設置についても検討してまいります。 県教委といたしましては、こうした方向性の下、策定する後期実施計画に沿って、柔軟で質の高い学びの実現や、生徒にとって魅力のある学校づくりに取り組むとともに、学校・学科の再編整備を推進し、高校教育のさらなる充実に全力で取り組んでまいります。 議長(柳居俊学君)熊坂警察本部長。 〔警察本部長 熊坂隆君登壇〕 警察本部長(熊坂隆君)安心・安全な社会を実現していくための取組に関する御質問についてお答えいたします。 最近、県内における治安情勢は、御指摘のとおり、SNS型投資・ロマンス詐欺をはじめとする匿名・流動型犯罪グループによる被害が深刻化するとともに、高齢者を中心に交通死亡事故・重傷事故も多く発生しています。 また、先端技術の進展に伴う、県民の利便性向上のためのデジタル化への対応も、県警の課題の一つであると認識しているところであります。 SNS型投資・ロマンス詐欺及びうそ電話詐欺の被害は、本年五月末現在で八十七件を認知し、その被害額は四億円に迫る状況にございます。 交通事故については、本年五月末現在、十三人の方が亡くなられ、前年同期に比べ減少しているものの、依然として死者に占める高齢者の割合が高くなっています。 さらに、車両運転中の外国人が第一当事者となった交通事故も、本年五月末現在、前年同期に比べ八件多い二十三件発生し、三月には、自転車乗車中ではありますが、外国人が亡くなる交通事故も発生しています。 このような情勢を踏まえた県警察の取組ですが、まず、SNS型投資・ロマンス詐欺及びうそ電話詐欺について、被害対象世代が拡大していることを踏まえ、戸別訪問活動の対象の拡大やSNSを通じた呼びかけの強化などにより、一人でも多くの県民に届く被害防止広報に取り組んでいます。 また、犯行に多く用いられる国際電話に関して、巡回連絡などを通じた利用休止の申込み支援を引き続き推進するとともに、水際での被害防止対策として、県内に本店を置く金融機関七社との間で、被害が疑われる取引等に関する情報共有を内容とした協定を締結し、この種犯罪の被害防止対策を強化しているところであります。 次に、交通事故抑止に向けては、高齢者の交通事故防止対策を重点に、運転者、歩行者両面からの各種取組を推進しているところですが、増加傾向にある外国人運転手に対しては、交通ルールを多言語化したリーフレットをレンタカー事業者等に配布し、交通ルールの周知を図るとともに、今後は、外国人を雇用する事業所等と連携し、積極的な交通安全教育の提供に努めてまいります。 まずは、これらの取組を通じて、県民の安全・安心の確保に努めていきたいと考えております。 御指摘の外免切替え制度に関しては、国において、申請者の住所確認等について見直しが進められているところであり、制度が改正された場合には、県警としても、しっかり対応してまいります。 また、デジタル社会への対応を進めていくため、運転免許手続のデジタル化に関して、三月からのマイナ免許証の運用開始を受け、新たな即日交付施設として、周南運転免許センターを開設しました。これまで千五百人以上の方が利用し、好評の声を頂いているところであります。 今後も、県民のさらなる利便性向上に向け、本年十月からは、岩国・下関警察署でもマイナ免許証の交付に対応し、来年度には、萩地区における即日交付施設の開設を予定しております。 さらに、本年六月十二日には、日本マイクロソフト株式会社との間で、DX推進に関する連携協定を締結しており、民間の技術・知見を踏まえて取組を進め、県民の安全・安心の確保に加え、利便性向上にも配慮しつつ、時代に即した警察の運営に努めてまいります。